「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
   嶋津 暉之

鬼怒川水害について被害実態に合わない支援制度の問題を取り上げた報告をお送りします。

◆茨城県常総市大水害の「その後」 被害実態にそった支援制度の是正求める、住民からの切なる声
吉川彰浩 | 一般社団法人AFW 代表理事
(2015年10月30日 7時0分配信)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoshikawaakihiro/20151030-00050841/

9月10日、台風18号等による関東・東北豪雨被害は各地で大きな水害を及ぼしました。茨城県常総市の広域浸水の模様は、社会でも大きく取り上げられました。

10月29日時点で判明している茨城県内の被害規模は、全壊世帯51件(内50件が常総市)、大規模半壊世帯1,112件(内914件が常総市)、半壊世帯2,928件(内2,773件が常総市)現在も296名(10月29日12:00現在)の方が避難所生活をされています。

被害が常総市に際立っていることが分かります。被害の数字の上でも広域で甚大被害であり、今も渦中であることは伺えます。ですが、水が引き、被災地域の大多数が日常の風景に戻りつつある今、ニュースで取り上げられることも少なくなりました。

水害から1ヶ月半が過ぎ、鬼怒川決壊箇所付近を除けば、立ち並ぶ家屋風景は、広域で浸水被害に遭った事が信じられぬような日常風景に戻っています。浸水した箇所であった事を知る事は困難な見た目になっています。それは、当時の状況を知らず、表面を見ることしか出来ない私達が生み出している錯覚に過ぎません。

常総市で暮らす方々は「張りぼての街」に住むような状況です。一見すると問題なく見える家屋も、一歩中に入れば、暮らすことが難しい状況が続いています。家財を失い、床板が剥され、修理を待ち続ける状況は「張りぼての家屋」の体をなしています。見かけだけの復興と言える状況の中、被害実態に合わぬ公的支援の在り方を問うため、常総市民の方々による署名活動が行われています。
5,277名に及んだ請願署名、その背景にある被害実態
1.床上浸水による被害は、単純な浸水高さで決める事が出来ない

半壊、大規模半壊を分ける基準は床上1m以上か未満かで決められました。先述の家屋は床上1m越えで大規模半壊とされた家屋。左の写真は床上60cm(1m未満)である為、半壊とされた家屋です。家屋診断が出来ない私達から見ても、むしろ半壊とされた家屋の方が被害は大きく見えます。文字通り杓子定規な基準では被害実態に沿った判定になるとは限りません。

床上浸水が数十cmでも大きな被害になるのは、壁の中にある「断熱材」が大きな要因です。浸水した水は断熱材を縦に登り、浸水高さ以上に達し、取り換えを行わなければ、カビを発生させ建具を腐食させる要因となります。その為、浸水高さ以上の修理をする必要性があり、当初想定していた修理費を超える現状に、住民の方々は戸惑い、高額な修理費用をどう捻出するか、生活再建に向けて大きな課題を抱えています。

2.高額な生活再建費用

高機能化する住宅事情により、家屋修理費は思いの他、高額になります。建坪によって差があるため一概にいくらと言えるものではありませんが、先述した平屋住宅でおよそ500万円、半壊と認定された家屋では1,200万の修理見積もりとなっています。これは家屋修繕費のみです。浸水により失った家財は含まれていません。

また、水害当時の写真からは母屋だけでなく、庭や停めてあった車両も被害を受けている事を見てとれます。忘れてならないのは、自宅兼職場の自営業者の存在です。家屋ばかりに生活再建にかかる費用が、頭に行きがちです。被害に遭われた方々の被害額は、数百万では収まらず1,000万を超えることは珍しくありません。

3.実情被害に見合わぬ2つの公的支援制度

常総市の広域水害は、災害救助法が適用されました。それにより2つの公的支援金制度が、生活再建の為、適用されることとなりました。しかし実態は、水害被害に遭われた方全てが使える内容ではありません。特に「半壊世帯以下」においては、被害実態からかけ離れた支援金制度となっています。

