「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
              嶋津 暉之

鬼怒川水害のその後について毎日新聞茨城版でも記事を連載しています。
そのうち、被災地の現状を伝える記事3と4をお送りします。

◆川と生きる
関東・東北豪雨1年/3 住宅再建、足りぬ支援 他自治体で上乗せ例も /茨城

(毎日新聞茨城版2016年9月15日)
http://mainichi.jp/articles/20160915/ddl/k08/040/025000c

 鬼怒川の堤防が決壊して住宅が流失し、更地が広がる常総市三坂町の上三坂地区。この地に両親、妻(54)、長男(21)と5人で暮らしていた地方公務員の串田好久さん(56)は今月4日、流失世帯では初めて自宅を再建するために地鎮祭を行った。工事は今月末から。「家を失った両親の喪失感は大きい。過ごしてきた土地で住ませてやりたい」

 悩みは数千万円かかる建設費用だった。受けられた公的支援などは、国の被災者生活再建支援制度による支援金や義援金などを合わせ400万円余り。だが、家財を失って家電や仕事用のスーツも買う必要があり、住宅資金にできたのは二百数十万円。大半は住宅ローンを充て、返済は定年後の80歳近くまで続く。「本当に苦しい」

 水害から1年を過ぎても住まいの問題は解決していない。全壊・大規模半壊世帯などが対象の国の被災者生活再建支援金の支給状況(8月26日現在)からも、それは浮かび上がる。被害時から受け取れる「基礎支援金」(複数人の世帯で50万または100万円)は1568世帯に支給されたが、再建方法に応じ支給される「加算支援金」(同50万?200万円)を受け取ったのはこのうち1399世帯にとどまっている。

 再建した市民も経済的負担に苦しむ。同市橋本町の1人で暮らす家が大規模半壊した小玉きよさん(84)は支援金などを受け取っても修繕資金は足らず、備えのための貯金から100万円以上を下ろした。「こんなふうに消えてしまうなんて」と小玉さん。「お守り」と思い年3000円で掛けていた保険から100万円が支払われたのが救いだった。

     □

 今回の水害で、国の制度では対象外の半壊世帯に、県と市は折半して支援金を支給したが、全壊など被害の大きな世帯への給付上積みはなかった。神達岳志市長はさらに義援金を呼びかける考えだが、確実に集まる保証はなく、それを当てにするわけにはいかない。

 再建で苦労している串田さんは「家の再建は個人の責任になっており、行政は援助に厳しい」と感じた。2007年に被災者生活再建支援法が改正された際の付帯決議は、住宅再建は「地域社会の迅速な復興のためにも極めて重要」と明記し、個人の問題のみではないとしている。上三坂地区の流失世帯の再建を後押しし、コミュニティーを復活させることは行政の責務ともいえる。串田さんは「みんな戻ってきて初めて、復興したと喜べる」と話す。

 「行政はさらに援助を」という串田さんの願いは過大ではない。自治体が独自に再建支援を上乗せした事例はある。東日本大震災では、岩手県が制度を創設、県内でも牛久市が「引き続き住んでもらうために」と最大100万円を上乗せする制度を始めた。

 県や市が提供する無償の公営住宅などには今も79世帯・197人(8月26日現在)が暮らしている。入居期限はおおむねあと1年。状況は待ったなしだ。【宮田哲】

 ■国または県の被災者生活再建支援制度

    基礎支援金       加算支援金       計

国   全壊    100万円 建設・購入 200万円 300万円

                補修    100万円 200万円

                賃借     50万円 150万円

    大規模半壊  50万円 建設・購入 200万円 250万円

                補修    100万円 150万円

                賃借     50万円 100万円

 ※半壊・大規模半壊でも解体した場合は全壊と同等の支援


県独自 半壊     25万円              25万円


◆関東・東北豪雨1年/4 水害引き金、廃業続々 苦戦する駅前商店街 /茨城
(毎日新聞茨城版2016年9月16日)
http://mainichi.jp/articles/20160916/ddl/k08/040/090000c

