「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                嶋津 暉之

人工降雨実験についての解説記事です。
「今のところ降雨のメカニズムは神の領域として保たれている」ようです。

◆(サザエさんをさがして)人工降雨実験 電力求め、神の領域へ
(朝日新聞 2015年5月9日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11740828.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11740828

 遺伝子研究の進展などを聞くと、人は神の領域まで踏み込んだのではないかと思う。半面、やはり人為の及ばぬ世界もあるように思ったりする。そのひとつがお天気ではないだろうか。突然の荒天で人が亡くなることもあるし、日照りが続けば農作物はやられるのだ。

 この漫画が掲載された日の朝日新聞には、こんな記事が載っている。

 「“人工雨合戦”始まる」「月末から全国で」

 神の領域に挑もうとしたのは水道局でも農林業関係の機関でもない。実験の主体は東京電力をはじめ全国の5電力会社。背景は電力需要の増加だ。資源エネルギー庁のデータによると、1952年の発電シェアは水力が8割。つまりダムに水がないと電気が供給できなかった。

     *

 ダムに水をためるには山に雨が降る必要がある。というわけで、電力会社が躍起となって雨を降らそうとした。東京電力の実験についてはこう書かれている。

 「草津白根山頂にヨウ化銀の地上燃焼装置五台を備え、上昇気流に燃えるヨウ化銀塩をのせ、奥利根電源地帯の人工増雨をねらう」。積乱雲に気球を上げ、ヨウ化銀とドライアイスを雲上から散布するという実験も紹介されている。

 人工降雨の研究に長く携わってきた気象庁気象研究所の村上正隆さんによると、電力各社が実験を繰り返したのは「1950(昭和25)年から65年まで」。雨を降らす鍵は雲の中に氷の粒を作ることだ。ヨウ化銀はその核(氷晶核)になる。ドライアイスの場合は落下しながら雲を冷やして氷晶を発生させる。

 気になるのは結果だが……。

 「本当の意味では検証できていません」と村上さん。雨が増えた可能性もあるが、厳密には確認されていない。電力会社の目的は雨に降ってもらうことなので、精緻(せいち)な検証をする必要がなかったらしい。

 発電量に占める水力のシェアは60年代の前半に50%を割り、60年代後半には首位の座を火力に譲った。東電福島第一原発事故直前の2010年には揚水発電を入れても8・7%。30・8%の原子力が発電量のトップに立っていた。

     *

 水力の比率が下がるにつれ、電力会社は人工降雨から手を引いた。代わって取り組んだのは水道局で、国も研究を支援した。基本的な方法は50年代から変わっていない。つまりヨウ化銀の煙を上げるか、ドライアイスを上からまくか。

 村上さんはプロペラ機からドライアイスをまく方法で、理論上の人工降雪に道筋をつけた。

 「冬場、群馬・新潟の県境に発生する雲が最適なんです。その雲を利用すれば、技術的には降雪量を30%増やせるところまできました」

 最適な雲は高さ3千~4千メートル。その上から微細なドライアイスを散布して雪を降らす。群馬と新潟の県境に雪が降れば、関東のダムに雪解け水がたまる。

 「しかし実際にやったことはありません」

 村上さんによると、人工降雨に取り組んでいるのは世界50カ国。最も研究が進んでいるのは実は日本で、村上さんは米気象学会の「人工降雨委員会」でトップを務めている。

 日本で人工降雨の研究が進んだ理由はなにか。切実に雨を求める国々は基礎研究を後回しにして雨を降らそうとしているが、目に見えた成果は上がらない。比較的雨が多い日本は万が一の事態を考えて地道に研究している。だから基礎データの蓄積が進む、という図式らしい。

 今のところ降雨のメカニズムは神の領域として保たれている。
 (依光隆明)


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 「草津白根山頂にヨウ化銀の地上燃焼装置五台を備え、上昇気流に燃えるヨウ化銀塩をのせ、奥利根電源地帯の人工増雨をねらう」。積乱雲に気球を上げ、ヨウ化銀とドライアイスを雲上から散布するという実験も紹介されている。

 人工降雨の研究に長く携わってきた気象庁気象研究所の村上正隆さんによると、電力各社が実験を繰り返したのは「1950(昭和25)年から65年まで」。雨を降らす鍵は雲の中に氷の粒を作ることだ。ヨウ化銀はその核(氷晶核)になる。ドライアイスの場合は落下しながら雲を冷やして氷晶を発生させる。

 気になるのは結果だが……。

 「本当の意味では検証できていません」と村上さん。雨が増えた可能性もあるが、厳密には確認されていない。電力会社の目的は雨に降ってもらうことなので、精緻(せいち)な検証をする必要がなかったらしい。

 発電量に占める水力のシェアは60年代の前半に50%を割り、60年代後半には首位の座を火力に譲った。東電福島第一原発事故直前の2010年には揚水発電を入れても8・7%。30・8%の原子力が発電量のトップに立っていた。

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 水力の比率が下がるにつれ、電力会社は人工降雨から手を引いた。代わって取り組んだのは水道局で、国も研究を支援した。基本的な方法は50年代から変わっていない。つまりヨウ化銀の煙を上げるか、ドライアイスを上からまくか。

 村上さんはプロペラ機からドライアイスをまく方法で、理論上の人工降雪に道筋をつけた。

 「冬場、群馬・新潟の県境に発生する雲が最適なんです。その雲を利用すれば、技術的には降雪量を30%増やせるところまできました」

 最適な雲は高さ3千~4千メートル。その上から微細なドライアイスを散布して雪を降らす。群馬と新潟の県境に雪が降れば、関東のダムに雪解け水がたまる。

 「しかし実際にやったことはありません」

 村上さんによると、人工降雨に取り組んでいるのは世界50カ国。最も研究が進んでいるのは実は日本で、村上さんは米気象学会の「人工降雨委員会」でトップを務めている。

 日本で人工降雨の研究が進んだ理由はなにか。切実に雨を求める国々は基礎研究を後回しにして雨を降らそうとしているが、目に見えた成果は上がらない。比較的雨が多い日本は万が一の事態を考えて地道に研究している。だから基礎データの蓄積が進む、という図式らしい。

 今のところ降雨のメカニズムは神の領域として保たれている。
 (依光隆明)

【2015/05/11 01:40】 | 新聞記事から
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