「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                     嶋津 暉之

1月15日(金)は国交省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」で、22日(金)は群馬県議会の八ッ場ダム対策特別委員会で意見陳述をしましたので、簡単に報告します。

(1)1月15日(金)の国交省の
  「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」


会議の非公開
 この有識者会議の問題は何と言っても、非公開で会議が進められていることです。この会議はダムにたよらない治水へと、従来の河川行政を根本から変えていくことを目的とするものであるから、国民とともに議論を進めていく姿勢がなければ、その答申は国民の共感を得るものになりません。
公開はその目的を達成するための必須の条件なのです。
会議の冒頭で、座長から、会議の中で出てくる特定の河川名、ダム名が公開されると、関係住民に不安を与えるので、非公開にするという説明がありましたが、それは非公開の理由になるようなものではありません。
これからも会議の公開を強く求めていかなければなりません。

会議は非公開であるけれども、ダムの問題点、ダムにたよらない治水へ河川行政を変える具体的な手順を有識者会議の委員、政務三役に伝えなければならないと考え、私は出席することにしました。
委員は9人のうち、8人が出席し、前原大臣、馬渕副大臣、三日月政務官も出席しました。


意見陳述のポイント
 私の意見陳述で使った配布資料は、国交省のホームページの
   第2回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
   (平成22年1月15日開催)配付資料

資料1―1「ダムにたよらない治水のあり方(骨子)」と
資料1―2「ダムにたよらない治水のあり方(スライド)」
に掲載されています。

私としては概念的な話ではなく、データに基づく確かな事実を伝えるように心がけました。30分の陳述で述べたポイントは次のとおりです。

1 ダムは次の根本的な問題があるので、
ダムによらない治水を進めなければならない

ダムの集水面積は小さく、もともとあまり大きな効果を持ち得ない。
雨の降り方によって治水効果が大きく変動するギャンブル的治水対策である。
ダム地点から下流に行くほど、洪水ピークの削減効果が減衰する。
ダム地点の洪水が想定を超えると、ダムは治水機能が急減する


2 新規ダムを治水計画から除くためには、
次のステップを踏んで検証していく必要がある。


第1ステップ 
治水計画の目標流量を近年の最大観測流量に近い数字に再設定する。

第2ステップ

河川整備基本方針で定められている河道整備を優先して進める治水計画に変更する。

第3ステップ
現況河道で流下が可能な洪水流量および河床掘削や堤防の一部嵩上げで流下が可能となる洪水流量を徹底追求する。

第4ステップ
 
想定規模を超える洪水がきても、壊滅的な被害を受けないように、越流があって直ちに決壊しない耐越水堤防に強化するとともに、豊川霞堤地区の事例を参考にして流域への洪水の受容の方策を追求する。


3 ダムの費用便益比(B/C)の正しい再計算を実施する必要がある。

新規ダム事業のB/Cを現実に即して正しく再計算すれば、いずれのダムも1を大きく下回り、ダム中止の理由が明確になるので、その再計算を実施する。


有識者会議の印象
 ダム推進派の委員が多数を占めると思われる有識者会議でしたが、質疑で最初に発言した一委員の意見は意外にも「私も基本的に同じ意見だ」というものでした。
30分の質疑の間で、6人の委員から質問、意見があり、そのうち、1人は敵意むき出しのものでしたが、4人の意見は方向性としては私の意見と共通するところもありました。特に座長は、前原大臣の意向を受けて、ダムによらない治水のあり方を何とかまとめていきたいと考えているようでした。
しかし、問題は、方向性がたとえよくても、ダムによらない治水の具体的な手順、基準をこの有識者会議が本当につくることができるかです。答申が抽象的な文言の羅列だけで、実際にダムの中止に結びつかないもので終ってしまうことも予想されます。
 やはり、会議の公開を求めて、会議の進行状況を国民がしっかりチェックしていかなければなりません。



