「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                   嶋津 暉之

愛媛県の肱川では、二つの大規模ダム事業が行われています。
一つは山鳥坂ダムの建設であり、今一つは鹿野川ダムに国内最大級の水路トンネルを建設する事業です。
いずれも、肱川の自然に多大なダメージを与える事業であることは言うまでもありません。
鹿野川ダムの改造事業について詳しい技術レポートの記事がありますので、参考までにお伝えします。
テキスト部分のみを転載しますが、元の記事には詳しい図や写真も掲載されています。

◆洪水被害を回避 鹿野川ダム、国内初の水路トンネル増設 日本大改造(2)
(日本経済新聞 2015/2/26 7:00 )
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83035720Q5A210C1000000/

国内各地で、将来を見据えたインフラの整備事業が進んでいる。山では迫り来る自然災害に備え、都市では国際競争に打ち勝てるような力を高め、地方では人を呼び集めてにぎわいを生み出す――。このように現状の社会的課題を高度に解決し、新しい日本を構築しようという事業は少なくない。連載「日本大改造」では、今後のインフラ整備の指針となりそうな事業に着目し、日本の社会基盤を人知れず支える現場の実像に迫る。第2回は、洪水対策のために国内最大級の水路トンネルを建設中の鹿野川ダムを取り上げる。

愛媛県大洲市にある鹿野川ダムで、最大で毎秒1000m3(立方メートル)の水を流せる国内最大級の水路トンネルを建設している。内径11.5m、長さ457mのトンネルで、堤体(ダム本体)右岸を通って、ダム湖と下流側をバイパスする。既設ダムに「トンネル洪水吐き」を新設する国内初の工事だ。

トンネル洪水吐きの曲線区間。「ウオータータイト構造」にするために防水シートで完全に止水し、外圧に耐えられるように鉄筋を入れている(写真:大村拓也、以下特記以外は同じ)

同ダムのある肱川流域では、この10年で3度の床上浸水を伴う洪水被害が発生。国土交通省は河川整備計画に基づき、従来1650万m3だった洪水調節容量を約1.4倍の2390万m3へ増やす。427億円を投じ、2016年度の完成を目指している。


鹿野川ダムのトンネル洪水吐きの計画(資料:国土交通省)


■穴開けるには堤体が薄すぎ

工事を発注する国交省山鳥坂ダム工事事務所の三宅和志副所長は、次のように話す。「堤体のかさ上げで貯水容量を増やすのではなく、現在の容量配分を見直した。予備放流水位を4.7m下げるので、新たな洪水吐きが必要になった」。

鹿野川ダムでは洪水時に、放流量を毎秒600m3に保って洪水調節する。新たな予備放流水位は標高76.3m。これに対し、既存の洪水吐きの敷き高は標高76mだ。洪水調節開始時の水深の差は30cmしかない。このままでは放流量が少なく、計画した洪水調節容量を確保できない。

洪水吐きの新設では、堤体自体に穴を開けて放流管を埋める手法がある。2017年度の完成に向けて改造中の鹿児島県内の鶴田ダムは、この手法を採用している。しかし、鹿野川ダムは堤体が薄く、穴を開けるには補強を要する。補強中は洪水調節や発電が難しいので、この方法は鹿野川ダムで採用できなかった。

■仮設構台の新工法を初採用

トンネル洪水吐きの飲み口は、ダム湖内に造る。飲み口の敷き高は標高53mで、その水深は最大36mに達する。現在、湖面から鋼管矢板を打ち、仮締め切りと土留めを兼ねた内径17mのたて坑を構築している。

鋼管は全長44m、外径1.5mで、円周上に34本並べる。その後、鋼管矢板の内側から水を抜き、湖底を30m以上の深さまで掘る。続いて、山側の鋼管を切り抜き、下流側から掘削したトンネルとつなぐ。


仮設構台上で施工中の鋼管矢板。手前に円状に並べたのが飲み口たて坑で、左奥が流入水路に当たる。全周回転掘削機で地盤を掘削した後、鋼管をバイブロハンマーなどで打設する

さらに、たて坑のダム湖側は、トンネルの延長線上に沿った幅9.4m、延長47mの範囲を63本の鋼管矢板で囲う。ダム湖の水を飲み口に導く流入水路にするのだ。三宅副所長は、「飲み口と流入水路の敷き高は、ダム湖の最深部よりも10m程度高くしている。流入水路の鋼管矢板の一部は、地盤から約6mの高さで切断し、堆積土砂がトンネル洪水吐きに流れ込まない構造にした」と解説する。

