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「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
      嶋津 暉之

西日本豪雨では野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流により、愛媛県の肱川流域で甚大な被害が発生しました。その被災地の現状を追ったレポート記事をお送りします。

◆西日本豪雨3か月過ぎても復興進まず。平成30年豪雨被災地、肱川水系の現在
(ハーバー・ビジネス・オンライン 2018/10/26(金) 15:40配信) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181026-00177277-hbolz-soci

3か月過ぎても復興進まず。平成30年豪雨被災地、肱川水系の現在

 去る2018年7月7日、未曾有の豪雨によって西日本広域で歴史的な大水害が発生しました。

 当日、高知県でも高知自動車道の流失と通信線切断による全県における電子決済(電子マネー、クレジットカード)の停止、一部河川の危険地域における氾濫が生じましたが、1998年の高知大水害(以下、98高知大水害)のような社会機能を破綻させる大きな水害は発生しませんでした。これは、98高知大水害を契機に中小河川での堤防かさ上げと補強、橋梁のかさ上げ、河道浚渫、排水ポンプの整備、水門の整備など、運用面を含めた過去20年間の地道な高知市・県による治水対策の結果と言えます。

 これらの治水対策は、華々しさに欠け、目立つものではありませんが、高知市大津、高須、葛島地区と言った、98高知大水害で2~3m浸水した人口密集地区で聞き取りをしても、かつては毎年何処かが浸水していたのに、最近は浸水しなくなったという証言が得られることからも妥当な治水事業であったと考えられます。

 そういった中、隣県の愛媛県で大水害が生じた、しかも伊方取材でいつも通過する肱川(ひじかわ)水系で死者の出る大水害が発生したと報じられました。最終的に野村町で5名、大洲市で4名の計9名の人命が失われたとの報です。

 私は、水郷延岡で育ち、治水ダムの存在しない五ケ瀬川・大瀬川の治水を基準に物事を考えますが、肱川水系には鹿野川ダムと言うデラックスな治水主体で県営水力発電も行う多目的ダムと、野村ダムと言う利水主体で限定的治水を行う多目的ダムがあり、大洲市街地の堤防はかなり立派なもの、菅田地区にも一部未完成ながらかなり立派な堤防を建設中ですので、21世紀にもなって一級河川全流域での大規模氾濫が生じたことに強い違和感を抱きました。

 これは取材をせねばならないと考えつつも機会がなかったのですが、9月30日に伊方発電所の再稼働に関するシンポジウムが八幡浜市で行われる、台風が来てもやれるところまでやると言う事で、肱川水系の取材をかねて9月29日から八幡浜市に泊まりがけで訪問しました。

 これから数回にわたって、野村ダムから大洲市までの流域約40kmと支流の黒瀬川の被災状況を、写真主体にご紹介し、何故、何が起きたのかを考察します。なお本稿では、「平成30年7月豪雨による肱川水系の水害」を「肱川大水害」と呼称します。

◇野村ダムから3km下流で一変した風景

1)野村ダム

 10月1日、台風一過の晴天の中、肱川の源流がある宇和から、肱川沿いに野村ダム、野村町、鹿野川ダム、大洲市菅田、大洲市街を取材に出発しました。

 道路などの破損は多くない野村ダム上流を快適にドライブし、第一の目的地は野村ダムです。野村ダムは、佐田岬半島先端から八幡浜市、宇和島市へ分水する国営南予用水土地改良事業の水源としての利水ダムで、無くてはならないものです。八幡浜市や伊方町での取材では、野村ダムが出来て以来、水で苦しむことがなくなり、特に農業(みかん栽培)への貢献は絶大であるとの意見が全てでした。

 野村ダムは利水ダムなのです。多目的ダムとして治水機能も持たされていますが、治水と利水は相反する機能であって、治水は限定的なものとなります。

2)野村町市街地

 野村ダムまでは、大きな災害跡は見られず、所々で道路の修復工事やがけ崩れの復旧工事を行っている程度でした。野村ダムから3km下流の野村町市街地に入ると様相が一変します。10月1日の取材では、野村町市街地の被災状況が県道からはわからない程度に片づけが進んでおり、気がつかずに通過しましたが、10月20日の再取材で一筋道路を変えたときに被災状況が顕となりました。

 7月7日当時の状況は、南海放送が夕方ニュース『News Ch.4』で7/9に放送した「野村町のシンボル・乙亥(おとい)会館の被害」に詳しいです。

 乙亥会館は、外観こそきれいになっていますが、甚大な被害を受けて移転や建て替えを含めた再建案が検討されています。(参照:水没・損壊の乙亥会館、現地復旧や移転 市側が4案提示 2018年9月13日 愛媛新聞ONLINE)

 不幸中の幸いですが、乙亥会館は野村病院の移転跡地で、仮にここが野村病院であったなら、甚大な人的被害が発生していました。

 乙亥会館より250m上流まで歩くと、野村保育所と野村農村勤労福祉センター(体育館)、野村町児童館がありますが、全て被災により現在も機能を失っています。この一帯も平屋は全没、二階建てならば屋根の上に避難できたと言ったところです。

