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「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
       嶋津 暉之

多摩川中下流部は水質が大きく改善され、アユもすめる川に変わりました。

◆生活排水も「水源」 多摩川はこうして復活した
(日経ナショナル ジオグラフィック社2016/10/2)
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO07626300W6A920C1000000?channel=DF260120166531

春、体長50センチほどのマルタウグイが産卵場所を探して、多摩川の岸近くを群れて泳ぐ。この魚も一度は多摩川から姿を消したが、水質改善と漁業者たちの努力で復活した(写真:津留崎健/National Geographic)

 多摩川の源は、山梨県と埼玉県の県境にそびえる笠取山の山頂直下、水干(みずひ)と呼ばれる場所だとされている。私もそこを訪ねて、「水干 多摩川の源頭 東京湾まで138km」と書かれた案内板を目にした。岩の間から滴り落ちた水が沢となり、一之瀬川、丹波川と名前を変え、小河内ダムから下流は多摩川として流れ下る。

 しかし、その水の多くが東京湾までたどり着くことはない。水干から84キロほど下流にある羽村取水堰(せき)で、8割ほどが抜き取られるからだ。

■中・下流域では生活排水が“水源”

 それでは、堰から下流の水はどこから来るのか。秋川や浅川といった支流の水や川底から湧き出す伏流水もあるが、実は、中・下流域の水のおよそ半分が下水の処理水だ。この区間には都の6施設のほか、三鷹市や川崎市などが管理する四つの下水処理施設があり、合わせて年間3億7000万立方メートル余りの水が多摩川に流されている。これは、羽村取水堰で抜き取られる量よりも多い。
 つまり、家庭の台所や風呂、洗濯、トイレなどで使われた水が多摩川の源なのだ。この川はそれだけ、人間の影響を受けやすい。

 半世紀ほど前、この川は「死の川」と呼ばれていた。水質が著しく悪化し、アユをはじめ、さまざまな生き物が姿を消したのだ。調布取水堰の周辺は当時、汚れた多摩川の象徴だった。白い泡が川面を覆い、風が吹くと異臭とともに、付近の道路や住宅へ飛ばされていった。

 「子どもの頃は、越中ふんどし一丁で家の前の石垣から川に飛び込んだものです。魚を捕ることぐらいしか、遊びなんてなかったですから」。そう語るのは、東京都福生市の高崎勇作さんだ。アユやカワマス、ウナギ、ウグイ……生命あふれる多摩川を、高崎さんは覚えている。

 高崎さんが川の異変に気づいたのは、東京オリンピックが開かれた昭和39(1964)年のこと。近所の魚屋で買ってきた多摩川産のウグイを焼いていると、異臭が漂い始めた。何か変だと思いながらも、焼けた魚を恐る恐る口に運ぶ。まずい。思わず吐き出した。「あれ以来、多摩川の魚を食べたことはありません」。川を眺めながら、高崎さんは言った。河口から50キロほど上流の川岸に生まれ育った高崎さんは、82歳になる今も川のすぐそばで暮らしている。「私の一生は多摩川の思い出ばかりです」

■アユのすめる川に

 45年前に都が多摩地域で最初に運用を始めた南多摩水再生センターを皮切りに、約20年かけて多摩地域に6カ所の下水処理施設が整備された。1965年に6%だった同地域の下水道普及率は現在99%を超えている。

 水の汚れ具合を示す指標に「生物化学的酸素要求量」(BOD)値がある。6施設の下流にある多摩川原橋で観測されたBOD値の変化を見ると、1971年に6.6mg/Lだった値が、およそ10年間は増加傾向にあったものの、その後、減少に転じ、2003年からは3mg/L以下で推移している。数字からも、多摩川がアユのすめる川によみがえったことがわかる。

 都は現在、活性汚泥法に加え、赤潮などの原因となる窒素やリンを取り除いたり、より微細な汚れを除去したりできる高度処理の導入を進めている。「技術的には、処理水をもっときれいにすることはできます」と下水道局の宮本彰彦さんは話す。ただ、コストがかかり、その分、下水道の維持管理費が高くなるという。

(文=大塚茂夫 ナショナル ジオグラフィック日本版編集長)
[ナショナル ジオグラフィック 2016年10月号の記事を再構成]


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【2016/10/03 02:39】 | Webの記事
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◇利根川は本当に「渇水」しているのか?
(ハーバービジネスオンライン 2016年07月01日)
http://hbol.jp/99662

 国土交通省と1都5県(千葉、茨城、栃木、群馬、埼玉)は6月16日、利根川水系ダムからの10%の取水制限を始めたと発表した。そして、貯水率が11%となって水位の下がった矢木沢ダム(群馬県)を公開し、テレビや新聞は一斉に「利根川渇水」を報道している。

国交省による「水収支」の計算が間違っている!?

