「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
            嶋津 暉之

アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定し、国の事業認定と北海道収用委員会裁決をいずれも違法とした二風谷(にぶたに)ダム訴訟の札幌地裁判決があってから20年になります。
ダム本体が完成していたことを理由に、二風谷ダム建設差し止めの請求は棄却されましたが、先住民族と認定した判決は画期的でした。
なお、二風谷ダムは堆砂がひどく進行し、2015年3月末現在で堆砂率は総貯水容量の約4割に達しています。
溜まった泥の濁りがダムの下流域から河口沿岸域までおよび、シシャモの繁殖に多大な影響を与えているとされています。

◇沙流川の今。2016年7月29日 | 流域の自然を考えるネットワーク
http://protectingecology.org/report/6462

土砂供給量が非常に大きい沙流川はダムを造ってはいけない河川であるにもかかわらず、現在、二風谷ダムの上流で平取(びらとり)ダムの建設が進められています。

◆二風谷ダム訴訟 判決20年 父から子へ「闘い」今も 権利回復、道半ば /北海道
(毎日新聞北海道版2017年3月25日 )
http://mainichi.jp/articles/20170325/ddl/k01/040/232000c

アイヌ民族を初めて先住民族と認め、独自の文化への配慮を欠いた事業認定を違法とした二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から27日で20年。

父の遺志を継いで訴訟を起こした貝沢耕一さん(71)と、もう一人の原告でアイヌ民族初の国会議員、故萱野茂さんの次男志朗さん(58)が胸に抱くのは、先住民族としての権利回復は、道半ばとの思いだ。民族の誇りをかけた闘いは、父から子へと受け継がれ、今も続く。

差別の歴史問う

雪が残る3月上旬の、平取町二風谷地区。穏やかに流れる沙流川に、二風谷ダムの巨大な水門が立つ。「子どものころ、向こう岸の畑に行くための丸木舟がいくつもあった。川遊びもできたよ」。貝沢さんは、ダムができる前の思い出を語った。

住民の7割がアイヌ民族の血を引くとされる二風谷では1970年代からほぼ毎年、舟下ろしの伝統儀式「チプサンケ」を再現してきた。82年にダム建設事業が始まり、北海道開発局が進めた用地買収に対し、文化継承が途絶えるとして土地明け渡しを拒否したのが貝沢さんの父正さんと、萱野茂さんだった。

裁判で問われたのは、差別の歴史そのものだ。アイヌ民族は明治以降の同化政策でアイヌ語や固有の習慣、生活の基盤だった狩猟や漁労を否定され、北海道旧土人保護法により、不慣れな農業が奨励された。

森、本来の姿に

「政府にアイヌの声を届けたい」。92年に亡くなった正さんの言葉は今も、貝沢さんの胸に残る。97年3月の判決後、同7月に旧土人保護法は廃止、アイヌ文化振興法が施行された。

貝沢さんは現在、開拓の名の下に切り倒された森を本来の姿に戻そうと、山林を買い取り、木を育てるNPO法人「ナショナルトラスト・チコロナイ」の理事長を務める。チコロナイは「私たちの沢」を意味するアイヌ語で、萱野茂さんが名付けた。買い取った土地約30ヘクタールに、伝統的な衣服の材料になるオヒョウなどを植えてきた。

この20年で「若い世代がアイヌ文化に関心を持ち始めた」と変化を感じるものの、「民族の権利や生活を改善しようと裁判を闘ったが、状況は変わらない。振興法はアイヌの権利を一切うたわず、文化を博物館に押し込むようなものだ」と、貝沢さんは批判する。

アイヌ語伝える

大学進学後、東京で暮らしていた萱野志朗さんは、カナダの先住民族との出会いをきっかけに、民族の言葉の大切さに気付いた。故郷に戻って父の下で一からアイヌ語を学び、現在は「萱野茂二風谷アイヌ資料館」の館長を務める。

2006年に亡くなった父に代わって地元の小中学生にアイヌ語を教え、現在も大人向けの教室を続ける志朗さん。「アイヌ語を失えば、民族が長年培ってきた価値観や知識も伝わらない。子どもや孫の世代に文化をどう受け継いでもらうのか、アイヌ自身もビジョンを持たなければならない」と強調した。

