「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
◆510の農業ダム・池、耐震不足 全国点検、なお数千カ所調査中
(朝日新聞 2014年8月29日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11322323.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11322323

ため池・ダムの点検状況

東日本大震災で農業用ダムが決壊して死者が出たことから、全国の自治体がダムやため池の一斉点検を進めている。

これまでの調査で少なくとも約510カ所で、水をせき止める堤体が耐震不足であることがわかった。このほかの数千カ所でも耐震調査を進めており、耐震不足は増えそうだ。農林水産省はため池の改修やハザードマップの整備を各自治体に求めている。
農水省は2013年度から、規模が大きく、周囲の人家に被害が出る可能性があるため池について、目視による一斉点検を各自治体に求めている。対象は全国で約11万カ所あり、2年間かけて点検し、問題があるものを絞り込む。

朝日新聞が今月、一斉点検の状況を各都道府県に聞いたところ、少なくとも計7万カ所の検査が終わっていた。

いまの国の基準ではそれぞれの土地で100年に1回程度起こる中規模な地震に耐える必要があるが、42道府県の6千カ所ではそれを満たしていない可能性もあり耐震調査の対象になった。今月までにその調査を終えた13道府県の計1400カ所のうち約510カ所が耐震不足だった。

東日本大震災では、福島県須賀川市の藤沼ダムが決壊した。約150万トンの水がすべて流れ出し、下流の住宅が流されるなどして、7人が死亡、1人が行方不明に、家屋22棟が全壊した。

福島県の調査によると、地震の揺れで堤体が液状化したという。調査にあたった田中忠次・東大名誉教授は「地震によるダムの決壊は世界でもほとんど例がない。国内のため池やダムには古くて、構造がわからないものも多く、決壊する可能性がないとはいえない」と警告する。

(座小田英史、神山純一)


*キーワード

<農業用ダム・ため池> 降水量の少ない地域で農業用水を確保するために山間部の沢などを堤体でせき止め人工的に設置された池。農林水産省によると、全国で21万カ所にあり西日本に多い。堤体の高さが15メートル以上のものはダムとして管理されているものもある。


〇農業用ダム・ため池が多い道府県の点検状況

道府県/点検の対象(13~14年度)/調査実施(今年8月まで)/耐震不足(同)



北海道/約800/3/1

青森/1318/14/一部

山形/約1100/15/一部

千葉/1047/24/11

静岡/651/40/29

愛知/1990/347/177(3)

岐阜/約1600/115/53(13)

京都/約1300/17/8

大阪/2154/59/なし

兵庫/約9800/300/約160

和歌山/約1500/4/2

広島/約5000/80/精査中

山口/約4800/177/精査中

香川/約2200/19/8(2)

愛媛/約2800/88/60

宮崎/約700/88/一部

(数字は農業用ダム・ため池の数。カッコ内は堤体の高さが15メートル以上のダムの数。朝日新聞まとめ)

◆ため池、耐震追いつかず 数膨大、足りぬ人・予算 全国点検
(朝日新聞2014年8月29日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11322171.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11322171

東日本大震災を受けて、農業用ダムやため池が地震で決壊する危険性がようやく認識され始めた。だが、ため池の数は多く、自治体は頭を抱える。▼1面参照

酒米「山田錦」で有名な兵庫県三木市。殿畑新池(堤高7・8メートル、総貯水量2・1万トン)を管理する水利組合の井上忠雄代表(68)は心配顔だ。昨年の耐震調査で基準を大きく下回る結果が出たからだ。「地震が起きたら、堤体はもたんのやろか。危機感でいっぱいになった」。ため池の近くには田んぼだけでなく、民家が点在している。

老朽化が激しく、一昨年からため池の土壌から水漏れが見つかり、その範囲は広がっている。100年以上前に土を固めて造られたとされ、1940年代に堤体を改修した記録があるが、それ以降はない。県は来年度から工事の調査を開始。総事業費は約1億3千万円を見込む。

兵庫県のため池数は日本で最も多く、約3万8千カ所ある。そのうち規模が大きく、一斉点検の対象になったのは9800カ所。その中で危険度の高い600カ所で耐震検査を実施する計画を立てる。

耐震調査は、ボーリングからデータ解析までに半年ほどかかり、費用は平均400万円ほどかかる。県の担当者は「優先順位をつけて調べるしかない」と、完全な対策は難しいという。

ため池の密集率が最も高い香川県は、2012年に地質やため池管理の専門家ら5人で委員会をつくり、国に先行して独自の耐震基準を作った。規模の大きなため池では、東日本大震災で藤沼ダム(福島県須賀川市)が決壊する原因となった「長周期地震動」にも耐えられるかを判断する。担当者は「安全を保つために、国の基準を見据えて対策をとっている」と話す。

この結果、耐震調査をした19カ所のうち8カ所で耐震不足が判明した。県は5年かけて、耐震補強工事を進める計画だ。さらに緊急の対応として、国に先駆けて11年度から貯水量10万トン以上のため池180カ所でハザードマップを作る市町に補助金を出している。昨年度までに全て作成が終わり、避難訓練を始めたところもある。

