「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                嶋津 暉之

長野県知事であった田中康夫さんのインタビュー記事を参考までにお送りします。

長野県知事時代は9つのダム計画のうち、8つを止めました(浅川ダムのみが復活、その他は中止または中止の方向)。そして、記者クラブ制度を廃止し、だれでも記者会見に参加できるようにしました。その業績を大いに評価すべきだと思います。

2009年衆院選後の民主党内閣の発足で、田中さん個人は国交大臣を希望していたと聞いたことがあります。

もし田中さんが国交大臣になっていれば、ダム検証によってダム事業が次々と推進されていく今の状況はなかったと思います。

◆「ささやかだけど、たしかなこと」を一つひとつ――田中康夫(ワイアンドティ研究所代表理事)
(経済界2015年10月28日) http://net.keizaikai.co.jp/archives/17767

長野県知事、衆参両院議員を経て、この4月に一般社団法人「ワイアンドティ研究所」を立ち上げた。作家としての情報発信を皮切りに、長野県知事に就任すると「『脱ダム』宣言」を発し、財政再建団体へ転落寸前だった長野県の財政を黒字化。その後、国政にも参画。昨年末には『33年後のなんとなく、クリスタル』を上梓した田中氏が起こすムーブメントと、伝承していきたいものとは。

二項対立を、しなやかに乗り越えるべきと考えて


(たなか・やすお)1956年東京都生まれ。小学2年から高校卒業まで信州で過ごす。81年一橋大学法学部卒業。在学中に『なんとなく、クリスタル』(河出文庫)で「文藝賞」受賞。2000~06年、長野県知事。47都道府県で唯一、債務残高を6年連続で計923億円減少させ、プライマリーバランスも7年度連続で黒字化。外郭団体の9割を統廃合。地域密着型公共事業を推進。年率5%超の実質経済成長率達成。07年~12年、参議院議員、衆議院議員。15年4月、一般社団法人「ワイアンドティ研究所」設立。代表理事に就任。『33年後のなんとなく、クリスタル』を14年に出版。超少子・超高齢社会に直面するニッポンの歩むべき道筋を示し、なかにし礼さん、ロバート・キャンベルさんをはじめとする方々に激賞される。
http://www.nippon-dream.com/ https://your-hope.jp/

 真に“成熟した社会”を実現する触媒としての装置。それがワイアンドティ(Y&T)研究所です。Y&TのYはYou(あなた)、TはTomorrow(明日への希望)を表します。「微力だけど、無力じゃない。」「ささやかだけど、たしかなこと。」を一つひとつ。「イデオロギー」とは無縁の新しいムーブメント。この3つの設立趣旨に共鳴してホームページ上で無料会員登録した方々を対象に、全国各地での講演、各種セミナーなどイベントを実施しており、無料会員を2017年末までに10万人登録へつなげたいと考えています。

 知性という権威に安住して、感情と理性は違うと述べていた「知性主義」に反発する「反知性主義」が勢いを増しています。本来は頭でっかちな知性主義が空理空論で終わらぬために、感情や感覚にも目配りする必要があったのに、最近の反知性主義は文化大革命やマッカーシズムの頃と同じで、無知蒙昧で何が悪い、と居直っています。これでは、どっちもどっちで不毛な言い争いです。

 他方で多くの人々は、オンリーワン・ファーストワンのモノ作り産業が誇りだった日本は、新国立競技場、五輪エンブレム、年金機構、「福島第一」に象徴される後手後手の対応を見るに付け、果たして日本は大丈夫なのだろうか、制度疲労を起こしてはいまいか、と戸惑っています。経済同友会代表幹事の小林喜光さんも「これまでの延長線上に未来はない」と繰り返し述べられています。

 であればこそ私たちは今、過去の成功体験を乗り越え、年齢や性別、職業や地域、肩書に関係なく、誰もが1人の消費者であるとの視点に立って、若者VS老人、官VS民、保守VS革新、都会の不満VS地方の不安といった、「イデオロギー」的な二項対立を、しなやかに“乗り越える”べき。そう考えてY&T研究所を立ち上げました。

“もとクリ”“いまクリ”で訴え掛けたかったこと

 1981年出版のデビュー作『なんとなく、クリスタル』(もとクリ)は、高度経済成長から高度消費社会へと移り変わっていく時代を描いたものです。当時は誰も言及しませんでしたが、442ある注釈の最後には、旧厚生省が発表した合計特殊出生率と高齢化率の将来予測数値を記しています。20代だった私はその数値に衝撃を受け、量の拡大から質の充実へと認識と選択を改めねば立ち行かなくなると感じたのです。が、その予測数値とて、現在の超少子・超高齢社会ニッポンを踏まえると、随分と楽観的な数値でした。

