「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
国土交通省関東地方整備局は利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対する公聴会の開催とパブリックコメントの募集をしました。
しかし公聴会、パブリックコメントや利根川・江戸川有識者会議で提起された数多くの基本的な疑問に答えることなく、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を無視し、流域住民に説明する機会もなく、説明責任をまったく果たさないまま、 4月24日に計画(案)を一方的に公表しました。

この計画(案)は文言等の加筆が多少あるものの、計画(原案)と基本的に変わっていません。

そこで5月13日に、利根川流域市民員会が国土交通大臣および関東地方整備局長に対して下記の抗議文を提出しました。

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*抗議文本文
「利根川・江戸川河川整備計画(案)の拙速な公表に抗議するとともに、利根川流域住民の安全を本当に確保できる計画(案)の再作成を求める」


*利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会の結果
 公聴会  公述人 32人
 原案に反対 28人(88%)   原案に賛成 3人(9%)   その他 1人 (3%)

*利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する
 意見募集(パブリックコメント)の結果

 パブリックコメント 157通
 原案に反対 132通(84%)   原案に賛成 21通(13%)  その他 4 通 (3%)

*利根川・江戸川河川整備計画(原案)への意見に対する
 関東地方整備局の考え方(回答)の問題点

 (同局の従前からの説明を繰り返しているだけであり、まともな回答は皆無)



◆河川整備計画案で国交省に抗議文 八ッ場ダム建設反対の市民団体
(2013年5月14日 上毛新聞社会面18面)

 八ッ場ダム建設に反対する市民グループ、利根川流域市民委員会は13日、国土交通省がまとめた利根川・江戸川河川整備計画(案)に対する抗議文を、同省に提出した。

 抗議文は「有識者会議や公聴会などで提起された数多くの疑問点に答えてなく、(八ッ場ダム建設に反対する)圧倒的多数の意見を無視している」と訴え、計画案の作り直しを求めている。


◆整備計画案公表に市民団体が抗議文
(朝日新聞群馬版 2013年5月15日)
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130515100580001.html

抗議文は13日付。

「パブリックコメントや公聴会での圧倒的反対意見を無視」「計画原案に対する疑問に何も答えていない」として案の再作成を求めている。

整備局は、計画の原案を1月29日に発表。4回開いた有識者会議では慎重意見も出たが、案として4月24日に公表した。
関係都県知事の意見を踏まえ、策定を急いでいる。
(一部引用)
抗議文の全文を転載します。
                   2013年5月13日
国土交通大臣
  太田 昭宏 様
国土交通省関東地方整備局長
  森北 佳昭 様

               利根川流域市民委員会
            共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
            嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
            浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
            事務局(深澤洋子)                

利根川・江戸川河川整備計画(案)の拙速な公表に抗議するとともに
利根川流域住民の安全を本当に確保できる計画(案)の再作成を求める 


国土交通省関東地方整備局は4月24日に利根川・江戸川河川整備計画(案)を公表しました。原案の変更点、変更の理由、出された意見の扱いについて利根川・江戸川有識者会議で審議することも、流域住民に説明する機会もなく、関東地方整備局は説明責任をまったく果たさないまま、計画(案)を一方的に公表しました。今回の一方的な公表は「行政運営の透明性の向上を図るとともに、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるものとすること」とする政府の基本方針を規定する中央省庁等改革基本法第4条第7号に違反しています。
公表された計画(案)は文言等の加筆が多少あるものの、利根川・江戸川河川整備計画(原案)と基本的に変わっていません。利根川・江戸川河川整備計画(原案)について利根川・江戸川有識者会議、公聴会、パブリックコメントで提起された数多くの基本的な疑問に答えることなく、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を無視したものです。
2006年12月の利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局が言明した約束「原案を修正して再度意見をきき、それを繰り返して計画案を作成していく」を反故にして、今回、関東地方整備局が問答無用と言わんばかりに計画(案)を公表したことに私たちは強い憤りを覚えます。
計画(原案)への公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を関東地方整備局が無視したことは下記の1に、計画(原案)への意見に対する関東地方整備局の回答が基本的な疑問への回答になっていないことは下記の2に示すとおりです。
このようにまさしく強権的に利根川・江戸川河川整備計画の策定を進める国土交通大臣および関東地方整備局長に対して私たちは心底から抗議します。
同時に私たちは、下記の3のとおり、利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然をできるだけ取り戻す利根川河川整備計画(案)の再作成を求めます。

