「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
             嶋津 暉之

先にお伝えしたように、国土交通省が6月27日に「ダム再生ビジョン」を策定 しました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000029.html

「ダム再生ビジョン」についての解説記事をお送りします。

新規のダム建設が困難になってきたので、ダム建設部門を維持するために、「ダム再生ビジョン」が策定されたように思います。

◆進むダム再生、豪雨災害・水不足を防ぐ
(日刊工業新聞ニュースイッチ 2017/7/23(日) 10:40配信 )
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170723-00010000-newswitch-bus_all&p=2

進むダム再生、豪雨災害・水不足を防ぐ

 豪雨や台風などによる水害や、日照りによる渇水などの被害を軽減するため、ダムの機能が見直されている。災害対策に加え、水力発電など再生可能エネルギーの活用という点からも重要性が増している。こうした中、国土交通省は既存ダムの有効活用に向けた「ダム再生ビジョン」を策定し、ダムの長寿命化や柔軟な運用などの方針を打ち出した。ゼネコンも既存ダムの活用に役立つ改修技術やロボット技術の開発に力を入れている。

 7月上旬に豪雨が襲った九州北部では、現在も復旧作業が続くなど、最近は水害が頻発している。2015年9月の関東・東北豪雨、16年8月の北海道への3台風上陸なども記憶に新しい。

 一方で、水不足への対応も重要だ。過去5年間で北海道・沖縄県を除く21水系26河川で取水制限が実施された。直近でも埼玉県と東京都の水源となる荒川水系で取水が制限されており、水不足への懸念が強まる。

 こうした中で見直されているのがダムの機能だ。異常気象が続く日本において、豪雨時の水量調整機能や、水不足をにらんだ貯水機能など治水・利水が重要性を増している。また、水力発電は二酸化炭素(CO2)が発生しない再生可能エネルギーとして一定の役割を担う。

 国土交通省がまとめた「ダム再生ビジョン」では、国の厳しい財政状況などを踏まえ、既存ダムの有効活用を打ち出した。国交省はこれまで、既存ダム活用に向けた実施事例を積み重ねてきた。その取り組みをソフト・ハードの両面から発展させる。

 豪雨対策としては、豪雨が予想された時点で放水して水位を下げ、洪水調整の容量を増やす。「運用改善で新たな効果を発揮する」(石井啓一国土交通相)とし、現在13カ所のダムで実施している。
進むダム再生、豪雨災害・水不足を防ぐ

国土交通省がまとめた「ダム再生ビジョン」
123カ所のダムの点検を今年度中に実施

 鶴田ダム(鹿児島県さつま町)では、従来発電用に設置していた放流位置より低い部分に放流管を新たに設置した。水量が一定量に満たない早い段階で水を放流でき、洪水対策をしやすくする。また、ダムの堤体を高くして貯水量を増やす取り組みも推進する。

 新桂沢ダム(北海道三笠市)は国のダム事業として初めて堤体を高くする事業を20年度までに実施する。約2割高くすることで、ダムの総貯水量が約6割増加する見込みだ。

 ダム再生ビジョンではこうした実績を踏まえ、10項目の方策を示した。ダムの長寿命化では、ダム内に堆積する土砂を排出するバイパスの設置や新工法の検討を進める。

 ダムの維持管理における効率化・高度化にも着手する。建設段階では情報通信技術(ICT)を用いた3次元モデルを活用し、維持・管理業務に役立てる。

 水中ロボットや飛行ロボット(ドローン)などを用いた点検手法も導入する方針だ。水力発電では、治水と発電の双方の能力を向上させる手法を検討する。

 国交省は渇水対策で、所定の容量より水を貯めて利水に活用する運用のルール化に向け、国交省と水資源機構が管理する123カ所のダムの点検を今年度中に実施する。

 「過去の降雨量やその地域の気象状況などのデータを活用した気象予測技術が重要」(国交省治水課)と最新の気象予測技術との融合により、ダム運用の精度を高めていく。


進むダム再生、豪雨災害・水不足を防ぐ

潜水せずに「仮締切」の仕組み
ゼネコンも新技術の開発次々と

 既存ダムの活用に向けた再開発工事や点検・補修作業に向け、ゼネコンは新技術の開発を進めている。その一つが、鹿島と日立造船、国土交通省九州地方整備局、ダム技術センターが共同開発した「浮体式仮締切工法」だ。