八ッ場ダムサイトで進む掘削工事(6月11日、写真提供/八ッ場あしたの会)
 しかし、そんな報道を横目に「(渇水報道は)ダムの必要性をアピールするためのもの」と見ているのが、高度成長期に東京都職員として工場の節水対策に成果を上げ、退職後も住民訴訟で「八ッ場ダムは不要だ」と証言を行ってきた嶋津暉之氏だ。

「利根川水系ダムは国土交通省が決めたルールで放流が行われていますが、そのルールそのものが過剰な放流を促しています」(嶋津氏)

 上流で雨雪を集めて形づくられた川は、農業用水や都市用水のための取水と、支流からの流入を繰り返して、最終的には海へと流れ出る。利根川水系では、国交省がその「水収支」を計算し、上流の8ダムからの放流量を決める。例えば、4~9月は中流の栗橋地点(埼玉県)で毎秒120トンが流れるようにする。この120トンは、鬼怒川など支流からの流入量も計算に入れ、最下流の利根川河口堰(千葉県)で毎秒30トンが流れるように、逆算で定めたものだ。

 しかし、嶋津氏が利根川水系の8ダムの貯水量が急減した5月の河口堰放流量を調べてみると、毎秒平均80トン程度が海へ流れ出ていたという。

「50トンも余分に流れているのは、つまり逆算が間違っているということ。これは鬼怒川など支川からの流入量を過小評価し、農業用水や都市用水の取水量が過大評価されているためだと思われます」(嶋津氏)
ダム放流が5月半ばから増えたのは「農業用水のため」?

 これに対し、国交省関東地方整備局河川環境課の斎藤充則・建設専門官は「そんなことはありません」と反論する。

「ただ単に、河口から30トンが流れ出ればいいというわけではありません。ダムから下流までまんべんなく行き渡らせようとして、結果的に80トンになっているということです。その過程が要らないというわけではない。今年は冬期の雪が少なかったので一生懸命ダムの水を貯めて、4月20日に上流の5ダムを満水にしました。ダムの放流量が5月半ばから増えたのは農業用水のためなんです。毎日、(農水省)関東農政局と連絡し合って、農業用水の一つひとつの堰の開け閉めを決めています」

 しかし、関東農政局の農村振興課水理計画官に聞くと「水を多く使う田んぼの『代掻き』が利根川水系の地域で始まるのは、早ければ千葉県で4月中旬。一番多いのが、4月末から始まるゴールデンウィーク。遅ければ麦との二毛作をする群馬県で7月」だという。

 ということは、5月半ばからの急減が「農業用水のため」という国交省の説明は、必ずしも当てはまらないのではないか? さらに「7月からの洪水調節期に備えてダムの水位を下げ始めるのは、通常6月後半から」(嶋津氏)なのだという。

利根川が渇水でも東京都にはバックアップのダムがある

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=99678

 必要以上の「過剰放流」が疑われる背景には別の理由もある。東京都が公開している利根川水系と多摩川水系の年間平均貯水量を比較してみると、利根川水系では貯水率が38%(6月28日現在、平年比で55%)だが、多摩川では80%(6月17日現在、平年比で103%)を維持し、多摩川水系の貯水量にはなんの心配もない。

 実は「利根川は渇水、多摩川はたっぷり」という傾向はいつものこと。東京都は多摩川に確保した小河内(おごうち)ダムの水を温存し、先に利根川の水を使っているのだ。

 そのことは「小河内ダムも貯める一辺倒ではなく、使うときは使っているが、基本的には先に利根川水系の水を使う」と、東京都水道局も認めている。その「使うとき」とは、利根川水系の渇水や水質事故が生じた時だけのことで、いわば、利根川水系8ダムのバックアップとなる存在が小河内ダムなのだ。

 その利水容量は、たった一つで洪水期(梅雨や台風の時期など降水量が多く治水容量が増える時期)でも1億7987万立方メートあり、東京都の独占水源となっている。

 一方、利根川水系8ダムの利水容量は全部足しても3億4349万立方メートル(洪水期)で、これを1都5県で分け合う。だから「利根川水系渇水対策連絡協議会」が設置され東京都もメンバーに名を連ねてはいるが、実は小河内ダムがある東京都だけは「渇水」などどこ吹く風だというのが実情だ。

 そんな中、さらなる利水容量を確保するために4600億円の税金を使って本体工事にかかっている八ッ場ダム(群馬県)の利水容量は、わずか2500万立方メートル(洪水期)。また、水資源機構が1800億円で栃木県に計画中の南摩ダム(現在ダム検証中)の利水容量も4500万立方メートル(洪水期)にすぎない。二つを足しても小河内ダム一つの4割にも満たない。小河内ダムを東京都がより有効活用すれば、いかようにも融通が可能だといえる。