 病気や事故で亡くなる人がいるから先進国では出生率2・07で人口は横ばいを保てるのです。ところが日本は1・43。厚労省の社会保障・人口問題研究所は、出生率が今のままだと日本の人口は100年後に4300万人になると予測しています。ところが昨年6月「トレンドを変えていくことで50年後にも1億人程度の安定的な人口が保てる」と閣議決定が行われました。その根拠は、移民を毎年20万人受け入れると1億人を維持可能と経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料です。

 でも日露戦争前後の日本の人口は4700万人でした。スローフードをはじめとして、身の丈に合った日々の生活を楽しんでいるフランスやイタリアは、現在の日本の半分程度の人口です。移民の是非云々以前の問題として、経済成長の大前提=人口維持という硬直した発想こそ、破綻した社会主義の計画経済と同じ、想像力の欠如ではないでしょうか。

 昨年末に上梓した『33年後のなんとなく、クリスタル』(いまクリ)は、前作の33年後を描いています。いまクリの巻末の注釈で触れていますが、僕が生まれた1956年に発行された経済白書の「もはや戦後ではない」とは実は、「消費や投資の潜在需要はまだ高いかもしれないが、いまや経済の回復による浮揚力はほぼ使い尽くされ、もはや戦後ではない」という文脈でした。2代目小錦八十吉の長男だった経済企画庁の調査課長は、今までのような右肩上がりの成長は続かないという意味を込めたのでした。量の維持から質の深化へと私たちも認識を改めねばなりません。

 そうして65歳以上の人口が7%を超えた日本の高齢化元年は大阪万博開催の70年です。先日お亡くなりになった富士ゼロックスの小林陽太郎さんが「モーレツからビューティフルへ」キャンペーンを行ったのも同年でした。その先見性に今一度、学ぶべきですね。

超少子・超高齢社会のニッポンに必要なこと


長野県知事を2期務めた私は財政再建を行うと共に、人が人のお世話をする福祉・医療・教育・観光こそ地元に雇用と活力を生み出すと考え、小学校30人学級を全国で最初に全学年で導入し、住宅や商店の空き家を改修してデイサービスと託児所を一つ屋根の下で行う宅幼老所を県単独予算で350カ所設けました。

 就任当時、県債務残高が1兆6千億円を超え、1日の利息の支払いだけでも1億4800万円と財政再建団体転落寸前でした。県民と職員の協力の下、47都道府県で唯一、在任6年連続で起債残高を計923億円減少させ、基礎的財政収支も7年連続で黒字化しました。同時に実質経済成長率5%を達成したのも、地域密着型の公共事業に取り組んだからです。

 地元の土木建設業者と共に、県産の間伐材を活用して鋼鉄製と同じ強度認定を受けた木製ガードレールを開発しました。間伐から製造、設置に至るまですべて地元企業が担当するので地域雇用創出効果は鋼鉄製の5倍。軽井沢をはじめとする県内各地の県道に設置しました。

 「造るから治す・護る、そして創る」への転換が「『脱ダム』宣言」です。ダムを造らないと洪水になると63年前に計画された八ツ場ダムは今春、ようやく本体工事が始まりました。でも、ダムという大外科手術が始まるまでの間、点滴や輸血、マッサージにあたる護岸の補修や河床の浚渫(しゅんせつ)、上流域の森林整備はほとんど手付かずです。重機を用いた浚渫は1平米1万円程度。確実に地元業者の仕事になるのに、9つの県営ダムが計画されていた長野県でも、当該河川の浚渫の記録がありませんでした。そこで台風一過の毎年9月には県管理の河川を総点検し、必要箇所の浚渫の補正予算を組みました。

 今回の鬼怒川の災害も、日本の堤防が土と砂でできているため、コンクリート壁の隙間から水が浸み込み、内部が液状化現象を起こしがちなのが原因ではないでしょうか? アメリカをはじめとする諸外国では、決壊しやすい箇所の堤防に鋼矢板を縦に2枚打ち込む強化策を実施しています。けれども国土交通省水管理・国土保全局(旧河川局)は土と砂以外は“不純物”だと「土堤原則」に固執しています。衆院議員時代に鋼矢板工法を用いた治水の調査費を計上させましたが、実現していません。

 とはいえ、この日本では「地頭」を持ったマイスターが歴史を築いてきました。単なる空威張りとは無縁の、しなやかな矜持と諦観を併せ持ったニッポンの日の出を再び取り戻すのがY&T研究所の願い。さあ、あなたもご一緒に参加ください。(談)


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 1981年出版のデビュー作『なんとなく、クリスタル』(もとクリ)は、高度経済成長から高度消費社会へと移り変わっていく時代を描いたものです。当時は誰も言及しませんでしたが、442ある注釈の最後には、旧厚生省が発表した合計特殊出生率と高齢化率の将来予測数値を記しています。20代だった私はその数値に衝撃を受け、量の拡大から質の充実へと認識と選択を改めねば立ち行かなくなると感じたのです。が、その予測数値とて、現在の超少子・超高齢社会ニッポンを踏まえると、随分と楽観的な数値でした。