 肱川右岸の野村町三島地区に入ると被災状況は左岸より深刻です。これは、野村町市街地の手前で肱川が左に曲がっている為で、水は右岸へより強く押し寄せます。三嶋神社は社務所が流失し、付近の民家も激しく損壊しており、復旧は進んでいません。三島地区では、お年寄りが逃げ遅れ、水没した屋内で亡くなるなど、人命も失われています。

 野村町市街地では、野村ダムのただし書き操作(異常洪水時防災操作:緊急放流)開始後30分を待たずに肱川が氾濫し、逃げる間は殆ど無かったとのことです。緊急放流を告げる防災行政無線も豪雨の為に聞き取れず、消防団員が一世帯ごとに避難を呼びかけてまわりましたが、急激な肱川の増水によって呼びかけは間に合わず、消防団員も水に押し流され死を覚悟する有り様であったとのことです。

 野村ダムは、野村町市街地から上流僅か3kmに位置しますので、ただし書き操作をはじめればきわめて短時間で大水が押し寄せますので、ダムによる時間稼ぎ効果が失われるともはや時間稼ぎの術がないと言うのが現状です。

◇3m近い高さまで浸水した痕跡

3)野村町蔵良地区

 野村町市街地を後にして、県道29号線、国道197号線を鹿野川ダムに向かいます。ところが、県道29号線は蔵良地区で通行止めになります。栗木地区で大規模な土砂崩壊が発生し、復旧見込みなしとのことです。この蔵良地区も3m近くの高さまで水に浸かっている痕跡があり、農業施設や機械類が破壊され再建中です。この一帯には、ドライブインや商店がありますが、すべて激しく被災しており、再建は遅れています。

4)野村町貝吹地区(大和田地区)

 蔵良地区の規制線を通過して、更に先に進みますと、谷あいの地形を野村町貝吹地区(大和田地区)にさしかかります。ここの対岸には、統合により廃校、廃園となった大和田小学校、大和田幼稚園がありますが、大和田小学校と隣接する貝吹公民館は一階が水没しています。旧大和田幼稚園は現在西予市出張所として使われておりますが、5m程の高台にあり大きな被害は受けていないようです。

 県道29号線と旧大和田小学校を結ぶ大和田橋は、水害の際に水没しており、欄干が大きく破損しています。大和田小学校は避難所に指定されており、防災行政無線や警報表示板がありますが、地元の方によると両施設とも水没しており、防災行政無線は豪雨の為にまったく聞こえなかった上に、被災して機能を失ったとのことでした。また、水はあっという間に上がってきて、逃げるまもなかったとのことです。

◇いまだ土砂崩壊の恐れが……

5)野村町鎌田地区

 野村町大西地区で県道29号線は封鎖されており、ここより先には進めません。この規制線の1km先で大規模な土砂崩れが発生し、さらに土砂崩壊の恐れがある為に復旧の目処は立っていません。

 ここでも橋は水没し、民家も被災しています。

 この先、進めませんので野村町市街地に戻り、大きく迂回して黒瀬川沿いに197号線を西進し、鹿野川ダム、肱川地区、大川地区、菅田地区、大洲市街へと進みます。驚いたことに、鹿野川ダムのような治水ダムがあるにも関わらず下流に進むにつれて被害は拡大する一方で、肱川大水害では治水の破綻が如実に示されています。

 次回は、黒瀬川を経て肱川と合流後、鹿野川ダム、大洲市肱川地区の被災状況について写真を主体にご紹介します。

『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第3シリーズ-1

<文/牧田寛 Twitter ID:@BB45_Colorado photo/USMDA via flickr(CC BY 2.0)>

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガを近日配信開始予定

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【2018/10/27 17:07】 | 未分類
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     嶋津 暉之

10月25日に野村ダム・鹿野川ダムの操作等に関する検証の場の第3回会合が開かれました。
気象予測に基づいた柔軟なダム操作は「精度の低さや外れた際のリスクがあり困難」であるとして見送られました。

◆西日本豪雨
柔軟なダム操作、見送り 気象予測外れるリスク 大洲・検証会合 /愛媛

(毎日新聞愛媛版2018年10月26日)
https://mainichi.jp/articles/20181026/ddl/k38/010/512000c

 西日本豪雨でダムの大規模放流後に肱川が氾濫した問題で、国土交通省四国地方整備局は25日、ダムの放流操作などを検証する第3回会合を大洲市内で開いた。ダムの改造事業などに合わせて操作規則を変更し洪水調節機能を拡充する方針を示したが、気象予測に基づいた柔軟なダム操作は「精度の低さや外れた際のリスクがあり困難」と見送った。【中川祐一】

 操作規則に過度に縛られない柔軟なダム操作については住民説明会などで検討を求める意見が強く出ていたが、同整備局は流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を現行規則より早い段階で実施した場合を例示。気象予測が外れれば本来回避できたはずの浸水被害が発生し、予測が的中しても早くから浸水被害が発生するため早期の避難が必要と主張。西日本豪雨でも1時間前の予測と実測値に大きな差があったとし、「操作規則に反映することは困難。予測精度の向上に期待する」と結論付けた。
 有識者からは「予測は難しいが、流入量と浸水被害の対応関係をしっかり国と市町で共有しておくだけでも意味がある」という意見が出た。