農水省も耐震基準の見直しを進めている。南海トラフ地震の危険性も高まっていることもあり、地域によってはより規模の大きな地震動を考慮した新基準を年度内にも示す方針だ。

ただ、実際に耐震不足が見つかっても、ため池の数は多く、改修には1カ所あたり数億~数十億円がかかる。ため池を管理する農家にも負担金があるため、改修が進まないのが実態だ。このため農水省は、自治体が取り組んでいるハザードマップ作りに補助金を出し、防災に取り組むように促している。

〇ダム再建、責任あいまい 決壊で8人死亡・不明、福島・藤沼

藤沼ダムの決壊では7人が死亡し、幼児1人は行方不明のままだ。3年半近く経った今も、住民の心に傷が残る。

ダムから約1キロ下流の滝地区。水があふれた簀(す)の子川周辺は、新築された家屋が数軒あるが、多くの宅地や田畑は今も更地のままだ。農業を再開させるための農業用水が必要との声があがり、県は昨年10月から藤沼ダムの再建工事を始めた。総工費53億円で、2016年度の完成をめざす。

「今も毎晩、萌子のことを思い出します」。当時中学2年だった娘の萌子さん(14)を亡くした須賀川市の林喜恵さん(43)はそう語る。

震災当日、親子は滝地区で濁流にのまれた。夢中でつないだ手も、激しい流れで引き離された。喜恵さんは川岸で救助されたが、萌子さんは約50日後に40キロ下流で遺体で発見された。喜恵さんの腕には、娘が握り返した跡が赤く残っていたという。喜恵さんは「私が身代わりになれば良かった」と自分を責め続けた。

寝込みがちだった喜恵さんは最近、やっと気持ちが和らぎ「昔みたいに自分を責めなくてもよくなった」という。だが「二度と同じことを繰り返してほしくない。ダムの安全はしっかりと管理してほしい」と声を詰まらせる。

震災後、ダム管理者の「江花川沿岸土地改良区」の責任を問う声が住民から出た。改良区は、県と市の補助を受けて計約4億円を準備し、死者・行方不明者1人につき1千万円のほか、廃車になった自動車の購入費などを「生活支援金」として払った。

改良区の安田勝男事務局長(67)は「被災者の苦しみはわかる。道義的な責任はあると思い、支援した」と話すが、管理責任については「点検はしていた。落ち度はなかった」と主張する。ダム所有者である須賀川市の榊原茂夫・長沼支所長も「ダムが決壊するとは全く考えていなかった」。ダムを造った県の検証委員会も「日常的に点検し、異常はなかった」として責任を認めていない。
(神山純一、高橋尚之)



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農水省は2013年度から、規模が大きく、周囲の人家に被害が出る可能性があるため池について、目視による一斉点検を各自治体に求めている。対象は全国で約11万カ所あり、2年間かけて点検し、問題があるものを絞り込む。

朝日新聞が今月、一斉点検の状況を各都道府県に聞いたところ、少なくとも計7万カ所の検査が終わっていた。

いまの国の基準ではそれぞれの土地で100年に1回程度起こる中規模な地震に耐える必要があるが、42道府県の6千カ所ではそれを満たしていない可能性もあり耐震調査の対象になった。今月までにその調査を終えた13道府県の計1400カ所のうち約510カ所が耐震不足だった。

東日本大震災では、福島県須賀川市の藤沼ダムが決壊した。約150万トンの水がすべて流れ出し、下流の住宅が流されるなどして、7人が死亡、1人が行方不明に、家屋22棟が全壊した。

福島県の調査によると、地震の揺れで堤体が液状化したという。調査にあたった田中忠次・東大名誉教授は「地震によるダムの決壊は世界でもほとんど例がない。国内のため池やダムには古くて、構造がわからないものも多く、決壊する可能性がないとはいえない」と警告する。

(座小田英史、神山純一)


*キーワード

<農業用ダム・ため池> 降水量の少ない地域で農業用水を確保するために山間部の沢などを堤体でせき止め人工的に設置された池。農林水産省によると、全国で21万カ所にあり西日本に多い。堤体の高さが15メートル以上のものはダムとして管理されているものもある。


〇農業用ダム・ため池が多い道府県の点検状況

道府県/点検の対象(13~14年度)/調査実施(今年8月まで)/耐震不足(同)



北海道/約800/3/1

青森/1318/14/一部

山形/約1100/15/一部

千葉/1047/24/11

静岡/651/40/29

愛知/1990/347/177(3)

岐阜/約1600/115/53(13)

京都/約1300/17/8

大阪/2154/59/なし

兵庫/約9800/300/約160

和歌山/約1500/4/2

広島/約5000/80/精査中

山口/約4800/177/精査中

香川/約2200/19/8(2)

愛媛/約2800/88/60

宮崎/約700/88/一部

(数字は農業用ダム・ため池の数。カッコ内は堤体の高さが15メートル以上のダムの数。朝日新聞まとめ)

