「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
◆常総水害1年、遠い復興 いまも200人避難・自宅再建ゼロ
(朝日新聞2016年9月11日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12554043.html?rm=150

「関東・東北豪雨」により、茨城県常総市の鬼怒川で堤防が決壊してから、10日で1年たった。国の堤防改修工事は着々と進むが、いまも約200人が避難生活を送り、決壊現場で自宅を失った10戸はまだ1戸も再建されていない。住宅の取り壊しや商店の閉鎖も続き、復興への道は遠い。

「この歳では銀行はなかなか金を貸してくれない」

堤防が決壊した常総市上三坂地区に8月下旬、自宅を失った10家族の多くが集まり、7月に初当選したばかりの神達岳志市長と話し合った。茨城県つくば市の県営アパートで避難生活を送る羽鳥明夫さん(63)は、他の自宅流失家族同様に再建資金に苦しむ。
羽鳥さんが受けられる公的支援は、被災者生活再建支援制度による支援金100万円と、県や市の義援金など計約200万円。自宅が再建できればあと200万円追加されるが、1千万円以上かかる資金には到底足りない。神達市長に流失世帯への独自支援を求めたが、市は特別扱いに慎重だ。

市によると2人が死亡し、住宅被害は全戸の約4割の8300戸余に及んだ。水害後に900人ほどが市外へ転出。市商工会によると、製造業や小売業など約40会員の事業者が廃業した。

市の復興策への取り組みは鈍い。県や市が提供する公的住宅の期限は2年間だが、被災者が多いことから1世帯あたりの義援金は約100万~50万円しかない。商工業者への支援も最大で50万円程度にとどまる。

■学校・町内会、進む自主防災

水害時の常総市の対応は後手に回った。国土交通省から市に避難指示を出すよう促す連絡があったが、上三坂地区に避難指示が出たのは堤防が決壊した後だった。水害後も防災体制の構築は遅れている。

行政の混乱が続くなか、学校現場が立ち上がった。「防災の日」の1日、常総市内の全19小中学校で水害後初の大規模な避難訓練が開かれ、各校がそれぞれ独自の避難方法を考えた。市校長会の山中久司会長(60)は「記憶が薄れないうちに、子どもたちに水害の教訓を伝えなければ」。

鬼怒川の溢水(いっすい)現場に近い市立玉小学校では、6年生が、隣接する玉幼稚園の園児を背負って避難する訓練をした。幕田久子園長は「少しの浸水でも園児は怖くて動けなくなると思う。小学生が付き添ってくれるのは心強い」と話した。

水害時、独自に防災情報をショートメールで伝え、住民を早期避難させた町内会もあった。根新田町内会はこのシステムをもとに、自主防災組織の立ち上げを準備している。神達市長も市内各地区に自主防災組織をつくる必要性を強調している。

(三嶋伸一、酒本友紀子)

■国は減災へ対策

鬼怒川の堤防決壊は、治水のあり方を大きく転換させた。国土交通省はハードで抑え込む従来の治水から、記録的な大雨による川の氾濫(はんらん)は起こりうるという前提で対策を進める。

まず取り組んだのが堤防の簡易補強だ。国は管理する109水系で20~30年の計画を立て、堤防整備を進めている。ただ、鬼怒川のように氾濫リスクが高くても、かさ上げなど本格的な工事が遅れている国管理の堤防は全国で約4500キロ、全体の約3割を占める。そこで水があふれても堤防が決壊するまでの時間を稼ぎ、避難する時間を確保するため、堤防の上部をアスファルトで固めたり、外側にブロックを埋め込んだりして補強する。約2千億円を費やし2021年3月までに工事を終える。

また、国交省は、避難指示の遅れで多くの住民が浸水地域に取り残されたことを教訓に、109水系周辺の730市区町村を対象に研修会も開催。自治体がとるべき対応を時系列でまとめた行動計画(タイムライン)作りも進め、589市区町村で完成した。
(峯俊一平)


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羽鳥さんが受けられる公的支援は、被災者生活再建支援制度による支援金100万円と、県や市の義援金など計約200万円。自宅が再建できればあと200万円追加されるが、1千万円以上かかる資金には到底足りない。神達市長に流失世帯への独自支援を求めたが、市は特別扱いに慎重だ。

市によると2人が死亡し、住宅被害は全戸の約4割の8300戸余に及んだ。水害後に900人ほどが市外へ転出。市商工会によると、製造業や小売業など約40会員の事業者が廃業した。

市の復興策への取り組みは鈍い。県や市が提供する公的住宅の期限は2年間だが、被災者が多いことから1世帯あたりの義援金は約100万~50万円しかない。商工業者への支援も最大で50万円程度にとどまる。

■学校・町内会、進む自主防災

水害時の常総市の対応は後手に回った。国土交通省から市に避難指示を出すよう促す連絡があったが、上三坂地区に避難指示が出たのは堤防が決壊した後だった。水害後も防災体制の構築は遅れている。

行政の混乱が続くなか、学校現場が立ち上がった。「防災の日」の1日、常総市内の全19小中学校で水害後初の大規模な避難訓練が開かれ、各校がそれぞれ独自の避難方法を考えた。市校長会の山中久司会長(60)は「記憶が薄れないうちに、子どもたちに水害の教訓を伝えなければ」。

鬼怒川の溢水(いっすい)現場に近い市立玉小学校では、6年生が、隣接する玉幼稚園の園児を背負って避難する訓練をした。幕田久子園長は「少しの浸水でも園児は怖くて動けなくなると思う。小学生が付き添ってくれるのは心強い」と話した。

水害時、独自に防災情報をショートメールで伝え、住民を早期避難させた町内会もあった。根新田町内会はこのシステムをもとに、自主防災組織の立ち上げを準備している。神達市長も市内各地区に自主防災組織をつくる必要性を強調している。

(三嶋伸一、酒本友紀子)

■国は減災へ対策

鬼怒川の堤防決壊は、治水のあり方を大きく転換させた。国土交通省はハードで抑え込む従来の治水から、記録的な大雨による川の氾濫(はんらん)は起こりうるという前提で対策を進める。

まず取り組んだのが堤防の簡易補強だ。国は管理する109水系で20~30年の計画を立て、堤防整備を進めている。ただ、鬼怒川のように氾濫リスクが高くても、かさ上げなど本格的な工事が遅れている国管理の堤防は全国で約4500キロ、全体の約3割を占める。そこで水があふれても堤防が決壊するまでの時間を稼ぎ、避難する時間を確保するため、堤防の上部をアスファルトで固めたり、外側にブロックを埋め込んだりして補強する。約2千億円を費やし2021年3月までに工事を終える。

また、国交省は、避難指示の遅れで多くの住民が浸水地域に取り残されたことを教訓に、109水系周辺の730市区町村を対象に研修会も開催。自治体がとるべき対応を時系列でまとめた行動計画(タイムライン)作りも進め、589市区町村で完成した。
(峯俊一平)

【2016/09/20 01:11】 | 新聞記事から
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