 「この町には人が来ないんです」。関東鉄道常総線水海道駅前でおもちゃと人形を扱う「田内人形店」。店主の田内護さん(58)がつぶやいた。水害の被害を受けた後、商売を再開したが売り上げは上向かない。平日の客は20?30人。「30年前なら店前に子供たちの自転車がずらりと並んでいた日もあったのに」

 1年前。押し寄せた水は倉庫にも入った。そこには、商品のおもちゃが入った段ボール箱が積まれていた。一番下の箱が水を吸ってグニャグニャになると、箱の山はひっくり返り、水に落ちた。「だめだ」とぼうぜんとした。廃棄したおもちゃはトラック約10台、600万円分に上った。

 商品棚に空きが目立つ中で約10日後には開店。借金して仕入れし直した。だが水害後は、ひな人形などの「お節句物」は堅調だったものの、おもちゃの売り上げは前年より5%減。ここ10年は毎年その程度落ちており今年も変わらない。

 おもちゃの小売り自体がネット販売に押されている状況に加え、集客力のない町での商いに限界を感じている。だが、3代続く人形の商いは商品構成に自信がある。おもちゃも人気商品をそろえている。「まちに人が来れば、商品を見てくれる人もいるのでは」
      □

 豪雨では常総市の商工業も打撃を受けた。被害額は約184億円。市商工会は昨年度、約40社が水害による廃業を理由に脱退したと推定する。中でも多かったのが商業だった。

 中川弘美事務局長は「経営者が高齢化して後継者もいない状況で、出店を加速させるコンビニの影響も受けていた。借金をして再開しても展望がないと考えた経営者が多いのでは」とみる。じわじわと衰退する中、水害が「引き金」となった。

 特に深刻なのが、同市の中心市街地である水海道駅前だ。市の調査では駅前の商店街の287店中、水害前の昨年2月の空き店舗は69店だったが、水害後の今年5月には84店に増加した。

 豪雨で、県は被災した中小企業に最大50万円を支給する「事業継続支援補助金」を創設。1000万円までは利子を3年間全額補助する緊急対策融資制度も設けた。商業の復旧に一定の役割を果たしたといい、田内さんも利用している。だが、水海道駅前などは、各商店が水害前の状態に戻るだけでは衰退の歯車は止まらない。町に人を呼び戻す腰をすえた復興策に、行政や地元住民が取り組む必要がある。

 田内さんは「行政は発信力を高めて、水海道の魅力をPRしてもらいたい」と話す。神達岳志市長は今夏の市長選で「都心に近く、おいしいもの、楽しいものがあるから、常総市に行こうと思われるまちにしなければならない」というビジョンを示した。人が集まる方策として、常総線とTX(つくばエクスプレス)の相互乗り入れや、空き家活用、民泊の推進などを掲げており、実現に向けた手腕が問われる。【宮田哲】



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 今回の水害で、国の制度では対象外の半壊世帯に、県と市は折半して支援金を支給したが、全壊など被害の大きな世帯への給付上積みはなかった。神達岳志市長はさらに義援金を呼びかける考えだが、確実に集まる保証はなく、それを当てにするわけにはいかない。

 再建で苦労している串田さんは「家の再建は個人の責任になっており、行政は援助に厳しい」と感じた。2007年に被災者生活再建支援法が改正された際の付帯決議は、住宅再建は「地域社会の迅速な復興のためにも極めて重要」と明記し、個人の問題のみではないとしている。上三坂地区の流失世帯の再建を後押しし、コミュニティーを復活させることは行政の責務ともいえる。串田さんは「みんな戻ってきて初めて、復興したと喜べる」と話す。

 「行政はさらに援助を」という串田さんの願いは過大ではない。自治体が独自に再建支援を上乗せした事例はある。東日本大震災では、岩手県が制度を創設、県内でも牛久市が「引き続き住んでもらうために」と最大100万円を上乗せする制度を始めた。