                記

1 パブリックコメントおよび公聴会で示された圧倒的多数意見を無視

計画(原案)について行われた公聴会およびパブリックコメントで出された意見を整理してみました。別紙1、2のとおりです。原案に対して反対、賛成を集計すると、次のようになります。
公聴会  公述人 32人
 原案に反対 28人(88%)   原案に賛成 3人(9%)   その他 1人 (3%)

パブリックコメント 157通
 原案に反対 132通(84%)   原案に賛成 21通(13%)  その他 4 通 (3%)

原案に対して反対の意見の割合は公聴会では88%、パブリックコメントでは84%にもなっており、出された意見の圧倒的多数が利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対して反対の意思を示しています。
ところが、関東地方整備局はこのように圧倒的多数で示された民意を顧みることなく、その民意を無視して計画(原案)とほぼ同じ内容の計画(案)を発表しました。これでは、何のために公聴会を開き、パブリックコメントを行ったのか、分かりません。公聴会およびパブリックコメントで提出された意見を十分に考慮しないことは、行政手続法第42条に違反します。
1997年の河川法改正に当たり、関係住民の意見反映について当時の尾田栄章河川局長は下記の議事録のとおり、国会の質疑で「河川管理者は河川整備計画に関係住民の意見を反映させる責務がある」と答弁しました。関係住民の意見を河川整備計画に反映させることは河川法改正の本旨であったはずです。関東地方整備局がこの河川性法改正の本旨を無視することは許されません。

「衆議院建設委員会-12号 平成9年5月9日

○尾田政府委員 先生御指摘のとおり、言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がないというふうに考えておりまして、具体の河川整備計画の案を策定する段階で、十二分に案を策定するために、案の案、原案の案、そういう意味では原案でございますが、これを御提示をいたしまして、それについて御意見をいただく、その上で必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」

2 計画(原案)に対する疑問に何も答えていない
関東地方整備局は河川整備計画(案)とともに、計画(原案)への意見に対する同局の考え方(回答)を示しましたが、そのほとんどは同局の従前からの説明を繰り返しているだけであり、まともな回答は皆無であると言っても過言ではありません。回答は問題提起をはぐらかすことに終始し、利根川・江戸川河川整備計画(原案)の根本的な欠陥は何も解消されていません。
主な論点について出された意見と関東地方整備局の回答、およびその回答の問題点を別紙3に整理しましたので、真摯に受け止めてほしいと思います。
その要点を箇条書きすれば、次のとおりです。

① 流域住民にとってきわめて重要な意味を持つ利根川の河川整備計画を全国の一級水系では例がない本川だけという異常な形で拙速に策定しようとしていることについて、関東地方整備局はその理由を何も説明していない。その真の理由は、八ッ場ダム本体工事を早期に着手するために、強引に同ダム事業を河川整備計画に位置づけようとしているとしか考えられない。

② 関東地方整備局は整備計画(原案)の治水目標流量(八斗島)を従前の案15,000㎥/秒程度から17,000㎥/秒へ独断で引き上げた理由についても何も答えてない。この引き上げもこうすることにより、八ッ場ダム事業を河川整備計画に必要な事業として位置づけやすくしたと考えられる。

③ 整備計画(原案)の治水目標流量を算出した洪水流出モデルは科学的な根拠が希薄で、17,000㎥/秒が過大な値であることは有識者会議で何度も指摘された。この問題について今回の回答は従前の説明を繰り返しているだけで、疑問は何ら払拭されていない。1/70~1/80に相当する治水目標流量は正しくは15,000㎥/秒以下である。

④ 円山川水系河川整備計画は水系の各所で自然を回復するための具体的な対策が図入りで示されている。それに比べると、利根川・江戸川河川整備計画(案)はそのような記載がなく、自然に対する姿勢や生物多様性保全に向けた施策に雲泥の差がある。円山川のように自然に対して畏敬の念を持って、開発事業で失われた自然の回復や生物多様性の保全を図るという精神が今の関東地方整備局には欠如していると言わざるを得ない。

⑤ 回答は計画(原案)について「現在の予算規模の状況などを考慮し、実現可能性を確認している」と述べているが、今後は今までの時代とは異なり、新たな社会資本投資が次第に困難になっていく時代であるから、従前どおりに予算を確保することは到底無理である。まして、河川整備計画の事業費は国交省が示す約8,600億円よりはるかに大きな金額になることは必至なのであるから、計画(案)に示された事業メニューは実現性のない絵に描いた餅に過ぎない。