鋼管の打設作業のため、湖面には、合計4500m2(平方メートル)の仮設構台を設けた。トンネル洪水吐き新設工事の施工を担う清水建設・安藤ハザマJV(企業共同体)は、「LIBRA-S工法」と呼ぶ工法を一部の仮設構台の設置で初採用した。

LIBRA-S工法で組んだ作業構台。「ダムの改造工事は、水深の深い現場が多い。今後、活用の場は増えるだろう」(清水建設JVの芳岡良一所長)


同工法では、柱を建て込んだ後にブレス材を気中で仮組みして柱伝いに降下させ、水中でボルトを締めれば隣り合う柱を固定できる。横山基礎工事が開発した従来のLIBRA工法を改良して潜水作業を55%減らし、施工効率を2倍に高めた。

「構台の設置箇所は最大で水深40mあるうえに、水の汚濁防止用のシルトフェンスで囲った現場の水中は視界が悪い。そこで、LIBRA-S工法の開発を思い立った」と、清水建設JVの芳岡良一所長は振り返る。

■鉄筋コンクリートで覆工

トンネルの掘削は2012年9月に下流側から始めた。2014年2月には、飲み口たて坑まで残り14mの地点に到達した。2015年夏ごろに、ダム湖側から掘削して貫通させる。

飲み口部の完成イメージ(写真左上)と、鋼管矢板を用いたたて坑の模型(左下と右の写真)。右の写真はトンネル貫通時の断面を示す。たて坑内部には、ローラーゲートを設置する計画だ。流入水路を含めて、合計97本の鋼管を使う(資料・写真:清水建設JV)

掘削の大部分には発破を用いた。ただし、「ダム湖に近い場所で発破を使うと、振動で地盤が緩んで出水の恐れがある」(芳岡所長)。そこで清水建設JVは、飲み口たて坑付近の延長25mだけを割岩工法で掘削する技術提案をした。事前に飲み口たて坑の地上付近からトンネル周辺に向けたグラウチングも施し、地盤の亀裂を埋めた。

発電放水管など内水圧が加わるトンネルでは、通常、鋼製の放流管を使う。だが、鹿野川ダムではダム湖側の延長336mで覆工コンクリートを流路に採用して、費用を抑えた。

山鳥坂ダム工事事務所の三宅副所長は覆工構造の使い分けを、次のように説く。「土かぶりが大きい区間は、トンネルに加わる外圧が大きい。覆工厚さを60~80cmとして、鉄筋コンクリート構造にすれば、内水圧にも耐えられる。地下水位の低下による外水圧の変化を防ぐため、覆工の内側と外側を、完全に止水するウオータータイト構造とした」。

ウオータータイト構造を採用したトンネルと鋼製の放流管の接続部。覆工完了後、ダム軸の延長線が交差する付近とこの部分の2カ所で、トンネル内部から放射状にカーテングラウチングを施工する。清水建設JVは、グラウト注入口となる冶具を開発して、事前に防水シートと覆工に埋め込んだ。グラウト注入完了後は蓋を閉めて防水機能を得る


(フリーライター 大村拓也)

[日経コンストラクション2014年10月13日号の記事を基に再構成]


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トンネル洪水吐きの曲線区間。「ウオータータイト構造」にするために防水シートで完全に止水し、外圧に耐えられるように鉄筋を入れている(写真:大村拓也、以下特記以外は同じ)

同ダムのある肱川流域では、この10年で3度の床上浸水を伴う洪水被害が発生。国土交通省は河川整備計画に基づき、従来1650万m3だった洪水調節容量を約1.4倍の2390万m3へ増やす。427億円を投じ、2016年度の完成を目指している。


鹿野川ダムのトンネル洪水吐きの計画(資料:国土交通省)


■穴開けるには堤体が薄すぎ

工事を発注する国交省山鳥坂ダム工事事務所の三宅和志副所長は、次のように話す。「堤体のかさ上げで貯水容量を増やすのではなく、現在の容量配分を見直した。予備放流水位を4.7m下げるので、新たな洪水吐きが必要になった」。

鹿野川ダムでは洪水時に、放流量を毎秒600m3に保って洪水調節する。新たな予備放流水位は標高76.3m。これに対し、既存の洪水吐きの敷き高は標高76mだ。洪水調節開始時の水深の差は30cmしかない。このままでは放流量が少なく、計画した洪水調節容量を確保できない。

洪水吐きの新設では、堤体自体に穴を開けて放流管を埋める手法がある。2017年度の完成に向けて改造中の鹿児島県内の鶴田ダムは、この手法を採用している。しかし、鹿野川ダムは堤体が薄く、穴を開けるには補強を要する。補強中は洪水調節や発電が難しいので、この方法は鹿野川ダムで採用できなかった。