◆ため池、耐震追いつかず 数膨大、足りぬ人・予算 全国点検
(朝日新聞2014年8月29日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11322171.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11322171

東日本大震災を受けて、農業用ダムやため池が地震で決壊する危険性がようやく認識され始めた。だが、ため池の数は多く、自治体は頭を抱える。▼1面参照

酒米「山田錦」で有名な兵庫県三木市。殿畑新池(堤高7・8メートル、総貯水量2・1万トン)を管理する水利組合の井上忠雄代表(68)は心配顔だ。昨年の耐震調査で基準を大きく下回る結果が出たからだ。「地震が起きたら、堤体はもたんのやろか。危機感でいっぱいになった」。ため池の近くには田んぼだけでなく、民家が点在している。

老朽化が激しく、一昨年からため池の土壌から水漏れが見つかり、その範囲は広がっている。100年以上前に土を固めて造られたとされ、1940年代に堤体を改修した記録があるが、それ以降はない。県は来年度から工事の調査を開始。総事業費は約1億3千万円を見込む。

兵庫県のため池数は日本で最も多く、約3万8千カ所ある。そのうち規模が大きく、一斉点検の対象になったのは9800カ所。その中で危険度の高い600カ所で耐震検査を実施する計画を立てる。

耐震調査は、ボーリングからデータ解析までに半年ほどかかり、費用は平均400万円ほどかかる。県の担当者は「優先順位をつけて調べるしかない」と、完全な対策は難しいという。

ため池の密集率が最も高い香川県は、2012年に地質やため池管理の専門家ら5人で委員会をつくり、国に先行して独自の耐震基準を作った。規模の大きなため池では、東日本大震災で藤沼ダム(福島県須賀川市)が決壊する原因となった「長周期地震動」にも耐えられるかを判断する。担当者は「安全を保つために、国の基準を見据えて対策をとっている」と話す。

この結果、耐震調査をした19カ所のうち8カ所で耐震不足が判明した。県は5年かけて、耐震補強工事を進める計画だ。さらに緊急の対応として、国に先駆けて11年度から貯水量10万トン以上のため池180カ所でハザードマップを作る市町に補助金を出している。昨年度までに全て作成が終わり、避難訓練を始めたところもある。

農水省も耐震基準の見直しを進めている。南海トラフ地震の危険性も高まっていることもあり、地域によってはより規模の大きな地震動を考慮した新基準を年度内にも示す方針だ。

ただ、実際に耐震不足が見つかっても、ため池の数は多く、改修には1カ所あたり数億~数十億円がかかる。ため池を管理する農家にも負担金があるため、改修が進まないのが実態だ。このため農水省は、自治体が取り組んでいるハザードマップ作りに補助金を出し、防災に取り組むように促している。

〇ダム再建、責任あいまい 決壊で8人死亡・不明、福島・藤沼

藤沼ダムの決壊では7人が死亡し、幼児1人は行方不明のままだ。3年半近く経った今も、住民の心に傷が残る。

ダムから約1キロ下流の滝地区。水があふれた簀(す)の子川周辺は、新築された家屋が数軒あるが、多くの宅地や田畑は今も更地のままだ。農業を再開させるための農業用水が必要との声があがり、県は昨年10月から藤沼ダムの再建工事を始めた。総工費53億円で、2016年度の完成をめざす。

「今も毎晩、萌子のことを思い出します」。当時中学2年だった娘の萌子さん(14)を亡くした須賀川市の林喜恵さん(43)はそう語る。

震災当日、親子は滝地区で濁流にのまれた。夢中でつないだ手も、激しい流れで引き離された。喜恵さんは川岸で救助されたが、萌子さんは約50日後に40キロ下流で遺体で発見された。喜恵さんの腕には、娘が握り返した跡が赤く残っていたという。喜恵さんは「私が身代わりになれば良かった」と自分を責め続けた。

寝込みがちだった喜恵さんは最近、やっと気持ちが和らぎ「昔みたいに自分を責めなくてもよくなった」という。だが「二度と同じことを繰り返してほしくない。ダムの安全はしっかりと管理してほしい」と声を詰まらせる。

震災後、ダム管理者の「江花川沿岸土地改良区」の責任を問う声が住民から出た。改良区は、県と市の補助を受けて計約4億円を準備し、死者・行方不明者1人につき1千万円のほか、廃車になった自動車の購入費などを「生活支援金」として払った。

改良区の安田勝男事務局長(67)は「被災者の苦しみはわかる。道義的な責任はあると思い、支援した」と話すが、管理責任については「点検はしていた。落ち度はなかった」と主張する。ダム所有者である須賀川市の榊原茂夫・長沼支所長も「ダムが決壊するとは全く考えていなかった」。ダムを造った県の検証委員会も「日常的に点検し、異常はなかった」として責任を認めていない。
(神山純一、高橋尚之)


【2014/08/30 01:08】 | 新聞記事から
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