⑥ 計画(案)は総花的であって、流域住民の安全をできるだけ早く確保するための治水対策を厳選して河川予算を集中的に投じようとする方針がまったく見えない。喫緊の対策である脆弱な堤防の強化対策、ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策、想定を超える洪水への対策に河川予算を集中して投じるように河川行政を変えていかなければ、利根川流域住民は氾濫の危険性がある状態に放置されてしまうことになる。予算を低く抑え、同時に工期も短く、効率よく治水機能を発揮できる新たな堤防強化対策が急がれている。

⑦ 超過洪水対策について回答で示しているのは、「自助・共助・公助の精神のもと、被害の最小化を図る」という言葉だけで、一方で、高規格堤防以外の「耐越水堤防」技術を否定している。高規格堤防の整備は全く現実性のないものであるから、結局、今回の河川整備計画(案)には超過洪水対策について具体的な対策が何も盛り込まれていない。今後30年間、仮に計画どおりに河川整備が実施されても、想定を超える洪水による壊滅的な被害発生の可能性は依然として残されてしまうことになる。

3 利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然を取り戻す利根川河川整備計画の再作成を求める

上記のとおり、利根川・江戸川河川整備計画(案)は八ッ場ダム本体工事を早期に着手するため、本川だけの計画が拙速でつくられたものであり、利根川流域住民の安全を本当に確保する内容になっていません。巨額の河川予算を利根川に投じ続けて数多くの河川事業を推進することを自己目的化した計画であり、今後は新たな社会資本投資が先細りせざるを得ない時代になることを踏まえれば、いずれ近いうちに暗礁に乗り上げてしまうことが必至です。また、円山川水系河川整備計画のように過去の開発事業で失われた自然を取り戻す視点のない計画であり、生物多様性国家戦略が国を挙げて進められている状況の中で、治水だけにシフトした、旧態依然とした計画であると断じざるを得ません。
私たちはこのように欠陥だらけの利根川・江戸川河川整備計画が罷り通るのを看過することができません。利根川流域住民の安全を確保できる治水対策を厳選してそこに河川予算を集中的に投じる河川整備計画、失われた利根川の自然をできるだけ取り戻す方策を盛り込んだ河川整備計画の策定を強く求めます。
関東地方整備局は関係都県知事からの意見を受けた後、利根川・江戸川河川整備計画を策定するでしょうが、河川整備計画は一度策定されてしまうと、それで終わりということではありません。
 河川法改正直後の建設省通達〔注〕には「地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものである」と書かれており、私たちはあるべき利根川水系河川整備計画の市民案を提案して、利根川河川整備計画の再作成を求めていきます。

〔注〕「河川法の一部を改正する法律等の運用について
  (建設省の通達 平成10年1月23日)

 2 河川整備計画の策定について 5) 河川整備計画の変更について
河川整備計画は、流域の社会情勢の変化や地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものであること。」
関東地方整備局は多摩川や鶴見川の河川整備計画を策定する際には、流域セミナーや流域懇談会を何度となく開催するなど、流域住民・関係者との合意形成を重視してきました。その結果、両河川は流域住民を主人公にした河川管理が現在も受け継がれています。流域住民に近い川として愛されていることは関東地方整備局がよく知るところです。
利根川水系河川整備計画の策定においても、流域住民・関係者と河川管理者との合意形成を根底におくことを強く求めます。

                                      以上


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抗議文の全文を転載します。
                   2013年5月13日
国土交通大臣
  太田 昭宏 様
国土交通省関東地方整備局長
  森北 佳昭 様

               利根川流域市民委員会
            共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
            嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
            浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
            事務局(深澤洋子)                

