「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
               嶋津 暉之

昨年8月に広島市北部を襲って75人の命を奪った広島土砂災害から1年になります。

35カ所の砂防ダムの緊急整備を決定し、うち30カ所では今年度中にも、土砂がせき止められる規模まで建設を進めるというのですから、凄まじい勢いの砂防ダムの建設です。
他に対策はないのでしょうか。

◆【広島土砂災害1年】進む砂防ダム建設、立ち退き迫られるジレンマも
(産経新聞2015.8.19 22:54)
http://www.sankei.com/west/news/150819/wst1508190102-n1.html

75人が犠牲になった広島市の土砂災害は20日で発生から1年となる。被災地では土石流を防ぐ砂防ダム建設が進むが、そのために住み慣れた土地から立ち退きを迫られる住民もいる。

「土砂災害警戒区域」に指定されたこともあって地価は下落。国が提示する立ち退き補償額では「次の住まいが確保できない」と切実な声も。土砂災害を防止するための施策が、住民の生活再建に影を落とす。そんなジレンマを抱えながら、安全な街への模索が続く。

工期遅れ可能性

広島市安佐北区の山間部の傾斜地に築かれた白い堰堤(えんてい)。一見城塞のようなたたずまいのこの施設が、住民の命を守る砂防ダムだ。今月13日、土砂災害後の緊急事業では初めて、ダム本体が完成した。

「まだ怖いが、少し不安が和らいだ。気持ちも前に進めそう」。地区に住む寺島かず子さん(80)はそう言って笑顔を見せた。

1基数億円とされる費用に、足場の悪い山深い場所での難工事。土石流の危険渓流が全国に9万カ所もあって、砂防ダム整備が2割強にとどまっているのはそんな理由からだ。

広島の土砂災害後、その必要性が叫ばれ、国土交通省と県は被害の大きかった安佐南区を中心に35カ所の砂防ダムの緊急整備を決定。うち30カ所では今年度中にも、土砂がせき止められる規模まで建設を進める方針だ。

だが安佐南区八木、緑井両地区の4カ所では、工事に伴い約70の住宅や事務所に立ち退きを求めなければならなくなった。うち半数ではまだ立ち退きの合意に至らず、工期に遅れが出る可能性がある。

地価下落懸念も

国が補償額の参考にしている取引価格や今年1月の公示地価は、災害前よりも下落している。

安全対策を徹底するため、これまで未指定だった土砂災害警戒区域にも指定されたが、さらなる地価下落や風評被害を招くと住民サイドから懸念も出る。

安佐南区緑井の無職、中丸益好さん(71)は「砂防ダムには賛成だが、まだ住める家を潰すのは心苦しい」と打ち明ける。

床下浸水した自宅は災害前と同じ状態に戻したが、昨年11月に立ち退き対象だと知った。「年齢的にローンも組めないので、今の補償では家を再建できない。どんな形でもいいので支援してほしい」

中丸さんら立ち退きを迫られた約30世帯は連絡会を結成。補償額の再算定や義援金の支給などを市に要望した。しかし、市は公平性の観点から「義援金配分は難しい」とし、国交省も「規定の額で合意した住民もおり、今から増額はできない。理解してもらうしかない」と議論は平行線をたどったままだ。

砂防ダム  土石流防止のため山地の渓流につくられる堤。砂防堰堤とも呼ばれる。水だけを通して土砂を堆積させるコンクリート製の構造が一般的。たまった土砂は平時の水の流れで、徐々に下流に流されていく。コンクリートの代わりに鉄製の柵を設置し、流木や土石を止めるタイプのものもある。


◆広島土砂災害1年:暮らし再建へ一歩 復興10年計画、砂防ダム課題
(毎日新聞 2015年08月19日 大阪朝刊)
http://mainichi.jp/area/news/20150819ddn010040014000c.html

 昨年8月に広島市北部を襲って75人の命を奪った土砂災害は、20日で発生から1年になる。被災地では、国と県が土石流を防ぐ砂防ダムの整備や土砂災害警戒区域の指定を進めている。市は防災計画を見直すとともに、今春から10年間の復興計画をスタートさせた。現地に残る被害の爪痕は深く、被災者が住宅を復旧させ、身内を失ったつらさから立ち直るにはいまだ遠い道のりにある。あの日、何が起き、街はどう変わろうとしているのか。

 昨年8月20日未明から朝にかけ、局地的な豪雨が住宅街と裏山を襲った。地盤が緩んで100カ所以上で土石流が発生。広島市安佐北・安佐南両区を中心に山沿いの住宅街がのみ込まれて74人が亡くなった。今年7月には、肺炎で3月に亡くなった86歳の女性が市から災害関連死と認定された。

 市と県、国は災害対応に本腰を入れている。避難勧告の遅れが指摘された市は3月、災害対応時のマニュアルとなる地域防災計画を改正し、今年度から運用している。従来は職員が学校などの避難所に行って受け入れ準備を整えてから市が避難勧告を出していたが、職員の到着が遅れて勧告の発令が遅れる問題が露呈した。