 一方、野村ダム(西予市野村町)の治水容量を利水者との調整で600万トン(豪雨前は350万トン)からさらに増やす案や、鹿野川ダム(大洲市肱川町)の改造事業や激特事業による下流域の整備に合わせて両ダムの操作規則を変更する案を示した。
 住民への周知のあり方も検証され、ダムの放流量を住民にアナウンスしたり、災害時の行動を時系列で整理した「防災行動計画」を住民と一緒に作成したりする案が示された。有識者からはダム放流による危険性が誰にでも分かるように危険度のレベルを示す案が出たほか、「行政が手厚くすると住民が依存体質になることもある。『自分たちならではのルール』を住民らで考え、避難行動につなげる必要がある」などの意見が出た。有識者の意見を踏まえ、年内に次回会合を開いて取りまとめる。


◆大洲で関係自治体と協議
 野村・鹿野川ダム 国、操作規則変更方針
(愛媛新聞2018年10月26日(金))
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201810260142

 西日本豪雨などによる肱川水系氾濫を受け、野村、鹿野川両ダムの操作や住民への情報提供を検証するため国土交通省四国地方整備局が設けた会合が25日、大洲市であった。整備局はダム改造や堤防整備の進み具合を踏まえ、両ダムの操作規則を変更する方針を示した。

  会合後には報道陣に、来年4月を目指す鹿野川ダム洪水吐(ばき)トンネル運用までには両ダムの操作規則を変更すると表明。具体的内容については、県や利水者、大洲、西予両市などと協議し、流域住民の理解を得たいとした。

  会合は3回目。洪水吐トンネル運用で、鹿野川ダムの洪水調節容量は1650万トンから740万トン増強される。操作規則変更に関し同局の佐々木淑充河川部長は、ダムの容量や堤防の流下能力は有限とし「ある地区を極端に安全にすると、別の地区の安全度が下がることがあり得る。特定地区のエゴにならないよう(流域住民全体の)納得感が必要」と述べた。

 同局は、中小規模洪水に対応した操作規則と大規模洪水に有効な操作規則を、降雨予測に応じて併用するなどの柔軟なダム操作は現時点では困難とする見解も示した。「予測が外れた場合、本来避けられたはずの浸水被害が発生するため」という。

 野村ダムのさらなる治水容量確保に向けた放流設備設置を検討するともした。

  有効な情報提供では、同局は異常洪水時防災操作開始を下流域の自治体などに通知する文書に、下流への影響などを追加する案を提示した。予測最大毎秒放流量のほか、氾濫危険水位や過去最大規模を超える可能性の有無を示す内容。森脇亮愛媛大教授は「放流量に対応した危険度を表示すれば、誰でも直感的に理解できるのではないか」などとした。

 会合ではこのほか、西予市(野村地区)と大洲市(菅田―肱川地区)の避難情報発令基準策定や浸水シミュレーションの実施、両市ホームページへのダム流入量・放流量掲載なども示された。年内に次回会合を開き、結論をまとめる予定。


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【2018/10/27 16:41】 | 未分類
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    嶋津 暉之

2015年9月の鬼怒川水害でも川治ダムが緊急放流直前にまで行き、ダム直下・川治温泉の住民約350人の緊急避難が行われました。

このダムの緊急放流問題を取り上げた下野新聞の記事をお送りします。
こちらは2015年の記事です。
2018-10-26_03h46_20.jpg

この後、2016年に鬼怒川ダム統合管理事務所は千年に1度の雨が降った場合、ダムの放流により最大10~20㍍の水深になると想定し、川治温泉地区の浸水想定区域を新たに指定しました。

しかし、千年に一度の洪水とはいえ、水深が10~20メートルにもなるというのですから、ダム下流の住民は対応のしようがありません。

◆ダム大量放流、対策急務 浸水想定ない地域も
(下野新聞2018/10/17 10:03)
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/87651

7月の西日本豪雨の際、愛媛県で実施され犠牲者が出たダムの大量放流への備えが、本県でも課題となっている。想定を越える豪雨に伴い実施されれば、被害が出る恐れもあるためだ。

2015年の関東・東北豪雨を機に、県内の一部地域では洪水ハザードマップが策定された一方、浸水想定がなされていない地域もある。

対策が急がれる中、識者は大量放流があり得ることを行政が住民に十分に周知する必要性などを指摘している。
 西日本豪雨では愛媛県内の二つのダムが満水となり、大量放流が行われた。大規模な浸水被害が生じ、9人が死亡した。住民への周知は放流直前だった。

県内では01年9月、台風の影響で日光市の川治ダムで大量放流が行われ、家屋の浸水被害などがあった。

 15年9月の関東・東北豪雨の際は川治ダムが満水に近づき大量放流の可能性があったが、雨が弱まり見送られた。

国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は当時、大量放流した場合の浸水想定をしておらず、同市は急きょ、独自の想定で川治ダムの直下の川治温泉地区の住民に避難を促した。