 ダムを運用したまま堤体に穴をあける再開発工事では、水が流れ出ないように仮設の構造物「仮締切」を設ける。ダムの堤体の穴にふたをして流水を防ぐイメージだ。従来の仮締切は、ダム底にコンクリートの台座をつくり、その上に鋼製部材でコの字型の扉を設置する。

 鹿島などは鶴田ダムの再開発工事で、浮体式仮締切工法を初めて適用した。水面で鋼製ブロックを浮かべたまま積み重ねて仮締切を構築。組み立て後は、ダム堤体までえい航して設置する。鹿島の土木技術とブロックを浮かべたり、水もれを防いだりする日立造船の造船技術が融合した。
 従来の仮締切の工事ではコンクリートの台座を設置するため潜水作業が必要。ただ、鶴田ダムは国内最深級の65メートルと深く潜水作業が難しかった。
 同工法を用いると大水深での作業が不要になる。林健二鹿島土木管理本部土木工務部ダムグループ長は「新工法の開発で作業の効率化や工期短縮、コスト削減、潜水士の安全を確保した」と成果を強調する。
 大林組が開発した水中インフラ点検ロボット「ディアグ」は、ダムなど水中構造物の点検作業で威力を発揮する。深さ100メートルまでの潜水が可能で、水上からの電源供給により、長時間稼働できる。
 画像解析機能によってカメラで撮影した水中の白色浮遊物を自動的に除去。濁水の中でも鮮明な映像をモニターに表示する。レーザー照射により、ダム壁のひび割れ部分の大きさの測定も可能だ。
 ディアグは水中での姿勢を制御する装置「アクアジャスター」を備える。物体の回転で姿勢が乱れないように調整するジャイロ効果を利用した。
 水流による機体の揺れを抑え、ほぼ静止した状態で対象物を撮影できる。アクアジャスターは東京スカイツリー(東京都墨田区)の工事で風で揺れるタワークレーンのつり荷を制御した実績もある。
 従来、水中での点検作業は潜水士が行っている。ただ人間の潜水時間には制限があり、通常は深さ40メートルまでの潜水が限度だった。徳永篤大林組生産技術部ダム技術部副部長は「ロボットであれば点検作業を連続的にできる」と説明。最新技術の活用で、ダム再生を支えていく。

日刊工業新聞第二産業部・村山茂樹


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【2017/07/25 23:36】 | 政策
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              嶋津 暉之

国土交通省がダム再生ビジョンを策定しました。
ダム再生ビジョン検討会を今年1月、3月、5月と、3回開いてまとめたものです。

3回の検討会の配布資料と議事要旨はこちらをご覧ください。
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/dam_saisei_vision/index.html

全国で有害無益なダムの建設がいまだに強行されていますが、新規のダム建設が必要性の喪失で次第に困難になってきたことは事実です。

このような状況で、河川官僚はダム建設部門を維持するための画策を行っています。
一つはダム再生ビジョンの策定、一つはダム再開発を国が代行できるようにしたことです。
後者についてはそのための河川法と水資源機構法の改正が先月、行われました。

ダム再生ビジョンは、既設ダムを有効活用したダム再生の取組みをより一層推進していくため、それに必要な方策を示すものです。

ダム再生の具体的内な内容として次のようなものが示されています。

〇 ダムの長寿命化
〇 貯水容量の増大
〇 放流能力の増強
〇 水力発電の積極的導入

ダムの長寿命化などを理由にして既設ダムの改造を進めていくというものです。
今後、ダム再生ビジョンに基づき、全国で既設ダムの改造が次々と進められていく可能性があります。

国土交通省

「ダム再生ビジョン」の策定
頻発する洪水・渇水の被害軽減や再生可能エネルギー導入に向けた既設ダムの有効活用~

http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000029.html

この度、既設ダムを有効活用する「ダム再生」を加速する方策を示す「ダム再生ビジョン」を策定しましたのでお知らせします。
本ビジョンでは、ダムの長寿命化、施設能力の最大発揮のための柔軟で信頼性のある運用、高機能化のための施設改良などの既設ダムの有効活用を加速するための方策をとりまとめております。