 市は勧告を迅速に出すため、避難所開設を待たずに発令できるようマニュアルに明記。危険を住民に周知する情報の出し方も、3段階から4段階に細分化した。また、避難所への住民移動が間に合わない場合は、近所にある鉄筋建物の上階に逃げたり、自宅2階以上の山側と反対にある部屋に逃げたりするよう、具体的な避難方法を示した。

 県は土砂災害警戒区域の指定や見直しも急ピッチで進めている。甚大被害を受けた地域は災害前、区域指定のための調査だけにとどまり、住民に危険地域であることを示せていなかった。県は現地調査の場所を従来より増やし、調査で得た渓流の浸食の深さや幅のデータなどを参考にしながら、犠牲者が多かった安佐南区八木・緑井両地区を3月30日に特別警戒区域と警戒区域に指定した。

 豪雨時の土石流をせき止めるには砂防ダムが有効とされる。県は今年度に安佐北区で7基を完成させる。国も被害が大きかった安佐北・安佐南両区の28渓流で建設を計画し、5年で完成させる予定だ。だが、一部は住民との用地取得交渉が継続中で完成めどは立っていない。国は、完成までの応急処置として両区の29カ所に鋼鉄製ネットを設置した。

 住居を追われた184世帯は、市が借り上げたマンションなどで暮らしている。市は移住先をあっせんしてはいるものの、入居期限を来年8月末としており、先行きが見えない状態が続いている。
 ◇山肌の土石、大量流出

 広島の土砂災害は、雨で山肌の地盤が緩み、土石が谷を一気に流れ下って起きた。有識者や専門家でつくる現地調査団などは、1時間雨量が80?100ミリの激しい雨が継続して降ったうえ、災害前からの雨で山に水がたまっていたため、斜面表層の土や石が大量に押し出されたとみている。多くの場所で県想定の2?5倍の量の土砂流出があった。山沿いでは谷の入り口近くまで住宅が広がっていたため、被害が拡大した。
 ◇復興まちづくり

 広島市は今年3月、被災地の復興計画「復興まちづくりビジョン」を初めて策定した。

 災害発生から2024年度までの10年を「復興まちづくり期間」とし、前半を「集中復興期間」、後半を「継続復興期間」と規定。「集中復興期間」では、被害が大きかった同市安佐南区八木・緑井・山本、安佐北区可部東地区などの5地区で、国が進める砂防ダムや避難路となる幹線道路の整備を優先する。「継続復興期間」では、残りの避難路や雨水排水路などの整備をする。

 他に、自主防災組織による地域防災や減災に向けた取り組みへの助成、災害の教訓を継承する地域の取り組みへの支援なども盛り込んでいる。

==============

 この特集は、植田憲尚、石川将来(以上、広島支局)、瀬谷健介(岡山支局)、望月亮一、大西岳彦(以上、写真部)、横田詞輝(大阪本社デザイン課)が担当しました。


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工期遅れ可能性

広島市安佐北区の山間部の傾斜地に築かれた白い堰堤(えんてい)。一見城塞のようなたたずまいのこの施設が、住民の命を守る砂防ダムだ。今月13日、土砂災害後の緊急事業では初めて、ダム本体が完成した。

「まだ怖いが、少し不安が和らいだ。気持ちも前に進めそう」。地区に住む寺島かず子さん(80)はそう言って笑顔を見せた。

1基数億円とされる費用に、足場の悪い山深い場所での難工事。土石流の危険渓流が全国に9万カ所もあって、砂防ダム整備が2割強にとどまっているのはそんな理由からだ。

広島の土砂災害後、その必要性が叫ばれ、国土交通省と県は被害の大きかった安佐南区を中心に35カ所の砂防ダムの緊急整備を決定。うち30カ所では今年度中にも、土砂がせき止められる規模まで建設を進める方針だ。

だが安佐南区八木、緑井両地区の4カ所では、工事に伴い約70の住宅や事務所に立ち退きを求めなければならなくなった。うち半数ではまだ立ち退きの合意に至らず、工期に遅れが出る可能性がある。

地価下落懸念も

国が補償額の参考にしている取引価格や今年1月の公示地価は、災害前よりも下落している。

安全対策を徹底するため、これまで未指定だった土砂災害警戒区域にも指定されたが、さらなる地価下落や風評被害を招くと住民サイドから懸念も出る。

安佐南区緑井の無職、中丸益好さん(71)は「砂防ダムには賛成だが、まだ住める家を潰すのは心苦しい」と打ち明ける。

床下浸水した自宅は災害前と同じ状態に戻したが、昨年11月に立ち退き対象だと知った。「年齢的にローンも組めないので、今の補償では家を再建できない。どんな形でもいいので支援してほしい」