 県や市が提供する無償の公営住宅などには今も79世帯・197人(8月26日現在)が暮らしている。入居期限はおおむねあと1年。状況は待ったなしだ。【宮田哲】

 ■国または県の被災者生活再建支援制度

    基礎支援金       加算支援金       計

国   全壊    100万円 建設・購入 200万円 300万円

                補修    100万円 200万円

                賃借     50万円 150万円

    大規模半壊  50万円 建設・購入 200万円 250万円

                補修    100万円 150万円

                賃借     50万円 100万円

 ※半壊・大規模半壊でも解体した場合は全壊と同等の支援


県独自 半壊     25万円              25万円


◆関東・東北豪雨1年/4 水害引き金、廃業続々 苦戦する駅前商店街 /茨城
(毎日新聞茨城版2016年9月16日)
http://mainichi.jp/articles/20160916/ddl/k08/040/090000c

 「この町には人が来ないんです」。関東鉄道常総線水海道駅前でおもちゃと人形を扱う「田内人形店」。店主の田内護さん(58)がつぶやいた。水害の被害を受けた後、商売を再開したが売り上げは上向かない。平日の客は20?30人。「30年前なら店前に子供たちの自転車がずらりと並んでいた日もあったのに」

 1年前。押し寄せた水は倉庫にも入った。そこには、商品のおもちゃが入った段ボール箱が積まれていた。一番下の箱が水を吸ってグニャグニャになると、箱の山はひっくり返り、水に落ちた。「だめだ」とぼうぜんとした。廃棄したおもちゃはトラック約10台、600万円分に上った。

 商品棚に空きが目立つ中で約10日後には開店。借金して仕入れし直した。だが水害後は、ひな人形などの「お節句物」は堅調だったものの、おもちゃの売り上げは前年より5%減。ここ10年は毎年その程度落ちており今年も変わらない。

 おもちゃの小売り自体がネット販売に押されている状況に加え、集客力のない町での商いに限界を感じている。だが、3代続く人形の商いは商品構成に自信がある。おもちゃも人気商品をそろえている。「まちに人が来れば、商品を見てくれる人もいるのでは」
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 豪雨では常総市の商工業も打撃を受けた。被害額は約184億円。市商工会は昨年度、約40社が水害による廃業を理由に脱退したと推定する。中でも多かったのが商業だった。

 中川弘美事務局長は「経営者が高齢化して後継者もいない状況で、出店を加速させるコンビニの影響も受けていた。借金をして再開しても展望がないと考えた経営者が多いのでは」とみる。じわじわと衰退する中、水害が「引き金」となった。

 特に深刻なのが、同市の中心市街地である水海道駅前だ。市の調査では駅前の商店街の287店中、水害前の昨年2月の空き店舗は69店だったが、水害後の今年5月には84店に増加した。

 豪雨で、県は被災した中小企業に最大50万円を支給する「事業継続支援補助金」を創設。1000万円までは利子を3年間全額補助する緊急対策融資制度も設けた。商業の復旧に一定の役割を果たしたといい、田内さんも利用している。だが、水海道駅前などは、各商店が水害前の状態に戻るだけでは衰退の歯車は止まらない。町に人を呼び戻す腰をすえた復興策に、行政や地元住民が取り組む必要がある。

 田内さんは「行政は発信力を高めて、水海道の魅力をPRしてもらいたい」と話す。神達岳志市長は今夏の市長選で「都心に近く、おいしいもの、楽しいものがあるから、常総市に行こうと思われるまちにしなければならない」というビジョンを示した。人が集まる方策として、常総線とTX(つくばエクスプレス)の相互乗り入れや、空き家活用、民泊の推進などを掲げており、実現に向けた手腕が問われる。【宮田哲】


【2016/09/20 01:20】 | 新聞記事から
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