利根川・江戸川河川整備計画(案)の拙速な公表に抗議するとともに
利根川流域住民の安全を本当に確保できる計画(案)の再作成を求める 


国土交通省関東地方整備局は4月24日に利根川・江戸川河川整備計画(案)を公表しました。原案の変更点、変更の理由、出された意見の扱いについて利根川・江戸川有識者会議で審議することも、流域住民に説明する機会もなく、関東地方整備局は説明責任をまったく果たさないまま、計画(案)を一方的に公表しました。今回の一方的な公表は「行政運営の透明性の向上を図るとともに、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるものとすること」とする政府の基本方針を規定する中央省庁等改革基本法第4条第7号に違反しています。
公表された計画(案)は文言等の加筆が多少あるものの、利根川・江戸川河川整備計画(原案)と基本的に変わっていません。利根川・江戸川河川整備計画(原案)について利根川・江戸川有識者会議、公聴会、パブリックコメントで提起された数多くの基本的な疑問に答えることなく、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を無視したものです。
2006年12月の利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局が言明した約束「原案を修正して再度意見をきき、それを繰り返して計画案を作成していく」を反故にして、今回、関東地方整備局が問答無用と言わんばかりに計画(案)を公表したことに私たちは強い憤りを覚えます。
計画(原案)への公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を関東地方整備局が無視したことは下記の1に、計画(原案)への意見に対する関東地方整備局の回答が基本的な疑問への回答になっていないことは下記の2に示すとおりです。
このようにまさしく強権的に利根川・江戸川河川整備計画の策定を進める国土交通大臣および関東地方整備局長に対して私たちは心底から抗議します。
同時に私たちは、下記の3のとおり、利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然をできるだけ取り戻す利根川河川整備計画(案)の再作成を求めます。

                記

1 パブリックコメントおよび公聴会で示された圧倒的多数意見を無視

計画(原案)について行われた公聴会およびパブリックコメントで出された意見を整理してみました。別紙1、2のとおりです。原案に対して反対、賛成を集計すると、次のようになります。
公聴会  公述人 32人
 原案に反対 28人(88%)   原案に賛成 3人(9%)   その他 1人 (3%)

パブリックコメント 157通
 原案に反対 132通(84%)   原案に賛成 21通(13%)  その他 4 通 (3%)

原案に対して反対の意見の割合は公聴会では88%、パブリックコメントでは84%にもなっており、出された意見の圧倒的多数が利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対して反対の意思を示しています。
ところが、関東地方整備局はこのように圧倒的多数で示された民意を顧みることなく、その民意を無視して計画(原案)とほぼ同じ内容の計画(案)を発表しました。これでは、何のために公聴会を開き、パブリックコメントを行ったのか、分かりません。公聴会およびパブリックコメントで提出された意見を十分に考慮しないことは、行政手続法第42条に違反します。
1997年の河川法改正に当たり、関係住民の意見反映について当時の尾田栄章河川局長は下記の議事録のとおり、国会の質疑で「河川管理者は河川整備計画に関係住民の意見を反映させる責務がある」と答弁しました。関係住民の意見を河川整備計画に反映させることは河川法改正の本旨であったはずです。関東地方整備局がこの河川性法改正の本旨を無視することは許されません。

「衆議院建設委員会-12号 平成9年5月9日

○尾田政府委員 先生御指摘のとおり、言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がないというふうに考えておりまして、具体の河川整備計画の案を策定する段階で、十二分に案を策定するために、案の案、原案の案、そういう意味では原案でございますが、これを御提示をいたしまして、それについて御意見をいただく、その上で必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」

2 計画(原案)に対する疑問に何も答えていない
関東地方整備局は河川整備計画(案)とともに、計画(原案)への意見に対する同局の考え方(回答)を示しましたが、そのほとんどは同局の従前からの説明を繰り返しているだけであり、まともな回答は皆無であると言っても過言ではありません。回答は問題提起をはぐらかすことに終始し、利根川・江戸川河川整備計画(原案)の根本的な欠陥は何も解消されていません。
主な論点について出された意見と関東地方整備局の回答、およびその回答の問題点を別紙3に整理しましたので、真摯に受け止めてほしいと思います。
その要点を箇条書きすれば、次のとおりです。

① 流域住民にとってきわめて重要な意味を持つ利根川の河川整備計画を全国の一級水系では例がない本川だけという異常な形で拙速に策定しようとしていることについて、関東地方整備局はその理由を何も説明していない。その真の理由は、八ッ場ダム本体工事を早期に着手するために、強引に同ダム事業を河川整備計画に位置づけようとしているとしか考えられない。

② 関東地方整備局は整備計画(原案)の治水目標流量(八斗島)を従前の案15,000㎥/秒程度から17,000㎥/秒へ独断で引き上げた理由についても何も答えてない。この引き上げもこうすることにより、八ッ場ダム事業を河川整備計画に必要な事業として位置づけやすくしたと考えられる。

③ 整備計画(原案)の治水目標流量を算出した洪水流出モデルは科学的な根拠が希薄で、17,000㎥/秒が過大な値であることは有識者会議で何度も指摘された。この問題について今回の回答は従前の説明を繰り返しているだけで、疑問は何ら払拭されていない。1/70~1/80に相当する治水目標流量は正しくは15,000㎥/秒以下である。

