「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
               嶋津 暉之

8月21日早朝のNHK時論公論 「広島土砂災害から1年 山裾の住宅地に消えない不安」はなかなか優れた解説であると思います。

◆時論公論 「広島土砂災害から1年 山裾の住宅地に消えない不安」
NHK2015年08月21日 (金) 午前0:00~ 
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/225583.html

75人が死亡した広島土砂災害から1年がたち、被災地は復興へ歩み始めています。
しかし、土石流を防ぐ砂防ダムの建設が狭い坂道が原因で難航するなど、山裾に広がる住宅地での防災の難しさがあらためて浮き彫りになっています。
全国各地にあるこうした住宅地で、土砂災害からどのようにして命を守るのか。被災地が取り組む防災対策をもとに考えます。
1年前、山裾の住宅地はあっという間に泥とがれきに覆われました。昭和40年代から夢のマイホームが増え続けてきた街を、真夜中、2時間で200ミリ前後の猛烈な雨が襲いました。そして、各地で同時多発的に土石流が発生し、75人が死亡しました。

被害が大きくなった原因は、大きく分けて3つあります。
一つは、ほとんどの場所で土石流を防ぐ砂防ダムがなかったこと。
二つ目は、広島市が避難勧告を出すのが遅れ、災害が起きた後になってしまったこと、
そして、住民の多くが、土石流など、土砂災害の危険がある地域だと知らなかったことです。

私は、先日、被災地に行き、これらの課題がどうなったのかを見てきました。復興と今後の防災のための工事が進んでいましたが、土石流が流れた跡は、はっきりと残っていました。
押し流された住宅があったところは更地になっています。

ほぼ完成した砂防ダムは高さ11メートルあまりのコンクリートで土石流を食い止めます。
しかし、国が緊急に建設する砂防ダムのうち、ほぼ完成したのは、この1か所だけです。
ここは災害前から建設の準備を終えていたため、早くに建設できましたが、このほかは、本体の工事はまだほとんど始まっていません。

建設が難航しているのは、山に向かって徐々に開発が進んだ住宅地特有の問題があるからです。もともとあった道路が狭く、資材を運ぶトラックがすれ違えないため、工事用の道路をあちこちに作る必要があるのです。およそ100人の土地の所有者から用地を借りる交渉から始めなければなりませんでした。

このため、ほとんどの沢や川には、高さ5メートルほどの強靭ワイヤーネットという鋼鉄のネットが張ってあります。小規模な土石流は防げますが、あくまでも砂防ダムができるまでの応急対策です。想定を超える土石流は防げないうえ、住宅地に流れ込む水も抑えられないままです。

国が被災地に建設する砂防ダムを、地図で確認します。

今年度中に25か所、住宅地を守る盾のように建設する計画です。現在、ダム本体がほぼ完成したのは、1か所だけです。
しかも、去年と同じ規模の土石流を防ぐには、さらに多くの砂防ダムなどを作る必要があります。すべてが完成するには5年、総額230億円近くかかる見通しです。
一方、山から街に流れ込む水への対策については、広島市も検討していますが、狭い坂道で側溝を広げたり、新たに排水路を作ったりするのは容易ではありません。

このように砂防ダムなどのハードの整備に時間がかかる中で、避難勧告の伝達など、ソフトによる対策がさらに重要になっています。
広島市では、情報発信を充実・改善して、できるだけ早い避難への活用を図っています。

避難の勧告や指示は、携帯電話に強制的に知らせる「緊急速報メール」でも伝えます。
また、気象の情報や警報を知らせる「防災情報メール」への登録も呼び掛けています。
そして、被災地に限っては、大雨注意報が出ると避難準備情報、大雨警報が出ると避難勧告を出すことにしました。空振りよりも住民の安全を優先させた極めて異例の措置です。
ただ、この夏、晴れた日や1日に2度、避難準備情報が出されたことがあり、住民から「大げさすぎる」という声も出ています。

避難の情報は何度も空振りを繰り返すと、信頼されなくなって、本当に危険な時に避難しなくなるおそれがあります。被災地は土砂災害が発生しやすくなっているうえ、砂防ダムがほとんどない現状では、住民の安全を最優先にして早めに避難の情報を出すという姿勢は正しいと思いますが、状況を見極めたうえでの判断や、より高い精度が必要だと思います。

