「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
◆福岡市水道の「頭脳」水管理センター~配水調整システムに迫る
(NET IB NEWS 2013年10月25、26日)
http://www.data-max.co.jp/2013/10/25/post_16455_ib1344_1.html  

福岡市水道局の水管理センターは1981年、3年前の78年に発生した渇水を教訓に、すべての蛇口への公平な給水などを目的に設立された。同センターのコア技術となる配水調整システムは、約300カ所あるテレメーターから送られるデータを24時間監視。177カ所に設置された電動弁の操作を介し、5浄水場、21配水ブロックごとにそれぞれ流量、水圧を制御するもので、日本初の画期的なシステムだった。それから30年が経過した2013年4月、2回目のシステム更新が完了し、運用を開始している。この配水調整システムとはどのようなものか。追ってみた。

<渇水を教訓に配水調整を構想>
「渇水は福岡市の宿命だ」。福岡市水道局の技術部門トップの和志武三樹男理事は、そう語る。
配水調整システムの役割は、水道水をユーザーの需要に応じて配分することにある。一見当たり前のことのようだが、福岡市以外で同様のシステムを運用している例は「まずない」と言われる。
そんな特異なシステムを、なぜ福岡市では30年を超えて運用し続けているのか。配水調整システムの意義については、福岡市の宿命、厳しい水事情を抜きに語ることはできない。
1978年、福岡市は渇水に見舞われ、287日におよぶ給水制限を強いられた。これをきっかけに、配水調整システム構想が持ち上がる。
システムのベースになったのが、配水区域のブロック化。ブロック化とは、配水区域を浄水場や管網ごとに区切ることで、これにより、水圧の均等化、管網被害の最小化、水運用の高度化を図るもの。ブロック化に併せ、水運用を監視、制御できるようにすれば、渇水による被害を最小限に食い止められる。こうして日本初のシステムづくりが始動する。
配水調整事業の制御システム開発を担当したのが、三菱電機㈱。開発に当たり、同社発祥の地にある研究拠点である神戸製作所に案件を持ち込み、当時最先端の技術を結集し、わずか3年で納入を果たした。

<特定地域の長期断水回避に恩恵>
配水調整システムの完成により、5浄水場間、21配水ブロックごとの水需要に応じた流量、水圧調整が可能となった。流量調整は、配水管に取り付けた流量計データをもとに電動弁を遠隔操作。水圧調整は、水圧計データをもとに同じく電動弁操作を行なう。通信は専用インターネット回線(VPN)を使用。システムの恩恵は、渇水などの異常時に適切な水運用はもちろん、管網自体の異常の発見や使用水量の情報収集、予測など平時の水運用にももたらされた。特に漏水防止については、水圧の適正化により、4,000~5,000m3/日程度の抑制効果が得られている。
併せて、当時設置されたテレメーターなどは約240カ所。設置工事の際、「電動弁の設置工事は、道路の通行止めをともなったが、市民からの苦情はほとんどなかった」(同局担当者)という。渇水対策としてのシステム導入に対し、ユーザーがどれだけ期待を寄せていたかを物語るエピソードだ。
システム運用開始後の94年、福岡市は再び渇水の憂き目に遭う。給水制限は前回を上回る295日におよんだ。その際、システムはどう機能したのか。
まず、ほとんど干上がった水源ダムから取水する浄水場の配水量を減らした。その一方で、比較的余裕のある浄水場の配水量を増やす浄水場間の相互融通を実施し、特定地域の長期断水を回避。システムがなければできない措置だった。このほか、水圧調整による出水不良の防止、電動弁操作による人的負担の軽減などでその効果が確認されている。

<熟成された3代目システムが稼働>
配水調整システムは、95年に2代目システムに更新される。2代目システムでは、LAN二重化などシステムダウンに備えたバックアップ機能、オペレーターの負担軽減のための運用支援機能が新たに加えられた。初代システム導入時に比べ、管路延長や施設が拡大していたことへの対応でもあった。
そして13年4月、新庁舎建設に併せ、3代目システムに切り替わる。基本的には2代目システムの考え方を踏襲したものだが、今回、運用支援機能の拡充がなされた。運用支援機能には、1日約2,000回に上る電動弁操作を行なうオペレーターに対し、天候や気温などで増減する配水量について、過去のデータをもとに予測値を与えるなどの機能を向上させた。水管理センター内には、消防局のカメラ映像、水質監視データ、主要施設の電力情報などのモニターが新たに設置された。さまざまな情報を同時に確認できる「見える化」により、センターとしての「即応体制の強化を図るのが狙い」(同局担当者)だ。
熟成の域に入った感のある配水調整システムだが、課題もある。約300カ所あるテレメーターの更新だ。今年度から年20カ所ずつ更新していく計画だが、すべての更新に15年を要する。また、177カ所ある電動弁の法定耐用年数は30年。今後のメンテナンスを疎かにはできない状況にある。
福岡市は12年7月、シンガポールで開かれた国際水週間にブースを出展。配水調整システムをPRし、同じく水源不足で悩む同国関係者から熱心な質問を受けたという。世界で唯一、30年を超えて運用されてきた福岡市の配水調整システム。市の財産だと言っていい。その財産をどう守り、どう育んでいくか。さらなる進化が期待される。
(了)
【大石 恭正】