近年における厳しい財政状況等の社会情勢、洪水・渇水被害の頻発や気候変動の影響の顕在化、既設ダムの有効活用の様々な特長※1やこれまでの事例の積み重ねによる知見の蓄積、これを支える各種技術の進展※2等を踏まえれば、ソフト・ハード対策の両面から既設ダムを有効活用することの重要性はますます高まっています。

 国土交通省では社会全体の生産性向上につながるストック効果の高い社会資本の整備・活用等を加速することとして、
「生産性革命本部」を設置しており、「生産性革命プロジェクト」の一つとして、既設ダムを有効活用する「ダム再生」を
推進しているところですが、この度、有識者での検討会等を経て、ダム再生を加速する方策を示す「ダム再生ビジョン」を
新たにとりまとめました。

今後、本ビジョンで示した方策を具現化し、頻発する洪水・渇水の被害軽減や、再生可能エネルギーの導入などに積極的に取り組んで参ります。

 ※1既設ダムを有効活用する「ダム再生」の特長
   ・利水容量を洪水調節に活用するなど運用改善だけで新たな効果を発揮
   ・ダム堤体のわずかな「かさ上げ」で貯水容量を大きく増加 など
 ※2「ダム再生」を支える各種技術の進展
   ・レーダ雨量計の高性能化によるダムの運用改善
   ・ダム貯水池における高い水圧がかかる大水深での大口径の堤体削孔 など

 【資料】
  1. ダム再生ビジョン 概要
  2. ダム再生ビジョン 本文

    「ダム再生ビジョン検討会」の資料等は、下記URLよりご覧ください。
    http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/dam_saisei_vision/index.html

※添付資料はリンク先をご覧ください。


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【2017/06/30 07:08】 | 政策
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現在荒川に洪水調節池を三つ造る計画があります。
国交省は、八ッ場ダムをはじめとする不要なダム・スーパー堤防・荒川調節池などを推進し、必要な堤防強化をおざなりにしてきました。その結果、鬼怒川では上流に大きなダムが四つあるにもかかわらず堤防が決壊し、大災害を招きました。
越水しても破堤しない耐越水堤防工法は、工期も短く安価ですが、国交省はダムが要らなくなるとして採用を止めてしまいました。
河川行政を安価で効果的な方向に転換しましょう。

*洪水調節池とは
調節池とは


*計画の概要

埼玉と東京を流れる一級河川の荒川では1973年に旧建設省により、荒川の洪水・渇水対策として中流部に5つの調節池群の構想がつくられ、そのうち、1999年3月に荒川第一調節池が完成しました。

残りの調節池は机上のプランだと思われていたのですが、2016年3月策定の荒川水系河川整備計画で、第一調節池の上流に治水専用の荒川第二、第三、第四調節池をつくることが決まりました。

荒川第二~第四調節池の予定地は、下流側はさいたま市桜区、志木市から、上流側は桶川市、川島町まで及ぶ広大なものです。
池内面積は第二、第三、第四節池の合計で約14㎢にもなり、既設の第一調節池の2倍以上になります。
洪水を貯めるために長い堤防を築き、池内の掘削を行います。
荒川調節池・縦長地図


*荒川第二、第三、第四調節池の必要性への疑問

① 第二~第四調節池は、戦後すぐのカスリーン台風洪水の再来に備えて必要とされていますが、
  当時と比べて森林の環境整備が格段に進み、山の保水力が高まっています。
  当時のように大きな洪水にはならなくなっています。

② 第二~第四調節池の必要性は机上の洪水流量計算から求められたもので、荒川の現状を反映して
  いません。

③ 荒川中流域の広大な河川敷には1954年に横堤(左岸14箇所、右岸12箇所)がつくられ、遊水機能
  が強化されていますので、洪水調節はこれで十分です。
横堤

④ 2004年完成の荒川第一調節池で、今まで越流があったのは、
  2007年9月洪水だけで、その越流量はわずか3万㎥、
  調節容量3,900万㎥の1/1000で、余裕が十分にありました。
  これ以上の調節池の建設は不要です。

⑤ 第二~第四調節池の建設に約2,500億円という巨額な予算を
  投じるよりも、河川堤防の強化、越水しても破堤しない堤防
  の整備を推進する方が、はるかに有効な治水対策になります。