ここまで、砂防ダムや情報発信といった、国や自治体の取り組みを見てきましたが、災害の後、被災地に住む人たちの意識も大きく変わりました。住民の多くは、土砂災害の危険がある地域だということを知らされておらず、そのせいもあって、災害直後は防災意識が高い地域とは感じませんでした。
ところが、久しぶりに被災地を取材したところ、住民たちの防災意識が格段に高くなっていました。

10人が死亡した八木ヶ丘町内会では、避難の判断に活用するため、独自に雨量計を設置しました。1時間10ミリを超えると黄色、30ミリを超えると赤いランプがつきます。
大雨の際は2か所のサイレンを鳴らして、助け合いながら避難します。
さらに、緊急時は、近くのマンションの談話室やロビーに避難させてもらえるよう頼み、協定を結びました。
取り組みを進めた一人、副会長の山根健治さんに伺ったところ、坂道に水があふれると、特に高齢者や子どもは流される危険があり、遠くにある避難所の小学校まで行くのは危ないと思ったからだといいます。
この町内会は70歳以上がおよそ6割もいますが、災害に強い町内会を作ろうと全会一致で決議したそうです。

他の町内会でも同じように住民の防災意識が高まり、合同の訓練などもおこなっています。

こちらは、八木ヶ丘など23の町内会が合同で作った防災マップです。
土石流の警戒区域だけでなく、自分たちが町内をくまなく回って調べた、ふたがない側溝や段差など、危険な場所が書かれています。

これら、被災地の防災対策は全国の同じような地域の参考になります。

砂防ダムは、行政による最大の「公助」です。一か所数億円かかりますが、人口や危険度に応じて計画的に整備する必要があります。
また、自治体によるメール配信は比較的簡単に導入できるので、全国のもっと多くの自治体で活用してほしいと思います。
一方、独自の雨量計や防災マップ作りは、近所で助け合う「共助」です。日頃から顔を合わせ、助け合える関係になっておくことが大切です。
そして、メールを登録したり、防災マップ作りに参加したりするのは「自助」として、自分の命を守ることにつながります。

この災害では、真夜中、短い時間に猛烈な雨が降り、突然、大規模な土石流が襲ってきたため、逃げようがなかった人が多くいました。
経済成長や人口の都市への集中に伴い山裾に広がった住宅地は、全国各地にあります。
そして今や、都市部でも突然、猛烈な雨が降るようになりました。
平成で最悪の土砂災害となったこの広島土砂災害の教訓を、全国の自治体や住民がしっかりと受け止め、命を守る取り組みを進めてほしいと思います。
(二宮 徹 解説委員)



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1年前、山裾の住宅地はあっという間に泥とがれきに覆われました。昭和40年代から夢のマイホームが増え続けてきた街を、真夜中、2時間で200ミリ前後の猛烈な雨が襲いました。そして、各地で同時多発的に土石流が発生し、75人が死亡しました。

被害が大きくなった原因は、大きく分けて3つあります。
一つは、ほとんどの場所で土石流を防ぐ砂防ダムがなかったこと。
二つ目は、広島市が避難勧告を出すのが遅れ、災害が起きた後になってしまったこと、
そして、住民の多くが、土石流など、土砂災害の危険がある地域だと知らなかったことです。

私は、先日、被災地に行き、これらの課題がどうなったのかを見てきました。復興と今後の防災のための工事が進んでいましたが、土石流が流れた跡は、はっきりと残っていました。
押し流された住宅があったところは更地になっています。

ほぼ完成した砂防ダムは高さ11メートルあまりのコンクリートで土石流を食い止めます。
しかし、国が緊急に建設する砂防ダムのうち、ほぼ完成したのは、この1か所だけです。
ここは災害前から建設の準備を終えていたため、早くに建設できましたが、このほかは、本体の工事はまだほとんど始まっていません。

建設が難航しているのは、山に向かって徐々に開発が進んだ住宅地特有の問題があるからです。もともとあった道路が狭く、資材を運ぶトラックがすれ違えないため、工事用の道路をあちこちに作る必要があるのです。およそ100人の土地の所有者から用地を借りる交渉から始めなければなりませんでした。

このため、ほとんどの沢や川には、高さ5メートルほどの強靭ワイヤーネットという鋼鉄のネットが張ってあります。小規模な土石流は防げますが、あくまでも砂防ダムができるまでの応急対策です。想定を超える土石流は防げないうえ、住宅地に流れ込む水も抑えられないままです。

