「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
            嶋津 暉之

石木ダム定地の地権者らが26日、佐世保市中心部のアーケード街で、ダム計画に反対するよう市民に訴える街頭活動を行いました。

西日本新聞の記事
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◆長崎)佐世保市民に「ダム反対を」 川棚の地権者ら訴え
(朝日新聞長崎版2017年3月27日)
http://digital.asahi.com/articles/ASK3V44R0K3VTOLB001.html

 県と佐世保市が川棚町で計画する石木ダム予定地の地権者らが26日、佐世保市中心部のアーケード街で、ダム計画に反対するよう市民に訴える街頭活動を行った。

 地権者や親族ら約20人が参加。

買い物客が続々と通る島瀬公園前に「させぼ市民の皆さん 助けて下さい! 私たちの家、土地をダムで沈めないでください」と書かれた横断幕を掲げ、「佐世保市の水は足りている」「強制収用は止めるべきです」などと書かれたチラシを手渡した。

 道行く人の中には「絶対に土地を手放したらだめ。頑張って」と声をかける人の姿も。

出張で来たという広島市の30代の男性会社員は足を止めて地権者の話を聞いた。

「何十年も解決しないのは、(行政側に)話を聞く気がないのかなと感じた。話し合いで解決すればいいのに」と語っていた。(福岡泰雄)

【2017/03/29 01:05】 | 石木ダム
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             嶋津 暉之

川辺川ダムの代替案を検討する「球磨川治水対策協議会」の第7回会合が3月21日に続いて、そのトップ級会議(九州地方整備局長、熊本県知事、市町村長)が22日に開かれました、両会議についての毎日の記事をお送りします。

これらの会議の配布資料がこちらに掲載されています。
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/damuyora/index.html 

1月6日~2月6日の期間で行われた意見募集の結果も掲載されています。
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/activity/kaisaisiryo/20170321sankoushiryou1.pdf

110人が意見を出しており、多くの人が球磨川の行く末を案じていることがわかります。
その大半の意見は検討案の内容がよくわからないので、住民への説明を丁寧に行えというものでした。

今回の意見募集を行った国土交通省の狙いは、代替案がなかなか決まらないことに業を煮やして、川辺川ダム計画を復活せよという声が出てくることにあったように思いますが、幸いなことにそのような意見は数人だけでした。

◆球磨川治水対策協議会
 避難方法検討を 八代市長が注文 トップ会議 /熊本

(毎日新聞熊本版2017年3月23日)
http://mainichi.jp/articles/20170323/ddl/k43/010/247000c

 球磨川水系の「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いだ「球磨川治水対策協議会」は22日、国土交通省九州地方整備局長と蒲島郁夫知事、流域市町村長によるトップ会議を県庁で開いた。

この1年間の協議会での検討内容の他、「検討する場」で作られた治水対策の進捗(しんちょく)状況を確認した。

 トップ会議は年1回開かれている。副市町村長ら実務者が中心の同対策協議会は21日、8項目の治水策の組み合わせを検討することを決め、22日のトップ会議でその方針を改めて確認した。

会議では、中村博生・八代市長は「放水路案は『新球磨川』を作ることと理解しているが、下流域の八代で一気に水量が増える可能性があり、住民避難のやり方も合わせて検討してほしい」と注文した。

複数の市町村長は「実現可能性やコストを含めてできるだけ早く組み合わせ案を提示してほしい」と要望した。【笠井光俊】
◆球磨川治水対策協 8項目で組み合わせ検討 /熊本
(毎日新聞熊本版2017年3月22日)
http://mainichi.jp/articles/20170322/ddl/k43/010/257000c

 球磨川水系の「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いで設置された「球磨川治水対策協議会」の第7回会合が21日、人吉市であった。

今後、球磨川本流と支流・川辺川を計6区間に分け、河道掘削など8項目の治水策の組み合わせによる治水効果の検討に入ることを確認した。

 これまで治水策は9項目だったが、森林保全など流域での対策は「今以上の治水効果が薄い」として除外。川水を安全に流下させる対応(引堤(ひきてい)▽河道掘削▽堤防強化)、洪水を貯留・分流させる対応(遊水地▽市房ダムの能力アップ▽放水路)、その他(宅地かさ上げ▽輪中堤)の8項目を検討対象にする。