(1)世帯収入制限で使うことが出来ない事例が散見 応急修理制度

半壊世帯が、災害救助法で定められる応急修理制度を、所得制限により使えないことが問題になっています。原則1世帯当たりの前年度の世帯収入が500万以下(世帯主が45歳以上は700万円以下、世帯主が60歳以上か、世帯主が要援護世帯は800万円以下)の世帯であり、公営住宅の無償提供を受けていないことを条件に、最大56万7000円補助される制度です。世帯収入とは、その家で暮らす人達の年収の合計を指します。同居する高齢者の年金も世帯収入となり、夫婦共働きも多い時代、応急修理制度は、実質限られた世帯しか使えない制度と言えます。

(2)半壊、大規模半壊で支援金額が大きく異なる 生活再建支援金制度

半壊、大規模半壊の認定の違いにより、支援格差が生まれている事が問題となっています。半壊世帯が「やむを得ない理由で解体」したと認められれば、基礎支援金100万円+加算支援金200万円(建設・購入の場合)の補助がでますが、簡単にその選択を行うことは出来ません。300万の支援を得るため、数千万のローンを再度組むことが出来ないからです。「やむを得ない理由で解体」をしない場合は、半壊世帯は生活支援金制度を適用することが出来ません。大規模半壊世帯については、修理を選択した場合、基礎支援機50万円+加算支援金100万円が適用されます。家屋を修理し暮らす場合、支援金に150万円の差があります。

こうした生活再建のめどが立たぬ状況の中、被害実態に合わぬ(足りぬ)公的支援金制度の改善を求める為、署名活動を始めた、常総市水海道八幡神社の禰宜を務める柴沼陽さんは、経緯を次のように語ります。

私が,独自の支援制度を求める請願と署名を考えるきっかけとなったのは,9月下旬に行われた「住宅相談会」でした。自宅の復旧を前進させる大切なステップという思いで臨みましたが,半壊世帯の収入要件によって応急修理制度が受けられないとわかりました。この時は非常に困惑しました。半壊世帯のうち,子育て世帯や地域に定着しようとローンで住宅購入した世帯は,一生懸命に稼いでいますから高い確率で応急修理制度から漏れてしまう。「これは何かおかしいのではないか」「このままではまずいのではないか」と感じました。

何かしらの公的支援が受けられないものかと調べる中で,被災者生活再建支援金を知りました。しかし,ここでは大規模半壊以上と半壊以下で大きな格差が生まれることがわかりました。半壊は被災者生活再建支援金の適用外なのです。この「大規模半壊の壁」で明暗を分けられてしまうことは,全く水害の実態にそぐわないと憤りました。

発災から1ヶ月が経過しても,なかなか独自支援の動きが見えてこない。これはもう,請願でも署名でも何でもやって,地べたの声を届けるしか無いのだと思いました。待っていても好転しない,できることなら何でもやろう,そう気持ちを固め、請願書と署名用紙を一気に作りました。

当初、facebookを通じて集まった署名は、わずか200人名ほどでした。しかし同じ様に、被害実態に合わぬ公的支援の在り方を問題視する市民の方々が協力し、最終的な署名人数は5,277名に上りました。

柴沼さんの思いで始まった署名活動は、大きな広がりとなっています。

その広がりの大きさが、個人の問題ごとではなく、地域が抱える課題となっている事を示しています。

活動は被災地域全体の声となり、地域の町内会長(区長)、市内の区長会代表が署名の代表を快諾し、地元出身の県議会議員の手へと渡っています。

私が事務窓口として請願書や署名をまとめ,それらを地元県議に託しました。今後は,必要な手続き等を経て県議会議長あてに提出されます。県議会の臨時議会が11月中旬にあると発表されていますが,ぜひ満場一致で採択され,執行機関(県)へと送付され,広く厚く速やかな支援が実現されるよう願っています。

加えて,今回の請願や署名が国や自治体への刺激となって,議会での採決以前に広く厚く速やかな制度が実現されることは好ましいし,国の支援制度の見直しが加速されれればとも願っています。

内閣府が公表している災害救助法の適用状況を覗けば、茨城県常総市だけの問題ではないことが分かります。公的支援の在り方を問う問題提起は、過去何度もあったのではないでしょうか。その都度、被災地域独自の支援で終わり、災害救助法の公的支援金制度の抜本的改革は行われずに来たからこそ、水害後1ヶ月半を経過しても、常総市で被害に遭われた方々は、日常を取り戻せない状況にあるのではないでしょうか。常総市で起きている問題は、常総市だけの問題では決してありません。

