〜八ッ場も原発も根っこは同じ〜
                嶋津 暉之

1/4の毎日新聞は滋賀県の治水対策に焦点を当てた特集記事を掲載しています。
嘉田由紀子・滋賀県知事のインタビュー記事の「八ッ場など多くのダムが何十年もかかって効果がない。川の中と外、両方で段階的に安全度を上げる必要がある。」は、関東の知事たちに聞かせたいところです。

◆リスクと向き合う:3・11を経て 浸水危険域で建築規制
被害減へ政策転換−−滋賀県検討

(毎日新聞 2012年1月4日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120104ddm001040066000c.html

滋賀県は全国で初めて県全域を対象に水害の浸水想定を行い、危険区域で住宅や公共施設の建築を規制する検討を始めた。治水政策はダムや堤防で河川という「線」を守る発想で進められてきたが、財政難や環境意識の高まりから限界にある。流域の「面」で対策を考え、水害を最小限に抑えようとする「滋賀モデル」は、治水政策転換の呼び水になる可能性がある。

東近江市を流れる愛知(えち)川左岸にある団地「ドリームハイツ」。霞堤(かすみてい)の中にあり、氾濫時の遊水地とされた場所だ。「こんな危ない場所に住宅建築を認めたのか」。07年から県内各地の河川を点検していた県の治水政策の担当者は、現地で実感させられた。

霞堤は江戸時代末期、彦根藩主で幕府大老を務めた井伊直弼が整備した。堤防を二重に造って内側の一部を低くし、増水したら意図的に水をあふれさせ、対岸や下流の街を守る。しかし、70年代に遊水地内に団地が造成され、人々は競うようにマイホームの夢をかなえた。90年9月、紀伊半島に上陸した台風19号は、団地の約200戸を水浸しにした。

高度成長を経て豊かになり、人口も増え続けた日本は、宅地開発に突き進んだ。水害リスクが高い地域にも家が建ち並んだ。一方で、治水政策はダムや強力な堤防の整備を進め、川に水を封じ込めようとした。水を逃がして被害を減らす先人の知恵は忘れられた。

毎年のように全国のどこかで、人々が水の恐怖にさらされる。膨大な時とカネを費やし生態系に影響を及ぼすダムや巨大堤防は、疑問を抱かれつつある。宮本博司・元国土交通省防災課長は「国はハード整備を金科玉条に、住民に本当の危険性を警告しなかった。川の中に水を閉じ込める仕組みは想定外の災害に弱い」と指摘する。

06年に初当選した嘉田由紀子・滋賀県知事は、ダムだけに頼らない治水に挑んだ。県民からも委員を公募して議論し、出てきたアイデアが危険性の高い地域での建築規制だった。正確な客観的指標が必要で、県は全域の浸水想定に乗り出した。

浸水想定は担当者の現地調査を踏まえ、河川だけでなく下水道や農業用水も対象にした。最大で1000年に1度の規模まで、7段階の洪水をシミュレーション。5メートル四方単位で浸水を想定した図は近く公表される。

県は危険地域の宅地かさ上げ義務化などを盛り込んだ条例案作成を進めており、来年度にも提出したい構えだ。河川改修などハード整備が遅れると懸念する県議、市や町の反発は強いが、嘉田知事は強調する。「行政はあらゆる想定を出し、全力で取り組むべきだ」



◆リスクと向き合う:3・11を経て 水逃がす堰知らず 再三浸水、怒る住民
 /逃げない「選択」

(毎日新聞 2012年1月4日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120104ddm002040086000c.html

〇再三浸水、怒る住民−−岐阜・大垣

ダムと堤防で、暴れる水は抑えられる。そんな日本の治水政策は、社会の意識を鈍らせ、水害の危険性をはらむ地域に多くの人々を住まわせてきた。

「こんなリスクは知らなかった」。岐阜県大垣市の荒崎地区に住む中原敏昭さん(67)の言葉には、憤りがにじむ。70年4月、結婚を機に、市の分譲団地を購入した。しかし、翌年から76年にかけて5回、自宅は水につかった。
(一部引用)

◇逃げない「選択」−−滋賀・長浜

滋賀県の旧虎姫町(現長浜市)は、南と西を川に囲まれ、水田が広がる。町には言い伝えがある。「カエルが小便しても水がつく」。59年の伊勢湾台風で町中心部は浸水した。

障害者施設「湖北タウンホーム」の伊吹学所長(53)は08年10月、琵琶湖北部の自治体による水害対策会議に出席した。スクリーンに映る浸水想定図を基に増水時の対応を問われ答えた。「避難はしない。2階に行く」
(一部引用)


◆リスクと向き合う:3・11を経て 災害想定した開発を 嘉田由紀子・滋賀県知事に聞く
(毎日新聞 2012年1月4日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120104ddm002040089000c.html

◇「滋賀モデル」危険情報を共有

滋賀県の嘉田由紀子知事に「滋賀モデル」の狙いを聞いた。

−−従来の治水政策は何が問題ですか。

〇行政に「知らしむべからず、よらしむべし」の哲学があった。ダムがあるから安心で、住民はリスクを知らなくてよい、と。政治家の影響力とハード整備で対策をしてきた。

−−どんな影響があったのでしょうか。

〇04年の新潟県三条市での水害は、上流のダムで放流したとの連絡が市にあったのに、無防備だったため多くの死者が出た。市町村は県、県は国、住民は政治家にそれぞれ陳情していれば安心という状況が、治水を人ごとと考える住民や自治体を増やしてしまった。

−−「滋賀モデル」の特徴は何ですか。

〇人命を救うためには川の外、つまり人が住むところのリスクを、皆が共有しなければいけない。そういう目で県内を歩くと、昔の人は水を逃がす工夫をして危ない場所に住まなかったことに気づく。今、浸水する場所を見ると新興団地がある。地価が安い田んぼを開発した結果、新しい住民が被害を受ける。これを避けたい。

−−行政も、危険な地域の開発を容認してきたのでは。

〇都市計画に自然災害リスクがほとんど考慮されてこなかった。リスクが明らかになっても、首長は住民の苦情を恐れ、説得する覚悟が弱い。そして被害を受けたら「想定外」と言う。これは行政の逃げ。滋賀県は「開発するなら最悪のリスクも知って、あらかじめ手立てをしてください」と言っていく。

−−一部市町は、「川の中の治水」が不十分になるのではと懸念しています。

〇河川整備もやる。県下全域の川の危険度をランク付けして重点的にお金を入れる。それでもハードの想定を超えソフトで受け止める場合は、「想定外」と言わず命を守ることを目標とする。ダムは環境や社会への影響が大きく、金も時間もかかり、1000億円のダムなら1000億円全額投入しないと効果が出ない。八ッ場など多くのダムが何十年もかかって効果がない。川の中と外、両方で段階的に安全度を上げる必要がある。




☆★こちらもどうぞご覧下さい★☆

 ・「八ツ場あしたの会」ニュース
 ・「八ツ場ダムをストップさせる千葉の会」
 ・まさのあつこさんの「ダム日記2」







【2012/01/04 11:08】 | 新聞記事から
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