そこで同事務所は16年、川治温泉地区の浸水想定区域を新たに指定した。千年に1度の雨が降った場合、大量放流により最大10~20㍍の水深になると想定。

同市は洪水ハザードマップを作成し同地区の各世帯に配布した。地元自治会も防災訓練を予定するなど、一定の対策が進んでいる。

 一方、県内にはほかにも県や電力会社などが管理する大小30力所以上のダムがある。

県砂防水資源課によると、少なくともこのうち県が管理し洪水調節機能がある七つのダムでは、ダムに近い地域の大量放流時の浸水想定がなされていない。

 ダム建設時に調節能力を超える豪雨を想定していなかったことやダムの近くは山間部で民家が少なく、浸水想定の優先度が下流域よぴ低いことが理由という。

 西日本豪雨を受け国交省の有識者検討会は9月、浸水想定をしていなかったダム近くの地域でも、必要に応じ想定対象とする方針を示した。

県は「推移を注視しつつ、市町と連携しダム付近の住民への周知強化な止め訴訟を進めたい」とする。

宇都宮大の池田裕一教授(河川工学)は「行政は大量放流について住民にきちんと伝えること、住民は訓練などで具体的な避難行動を考えておくことが重要だ」と指摘している。



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【2018/10/26 03:54】 | 未分類
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      嶋津 暉之

9月末の記事ですが、8月7日に提訴した鬼怒川水害訴訟についての詳しい記事をお送りします。
第1回口頭弁論は水戸地裁下妻支部で11月28日(水)(15時45分~)に開かれます。

◆14人死亡の鬼怒川氾濫、国は危険性を認識しつつ放置…住民の対策要求を何度も無視
(Business Journal / 2018年9月30日 16時0分)

鬼怒川で発生した2015年9月の水害。関東・東北豪雨により、茨城県を流れる鬼怒川が氾濫し、流域の5つの市が洪水に飲み込まれた。住民は孤立し、約4300人が救助されたが、災害関連死と認定された12人を含む14人が死亡。多くの住宅が全壊や大規模半壊などの被害を受けた。

 この水害は単なる自然災害ではなかった。住民は洪水が起きる危険性を、発生前から国に指摘していたのだ。しかし、現在も国が非を認めないため、常総市の住民ら30人は8月7日、国に約3億3500万円の損害賠償を求めて提訴した。

 今年7月の西日本豪雨、昨年7月の九州北部豪雨など、全国で水害の被害が相次ぐなかで、住民は「水害被害にあった多くの人たちのためにも、国のデタラメな河川行政の転換を求める」と憤る。現地で原告の住民に話を聞いた。

●凄まじい被害は「国による人災」
 8月7日、水戸地方裁判所の下妻支部には、提訴に訪れた住民と弁護団、それに報道陣と、多くの人が詰めかけていた。提訴を終えて、建物から出てきた弁護団の只野靖事務局長は、報道陣の取材にこう答えた。

「3年前、水害が起きた当初から、国の対応に瑕疵があると考えてきました。国の責任が大きいこの水害は人災です。その思いを強くしています」

 3年前の15年9月10日午前6時頃、関東・東北豪雨により、常総市の若宮戸地区で最初に洪水が発生した。鬼怒川の水量はその後も増え、午後0時過ぎには上三坂地区の堤防が決壊。最終的に決壊は200メートルにわたった。

 激しく流れる洪水は建物、田畑などを次々と浸水し、常総市の中心部である水海道地区にも及んだ。常総市の面積の約3分の1にあたる、約40平方キロメートルが浸水してしまった。市内では住宅の全壊が53棟、大規模半壊と半壊が約5000棟。災害関連死と認められた12人を含む14人が亡くなる甚大な被害を出した。

 この水害が、なぜ人災なのか。原告のひとりで、最初に洪水が発生した若宮戸地区で農業生産法人を営む高橋敏明さん(64)は、静かな口調ながら、怒りを込めて話した。

「若宮戸地区には自然の堤防となっている砂丘林があるだけで、本来国がつくるべき堤防がありませんでした。しかも、ソーラー発電の業者が、砂丘林を掘削して、無堤防状態になっていました。にもかかわらず、国は十分な対応を取りませんでした。そこから洪水が流れ出たのです」

●国は危険を2度にわたって放置

 写真は、現在の若宮戸地区。ソーラーパネルが並ぶ場所の付近だけ、200メートルほど砂丘林が切れているのが確認できる。ここが最初に水が溢れた場所だ。いまは水害後の工事で堤防がつくられているが、被害が出た時には、砂丘は低く削られていた。

 鬼怒川は一級河川なので、国土交通省の管理下にある。砂丘が削られた2014年3月以降、住民が国に対策を求めると、国は「その場所は河川区域ではなく、私有地なので手が出せない」という態度だった。

 しかし、あまりにも危険な状態なので、住民が引き続き対応を求めると、14年7月、国の担当者は1個の高さが約80センチの土嚢を2段積んだ。取られた対策はそれだけだった。

 それからわずか1年あまり。住民の予想通り、豪雨の早い段階で、砂丘林が削られた場所から川の水が溢れ出た。洪水はあっという間に住宅や田畑を飲み込んだ。砂丘林が削られていなければ、あふれた水量はもっと少なく、これほどの被害は出なかった可能性が高いのだ。

 それだけではない。国は長い時間をかけて「鬼怒川直轄河川改修事業」を進めている。11年度の事業評価の際には、当面7年で堤防を整備をする区間と、おおむね20年から30年をかけて整備をする区間が定められている。