④ 円山川水系河川整備計画は水系の各所で自然を回復するための具体的な対策が図入りで示されている。それに比べると、利根川・江戸川河川整備計画(案)はそのような記載がなく、自然に対する姿勢や生物多様性保全に向けた施策に雲泥の差がある。円山川のように自然に対して畏敬の念を持って、開発事業で失われた自然の回復や生物多様性の保全を図るという精神が今の関東地方整備局には欠如していると言わざるを得ない。

⑤ 回答は計画(原案)について「現在の予算規模の状況などを考慮し、実現可能性を確認している」と述べているが、今後は今までの時代とは異なり、新たな社会資本投資が次第に困難になっていく時代であるから、従前どおりに予算を確保することは到底無理である。まして、河川整備計画の事業費は国交省が示す約8,600億円よりはるかに大きな金額になることは必至なのであるから、計画(案)に示された事業メニューは実現性のない絵に描いた餅に過ぎない。

⑥ 計画(案)は総花的であって、流域住民の安全をできるだけ早く確保するための治水対策を厳選して河川予算を集中的に投じようとする方針がまったく見えない。喫緊の対策である脆弱な堤防の強化対策、ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策、想定を超える洪水への対策に河川予算を集中して投じるように河川行政を変えていかなければ、利根川流域住民は氾濫の危険性がある状態に放置されてしまうことになる。予算を低く抑え、同時に工期も短く、効率よく治水機能を発揮できる新たな堤防強化対策が急がれている。

⑦ 超過洪水対策について回答で示しているのは、「自助・共助・公助の精神のもと、被害の最小化を図る」という言葉だけで、一方で、高規格堤防以外の「耐越水堤防」技術を否定している。高規格堤防の整備は全く現実性のないものであるから、結局、今回の河川整備計画(案)には超過洪水対策について具体的な対策が何も盛り込まれていない。今後30年間、仮に計画どおりに河川整備が実施されても、想定を超える洪水による壊滅的な被害発生の可能性は依然として残されてしまうことになる。

3 利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然を取り戻す利根川河川整備計画の再作成を求める

上記のとおり、利根川・江戸川河川整備計画(案)は八ッ場ダム本体工事を早期に着手するため、本川だけの計画が拙速でつくられたものであり、利根川流域住民の安全を本当に確保する内容になっていません。巨額の河川予算を利根川に投じ続けて数多くの河川事業を推進することを自己目的化した計画であり、今後は新たな社会資本投資が先細りせざるを得ない時代になることを踏まえれば、いずれ近いうちに暗礁に乗り上げてしまうことが必至です。また、円山川水系河川整備計画のように過去の開発事業で失われた自然を取り戻す視点のない計画であり、生物多様性国家戦略が国を挙げて進められている状況の中で、治水だけにシフトした、旧態依然とした計画であると断じざるを得ません。
私たちはこのように欠陥だらけの利根川・江戸川河川整備計画が罷り通るのを看過することができません。利根川流域住民の安全を確保できる治水対策を厳選してそこに河川予算を集中的に投じる河川整備計画、失われた利根川の自然をできるだけ取り戻す方策を盛り込んだ河川整備計画の策定を強く求めます。
関東地方整備局は関係都県知事からの意見を受けた後、利根川・江戸川河川整備計画を策定するでしょうが、河川整備計画は一度策定されてしまうと、それで終わりということではありません。
 河川法改正直後の建設省通達〔注〕には「地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものである」と書かれており、私たちはあるべき利根川水系河川整備計画の市民案を提案して、利根川河川整備計画の再作成を求めていきます。

〔注〕「河川法の一部を改正する法律等の運用について
  (建設省の通達 平成10年1月23日)

 2 河川整備計画の策定について 5) 河川整備計画の変更について
河川整備計画は、流域の社会情勢の変化や地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものであること。」
関東地方整備局は多摩川や鶴見川の河川整備計画を策定する際には、流域セミナーや流域懇談会を何度となく開催するなど、流域住民・関係者との合意形成を重視してきました。その結果、両河川は流域住民を主人公にした河川管理が現在も受け継がれています。流域住民に近い川として愛されていることは関東地方整備局がよく知るところです。
利根川水系河川整備計画の策定においても、流域住民・関係者と河川管理者との合意形成を根底におくことを強く求めます。

                                      以上

【2013/05/15 16:47】 | 利根川流域市民委員会
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