「渇水」がアピールされる一方で、川の水が海に余分に流されている。そして、税金もムダに流されているのだ。

<取材・文/まさのあつこ>


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【2016/07/07 02:38】 | Webの記事
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        嶋津 暉之

ダム問題に関係する記事ですので、お知らせします。

◆自民党が野中、綿貫氏復党提案 建設業界の票と金が狙いか
(NEWSポストセブン / 2016年6月16日)
http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_421007/

参院選に突入する直前の5月31日、自民党役員会で二階俊博・総務会長が突然、2011年に自民を離党した野中広務・元官房長官と、2005年の郵政民営化に反対し除名された綿貫民輔・元衆院議長の復党を提案した。

野中氏は「全国土地改良事業団体連合会(全土連)」の名誉会長。農地の大規模化や用水路の整備といった農業土木事業の総元締めの団体だが、実態は、自民党長期政権を支えた「最強の集票マシン」でもある。

一方の綿貫氏は「全国治水砂防協会」会長だ。田中角栄・元首相が長く会長を務め、「田中金脈の源泉」「ゼネコンの司令塔」といわれたダム建設推進団体である。ダムは自民党にとって「カネのなる木」だ。

自民党は前回参院選(2013年)の前、「国土強靱化」を誘い文句に日本建設業連合会に対して4億7100万円の献金を要請する文書を送った。自民党の資金管理団体「国民政治協会」の政治資金収支報告書によると、その年、大手ゼネコン43社は自民党本部の献金を倍増(計1億2603万円)させていた。目標には届いていないが、この金額には各派閥が選挙前に開いた盛大な資金集めパーティの収入や建設業界から各議員の政党支部などへの献金分は含まれていない。

安倍政権は建設業界への約束通り、防災や水害対策(治水)を名目に全国で巨大ダム建設を推進した。

ざっとあげても、北海道旭川の「サンルダム」(約530億円)、高知の「横瀬川ダム」(約400億円)、安倍首相の地元・山口県の「平瀬ダム」(約740億円)、熊本地震で被害を受けた南阿蘇の「立野ダム」(約917億円)の工事が進められている。

ダム建設は山を切り開き、工事用の取り付け道路を建設するところから始まり、大手から中小・零細まで建設業界を潤す。
そのキーマンが綿貫氏だ。「国土強靱化」の旗振り役の二階氏が参院選前に2人を復党させようというのは、ダムと農業土木を押さえれば全国約50万社の建設業界の票とカネを取り込むことができるからに他ならない。

※週刊ポスト2016年6月24日号

【2016/06/17 00:56】 | Webの記事
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              嶋津 暉之

原発、ダムの問題について触れたコラムです。
「こと原発や大規模ダムに関しては、そういう工夫や改善がいっこうになされない。」
「震度7の揺れが連続した熊本の地震で水力発電用のダムが破壊されても、
 その詳細な説明は伝えていない。」
はそのとおりだと思います。

◆「水道の蛇口と原発」
(紀伊民放2016年5月17日)
http://www.agara.co.jp/column/mizu/?i=314592


朝、洗面所で顔を洗うたびに考えることがある。水道の蛇口のことである。
いまの住まいは古く、蛇口はレバーを上から下に押し下げると水が出る。
ところが、この20年以内に建てられた住宅や事務所では、下から上に押し上げて水を出す方式になっている。どうしてか。

▼きっかけは阪神大震災。
21年前、あの地震で被災した一戸建て住宅やマンションなどで、住民の不在時、何かの弾みで水道の蛇口に物が当たり、水が出っ放しになった事例が少なくなかった。
時にはその水が部屋を水浸しにすることもあった。

▼そうした被害を防ごうと、震災以降は製造する蛇口を下から上に押し上げる方式に改良したそうだ。
困ったことがあれば、即座に対応策を考える。
より便利に安全に、ついでに省エネまでも実現する。
そんな日本人の機知と工夫を象徴する例といわれている。

▼ところが、こと原発や大規模ダムに関しては、そういう工夫や改善がいっこうになされない。
福島原発で、5年後のいまも収束できない大事故が起きても「エネルギーが必要」という理由で、休止中の原発を再稼働させる。
震度7の揺れが連続した熊本の地震で水力発電用のダムが破壊されても、その詳細な説明は伝えていない。

▼この落差はどこに由来するのか。
水道の蛇口では即座に安全性が確保できるのに、原発やダムではそれがままならないのはどうしてか。
毎朝、顔を洗い、歯を磨くたびに考えている。(石)

【2016/05/19 02:13】 | Webの記事
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4/30(土) 緊急!市民集会 「思川開発事業と栃木市の水道水」に参加されたまさのあつこさんが、twitterでレポートを連投されています。

◇緊急集会「マズくて高い水はゴメンだ!〜ダムって本当に必要!?」
http://togetter.com/li/969099


【2016/05/01 02:18】 | Webの記事
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