 その上で国土交通省九州地方整備局と県は、安全流下と洪水貯留・分流の各グループ内での組み合わせを先行して検討し、実施可能な範囲でその他の2項目も検討を進める方針を示し、了解された。

組み合わせ案と一緒にコストも提示される予定。九地整は「組み合わせ案の整理に相当の時間は必要だが、できるだけ早く提示したい」と話した。

 また会合では、9項目の治水策について1月~2月初旬に実施したパブリックコメントの結果が公表された。

球磨川流域内外の110人の7割近くは「住民に意見を求めるなら、分かりやすく説明してほしい」「住民説明会を開催してほしい」といった意見だった。

 また同協議会はダム建設を除外して治水策を検討しているが、蒲島郁夫知事が白紙撤回した川辺川ダム建設が「最良」とする意見が数件あった。一方、球磨川中流にある瀬戸石ダムの撤去を求める意見もあった。【笠井光俊】


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【2017/03/27 16:25】 | 各地のダム情報
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            嶋津 暉之

アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定し、国の事業認定と北海道収用委員会裁決をいずれも違法とした二風谷(にぶたに)ダム訴訟の札幌地裁判決があってから20年になります。
ダム本体が完成していたことを理由に、二風谷ダム建設差し止めの請求は棄却されましたが、先住民族と認定した判決は画期的でした。
なお、二風谷ダムは堆砂がひどく進行し、2015年3月末現在で堆砂率は総貯水容量の約4割に達しています。
溜まった泥の濁りがダムの下流域から河口沿岸域までおよび、シシャモの繁殖に多大な影響を与えているとされています。

◇沙流川の今。2016年7月29日 | 流域の自然を考えるネットワーク
http://protectingecology.org/report/6462

土砂供給量が非常に大きい沙流川はダムを造ってはいけない河川であるにもかかわらず、現在、二風谷ダムの上流で平取(びらとり)ダムの建設が進められています。

◆二風谷ダム訴訟 判決20年 父から子へ「闘い」今も 権利回復、道半ば /北海道
(毎日新聞北海道版2017年3月25日 )
http://mainichi.jp/articles/20170325/ddl/k01/040/232000c

アイヌ民族を初めて先住民族と認め、独自の文化への配慮を欠いた事業認定を違法とした二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から27日で20年。

父の遺志を継いで訴訟を起こした貝沢耕一さん(71)と、もう一人の原告でアイヌ民族初の国会議員、故萱野茂さんの次男志朗さん(58)が胸に抱くのは、先住民族としての権利回復は、道半ばとの思いだ。民族の誇りをかけた闘いは、父から子へと受け継がれ、今も続く。

差別の歴史問う

雪が残る3月上旬の、平取町二風谷地区。穏やかに流れる沙流川に、二風谷ダムの巨大な水門が立つ。「子どものころ、向こう岸の畑に行くための丸木舟がいくつもあった。川遊びもできたよ」。貝沢さんは、ダムができる前の思い出を語った。

住民の7割がアイヌ民族の血を引くとされる二風谷では1970年代からほぼ毎年、舟下ろしの伝統儀式「チプサンケ」を再現してきた。82年にダム建設事業が始まり、北海道開発局が進めた用地買収に対し、文化継承が途絶えるとして土地明け渡しを拒否したのが貝沢さんの父正さんと、萱野茂さんだった。

裁判で問われたのは、差別の歴史そのものだ。アイヌ民族は明治以降の同化政策でアイヌ語や固有の習慣、生活の基盤だった狩猟や漁労を否定され、北海道旧土人保護法により、不慣れな農業が奨励された。

森、本来の姿に

「政府にアイヌの声を届けたい」。92年に亡くなった正さんの言葉は今も、貝沢さんの胸に残る。97年3月の判決後、同7月に旧土人保護法は廃止、アイヌ文化振興法が施行された。

貝沢さんは現在、開拓の名の下に切り倒された森を本来の姿に戻そうと、山林を買い取り、木を育てるNPO法人「ナショナルトラスト・チコロナイ」の理事長を務める。チコロナイは「私たちの沢」を意味するアイヌ語で、萱野茂さんが名付けた。買い取った土地約30ヘクタールに、伝統的な衣服の材料になるオヒョウなどを植えてきた。