(2)1月22日(金)の
   群馬県議会の八ッ場ダム対策特別委員会


群馬県議会での意見陳述(まさのあつこさんの提供)
群馬県議会にて
         
経過
 八ッ場ダム推進派が多数を占める群馬県議会で八ッ場ダム対策特別委員会が昨年秋に設置され、今まで推進側の参考人ばかりが呼ばれてきました。
 今回、ダム見直し派の県議の強い働きかけで、八ッ場ダム反対派である大熊孝新潟大学名誉教授と私の招致が実現し、それぞれ治水面、利水面から意見を述べました。
 今までダム推進側の専門家としては、治水面では宮村忠関東学院大学教授、利水面では虫明功臣東京大学名誉教授が意見を述べています。

陳述のポイント
 私は今回は利水面に絞って、八ッ場ダムの必要性が全くないことを具体的なデータに基づいて陳述しました。

ダム推進側は虫明氏が利水面での八ッ場ダムの必要性を陳述していますので、その陳述内容を否定することにも力を注ぎました。私の陳述のポイントは次のとおりです。

・首都圏の水道用水は節水機器の普及と人口の減少でますます減少し、水余りの状況が一層顕著になっていく。群馬県の水道用水もますます減少していくので、基本的に新規の水源開発は無用のものとなっている。

・地盤沈下が沈静化しているので、各市町村水道の自己水源である地下水を活用すれば、県営水道の八ッ場ダムの暫定水利権がたとえなくても、県営水道給水対象地域の水道は水需給に不足をきたすことがない。安全性が高く、味の面でも優れた地下水を水道水源として活用することは群馬県民にとってメリットが大きいので、地下水重視の水行政に転換すべきである。

・県営水道と県営工業用水道の広桃用水転用水利権は冬期は八ッ場ダムの暫定水利権となっているが、冬期も長年の取水実績があって、取水に支障をきたしたことがない。この暫定水利権は国交省の水利権許可制度を変えれば、八ッ場ダムがなくても、実態に合わせて安定水利権にすることが可能である。

・八ッ場ダムの夏期の利水容量は既設の利根川水系ダムの約5%しかないから、完成しても、渇水への利根川の状況はさほど変わらない。

・「八ッ場ダムがあれば、平成8年は取水制限日数を100日減少させることができた」という国交省の話は、 現実と遊離した計算の結果に過ぎない。

・10年に1回の渇水年では利根川水系ダムの供給可能量が21%も減少する」という第5次利根川荒川フルプランの計算も現実と遊離したものであって、10年に1回の渇水年を考えても八ッ場ダム等の新規の水源開発は不要である。

・八ッ場ダムの計画堆砂量は関東地方の大規模ダムの堆砂実績と比べて小さすぎる。下久保ダムの堆砂実績値等から推測すると、八ッ場ダムはダム完成55年後には夏期利水容量が半減し、80年後には夏期利水容量がなくなる。



感想
 私としては、この委員会において虫明氏の陳述内容と私の陳述内容のどちらに理があるか、事実に基づく議論ができることを期待したのですが、質疑の時間が短く、内容に立ち入った議論はほとんどできませんでした。まことに残念です。
 八ッ場ダム対策特別委員会は八ッ場ダム推進の口実をつくりだすために、推進側の思惑で設置されたものですから、今後のことは多くは期待できません。
 しかし、八ッ場ダムの必要性がないことを具体的なデータできちんと示しておくことはその動きにブレーキをかけることになるのではないかと考え、私はできるだけの準備をして精一杯の陳述をしました。

 ※意見陳述に使用したスライドは分割して下記にアップしました
 
1-10   首都圏及び群馬県の水需要の動向
11-20  群馬県上水道・将来の動向 水道用地下水の活用 他
21-30  地下水 広桃用水転用水利権と暫定水利権 他
31-40  暫定水利権の問題 他
41-56  八ツ場ダムと利根川の渇水、取水制限の関係 他
57-60  ダム貯水量の計算結果が実績値に比べて急減する理由
61-70  八ツ場ダムの利水機能の持続年数について 他
                




★こちらもどうぞご覧下さい

 ・八ツ場あしたの会
 ・八ツ場ダムをストップさせる千葉の会
 ・ダム日記2

【2010/01/27 15:20】 | 埼玉の会の見解
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