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1978年、福岡市は渇水に見舞われ、287日におよぶ給水制限を強いられた。これをきっかけに、配水調整システム構想が持ち上がる。
システムのベースになったのが、配水区域のブロック化。ブロック化とは、配水区域を浄水場や管網ごとに区切ることで、これにより、水圧の均等化、管網被害の最小化、水運用の高度化を図るもの。ブロック化に併せ、水運用を監視、制御できるようにすれば、渇水による被害を最小限に食い止められる。こうして日本初のシステムづくりが始動する。
配水調整事業の制御システム開発を担当したのが、三菱電機㈱。開発に当たり、同社発祥の地にある研究拠点である神戸製作所に案件を持ち込み、当時最先端の技術を結集し、わずか3年で納入を果たした。

<特定地域の長期断水回避に恩恵>
配水調整システムの完成により、5浄水場間、21配水ブロックごとの水需要に応じた流量、水圧調整が可能となった。流量調整は、配水管に取り付けた流量計データをもとに電動弁を遠隔操作。水圧調整は、水圧計データをもとに同じく電動弁操作を行なう。通信は専用インターネット回線(VPN)を使用。システムの恩恵は、渇水などの異常時に適切な水運用はもちろん、管網自体の異常の発見や使用水量の情報収集、予測など平時の水運用にももたらされた。特に漏水防止については、水圧の適正化により、4,000~5,000m3/日程度の抑制効果が得られている。
併せて、当時設置されたテレメーターなどは約240カ所。設置工事の際、「電動弁の設置工事は、道路の通行止めをともなったが、市民からの苦情はほとんどなかった」(同局担当者)という。渇水対策としてのシステム導入に対し、ユーザーがどれだけ期待を寄せていたかを物語るエピソードだ。
システム運用開始後の94年、福岡市は再び渇水の憂き目に遭う。給水制限は前回を上回る295日におよんだ。その際、システムはどう機能したのか。
まず、ほとんど干上がった水源ダムから取水する浄水場の配水量を減らした。その一方で、比較的余裕のある浄水場の配水量を増やす浄水場間の相互融通を実施し、特定地域の長期断水を回避。システムがなければできない措置だった。このほか、水圧調整による出水不良の防止、電動弁操作による人的負担の軽減などでその効果が確認されている。

<熟成された3代目システムが稼働>
配水調整システムは、95年に2代目システムに更新される。2代目システムでは、LAN二重化などシステムダウンに備えたバックアップ機能、オペレーターの負担軽減のための運用支援機能が新たに加えられた。初代システム導入時に比べ、管路延長や施設が拡大していたことへの対応でもあった。
そして13年4月、新庁舎建設に併せ、3代目システムに切り替わる。基本的には2代目システムの考え方を踏襲したものだが、今回、運用支援機能の拡充がなされた。運用支援機能には、1日約2,000回に上る電動弁操作を行なうオペレーターに対し、天候や気温などで増減する配水量について、過去のデータをもとに予測値を与えるなどの機能を向上させた。水管理センター内には、消防局のカメラ映像、水質監視データ、主要施設の電力情報などのモニターが新たに設置された。さまざまな情報を同時に確認できる「見える化」により、センターとしての「即応体制の強化を図るのが狙い」(同局担当者)だ。
熟成の域に入った感のある配水調整システムだが、課題もある。約300カ所あるテレメーターの更新だ。今年度から年20カ所ずつ更新していく計画だが、すべての更新に15年を要する。また、177カ所ある電動弁の法定耐用年数は30年。今後のメンテナンスを疎かにはできない状況にある。
福岡市は12年7月、シンガポールで開かれた国際水週間にブースを出展。配水調整システムをPRし、同じく水源不足で悩む同国関係者から熱心な質問を受けたという。世界で唯一、30年を超えて運用されてきた福岡市の配水調整システム。市の財産だと言っていい。その財産をどう守り、どう育んでいくか。さらなる進化が期待される。
(了)
【大石 恭正】


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【2013/10/30 13:28】 | Webの記事
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