この20年で「若い世代がアイヌ文化に関心を持ち始めた」と変化を感じるものの、「民族の権利や生活を改善しようと裁判を闘ったが、状況は変わらない。振興法はアイヌの権利を一切うたわず、文化を博物館に押し込むようなものだ」と、貝沢さんは批判する。

アイヌ語伝える

大学進学後、東京で暮らしていた萱野志朗さんは、カナダの先住民族との出会いをきっかけに、民族の言葉の大切さに気付いた。故郷に戻って父の下で一からアイヌ語を学び、現在は「萱野茂二風谷アイヌ資料館」の館長を務める。

2006年に亡くなった父に代わって地元の小中学生にアイヌ語を教え、現在も大人向けの教室を続ける志朗さん。「アイヌ語を失えば、民族が長年培ってきた価値観や知識も伝わらない。子どもや孫の世代に文化をどう受け継いでもらうのか、アイヌ自身もビジョンを持たなければならない」と強調した。

政府施策、文化振興に偏り

海外で先住民族の権利を認める流れが広がる中、政府は二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から10年余り過ぎた2008年6月、官房長官談話で初めてアイヌ民族を先住民族と認めた。だが政府のアイヌ施策は文化振興に偏っており、先住民族としてのアイヌの権利は具体化していない。

1997年3月の札幌地裁判決はアイヌ民族を「わが国の統治が及ぶ前から北海道に居住し、なお独自の文化およびアイデンティティーを喪失していない社会的な集団」として、先住民族と認定した。

07年9月に日本も賛成して国連総会で採択された「先住民族の権利に関する宣言」は、先住民族に自決権や文化的伝統を実践する権利、土地や資源に対する権利などを広い範囲で認めている。

権利宣言の採択に加え、北海道洞爺湖サミット(08年7月)の開催を控えてアイヌ民族が海外からも注目されるようになったことが、政府にアイヌを先住民族と認めるよう求める衆参両院の決議と、決議を受けた官房長官談話につながった。

政府は白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」の基本方針を14年6月に閣議決定。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせた国立アイヌ民族博物館の開館のほか、生活や教育を支援する新法制定も検討されているものの、民族の権利についての議論は深まっていない。

二風谷ダム訴訟で原告側弁護団長だった田中宏弁護士は「単なるハコモノ造りではなく、同化政策の歴史に向き合わなければならない」と語る。

恵泉女学園大の上村英明教授(先住民族論)は「過去の政策や歴史に理解を深めないまま、日本社会がどう責任を取るかが定まっていないため、権利が実現していない。行政主導ではなく、政治や司法の場でもアイヌ民族への政策を問い直すべきだ」と強調した。


■ことば

二風谷ダム訴訟

平取町の二風谷ダム建設を巡り、地権者である故萱野茂さんと貝沢耕一さんが北海道収用委員会に、土地強制収用の裁決取り消しを求めた行政訴訟。札幌地裁は1997年3月27日の判決で、アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定。ダム建設がアイヌ文化に与える影響について調査を怠り、アイヌ民族の文化享有権を軽視したと指摘し、国の事業認定と道収用委裁決をいずれも違法とした。ダム本体が完成していたことを考慮し、請求は棄却した。


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【2017/03/27 16:18】 | 各地のダム情報
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             嶋津 暉之

国土交通省が2015年の水害統計を公表しました。

◇平成27年の水害被害額(確報値)を公表 
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000918.html

◇平成27年水害統計調査 
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001098275&requestSender=search

鬼怒川の氾濫があった茨城県の被害額は約1,590億円でした。

◆2015年の水害被害額は3,900億円 - 都道府県別被害額1位は茨城県
(マイナビニュース2017/3/23)
http://news.mynavi.jp/news/2017/03/23/357/

国土交通省は3月22日、2015年の水害被害額(確報値)が全国で約3,898億円に上ったと発表した。被害額は暫定値(約3,850億円)から約50億円増加し、2006年~2015年の10年間で3番目の大きさとなった。
水害被害額の内訳は、一般資産等が約2,212億円、公共土木施設が約1,605億円、公共事業等は約81億円。なお、被害額には、人的損失、交通機関の停止などによる波及被害、被災企業の部品・製品供給機能、本社機能等の損失による他地域の企業への影響等に係るものは含まれていない。