 病気や事故で亡くなる人がいるから先進国では出生率2・07で人口は横ばいを保てるのです。ところが日本は1・43。厚労省の社会保障・人口問題研究所は、出生率が今のままだと日本の人口は100年後に4300万人になると予測しています。ところが昨年6月「トレンドを変えていくことで50年後にも1億人程度の安定的な人口が保てる」と閣議決定が行われました。その根拠は、移民を毎年20万人受け入れると1億人を維持可能と経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料です。

 でも日露戦争前後の日本の人口は4700万人でした。スローフードをはじめとして、身の丈に合った日々の生活を楽しんでいるフランスやイタリアは、現在の日本の半分程度の人口です。移民の是非云々以前の問題として、経済成長の大前提=人口維持という硬直した発想こそ、破綻した社会主義の計画経済と同じ、想像力の欠如ではないでしょうか。

 昨年末に上梓した『33年後のなんとなく、クリスタル』(いまクリ)は、前作の33年後を描いています。いまクリの巻末の注釈で触れていますが、僕が生まれた1956年に発行された経済白書の「もはや戦後ではない」とは実は、「消費や投資の潜在需要はまだ高いかもしれないが、いまや経済の回復による浮揚力はほぼ使い尽くされ、もはや戦後ではない」という文脈でした。2代目小錦八十吉の長男だった経済企画庁の調査課長は、今までのような右肩上がりの成長は続かないという意味を込めたのでした。量の維持から質の深化へと私たちも認識を改めねばなりません。

 そうして65歳以上の人口が7%を超えた日本の高齢化元年は大阪万博開催の70年です。先日お亡くなりになった富士ゼロックスの小林陽太郎さんが「モーレツからビューティフルへ」キャンペーンを行ったのも同年でした。その先見性に今一度、学ぶべきですね。

超少子・超高齢社会のニッポンに必要なこと


長野県知事を2期務めた私は財政再建を行うと共に、人が人のお世話をする福祉・医療・教育・観光こそ地元に雇用と活力を生み出すと考え、小学校30人学級を全国で最初に全学年で導入し、住宅や商店の空き家を改修してデイサービスと託児所を一つ屋根の下で行う宅幼老所を県単独予算で350カ所設けました。

 就任当時、県債務残高が1兆6千億円を超え、1日の利息の支払いだけでも1億4800万円と財政再建団体転落寸前でした。県民と職員の協力の下、47都道府県で唯一、在任6年連続で起債残高を計923億円減少させ、基礎的財政収支も7年連続で黒字化しました。同時に実質経済成長率5%を達成したのも、地域密着型の公共事業に取り組んだからです。

 地元の土木建設業者と共に、県産の間伐材を活用して鋼鉄製と同じ強度認定を受けた木製ガードレールを開発しました。間伐から製造、設置に至るまですべて地元企業が担当するので地域雇用創出効果は鋼鉄製の5倍。軽井沢をはじめとする県内各地の県道に設置しました。

 「造るから治す・護る、そして創る」への転換が「『脱ダム』宣言」です。ダムを造らないと洪水になると63年前に計画された八ツ場ダムは今春、ようやく本体工事が始まりました。でも、ダムという大外科手術が始まるまでの間、点滴や輸血、マッサージにあたる護岸の補修や河床の浚渫(しゅんせつ)、上流域の森林整備はほとんど手付かずです。重機を用いた浚渫は1平米1万円程度。確実に地元業者の仕事になるのに、9つの県営ダムが計画されていた長野県でも、当該河川の浚渫の記録がありませんでした。そこで台風一過の毎年9月には県管理の河川を総点検し、必要箇所の浚渫の補正予算を組みました。

 今回の鬼怒川の災害も、日本の堤防が土と砂でできているため、コンクリート壁の隙間から水が浸み込み、内部が液状化現象を起こしがちなのが原因ではないでしょうか? アメリカをはじめとする諸外国では、決壊しやすい箇所の堤防に鋼矢板を縦に2枚打ち込む強化策を実施しています。けれども国土交通省水管理・国土保全局(旧河川局)は土と砂以外は“不純物”だと「土堤原則」に固執しています。衆院議員時代に鋼矢板工法を用いた治水の調査費を計上させましたが、実現していません。

 とはいえ、この日本では「地頭」を持ったマイスターが歴史を築いてきました。単なる空威張りとは無縁の、しなやかな矜持と諦観を併せ持ったニッポンの日の出を再び取り戻すのがY&T研究所の願い。さあ、あなたもご一緒に参加ください。(談)

【2015/10/30 03:10】 | Webの記事
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