政府施策、文化振興に偏り

海外で先住民族の権利を認める流れが広がる中、政府は二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から10年余り過ぎた2008年6月、官房長官談話で初めてアイヌ民族を先住民族と認めた。だが政府のアイヌ施策は文化振興に偏っており、先住民族としてのアイヌの権利は具体化していない。

1997年3月の札幌地裁判決はアイヌ民族を「わが国の統治が及ぶ前から北海道に居住し、なお独自の文化およびアイデンティティーを喪失していない社会的な集団」として、先住民族と認定した。

07年9月に日本も賛成して国連総会で採択された「先住民族の権利に関する宣言」は、先住民族に自決権や文化的伝統を実践する権利、土地や資源に対する権利などを広い範囲で認めている。

権利宣言の採択に加え、北海道洞爺湖サミット(08年7月)の開催を控えてアイヌ民族が海外からも注目されるようになったことが、政府にアイヌを先住民族と認めるよう求める衆参両院の決議と、決議を受けた官房長官談話につながった。

政府は白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」の基本方針を14年6月に閣議決定。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせた国立アイヌ民族博物館の開館のほか、生活や教育を支援する新法制定も検討されているものの、民族の権利についての議論は深まっていない。

二風谷ダム訴訟で原告側弁護団長だった田中宏弁護士は「単なるハコモノ造りではなく、同化政策の歴史に向き合わなければならない」と語る。

恵泉女学園大の上村英明教授(先住民族論)は「過去の政策や歴史に理解を深めないまま、日本社会がどう責任を取るかが定まっていないため、権利が実現していない。行政主導ではなく、政治や司法の場でもアイヌ民族への政策を問い直すべきだ」と強調した。


■ことば

二風谷ダム訴訟

平取町の二風谷ダム建設を巡り、地権者である故萱野茂さんと貝沢耕一さんが北海道収用委員会に、土地強制収用の裁決取り消しを求めた行政訴訟。札幌地裁は1997年3月27日の判決で、アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定。ダム建設がアイヌ文化に与える影響について調査を怠り、アイヌ民族の文化享有権を軽視したと指摘し、国の事業認定と道収用委裁決をいずれも違法とした。ダム本体が完成していたことを考慮し、請求は棄却した。


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【2017/03/27 16:18】 | 各地のダム情報
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               嶋津 暉之

九州の国直轄5ダムの2017年度予算が大幅に増額されたことを取り上げた記事です。
ダム事業をストップさせるはずのダム検証が暗転し、ダム事業推進の道具に化してしまいました。
「脱「脱ダム」」が加速というのは何とも悔しいですね。

◆九州の脱「脱ダム」加速 17年度予算案 九州、事業費13倍も

(西日本新聞朝刊2017年03月20日)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/315745

 民主党政権で縮小されたダム事業の予算が、自民党政権下で大きく膨らんでいる。ダム建設の是非を検証して「継続」が決まった九州の国直轄の5ダムについて、2017年度予算案と11年度の事業費を比較すると、最大で13倍だった。脱「脱ダム」の流れが加速している。

 ダム事業検証は10年に始まり、九州では国直轄6、水資源機構1、県営(国が補助)7の計14ダムが対象になった。事業主体と地元自治体が昨年8月までに検証した結果、継続11、中止3となった。

 国直轄で継続になったのは、筑後川水系ダム群連携(福岡県)、城原川(佐賀県)、本明川(長崎県)、立野(熊本県)、大分川(大分県)の5ダム。

 国土交通省によると、5ダムの09年度の事業費総額は42億700万円。11年度は20億9200万円に減少したが、その後は増加を続け、大分川の工事がピークを迎えた16年度は200億2900万円。17年度予算案には総額131億1100万円が盛り込まれた。
 検証中は、着手していた周辺道路の整備などは続けるが「新たな段階」に入らないとしていたため、継続が決まった翌年度以降に事業費が大きく増える傾向がある。

 個別に見ると、17年度に本体着工を予定する立野ダムの予算は48億3800万円で、11年度の事業費3億7100万円の13倍。本明川ダムは、11年度の1億2700万円から17年度は13億4700万円で10倍。大分川ダムは14億1800万円から63億3600万円に、城原川ダムは9600万円から3億5900万円に増えた。