■仮設構台の新工法を初採用

トンネル洪水吐きの飲み口は、ダム湖内に造る。飲み口の敷き高は標高53mで、その水深は最大36mに達する。現在、湖面から鋼管矢板を打ち、仮締め切りと土留めを兼ねた内径17mのたて坑を構築している。

鋼管は全長44m、外径1.5mで、円周上に34本並べる。その後、鋼管矢板の内側から水を抜き、湖底を30m以上の深さまで掘る。続いて、山側の鋼管を切り抜き、下流側から掘削したトンネルとつなぐ。


仮設構台上で施工中の鋼管矢板。手前に円状に並べたのが飲み口たて坑で、左奥が流入水路に当たる。全周回転掘削機で地盤を掘削した後、鋼管をバイブロハンマーなどで打設する

さらに、たて坑のダム湖側は、トンネルの延長線上に沿った幅9.4m、延長47mの範囲を63本の鋼管矢板で囲う。ダム湖の水を飲み口に導く流入水路にするのだ。三宅副所長は、「飲み口と流入水路の敷き高は、ダム湖の最深部よりも10m程度高くしている。流入水路の鋼管矢板の一部は、地盤から約6mの高さで切断し、堆積土砂がトンネル洪水吐きに流れ込まない構造にした」と解説する。

鋼管の打設作業のため、湖面には、合計4500m2(平方メートル)の仮設構台を設けた。トンネル洪水吐き新設工事の施工を担う清水建設・安藤ハザマJV(企業共同体)は、「LIBRA-S工法」と呼ぶ工法を一部の仮設構台の設置で初採用した。

LIBRA-S工法で組んだ作業構台。「ダムの改造工事は、水深の深い現場が多い。今後、活用の場は増えるだろう」(清水建設JVの芳岡良一所長)


同工法では、柱を建て込んだ後にブレス材を気中で仮組みして柱伝いに降下させ、水中でボルトを締めれば隣り合う柱を固定できる。横山基礎工事が開発した従来のLIBRA工法を改良して潜水作業を55%減らし、施工効率を2倍に高めた。

「構台の設置箇所は最大で水深40mあるうえに、水の汚濁防止用のシルトフェンスで囲った現場の水中は視界が悪い。そこで、LIBRA-S工法の開発を思い立った」と、清水建設JVの芳岡良一所長は振り返る。

■鉄筋コンクリートで覆工

トンネルの掘削は2012年9月に下流側から始めた。2014年2月には、飲み口たて坑まで残り14mの地点に到達した。2015年夏ごろに、ダム湖側から掘削して貫通させる。

飲み口部の完成イメージ(写真左上)と、鋼管矢板を用いたたて坑の模型(左下と右の写真)。右の写真はトンネル貫通時の断面を示す。たて坑内部には、ローラーゲートを設置する計画だ。流入水路を含めて、合計97本の鋼管を使う(資料・写真:清水建設JV)

掘削の大部分には発破を用いた。ただし、「ダム湖に近い場所で発破を使うと、振動で地盤が緩んで出水の恐れがある」(芳岡所長)。そこで清水建設JVは、飲み口たて坑付近の延長25mだけを割岩工法で掘削する技術提案をした。事前に飲み口たて坑の地上付近からトンネル周辺に向けたグラウチングも施し、地盤の亀裂を埋めた。

発電放水管など内水圧が加わるトンネルでは、通常、鋼製の放流管を使う。だが、鹿野川ダムではダム湖側の延長336mで覆工コンクリートを流路に採用して、費用を抑えた。

山鳥坂ダム工事事務所の三宅副所長は覆工構造の使い分けを、次のように説く。「土かぶりが大きい区間は、トンネルに加わる外圧が大きい。覆工厚さを60~80cmとして、鉄筋コンクリート構造にすれば、内水圧にも耐えられる。地下水位の低下による外水圧の変化を防ぐため、覆工の内側と外側を、完全に止水するウオータータイト構造とした」。

ウオータータイト構造を採用したトンネルと鋼製の放流管の接続部。覆工完了後、ダム軸の延長線が交差する付近とこの部分の2カ所で、トンネル内部から放射状にカーテングラウチングを施工する。清水建設JVは、グラウト注入口となる冶具を開発して、事前に防水シートと覆工に埋め込んだ。グラウト注入完了後は蓋を閉めて防水機能を得る


(フリーライター 大村拓也)

[日経コンストラクション2014年10月13日号の記事を基に再構成]

【2015/02/27 03:18】 | 新聞記事から
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