都道府県別の水害被害額上位3県は、1位が茨城県の約1,590億円、2位が栃木県の約660億円、3位が宮城県の約330億円となった。

主な水害の被害状況をみると、2015年9月に発生した台風18号に伴う豪雨は、利根川水系鬼怒川で洪水を引き起こし、関東地方の国管理河川では1986年の利根川水系小貝川以来、29年ぶりに堤防が決壊。茨城県常総市では、鬼怒川から東側のエリアは市役所を含め、ほぼ全域が浸水するとともに、電力や上下水道、鉄道等のライフラインが停止し、8,991棟の浸水被害が発生した。

被災建物棟数は2万6,671棟で、内訳は床下浸水が1万5,136棟、床上浸水が4,672棟、半壊が6,756棟、全壊・流失が107棟。浸水区域面積は2万7,486ヘクタールで、内訳は農地が1万9,809ヘクタール、宅地・その他が7,677ヘクタールとなった。


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【2017/03/27 16:10】 | 未分類
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          嶋津 暉之

大阪市の水道局民営化がとん挫する見通しになりました。
水道・下水道の民営化は望ましいとというご意見もありますが、下記の論考「市民に悪影響なのに 大阪市水道民営化のなぜ」には、
「世界各地では民営化が水質の悪化や水道料金の高騰を招き、巨額のコストを負担して公営に戻す自治体が続出していることだ。パリ、ベルリン、アトランタなど先進国の都市でも再公営化されている。」
と書かれており水道民営化が良い方向に働くとは言えないと思います。
水道は生活に直結する公共財ですから、各市に水道部門があって、市民がチェックできる体制のもとで管理されるのが望ましい姿ではないのかと思います。

◆大阪市の水道局民営化、頓挫…議案廃案の見通し
(読売新聞2017年03月24日)
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20170324-OYO1T50020.html?from=tw

 大阪市の吉村洋文市長が来年4月の実現を目指していた市水道局の民営化が頓挫する見通しとなった。民営化議案は前任の橋下徹市長時代に否決後、吉村氏が昨年2月に再び提案。開会中の市議会での採決を求めたが、慎重論が根強く、廃案となる公算が大きくなったためだ。

 市議会では、少数与党の大阪維新の会が民営化に賛成だが、他会派からは「生活の基盤である水道は市が責任を持って運営するべきだ」(自民党市議)、「高い技術力と豊富な人材を誇る水道局は重要な資産」(公明党市議)といった慎重意見が相次ぎ、3度にわたって継続審議となった。

 今回は維新が賛成、自民が継続審議、公明が反対の方針で、いずれも過半数に届かないため、採決できずに廃案となる見通し。

◆市民に悪影響なのに 大阪市水道民営化のなぜ
(ニュースソクラ 2017/1/6(金) 13:00配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170106-00010002-socra-pol

維新の「大阪都構想」へのこだわりが背景に

今、大阪市では大阪維新の会の市長が打ち出している水道事業の民営化を巡って、市議会が紛糾している。民営化されれば全国初だが、品質の維持や安定供給できるのかなどを巡って議論は紛糾、可決には至らず、継続審議案件となった。「貧乏人は水も飲めんようになるのか」という反発も広がっている。
大阪市の水道民営化の出発点は2008年にさかのぼる。タレント弁護士から転身して大阪府知事に就任したばかりの橋下徹・前府知事が、大阪府守口市の淀川沿いに大阪府と大阪市の浄水場が近接して建っているのを「二重行政」と批判して、水道事業の統合協議が始まった。

大阪府も大阪市も水道施設は水の需要を大きく上回る処理能力があり、数字上は「一つでも賄える」。そのうえ、高度経済成長時に整備が進んだ水道管などの設備が更新時期を迎え、多額の費用がかかることも背景にあった。

しかし、協議に入ると大阪府、大阪市だけでなく、大阪府から水供給を受けている衛星都市も含めて思惑や利害が対立し、2010年に大阪府と大阪市の水道事業統合は破たん。翌年、大阪府で水道事業を担当する府水道部を府から切り離して「大阪広域水道企業団」という一部事務組合とし、市町村は各自の判断でこの企業団に参加することとなった。