 昨年8月に継続が決まった筑後川水系ダム群連携の事業費は、11年度から16年度まで7900万円から8800万円で推移していたが、17年度予算は2億3100万円が計上された。

 自民党政権は防災や減災のための「国土強靱(きょうじん)化」を重視。国交省九州地方整備局は「流域の安心安全のため、必要とされた工事を着実に進めたい」としている。


▼ダム事業検証 民主党は2009年の衆院選マニフェストに「時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す」と明記し、川辺川ダム(熊本県)と八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の中止を公約。

同年12月に前原誠司国土交通相は、本体に着工していない国直轄や水資源機構、国が補助金を支出する道府県営のダム事業について「ダムによらない治水」が可能かを検証すると表明した。

検証対象の83ダムのうち、結果の出た79ダムの内訳は継続54、中止25。民主党政権は11年、八ツ場ダムの中止方針を撤回した。



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【2017/03/23 07:56】 | 各地のダム情報
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            嶋津 暉之

2010年度からのダム検証はダム事業の推進にお墨付きを与える道具になってしまい、必要性が稀薄なダムの建設が全国各地で進められています。
山口県の平瀬ダムもそうです。
平瀬ダムも2012年12月に事業推進の決定が国交省から出て、2016年2月から本体打設工事に入っています。
しかし、新たな地すべり対策が必要となり、事業費が100億円の桁で増える見通しになりました。

事業費が増え続けてきています。350億円 → 530億円 → 740億円 →?

なお、平瀬ダムの問題は2013年11月の私の講演スライドにまとめてあります。

◇「平瀬ダム問題を考える」講演のスライド(2013年11月30日)
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2013/12/f96224d42e31bbd274fd6c89489a5797.pdf

◆山口)平瀬ダム、100億円増額へ 膨らみ続ける事業費
(朝日新聞山口版2017年3月14日)
http://digital.asahi.com/articles/ASK3F4WVHK3FTZNB018.html

 岩国市の錦川で県が建設中の平瀬ダム工事に、新たに地滑り対策が必要になり、事業費が100億円増える見通しとなった。事業費は膨らみ続けてきた経緯があり、県財政が厳しさを増す中で、ダムをめぐる議論が起こる可能性がある。

 13日の県議会土木建築委員会で、県が明らかにした。

 平瀬ダムの地滑り対策をめぐっては、県が2003年度までに必要性を検討したところ、対策は必要ないとの結果がいったんは出ていた。だが、国は09年、地滑りに関する国の技術指針を改定。民主党(当時)政権下の10~12年には、ダムそのものの必要性の検証に入ったことから、13年から現地を踏査したり地質を調査したりしてきた。

 その結果、対策の工事が必要とわかり、国土交通省も昨年12月、一部の箇所について対策工事が必要との見解を県に示していた。
 県は13日の委員会で、他の事例を参考に「100億円程度になるのではないかと考えられる」と説明。「100億の桁になるのでは」とも述べ、さらに膨らむ可能性も示した。事業費の精査は7月ごろまでには終える見込みだという。

 平瀬ダムは、総貯水容量2950万立方メートルのコンクリートダムで、計画地は錦川上流域。錦川は流域面積889・8平方キロメートル、幹川流路延長約110・3キロメートルの県内最大の2級河川で、流域では台風による洪水で住宅への浸水被害が度々あった。田畑や工場、上水道向けの水源にもなっているが、夏場には渇水も起きるという。

 ダムは、住民からの要望もあり、県は73年度から建設に向けた調査を開始。88年度以降、用地交渉も進め、関連工事に入った。

 ただ、事業費はこれまで増え続けてきた。88年度は約350億円だったが、用地交渉がまとまったり工事の工法変更があったりして00年度には約530億円に。03年度には約740億円と当初から倍増し、昨年6月には、人件費の高騰を受け、さらに約1億5千万円上積みした。完成時期もずれ込み、当初の「00年度」から現在は「21年度」だ。

 地元では、自然を壊すとして反対運動も続いてきた。市民グループ「美しい錦川を未来へ手渡す会」の吉村健次代表は「山を整備すれば治水できるはずで、必要性を全く度外視している。バラマキのようで、話を強引に進めている」と批判している。(成沢解語)


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【2017/03/17 02:44】 | 各地のダム情報
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          嶋津 暉之

