「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
アメリカのダム撤去の映画「ダムネーション」について詳しい紹介記事が朝日新聞デジタルに載っています。

◆電力より魚 米国で進むダム撤去のドキュメンタリー映画
(朝日新聞デジタル 2014年11月27日)
http://www.asahi.com/and_w/fashion/SDI2014112712901.html

文 上間常正

 地震と津波による福島の原発事故が起きたことで、原子力発電の危うさはだいぶ分かりやすくなった。それでも原発再稼働に向かう動きもあって、総選挙の結果次第ではその動きに拍車もかかるだろう。しかし、電力エネルギーについての心配は原発だけではない。実は水力発電のためのダムでも、“不都合な真実”は起きている。ダムの不都合さは原発より分かりにくいが、すぐにでもきちんとした対策が求められているのだ。

 劇場公開中のドキュメンタリー映画「ダムネーション」は、米国で起きたダムによる予期されなかった弊害とそれに対抗する動きを、美しい映像と緻密な取材で分かりやすく、しかもユーモアも交えて描き出している。

 アメリカ全土には大小合わせて約7万5千ものダムがあって、まさにダム大国といえる。映画ではそうしたダムの数々が、治水や農地開発、あるいは経済発展や大型武器量産のための電力エネルギー対策として20世紀に爆発的に建設された歴史と、その一方でずさんな工事のせいでダムが決壊して多くの人命を含む水害が起きたことを紹介する。そして、ダムによるもっと深刻な、川や森の生態系をはじめ、先住民たちの生活と文化、美しかった景観の破壊について資料映像を交えながら淡々と伝えている。
20世紀の中ごろに建設されたエロワ川のダムは、この川の近くでサケやマスを獲ってきた先住民の生活を根こそぎにしてしまった。ある部族の長老は「滝の近くの漁場の水しぶきと轟音は今でも耳に残る。美しかった滝も水の流れも無くなって、ただの水たまりになってしまった。風も変わった」と語る。その後、上流にさらに4つのダムが作られ、サケはほとんどいなくなった。先住民だけではなく、この水域では多くの植物や動物たちがサケの循環する川の恵みに頼って生きてきたのだ。

 ダムは川の流れを不自然に変えるため、長期的には水質や保水能力を低下させる。発電能力も減る。森から海へ流れる栄養分もせき止めるため、海の魚も減る。さたに、ダムと貯水池は温室効果ガスの最大の排出源の一つであることが、最近の研究で分かってきたという。

 こうしたダムの弊害が明らかになるにつれ、アメリカでは20年も前からダムを撤去する動きが起きている。映画ではそうした市民や環境団体の動きや、撤去後に流域の自然景観や魚が劇的に回復したケースなども伝えている。そして撤去の動きが進んだのは、政治的な過激な行動によってではなく、ダムの現実を知った川を愛する人の思いがつながったからだと説明する。映画では、夜中にダムの高い壁に上から宙づりになってペンキで大きなハサミの絵や切りとり線、スローガンなどを描く環境活動家の愉快な活躍ぶりなどを紹介している。

 この映画を企画・制作したのは、米国のアウトドアブランド「パタゴニア」の創業者イヴォン・シュイナードさん。自身も登山家で「山に人の跡を残さない」というクリーン・クライミングの提唱者でもある。映画は3年半かけて完成した。

 パタゴニアでも製品の綿の素材はすべて無農薬のオーガニックコットンにしたり、フリースのためのペットボトルのリサイクルにいち早く取り組んだりしている。また売り上げの1%を環境保護のための活動に寄付するなど、自然環境のための一貫した姿勢を続けている。パタゴニアの服や用具がファッショナブルに見えるのは、こうしたブランドの姿勢が底にあるからだろう。

 日本でも、ダム撤去の動きは数年前から少しずつ進み始めている。1965年に建設された熊本県坂本村(現・八千代市坂本町)の荒瀬ダムは、ダムの振動被害がひどく水害もかえって増え、アユやウナギなどの激減や干潟での貝やエビの収穫も減った。そのため「球磨川を返せ」との住民の声が高まってダム撤去が実現した。パタゴニア日本支社は、国内3カ所でのダムの撤去・建設中止に取り組むグループの支援を続けている。