荒川第一調節池と彩湖の仕組み

荒川第一調節池と彩湖


*予定地の豊かな自然

日本有数の広大な高水敷には、かつての荒川の蛇行形状と自然環境をとどめる旧流路や周辺の湿地、ハンノキ等の河畔林が見られ、多種多様な動植物の生息・生育環境を形成しています。
旧流路の水域には、ヒシ等の水生植物、トウキョウダルマガエル等の両生類や、メダカ等の魚類が見られ、湿地のヨシ群落と周辺のオギ群落は、オオヨシキリ等の鳥類やカヤネズミ等の哺乳類の生息場として利用されています。
ハンノキ等の河畔林には、ミドリシジミ等の昆虫類も生息しています。
(「荒川上流河川維持管理計画」より)


* 事業費と負担内訳
2017-04-17_05h33_29.jpg


*荒川調節池の諸データ
2017-04-17_05h33_29.jpg



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【2017/06/17 05:16】 | 政策
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          嶋津 暉之

5月17日に国土交通省で「第3回 ダム再生ビジョン検討会」が開かれました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000025.html

その配布資料が国土交通省のHPに掲載されましす。
第3回 ダム再生ビジョン検討会 配布資料一覧 2017年5月17日(水)
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/dam_saisei_vision/dai03kai/index.html

ダムの長寿命化などを理由にして既設ダムの改造を進めていくというものです。
新しいダムの建設が困難になってきたので、ダム建設部門の仕事を維持するためにダム再生ビジョンをつくろうということではないでしょうか。

この検討会についての記事もお送りします。

◆国交省、防災強化へダム再生ビジョン 既存を有効活用、改修を効果的に
(リスク対策.com2017年5月18日)/記者 斯波 祐介
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2859

治水力向上へダムの改修や運用を効果的に行う

国土交通省は17日、「ダム再生ビジョン検討会」の第3回会合を開催。「ダム再生ビジョン」の案を取りまとめた。近く正式決定する。既存ダムの最大限有効活用を進め、治水機能の向上に向け下流河道とダム改良を一体で行うといった施策を推進する。

ビジョン案ではダムの洪水防止効果に触れ、厳しい財政状況や生産人口減少の中、既存ダムの最大限活用をうたった。災害防止の観点では、ダム下流河道に放水できるだけの流下能力の不足のほか、気候変動の影響で流入量が増加し特別な放水操作を緊急で行うことが増加。操作を行う職員の負担軽減が課題に挙げられた。

治水能力の向上に向け、ダムの放流設備増強の際に下流河道の改修を一体で推進。また、既存ダムのゲート増設や運用の改善を行う。ダム建設の際には気候変動への対応をしやすいよう、将来の改修を見込んで柔軟性を持った構造の研究も進めていく。


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【2017/05/22 01:38】 | 政策
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        嶋津 暉之

今日(5月12日)、国土交通省の国土審議会が国土交通大臣宛に、「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」の答申を出しました。

「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」(答申)
~需要主導型の水資源開発からリスク管理型の水の安定供給へ~


http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000087.html 

この答申は八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、設楽ダム、川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発などといった、現在進められているダム等事業を利水面で位置づけることを企図したものです。

水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において利根川、豊川、木曽川、淀川、筑後川水系等の水需給計画である水資源開発基本計画(フルプラン)はその役割が終わっているのですから、国土交通省は根拠法である水資源開発促進法とともに、フルプランを廃止し、新規のダム等事業は利水面の必要性がなくなったことを明言すべきです。

しかし、国土交通省は上記のダム等事業を何としても進めるべく、(水需要の面では必要性を言えなくなったので)「リスク管理型の水の安定供給」が必要だという屁理屈をつけて、上記のダム等事業を位置づけるフルプランを策定するため、今回の答申をつくりました。
この答申に沿ってこれからフルプランの変更が行われることになっています。

この答申の関係資料がこちらに掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000074.html 

この答申案に対して2月22日から3月7日までパブリックコメントが行われました。

提出された意見が下記に掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001184469.pdf 

答申案に対して厳しい意見が多く出されていますので、ご覧ください。

【2017/05/14 02:21】 | 政策
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