今年2月12日に米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に穴が開き、決壊の危険があるとして、付近住民20万人近くが緊急避難する事態になりました。
この「オロヴィル・ダム」の問題についての続報と当時の記事も参考までにお知らせします。

◆ダム放水路 宇宙からもわかる崩壊の凄まじさ「復旧の見通し立たず」米国
(ハザードラボ2017年03月06日)
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19315.html

米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に穴が開き、決壊の危険があるとして、付近住民が緊急避難する事態に発展したニュースは、当ハザードラボでも先月お知らせしたばかり。

カリフォルニア州の水資源局(DWR)は今月4日(現地時間)、緊急排水路の現状を公開し、復旧作業には相当の時間がかかることを明らかにした。ダムの異変は、400キロ上空の国際宇宙ステーションからもハッキリ確認できるという。

カリフォルニア州北部にある「オロヴィル・ダム」では、今年1月から降り続いた雪や雨の影響で、ダム湖に流れ込む三本の川の水量が急激に増え、決壊寸前の危険水位に達した。そこで、水資源局は先月11日、緊急排水路からの放水を決断。

ところがダムが完成した1968年から半世紀近くの間、一度も使われることがなかった排水路に巨大な穴が開いていることが判明したことから事態は一転、排水路そのものが崩壊する危険性が高まった。

州政府は一時期、ダム周辺に暮らす住民20万人近くに避難勧告を発令したが、結果として排水路は決壊の危険を回避。

しかし水圧による爪痕は凄まじく、放水路の下半分のコンクリートがえぐられて、土砂やがれきを押し流し、周辺の景色を一変させた。現地ではすでに1週間近く撤去作業が続いているが、復旧の見通しは全く立っていない。


◆ダム放水路が決壊の危機!約20万人に避難勧告 カリフォルニア
(ハザードラボ2017年02月14日 11時22分)
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19053.html
カリフォルニア州北部にある米国最大の「オロヴィル・ダム」の緊急排水路に巨大な穴が開いているのが見つかり、このままでは決壊するおそれがあるとして、今月12日、周辺住民20万人近くに避難勧告が出された。

カリフォルニア州の水資源局(DWR)によると、穴が見つかったのは今月7日。穴の浸食は次第に進み、最終的に水路の横幅いっぱいまで広がった。

しかし、1月から降り続いた雪や雨で、ダム湖に流れ込む三本の川の水量が急激に増え、ダムの水位が危険水位に達したことから、水資源局は2月11日、ダムが完成した1968年以来初めて、緊急排水路の使用を決断。

毎秒10万立方メートルの水が猛烈な勢いで排出されることで排水路そのものが決壊するおそれがあるとして、カリフォルニア州知事は、ユバ郡、サッター郡など周辺住民19万人余りに避難勧告を発令。

13日の発表では、今もなお毎秒10万立方メートルの放水が続いているが、ダム湖の水位はかなり下がっていて、水資源局では、浸食した穴を塞ぐ準備を進めているという。

米国防総省は13日、「ダムの水位は下がっているとはいえ、今週末に再び雨が降る予報が出ている。米軍は24時間体制で住民の避難支援にあたる準備を進めている」と発表した。


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【2017/03/12 22:18】 | 各地のダム情報
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               嶋津 暉之

一昨日、長野県・浅川ダム公金支出差し止めの住民訴訟について東京高裁の判決がありました。
まことに残念ながら、住民側の敗訴でした。

◆浅川ダム訴訟2審も訴え退ける
(NHK2017年03月02日 18時14分)
http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/1013893411.html?t=1488489474900

長野市にある浅川ダムをめぐり、地元の住民などが、ダムの真下に活断層があるなどとして、長野県にダムの建設にかかわる公金の支出の差し止めなどを求めた裁判で、2審の東京高等裁判所は1審に続いて訴えを退けました。

この裁判は、長野市の浅川上流にある浅川ダムについて、地元の住民などが、想定されている洪水の規模が大きすぎ、ダム建設の必要性がないうえ、ダムの真下に活断層があり、地すべりの危険もあるなどとして、長野県にダムの建設にかかわる公金の支出の差し止めなどを求めているものです。
1審の長野地方裁判所はおととし4月、原告側の訴えを全面的に退ける判決を言い渡し、原告側が控訴していました。