 「ダムに賛成することは、川に賛成することだ」とシュイナードさんは語っている。映画に登場する環境活動家は「飛行機か鳥を選ぶなら、鳥を選ぶ」という飛行士リンドバーグの言葉にならい、「電力か魚なら、魚を選ぶ」と話していた。しかし、もし「原発か水力ダムなら」と聞かれたとしたら、どちらも選んではいけないのだ。

  ◇

12月6日からは横浜で、来年1月10日からは大阪・梅田、また名古屋、神戸でも順次公開の予定

「ダムネーション」公式サイト:http://damnationfilm.net/


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20世紀の中ごろに建設されたエロワ川のダムは、この川の近くでサケやマスを獲ってきた先住民の生活を根こそぎにしてしまった。ある部族の長老は「滝の近くの漁場の水しぶきと轟音は今でも耳に残る。美しかった滝も水の流れも無くなって、ただの水たまりになってしまった。風も変わった」と語る。その後、上流にさらに4つのダムが作られ、サケはほとんどいなくなった。先住民だけではなく、この水域では多くの植物や動物たちがサケの循環する川の恵みに頼って生きてきたのだ。

 ダムは川の流れを不自然に変えるため、長期的には水質や保水能力を低下させる。発電能力も減る。森から海へ流れる栄養分もせき止めるため、海の魚も減る。さたに、ダムと貯水池は温室効果ガスの最大の排出源の一つであることが、最近の研究で分かってきたという。

 こうしたダムの弊害が明らかになるにつれ、アメリカでは20年も前からダムを撤去する動きが起きている。映画ではそうした市民や環境団体の動きや、撤去後に流域の自然景観や魚が劇的に回復したケースなども伝えている。そして撤去の動きが進んだのは、政治的な過激な行動によってではなく、ダムの現実を知った川を愛する人の思いがつながったからだと説明する。映画では、夜中にダムの高い壁に上から宙づりになってペンキで大きなハサミの絵や切りとり線、スローガンなどを描く環境活動家の愉快な活躍ぶりなどを紹介している。

 この映画を企画・制作したのは、米国のアウトドアブランド「パタゴニア」の創業者イヴォン・シュイナードさん。自身も登山家で「山に人の跡を残さない」というクリーン・クライミングの提唱者でもある。映画は3年半かけて完成した。

 パタゴニアでも製品の綿の素材はすべて無農薬のオーガニックコットンにしたり、フリースのためのペットボトルのリサイクルにいち早く取り組んだりしている。また売り上げの1%を環境保護のための活動に寄付するなど、自然環境のための一貫した姿勢を続けている。パタゴニアの服や用具がファッショナブルに見えるのは、こうしたブランドの姿勢が底にあるからだろう。

 日本でも、ダム撤去の動きは数年前から少しずつ進み始めている。1965年に建設された熊本県坂本村(現・八千代市坂本町)の荒瀬ダムは、ダムの振動被害がひどく水害もかえって増え、アユやウナギなどの激減や干潟での貝やエビの収穫も減った。そのため「球磨川を返せ」との住民の声が高まってダム撤去が実現した。パタゴニア日本支社は、国内3カ所でのダムの撤去・建設中止に取り組むグループの支援を続けている。

 「ダムに賛成することは、川に賛成することだ」とシュイナードさんは語っている。映画に登場する環境活動家は「飛行機か鳥を選ぶなら、鳥を選ぶ」という飛行士リンドバーグの言葉にならい、「電力か魚なら、魚を選ぶ」と話していた。しかし、もし「原発か水力ダムなら」と聞かれたとしたら、どちらも選んではいけないのだ。

  ◇

12月6日からは横浜で、来年1月10日からは大阪・梅田、また名古屋、神戸でも順次公開の予定

「ダムネーション」公式サイト:http://damnationfilm.net/

【2014/11/29 00:48】 | 新聞記事から
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