「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                嶋津 暉之

北海道の沙流川で、平取ダム本体工事の入札公告が10月6日に行われました。
この本体工事開始に対して見直しを強く求める黒川伸一論説委員のオピニオンが北海道新聞に掲載されました。


◆環境変化を注視せよ  黒川伸一
(北海道新聞 2014年9月29日 論説委員室から)

日高管内平取町と日高町を流れる沙流川の上流域で、平取ダムの本体工事が年度内にも始まろうとしている。

下流の二風谷ダム(1998年完成)とのワンセットの沙流川総合開発事業。その後半の目玉になる。

しかし近年、下流域中心に砂の消失など漁業資源をめぐる環境変化が際立つ。工事を中断してでも、詳しく調べるべきではないか。

事業は四十数年前、苫小牧東部工業基地への用水供給の目的のため計画された。二つのダムにより、大量の水を導水管で苫東に供給するという構想が発端だった。

82年に事業開始、86年に二風谷ダムが着工した。この段階では苫東の「利水」に加え、洪水対策としての「治水」も加わり、両ダムは多目的ダムの看板を掲げた。

しかし、肝心の苫東は重厚長大産業の基地として失敗に終わり、「工業用水供給」という当初の目的は消えた。

「両ダムは、苫東への『利水』に名を借りた、ちゃっかり『治水』ダム。苫東が破綻した今、多目的という言葉はごまかしと言える」

かつて開発局長の諮問機関である沙流川総合開発事業審議委の委員長を務めた東三郎・北大名誉教授(砂防工学)は、こう指摘する。

平取ダム建設をめぐっては、過去に2回、事業を止めて検証する節目があった。

苫東破綻後、事業の是非を論議した沙流川総合開発事業審議委(95~97年)と、2009年に当時の民主党政権が打ち出した「脱ダム方針」のもとで行われた「再検証」審議(10~12年)だ。

沙流川総合開発事業審議委では、東委員長が治水効果ヘの疑問などから建設反対を唱えたが、地元の平取町と門別町(現日高町)の委員の推進論にかき消された。

事業を再検証する「検討の場」では、地元首長と開発局などの5回の審議で、ダム以外の治水対策と比較検討したが、平取ダム建設が最適との結論に達した。地元首長の推進の声が大きかったからだ。

ともに、沙流川の洪水対策は「2ダムで完結」という開発局の論理を、地元自治体が支えた格好だった。しかし、環境面での点検が十分になされたとは到底思えない。

沙流川流域では二風谷ダム完成以降、道内外の他ダム地域と比べても、顕著過ぎる環境変化がみられる。

二風谷ダムでは、膨大な砂がダム湖にたまり、計画の総貯水容量の半分以上が埋まった。貯水能力が低下、洪水時に不安を募らせ、「世界最悪のダム」と酷評される。

ダムの下流では、砂の供給量が極端に減ったため、河床や川の水位が下がり、それに伴い地域の地下水位も低下。上水道を地下水に頼る日高町では、水源である井戸の掘り直しが繰り返されている。

最下流域では、シシャモが産卵に使う小砂利が減り、川の濁りが目立つ。河口周辺の海岸では砂浜や海底の砂地の消失が進みホッキ貝の漁場が消えた。

環境の変化は特に下流域で深刻で、住民の日常に影響が及びつつあるように見える。

当初の目的を失い、後付けの「治水」を大義名分にしたダム事業。しかし「治水」を優先するあまり、環境面の検証を軽視しすぎてはいまいか。

地域の産業などにとって、取り返しがつかないことになってはならない。環境の変化をもっと注視したい。


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かつて開発局長の諮問機関である沙流川総合開発事業審議委の委員長を務めた東三郎・北大名誉教授(砂防工学)は、こう指摘する。

平取ダム建設をめぐっては、過去に2回、事業を止めて検証する節目があった。

苫東破綻後、事業の是非を論議した沙流川総合開発事業審議委(95~97年)と、2009年に当時の民主党政権が打ち出した「脱ダム方針」のもとで行われた「再検証」審議(10~12年)だ。

沙流川総合開発事業審議委では、東委員長が治水効果ヘの疑問などから建設反対を唱えたが、地元の平取町と門別町(現日高町)の委員の推進論にかき消された。

事業を再検証する「検討の場」では、地元首長と開発局などの5回の審議で、ダム以外の治水対策と比較検討したが、平取ダム建設が最適との結論に達した。地元首長の推進の声が大きかったからだ。

ともに、沙流川の洪水対策は「2ダムで完結」という開発局の論理を、地元自治体が支えた格好だった。しかし、環境面での点検が十分になされたとは到底思えない。

沙流川流域では二風谷ダム完成以降、道内外の他ダム地域と比べても、顕著過ぎる環境変化がみられる。

二風谷ダムでは、膨大な砂がダム湖にたまり、計画の総貯水容量の半分以上が埋まった。貯水能力が低下、洪水時に不安を募らせ、「世界最悪のダム」と酷評される。

ダムの下流では、砂の供給量が極端に減ったため、河床や川の水位が下がり、それに伴い地域の地下水位も低下。上水道を地下水に頼る日高町では、水源である井戸の掘り直しが繰り返されている。

最下流域では、シシャモが産卵に使う小砂利が減り、川の濁りが目立つ。河口周辺の海岸では砂浜や海底の砂地の消失が進みホッキ貝の漁場が消えた。

環境の変化は特に下流域で深刻で、住民の日常に影響が及びつつあるように見える。

当初の目的を失い、後付けの「治水」を大義名分にしたダム事業。しかし「治水」を優先するあまり、環境面の検証を軽視しすぎてはいまいか。

地域の産業などにとって、取り返しがつかないことになってはならない。環境の変化をもっと注視したい。


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【2014/10/09 20:20】 | 新聞記事から
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