国が被災地に建設する砂防ダムを、地図で確認します。

今年度中に25か所、住宅地を守る盾のように建設する計画です。現在、ダム本体がほぼ完成したのは、1か所だけです。
しかも、去年と同じ規模の土石流を防ぐには、さらに多くの砂防ダムなどを作る必要があります。すべてが完成するには5年、総額230億円近くかかる見通しです。
一方、山から街に流れ込む水への対策については、広島市も検討していますが、狭い坂道で側溝を広げたり、新たに排水路を作ったりするのは容易ではありません。

このように砂防ダムなどのハードの整備に時間がかかる中で、避難勧告の伝達など、ソフトによる対策がさらに重要になっています。
広島市では、情報発信を充実・改善して、できるだけ早い避難への活用を図っています。

避難の勧告や指示は、携帯電話に強制的に知らせる「緊急速報メール」でも伝えます。
また、気象の情報や警報を知らせる「防災情報メール」への登録も呼び掛けています。
そして、被災地に限っては、大雨注意報が出ると避難準備情報、大雨警報が出ると避難勧告を出すことにしました。空振りよりも住民の安全を優先させた極めて異例の措置です。
ただ、この夏、晴れた日や1日に2度、避難準備情報が出されたことがあり、住民から「大げさすぎる」という声も出ています。

避難の情報は何度も空振りを繰り返すと、信頼されなくなって、本当に危険な時に避難しなくなるおそれがあります。被災地は土砂災害が発生しやすくなっているうえ、砂防ダムがほとんどない現状では、住民の安全を最優先にして早めに避難の情報を出すという姿勢は正しいと思いますが、状況を見極めたうえでの判断や、より高い精度が必要だと思います。

ここまで、砂防ダムや情報発信といった、国や自治体の取り組みを見てきましたが、災害の後、被災地に住む人たちの意識も大きく変わりました。住民の多くは、土砂災害の危険がある地域だということを知らされておらず、そのせいもあって、災害直後は防災意識が高い地域とは感じませんでした。
ところが、久しぶりに被災地を取材したところ、住民たちの防災意識が格段に高くなっていました。

10人が死亡した八木ヶ丘町内会では、避難の判断に活用するため、独自に雨量計を設置しました。1時間10ミリを超えると黄色、30ミリを超えると赤いランプがつきます。
大雨の際は2か所のサイレンを鳴らして、助け合いながら避難します。
さらに、緊急時は、近くのマンションの談話室やロビーに避難させてもらえるよう頼み、協定を結びました。
取り組みを進めた一人、副会長の山根健治さんに伺ったところ、坂道に水があふれると、特に高齢者や子どもは流される危険があり、遠くにある避難所の小学校まで行くのは危ないと思ったからだといいます。
この町内会は70歳以上がおよそ6割もいますが、災害に強い町内会を作ろうと全会一致で決議したそうです。

他の町内会でも同じように住民の防災意識が高まり、合同の訓練などもおこなっています。

こちらは、八木ヶ丘など23の町内会が合同で作った防災マップです。
土石流の警戒区域だけでなく、自分たちが町内をくまなく回って調べた、ふたがない側溝や段差など、危険な場所が書かれています。

これら、被災地の防災対策は全国の同じような地域の参考になります。

砂防ダムは、行政による最大の「公助」です。一か所数億円かかりますが、人口や危険度に応じて計画的に整備する必要があります。
また、自治体によるメール配信は比較的簡単に導入できるので、全国のもっと多くの自治体で活用してほしいと思います。
一方、独自の雨量計や防災マップ作りは、近所で助け合う「共助」です。日頃から顔を合わせ、助け合える関係になっておくことが大切です。
そして、メールを登録したり、防災マップ作りに参加したりするのは「自助」として、自分の命を守ることにつながります。

この災害では、真夜中、短い時間に猛烈な雨が降り、突然、大規模な土石流が襲ってきたため、逃げようがなかった人が多くいました。
経済成長や人口の都市への集中に伴い山裾に広がった住宅地は、全国各地にあります。
そして今や、都市部でも突然、猛烈な雨が降るようになりました。
平成で最悪の土砂災害となったこの広島土砂災害の教訓を、全国の自治体や住民がしっかりと受け止め、命を守る取り組みを進めてほしいと思います。
(二宮 徹 解説委員)


【2015/08/22 23:10】 | Webの記事
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