 若宮戸地区の砂丘林の高さは、事業で整備の基準にしている「計画高水位」よりも1メートル低い。しかし、整備計画の区間には入っていなかった。原告を支援する水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表や弁護団が、国が提出した資料を分析すると、国は03年度に若宮戸地区で堤防をつくる詳細な設計をしていながら、その報告書がお蔵入りしていたことがわかった。

 つまり、国は若宮戸地区の砂丘林が低いことを認識していながら、意図的に堤防を整備せずに放置していたことになる。さらにその砂丘林が削られても、十分な対策を講じなかった。住民は2度にわたって国に放置されてしまったのだ。

●誰かが立ち上がらなければ

 若宮戸地区の高橋敏明さんは、砂丘林が削られた場所からおよそ800メートルほど離れた場所で、観葉植物や、花卉の栽培を行なっていた。鬼怒川の氾濫により、1500坪もあった花卉栽培の温室などの施設は破壊されてしまった。

「45年間、丹精を込めて植物を育ててきましたが、水害によって壊滅的といいますか、跡形もなくなりました。経営も危機的な状況に陥りました。皆さんに協力いたただいて、今は水害前の7割くらいまで再建できています」

高橋さんは、法人と個人の両方で原告になっている。責任があるのは明らかなのに、非を認めない国の態度が今でも許せなかった。しかし、それだけではない。多くの被災者が国の落ち度を訴えてきたが、生活の再建に追われて、裁判まで起こそうという人は時間がたつとともに減ってきた。誰かが立ち上がらなければ、国の態度が変わることはない。そう思い、裁判を決心した。

「私たちの声を無視して、危険を放置した国に責任がないというのは、信じられません。私たちが立ち上がることによって、あきらめかけていた人たちも、また一緒に国を訴えようと、動きだすのではないかと思っています」

 実際に、今回提訴した法人と個人の30人以外にも、原告団に加わろうという動きが出ている。近く追加提訴が行われる見通しだ。

●泣き寝入りしている人のためにも

 今年7月に発生した西日本豪雨により、各地で大規模な河川の氾濫が発生し、これまでに220人が犠牲になった。

 鬼怒川氾濫と同じように、危険がわかっていながら、洪水対策がとられていなかった場所といえば、岡山県倉敷市真備町の小田川が挙げられる。小田川は過去にも繰り返し氾濫し、河川改修も計画されていたが、実施されないまま今回の水害が発生し、51人が亡くなった。

 水害をめぐる訴訟では、1984年1月に出た大東水害訴訟最高裁判決によって、その後住民側が行政を訴えてもほとんど勝訴できない状況となった。大東水害とは、72年7月に大阪府大東市で大雨で寝屋川が氾濫した水害。その判決で示されたのは、河川の管理と、改修中の河川の管理について瑕疵が認められるのは、「河川管理の一般水準及び社会通念に照らして、格別不合理なものと認められる」場合だけというものだった。

 鬼怒川水害でも、国は非を認めていない。しかし、常総市に行って見てみれば、これだけ長い流域で、周囲に多くの住民が暮らす一級河川を、自然の堤防に頼って国がまともに管理していないことに驚かされる。鬼怒川は利根川の最大の支流で、関東平野を流れる重要な河川のひとつである。社会通念に照らして、放置してきた国に責任がないとは、到底思えない。

 弁護団の只野靖事務局長は、水害訴訟の流れを変えるのも今回の裁判の意義のひとつだと、力を込めて語った。

「水害で被災した方で、裁判で行政の責任を問いたくても、できなかった方が何万人もいると思います。全国で水害が多発しているなかで、鬼怒川と同じメカニズムで被災した方もいるかもしれません。想定外の雨が降ったのだから仕方がない、という国の姿勢で済ませていたら、大きな被害が出る状況はいつまでたっても変わらないでしょう。水害の被害にあった多くの方のためにも、裁判で河川行政の転換を求めていきたいと思います」

 行政による人災を、自然災害で済ませていいはずがない。鬼怒川氾濫をめぐる訴訟では、国の河川行政そのものが問われている。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

 


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【2018/10/26 03:44】 | 未分類
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    嶋津 暉之

多摩川でさえ、堤防整備が完了していない区間が2割以上、約28kmもあるという記事をお送りします。
通常の堤防整備だと、どの河川も整備完了は遠い将来のことになってしまいます。

耐越水堤防工法を導入して、最小限の費用で堤防整備を進める方法を考えるべきですが、国土交通省は耐越水堤防工法の導入を頑なに拒否しています。

◆多摩川堤防27キロ整備されず…高さも幅も不足
(読売新聞2018年10月19日 19時17分)
https://www.yomiuri.co.jp/eco/20181019-OYT1T50020.html

 1級河川・多摩川のうち、東京都青梅市から東京湾に至る区間の2割超で、十分な高さや幅を備えた堤防が整備されていないことが、国土交通省への取材でわかった。未整備の堤防は青梅や羽村、狛江など少なくとも13自治体にあり、計27・9キロに及ぶ。近年は各地で豪雨被害が起きており、今夏の西日本豪雨などは記憶に新しい。同省は「未整備のままでは、多摩川でも洪水などの被害が出る可能性がある」としている。