2日の2審の判決で、東京高等裁判所の阿部潤裁判長は「想定されている洪水の規模は国の基準に照らして合理性を欠くものとはいえず、地すべり対策も国が監修するマニュアルに沿うものだ」と指摘しました。

そのうえで「公金支出は違法なものではない」として、1審に続いて訴えを退けました。

県によりますと、浅川ダムでは試験的に水をためてダムの強度などを確認する「試験たん水」が行われており、試験結果を取りまとめたあと、今月中旬にも本格的な運用が始まる見通しです。

判決について、長野県の阿部知事は「浅川ダムの建設が適法であるという県の主張が認められたものと考えている。県としては丁寧にダムの安全性を確認して取り組みを進めていて、今後も適正に事業を進めていく」というコメントを出しました。

判決を受けて、原告団の花岡邦明代表は「私たちが訴えてきたことを裁判所は全く検討しておらず、承服しがたい。今後の対応についてはこれから検討したい」と話しています。


◆浅川ダム住民訴訟、高裁も請求退ける
(信濃毎日新聞2017年3月3日)
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170303/KT170302FTI090017000.php

県営浅川ダム(長野市)建設は無駄な公金支出を禁じた地方財政法に違反するなどとし、流域住民ら約220人が県に公金支出差し止めなどを求めた住民訴訟の控訴審で、東京高裁(阿部潤裁判長)は2日、ダム建設についての県の判断に「特段不合理な点はない」などとして控訴を棄却した。2015年の一審長野地裁に続き、住民側の請求を退けた。

住民側はダム建設の根拠となる大洪水時の河川の最大流量「基本高水(たかみず)」の設定が過大で、ダム直下の断層も建設に適さない活断層だ―などと主張していた。

判決は、県の基本高水の算出は法にのっとっており、「(住民側の)ダム建設の必要性がない旨の主張は採用できない」と指摘。ダム直下の断層について、調査や検討を踏まえて活断層ではないとした県の判断は「合理性を欠くとは言えない」とした。

判決後、原告団の花岡邦明代表は「一審判決の矛盾を高裁段階で再検討してほしいと訴えたが、ほとんど検証されず極めて残念」と述べ、判決を分析して今後の対応を決めるとした。県は「建設が適法との主張が認められたと考える。今後も適正に事業を進めていく」とコメントした。


◆長野ダム訴訟、再び住民敗訴 東京高裁「違法性ない」

(西日本新聞2017年03月02日 18時16分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/311780

長野県営浅川ダム(長野市)の建設に反対する県民222人が、工事に使われる公金の支出差し止めなどを県に求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は2日、訴えを退けた一審長野地裁判決を支持し、住民敗訴の判決を言い渡した。

判決理由で阿部潤裁判長は「計画は長年の懸案だった治水が目的で、住民説明会や学識経験者、関係自治体への意見聴取を踏まえて策定されており違法はない」と指摘した。

住民は「建設地は活断層の上で、周辺は地滑りの危険があるうえ、費用対効果がない」と主張したが、判決は「県は国の指針に沿って調査、検討しており計画には合理性がある」と退けた。


◆浅川ダム訴訟  2審も住民側敗訴「手続きに違法はない」

(毎日新聞2017年3月2日 18時57分)
http://mainichi.jp/articles/20170303/k00/00m/040/028000c

長野県が建設中の浅川ダム(長野市)を巡り、周辺住民222人が建設費約120億円を阿部守一知事らに返還請求するよう県に求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は2日、請求を棄却した1審・長野地裁判決(2015年4月)を支持し住民側の控訴を退けた。

阿部潤裁判長は「計画は住民や学識者の意見を踏まえており、手続きに違法はない」と指摘。治水効果の計算が合理性を欠くとは言えず、地滑りの危険性があるとも言えないとして、建設費支出は妥当と結論付けた。

浅川ダムは長野県が1995年に国から建設認可を受けたが、01年の田中康夫知事(当時)の「脱ダム」宣言を受けて建設が中断。知事交代後の07年に建設再開が決まった。試験運用が終わり、県は今月中旬にも本格運用を始める方針。【伊藤直孝】



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【2017/03/04 03:08】 | 各地のダム情報
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