常総市の署名活動は、毎年大規模な水害を経験する私達の生活保障を、抜本的に見直すきっかけとなり得るものです。既に茨城県議会では独自の支援制度を設ける方向で動いています。それが茨城県だけで終わらず、災害を教訓として活かし、社会全体へと反映されることが「減災」という観点からも必要ではないでしょうか。

吉川彰浩 一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。放射性廃棄物処理設備の保守管理(現場管理、工事設計発注、官庁検査対応)を担当。原発事故により福島県双葉郡浪江町より福島県いわき市に避難生活中。福島第一原発、原発事故被災地域の一次情報を社会に伝える為に2012年6月に退職。民間一般人としての震災後初の福島第一原発視察を実現。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに一般社団法人AFWを運営し、福島県双葉郡地方の復興活動、暮らしにおける福島第一原発に対するリテラシー向上活動を被災地域住民の方々と協働で行っている。


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1.床上浸水による被害は、単純な浸水高さで決める事が出来ない

半壊、大規模半壊を分ける基準は床上1m以上か未満かで決められました。先述の家屋は床上1m越えで大規模半壊とされた家屋。左の写真は床上60cm(1m未満)である為、半壊とされた家屋です。家屋診断が出来ない私達から見ても、むしろ半壊とされた家屋の方が被害は大きく見えます。文字通り杓子定規な基準では被害実態に沿った判定になるとは限りません。

床上浸水が数十cmでも大きな被害になるのは、壁の中にある「断熱材」が大きな要因です。浸水した水は断熱材を縦に登り、浸水高さ以上に達し、取り換えを行わなければ、カビを発生させ建具を腐食させる要因となります。その為、浸水高さ以上の修理をする必要性があり、当初想定していた修理費を超える現状に、住民の方々は戸惑い、高額な修理費用をどう捻出するか、生活再建に向けて大きな課題を抱えています。

2.高額な生活再建費用

高機能化する住宅事情により、家屋修理費は思いの他、高額になります。建坪によって差があるため一概にいくらと言えるものではありませんが、先述した平屋住宅でおよそ500万円、半壊と認定された家屋では1,200万の修理見積もりとなっています。これは家屋修繕費のみです。浸水により失った家財は含まれていません。

また、水害当時の写真からは母屋だけでなく、庭や停めてあった車両も被害を受けている事を見てとれます。忘れてならないのは、自宅兼職場の自営業者の存在です。家屋ばかりに生活再建にかかる費用が、頭に行きがちです。被害に遭われた方々の被害額は、数百万では収まらず1,000万を超えることは珍しくありません。

3.実情被害に見合わぬ2つの公的支援制度

常総市の広域水害は、災害救助法が適用されました。それにより2つの公的支援金制度が、生活再建の為、適用されることとなりました。しかし実態は、水害被害に遭われた方全てが使える内容ではありません。特に「半壊世帯以下」においては、被害実態からかけ離れた支援金制度となっています。

(1)世帯収入制限で使うことが出来ない事例が散見 応急修理制度

半壊世帯が、災害救助法で定められる応急修理制度を、所得制限により使えないことが問題になっています。原則1世帯当たりの前年度の世帯収入が500万以下(世帯主が45歳以上は700万円以下、世帯主が60歳以上か、世帯主が要援護世帯は800万円以下)の世帯であり、公営住宅の無償提供を受けていないことを条件に、最大56万7000円補助される制度です。世帯収入とは、その家で暮らす人達の年収の合計を指します。同居する高齢者の年金も世帯収入となり、夫婦共働きも多い時代、応急修理制度は、実質限られた世帯しか使えない制度と言えます。

(2)半壊、大規模半壊で支援金額が大きく異なる 生活再建支援金制度

半壊、大規模半壊の認定の違いにより、支援格差が生まれている事が問題となっています。半壊世帯が「やむを得ない理由で解体」したと認められれば、基礎支援金100万円+加算支援金200万円(建設・購入の場合)の補助がでますが、簡単にその選択を行うことは出来ません。300万の支援を得るため、数千万のローンを再度組むことが出来ないからです。「やむを得ない理由で解体」をしない場合は、半壊世帯は生活支援金制度を適用することが出来ません。大規模半壊世帯については、修理を選択した場合、基礎支援機50万円+加算支援金100万円が適用されます。家屋を修理し暮らす場合、支援金に150万円の差があります。