 同省によると、青梅市から東京湾までの流路は、一部の支流を含めて延べ78・6キロ。管轄する同省京浜河川事務所は、このうち左右両岸の計130・8キロで堤防の整備が必要だとしている。今年3月現在、計102・9キロは完成しており、整備率は78・6%。全国に109ある1級河川の平均整備率67・7%を上回っている。

 ただ、八王子や立川などの計27・9キロでは、整備が完了していない。未了区間は断続的にあるが、ほとんどのケースで近くに住宅地などが広がっている。同事務所は未了地点を中心とした約320か所を、重点的に洪水を警戒する「重要水防箇所」に指定している。

 整備未了のうち26・1キロでは、堤防の高さや幅が不足している。青梅市友田町では、7か所の計865メートルで堤防の幅などが足りず、強度が十分ではないという。同省の「多摩川水系洪水浸水想定」によると、豪雨で増水した場合、友田町内には5~10メートルの浸水が予想されるエリアもある。

 残りの1・8キロでは、堤防そのものがない。世田谷区の一部などが、これに含まれている。

 多摩川では1974年9月、台風16号の影響で水量が増加して堤防が決壊し、狛江市内の民家19棟が流された。浸水被害は1270戸に上った。戦後最大規模の災害だという。

 同省は75年、堤防の工事実施基本計画を見直した。74年の台風時と同程度の増水があっても洪水などの被害が出ないようにしたといい、現在は2001年にまとめた「多摩川水系河川整備計画」に基づいて堤防整備を進めている。

 ただ、用地買収が難航したり、住民の合意が得られなかったりするケースもある。人口が集中する河口付近から順次、工事が進められるため、上流には未着手の地域もあるという。

 京浜河川事務所の担当者は「計画された堤防の整備を着実に進めたい」と話している。



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【2018/10/23 01:54】 | 未分類
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        嶋津 暉之

最近は、反対の声を無視して強行されているダムの話ばかりですが、今回は中止になったダムについての記事です。
淀川水系の丹生(にう)ダムです。2016年に中止が決定しました。中止に伴って地域整備実施計画がつくられ、県道の拡幅や市道の舗装、川の浚渫(しゅんせつ)工事などが進められています。

なお、淀川水系流域委員会は2005年1月に5ダムの中止を提言しましたが、そのうち、川上ダムと天ヶ瀬ダム再開発は現在、事業中です。大戸川ダムは推進に向けて動きつつあります。

余野川ダムと丹生ダムは中止になりました。

◆丹生ダム 道路工事進捗 整備協、初の現地視察 長浜 /滋賀
(毎日新聞滋賀版2018年10月20日)
https://mainichi.jp/articles/20181020/ddl/k25/010/427000c

 丹生ダムの予定地だった長浜市余呉町の高時川上流の地域整備を進める「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備協議会」が19日、道路整備工事などの進捗(しんちょく)状況を確認するため、初めて現地視察を実施した。

 地元住民でつくる丹生ダム対策委員会(湯本聡委員長)と国交省近畿地方整備局、県、長浜市、水資源機構の5者で構成する協議会は2016年10月に初会合を開き、今回で6回目。

ダムの予定地だった地域は昨年度に策定された整備実施計画に基づき、県道の拡幅や市道の舗装、川の浚渫(しゅんせつ)工事などが進む。

 この日は、協議会の委員や関係者ら約40人が現地に入り、工事担当者から説明を受けた。

視察後、湯本委員長は「整備だけでなく地域活性化に資する事業も含め、スピード感を持って進めてもらいたい」と話した。【若本和夫】

 

【2018/10/23 01:49】 | 未分類
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     嶋津 暉之

長崎県の諫早湾潮受堤防と宮城県気仙沼市の防潮堤の問題を取り上げた記事をお送りします。
記事に出てくる大川のダム建設計画は宮城県の新月(にいつき)ダムです。
熊谷博之さんたちの新月ダム建設反対期成同盟会による二十数年以上の長い反対運動により、2000年に中止が決定しました。

◆「命を守る」堤防の論理 諫早支局長 山本 敦文
(西日本新聞朝刊2018年10月20日 10時44分)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/weather_vane/article/458936/

 諫早湾(長崎県諫早市)を閉め切る全長7キロの潮受け堤防沿いの岩礁が、緑色に染まっている。今夏の猛暑で発生したアオコが、べったりと張り付いているのだ。

 「あんな状態を放置して恥ずかしくねえのかな」。宮城県気仙沼市のカキ養殖漁師、畠山重篤さん(75)が、これまで何度か足を運んだ諫早湾に向けるまなざしは厳しい。

 畠山さんは気仙沼湾に注ぐ大川のダム建設計画をきっかけに、1990年から上流で植樹運動を続けている。カキが育つ汽水域の環境保全には川が運ぶ森の養分が必要と考えたからだ。2009年にはNPO法人を設立し「森は海の恋人」を合言葉に、環境教育など活動を広げている。

 11年3月、東日本大震災。畠山さんの住む舞根(もうね)地区にも津波が押し寄せた。集落の大半の家屋が流され、畠山さんも母親を亡くした。周辺では津波が運んだ土砂や石油流出で起きた沿岸火災の影響で、浅海の生物はほぼ死滅した。