中丸さんら立ち退きを迫られた約30世帯は連絡会を結成。補償額の再算定や義援金の支給などを市に要望した。しかし、市は公平性の観点から「義援金配分は難しい」とし、国交省も「規定の額で合意した住民もおり、今から増額はできない。理解してもらうしかない」と議論は平行線をたどったままだ。

砂防ダム  土石流防止のため山地の渓流につくられる堤。砂防堰堤とも呼ばれる。水だけを通して土砂を堆積させるコンクリート製の構造が一般的。たまった土砂は平時の水の流れで、徐々に下流に流されていく。コンクリートの代わりに鉄製の柵を設置し、流木や土石を止めるタイプのものもある。


◆広島土砂災害1年:暮らし再建へ一歩 復興10年計画、砂防ダム課題
(毎日新聞 2015年08月19日 大阪朝刊)
http://mainichi.jp/area/news/20150819ddn010040014000c.html

 昨年8月に広島市北部を襲って75人の命を奪った土砂災害は、20日で発生から1年になる。被災地では、国と県が土石流を防ぐ砂防ダムの整備や土砂災害警戒区域の指定を進めている。市は防災計画を見直すとともに、今春から10年間の復興計画をスタートさせた。現地に残る被害の爪痕は深く、被災者が住宅を復旧させ、身内を失ったつらさから立ち直るにはいまだ遠い道のりにある。あの日、何が起き、街はどう変わろうとしているのか。

 昨年8月20日未明から朝にかけ、局地的な豪雨が住宅街と裏山を襲った。地盤が緩んで100カ所以上で土石流が発生。広島市安佐北・安佐南両区を中心に山沿いの住宅街がのみ込まれて74人が亡くなった。今年7月には、肺炎で3月に亡くなった86歳の女性が市から災害関連死と認定された。

 市と県、国は災害対応に本腰を入れている。避難勧告の遅れが指摘された市は3月、災害対応時のマニュアルとなる地域防災計画を改正し、今年度から運用している。従来は職員が学校などの避難所に行って受け入れ準備を整えてから市が避難勧告を出していたが、職員の到着が遅れて勧告の発令が遅れる問題が露呈した。

 市は勧告を迅速に出すため、避難所開設を待たずに発令できるようマニュアルに明記。危険を住民に周知する情報の出し方も、3段階から4段階に細分化した。また、避難所への住民移動が間に合わない場合は、近所にある鉄筋建物の上階に逃げたり、自宅2階以上の山側と反対にある部屋に逃げたりするよう、具体的な避難方法を示した。

 県は土砂災害警戒区域の指定や見直しも急ピッチで進めている。甚大被害を受けた地域は災害前、区域指定のための調査だけにとどまり、住民に危険地域であることを示せていなかった。県は現地調査の場所を従来より増やし、調査で得た渓流の浸食の深さや幅のデータなどを参考にしながら、犠牲者が多かった安佐南区八木・緑井両地区を3月30日に特別警戒区域と警戒区域に指定した。

 豪雨時の土石流をせき止めるには砂防ダムが有効とされる。県は今年度に安佐北区で7基を完成させる。国も被害が大きかった安佐北・安佐南両区の28渓流で建設を計画し、5年で完成させる予定だ。だが、一部は住民との用地取得交渉が継続中で完成めどは立っていない。国は、完成までの応急処置として両区の29カ所に鋼鉄製ネットを設置した。

 住居を追われた184世帯は、市が借り上げたマンションなどで暮らしている。市は移住先をあっせんしてはいるものの、入居期限を来年8月末としており、先行きが見えない状態が続いている。
 ◇山肌の土石、大量流出

 広島の土砂災害は、雨で山肌の地盤が緩み、土石が谷を一気に流れ下って起きた。有識者や専門家でつくる現地調査団などは、1時間雨量が80?100ミリの激しい雨が継続して降ったうえ、災害前からの雨で山に水がたまっていたため、斜面表層の土や石が大量に押し出されたとみている。多くの場所で県想定の2?5倍の量の土砂流出があった。山沿いでは谷の入り口近くまで住宅が広がっていたため、被害が拡大した。
 ◇復興まちづくり

 広島市は今年3月、被災地の復興計画「復興まちづくりビジョン」を初めて策定した。

 災害発生から2024年度までの10年を「復興まちづくり期間」とし、前半を「集中復興期間」、後半を「継続復興期間」と規定。「集中復興期間」では、被害が大きかった同市安佐南区八木・緑井・山本、安佐北区可部東地区などの5地区で、国が進める砂防ダムや避難路となる幹線道路の整備を優先する。「継続復興期間」では、残りの避難路や雨水排水路などの整備をする。

 他に、自主防災組織による地域防災や減災に向けた取り組みへの助成、災害の教訓を継承する地域の取り組みへの支援なども盛り込んでいる。

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 この特集は、植田憲尚、石川将来(以上、広島支局)、瀬谷健介(岡山支局)、望月亮一、大西岳彦(以上、写真部)、横田詞輝(大阪本社デザイン課)が担当しました。

【2015/08/21 02:14】 | 新聞記事から
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