こうした生活再建のめどが立たぬ状況の中、被害実態に合わぬ(足りぬ)公的支援金制度の改善を求める為、署名活動を始めた、常総市水海道八幡神社の禰宜を務める柴沼陽さんは、経緯を次のように語ります。

私が,独自の支援制度を求める請願と署名を考えるきっかけとなったのは,9月下旬に行われた「住宅相談会」でした。自宅の復旧を前進させる大切なステップという思いで臨みましたが,半壊世帯の収入要件によって応急修理制度が受けられないとわかりました。この時は非常に困惑しました。半壊世帯のうち,子育て世帯や地域に定着しようとローンで住宅購入した世帯は,一生懸命に稼いでいますから高い確率で応急修理制度から漏れてしまう。「これは何かおかしいのではないか」「このままではまずいのではないか」と感じました。

何かしらの公的支援が受けられないものかと調べる中で,被災者生活再建支援金を知りました。しかし,ここでは大規模半壊以上と半壊以下で大きな格差が生まれることがわかりました。半壊は被災者生活再建支援金の適用外なのです。この「大規模半壊の壁」で明暗を分けられてしまうことは,全く水害の実態にそぐわないと憤りました。

発災から1ヶ月が経過しても,なかなか独自支援の動きが見えてこない。これはもう,請願でも署名でも何でもやって,地べたの声を届けるしか無いのだと思いました。待っていても好転しない,できることなら何でもやろう,そう気持ちを固め、請願書と署名用紙を一気に作りました。

当初、facebookを通じて集まった署名は、わずか200人名ほどでした。しかし同じ様に、被害実態に合わぬ公的支援の在り方を問題視する市民の方々が協力し、最終的な署名人数は5,277名に上りました。

柴沼さんの思いで始まった署名活動は、大きな広がりとなっています。

その広がりの大きさが、個人の問題ごとではなく、地域が抱える課題となっている事を示しています。

活動は被災地域全体の声となり、地域の町内会長(区長)、市内の区長会代表が署名の代表を快諾し、地元出身の県議会議員の手へと渡っています。

私が事務窓口として請願書や署名をまとめ,それらを地元県議に託しました。今後は,必要な手続き等を経て県議会議長あてに提出されます。県議会の臨時議会が11月中旬にあると発表されていますが,ぜひ満場一致で採択され,執行機関(県)へと送付され,広く厚く速やかな支援が実現されるよう願っています。

加えて,今回の請願や署名が国や自治体への刺激となって,議会での採決以前に広く厚く速やかな制度が実現されることは好ましいし,国の支援制度の見直しが加速されれればとも願っています。

内閣府が公表している災害救助法の適用状況を覗けば、茨城県常総市だけの問題ではないことが分かります。公的支援の在り方を問う問題提起は、過去何度もあったのではないでしょうか。その都度、被災地域独自の支援で終わり、災害救助法の公的支援金制度の抜本的改革は行われずに来たからこそ、水害後1ヶ月半を経過しても、常総市で被害に遭われた方々は、日常を取り戻せない状況にあるのではないでしょうか。常総市で起きている問題は、常総市だけの問題では決してありません。

常総市の署名活動は、毎年大規模な水害を経験する私達の生活保障を、抜本的に見直すきっかけとなり得るものです。既に茨城県議会では独自の支援制度を設ける方向で動いています。それが茨城県だけで終わらず、災害を教訓として活かし、社会全体へと反映されることが「減災」という観点からも必要ではないでしょうか。

吉川彰浩 一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。放射性廃棄物処理設備の保守管理(現場管理、工事設計発注、官庁検査対応)を担当。原発事故により福島県双葉郡浪江町より福島県いわき市に避難生活中。福島第一原発、原発事故被災地域の一次情報を社会に伝える為に2012年6月に退職。民間一般人としての震災後初の福島第一原発視察を実現。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに一般社団法人AFWを運営し、福島県双葉郡地方の復興活動、暮らしにおける福島第一原発に対するリテラシー向上活動を被災地域住民の方々と協働で行っている。

【2015/11/04 02:11】 | Webの記事
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