 だが、数年で魚が戻った。「森や川とつながっている海の回復力はすごい」と畠山さん。山から運ばれた養分が海の食物連鎖を復活させた。

 だからこそ、02年のノリ凶作から16年たった今も再生論議が続く有明海の現状が、畠山さんにはもどかしく映る。

 震災後、東北の太平洋沿岸では、国土交通省が「数十年から百数十年に1度の津波から命を守る」という防潮堤の建設が始まった。気仙沼市では23漁港に高さ最大14・7メートルの壁を築く計画だ。

 畠山さんに共鳴して森里海(もりさとうみ)連環学を提唱する京大名誉教授の田中克さん(75)は「巨大な防潮堤は、長期的には森の養分を海に運ぶ地下水を遮断する恐れがある」と言う。舞根地区は、住民の大半が高台に移転することで「防潮堤は不要」と拒み、山、川、海と人のつながりを守った。
 諫早湾の潮受け堤防も高潮対策など防災が目的に挙げられている。確かに、湾に注ぐ本明川の流域では1957年、諫早大水害で539人の死者・行方不明者が出た。ただ、その防災目的は、湾を閉め切って農地や工業用地を造成する当初の干拓計画が82年に中止に追い込まれた後、国が持ち出した経緯がある。

 命を守る堤防-。田中さんは、こう言い添えた。「住民が反対しにくい防災を前面に掲げ、森と海の連携を断ち切る巨大公共事業の本質は有明海と東北で共通します」

 本明川上流では今春、同じ防災目的で国交省が総事業費500億円のダム建設に着手した。潮受け堤防を築いた農林水産省と治水効果などを巡る調整協議はされていない。

 


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【2018/10/21 00:07】 | 未分類
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       嶋津 暉之

10月18日に「肱川水系河川整備計画(中下流圏域)の点検について意見を聴くため 学識者会議」が開かれました。
http://www.skr.mlit.go.jp/pres/new/i1454/181011-2.pdf

西日本豪雨での流量規模が計画規模を超えたので、計画規模を引き上げるため、河川整備計画を変更するという話です。

しかし、肱川水系河川整備計画の根本問題はダム偏重の治水対策です。山鳥坂ダムの建設と鹿野川ダムの改造に巨額の河川予算を注ぎ込み、河道整備を蔑ろにしてきたことにあります。

今回の豪雨では、山鳥坂ダムがあっても役に立ちませんでした。むしろ、山鳥坂ダムも緊急放流を行って水害を助長した可能性が大です。

完成までまだ10年近くもかかり、金食い虫の山鳥坂ダム事業を中止して、河道整備を速やかに進める河川整備計画につくり直すべきです。

◆肱川氾濫、河川計画「変更必要」 国と県が学識者会議初会合
(愛媛新聞2018年10月19日(金))
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201810190035

 西予、大洲両市に甚大な被害を出した西日本豪雨に伴う肱川氾濫を受け、国土交通省四国地方整備局と県は18日、肱川水系河川整備計画変更の検討に入った。大洲市で開いた学識者会議の初会合で、今回の洪水が計画規模を上回っていたと説明。学識者から「変更が必要」との意見を得た。具体的な変更内容や時期は学識者会議の意見を聞きながら、国や県が決める。素案段階で流域住民などを対象に意見公募を行う方針。

 河川整備計画は2004年策定で、おおむね30年で堤防やダムを整備する。同整備局大洲河川国道事務所によると、計画の目標流量(大洲第二観測所)は毎秒5千トンで、今回の洪水があるまで戦後最大だった1945年9月の洪水と同規模でも被害を出さない想定となっている。

 一方、西日本豪雨での流量規模は、ダムによる洪水貯留をせず、氾濫がない場合で6200トン程度(速報値)と推定。事務所は「計画通り整備していても、被害が出た可能性がある」と説明する。実際の流量は4442トン(同)だった。
 流域の大洲、西予両市や内子町からは、整備区間見直しや新計画策定の要望があった。

 学識者会議は環境や文化財などが専門分野の14人で構成。議長に鈴木幸一愛媛大名誉教授(河川工学)を互選した。初会合では、国や県が計画について▽治水▽利水▽河川環境―などの分野で現状を説明。鈴木氏は「整備を適切に実施していることは確認したが、7月の洪水は現行計画を大きく上回っており、早急な変更が必要」と述べた。

 事務所によると、国や県の肱川緊急治水対策には大洲市内の暫定堤防かさ上げなどで現行計画の範囲を超えるものがあり、実施のためには計画変更が必要という。

 


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【2018/10/20 23:05】 | 未分類
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      嶋津 暉之

石木ダム予定地の川棚町川原(こうばる)地区の住民が地元で収穫した「こうばる支援米」の販売を始めました。

◆「こうばる支援米」ネット販売 川棚・石木ダム予定地で収穫

(長崎新聞2018/10/17 16:00)
https://this.kiji.is/425111068455388257?c=39546741839462401

 県と佐世保市が計画する石木ダム問題に関心を持ってもらおうと、建設予定地の東彼川棚町川原(こうばる)地区の住民が地元で収穫した「こうばる支援米」の販売を始めた。

 石木川の保全活動に充てる寄付金込みで、白米(5キロ2550円~)と玄米(同2500円~)を販売。インターネットのサイト「こうばるショップ」で注文できる。

 10月上旬までに北海道から沖縄まで全国から約80件の注文があった。

住民や支援者は14日、地区公民館で約40件分の発送作業に取り組んだ。

残りも収穫次第、発送する予定。
問い合わせは住民の石丸穂澄さん(電0956・83・3372)、
メールは hozumiX1982@gmail.com

【2018/10/20 01:38】 | 未分類
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    嶋津 暉之

徳山ダムが完成して10年、その開発水は全く使われていません。
徳山ダムの開発水を無理矢理使うため、揖斐川から長良川と木曽川に送水する木曽川水系連絡導水路事業が計画されていますが、水余りが進む状況で必要であるはずがなく、事業の検証も行われない状態になっています。
この問題を取り上げた朝日新聞の記事をお送りします。

◆貯水量は浜名湖の2倍、見えぬ使い道 岐阜・徳山ダム
編集委員・伊藤智章
(朝日新聞2018年10月18日10時31分)
https://digital.asahi.com/articles/ASLBH56XNLBHOIPE01L.html?iref=pc_ss_date

 治水、利水、発電の多目的ダムとして建設された徳山ダム(岐阜県揖斐川町)。1957年の構想浮上から60年余りが経過し、その目的が今の社会に合わなくなっている。

 「徳山ダムが(下流の)横山ダムと連携し、50センチ水位を下げました」。名古屋市で4日に開かれた木曽川水系流域委員会。国土交通省の担当者が強調したのは、7月の豪雨で徳山ダムがみせた治水効果だ。流入する水を一時全量ため込み、揖斐川下流の負担を減らした。

 徳山ダムは治水、利水、発電の多目的ダム。当初は毎秒15トンを愛知、岐阜両県や名古屋市の都市用水に供給するはずだったが、長い工事期間のうちに水余りに直面し、最終的に6・6トンに縮小された。代わりに洪水対策などの容量を増やし、治水効果が上がったという。

 一方、この7月豪雨では長良川の支流・津保川があふれ、岐阜県関市上之保で2人死傷、全半壊約100戸の被害が出た。現地では9月末も家屋がブルーシートで覆われ、畳を上げて修理中だった。車が流された自営業男性(62)は「早く川を浚渫(しゅんせつ)して安全にしてほしい」。家のすぐ裏の津保川は近くで別の川と合流しているうえ、下流約100メートルでカーブし、砂がたまりやすいという。

 岐阜県も付近の危険性を認めており、緊急対策が必要な県管理河川(265キロ)にこの地区の津保川を挙げている。だが2023年までに完成を目指す50キロには含めておらず、着手はその先の予定だった。

 「限られた予算。選ばざるをえない」。県の担当者は苦しげだ。県の今年度の治水予算は124億円。国の事業抑制に加え、06年に表面化した県財政危機から、予算は20年前の4分の1まで減らされている。

検証進まぬ、導水路事業

 利水の必要性が下がっているなか、岐阜県はダムの完成後23年かけて利水負担金約400億円を水資源機構に払う契約を結んでおり、まだあと240億円残っている。本来は西濃地方の市町や企業に水を売って返済するはずだったが、地下水が豊富で一滴も売れず、一般会計から払う。利子や治水分なども合わせ、県の負担は年30億円を超える。

 徳山ダムの利水関連事業はまだ続いている。国の木曽川水系連絡導水路事業(890億円)だ。ダムでためた揖斐川の水を、愛知県や名古屋市が取水施設をもつ木曽川や長良川に流す。渇水時は水を流せば環境改善にもなるといい、上流ルートの途中で一部を長良川に落とし、下流ルートでまた木曽川へ流す。

 だが節水の定着などで、愛知県や名古屋市の水需要は横ばいから減少傾向だ。ピークの1975年に124万トンあった名古屋市の1日最大給水量は昨年、83万トンにまで減った。「100年に一度の大渇水」と言われ、各地で断水騒ぎのあった94年8月レベルだ。

 長良川への放流も、むしろダムの冷たい水を入れることで「アユの成育などに影響するのでは」などという根強い疑問があり、市民グループが独自に毎月、水質計測を続けている。

 民主党政権時代の2009年、全国のダム検証の対象に導水路事業が入り、公開の場で費用対効果などを調べることになった。名古屋市の河村たかし市長は導水路に批判的で、15日も記者の質問に「利水で要るというなら具体的に(国に)証明してもらわないかん」と話した。国交省も簡単に継続の結論を出しにくく、この3年間、会議が開かれていない。全国83の検証事業のうち、いまだ「検証中」は導水路など四つだけになった。(編集委員・伊藤智章)

     ◇

 〈徳山ダム〉 揖斐川上流に建設された、治水、利水、発電の多目的ダム。岩を積み重ねて造るロックフィルダムで、ダム本体は高さ161メートル、長さ427メートル。総貯水容量6億6千万トンは静岡県の浜名湖の約2倍に相当する。

 


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【2018/10/20 01:34】 | 未分類
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