一方、大阪市は、2011年12月に府知事からくら替えした橋下・前大阪市長が就任し、水道事業の一本化に再チャレンジする。大阪市水道局を企業団に統合する協議が大阪市と企業団の間で始まった。

しかし、企業団の一員になると「安さが自慢」の大阪市の水道料金が維持できないと予想されることなどから、大阪市議会は2013年5月、企業団との統合を「市民にメリットなし」と否決した。橋下前市長は2010年4月に旗揚げした地域政党「大阪維新の会」の代表であり、大阪市議会でも維新が与党ではあったが過半数はなかったためだ。

すると、大阪市議会が企業団との統合を否決した翌月、大阪市長、副市長以下、市幹部職員らで構成される「大阪市戦略会議」の方針として「水道事業の民営化の検討」が発表された。

これは、同じ頃に閣議決定された安倍政権の「骨太の方針」と成長戦略に歩調を合わせたもの。大阪市議会が大阪市の水道事業は独立路線を選択したため、橋下前市長が「二重行政の解消」と振り上げた拳の下ろし先が「民営化」になったのだ。

そもそも、何のための民営化なのか。大阪市水道局は、高品質の水を安い料金で提供してなお年間約100億円の黒字を確保している。リスクを冒して民営化に踏み切る状況にはみえない。

2015年12月に橋下前市長からバトンタッチした吉村洋文・大阪市長は、民営化によって水道料金が値下がりしたら市民にアピールできる「実績」になると考えているふしもある。

吉村市長は、「人件費削減による効率化」を全面に打ち出している。大阪市の試算では、民営化したら30年間で910億円のコスト削減ができ、一方で法人税や法人住民税で570億円の負担が発生するため、吉村市長は政府に税制優遇措置を求めている。

吉村市長の号令の下、大阪市が検討する民営化とはどんな形態なのか。まず、水道局を市から切り離して「株式会社」に改組し、市の100%子会社にするとしている。3~5年後をめどに株式を売却して民間出資を受け入れる方針だったが、これは議会や市民の反発を招き、吉村市長は株式売却については発言しなくなった。民間出資の方向性をあいまいにしているため、株式「上場」の話には至っていない。

問題は、世界各地では民営化が水質の悪化や水道料金の高騰を招き、巨額のコストを負担して公営に戻す自治体が続出していることだ。パリ、ベルリン、アトランタなど先進国の都市でも再公営化されている。

具体的にどんな問題が生じたのか。アトランタでは人員削減と料金値上げの末、浄化処理のレベルを落としすぎて水道の蛇口から茶色の水が出たこともあった。インディアナポリスでは、何百万人もの市民に対し「水道水は煮沸してから使用するように」という警告が発せられ、学校が休校になるところまで追い詰められた。

既にこれほどに、海外で失敗例があるのに、今更なぜ民営化なのか。市民の間からは「時代遅れの政策」と反対運動もでてきている。

長年にわたって大阪の水道事業をウオッチしているNPO法人「水政策研究所」(大阪市北区)の北川雅之理事は「人口減少などで水道事業を支え切れなくなっている中小の自治体と、水道が優良公営事業である大阪市では事情が違う」と話す。

「安倍政権は成長戦略で上下水道事業の民営化を打ち出しているが、水道供給に負担の大きい中小の自治体が民営化という形で人件費を削減して乗り切る逃げ道を作ったに過ぎない。生命維持に不可欠な水の供給に携わる仕事でむやみに人件費を削っていいのかという問題もあるし、大阪市がそんな方針に乗っかるのは優良な水道サービスを享受している市民の利益を考えていない」と語る。

では、大阪市の水道事業は未来永劫、安泰かと言えばそうではない。人口減少などにより今の水道料金では二十数年後に「赤字」になるという試算もある。しかし、需要の低下は民営化しても避けられず、むしろ、そういう事態が想定されるからこそ、「命の水」は公営で支えるべきものだ。

民営化=コストカット=商品の値下がり=消費者にメリット、という考え方は水道事業にはあてはまらない。水道は洋服を買うように消費者が自由に商品を選べない。民営化=コストカット=水道サービスが悪化=消費者に被害、もしくは、民営化=会社の利益優先=水道料金の上昇=消費者に被害、という結果は海外の失敗例を見ても容易に予想される。

大阪市営事業の民営化を考える上で、松井一郎府知事、吉村大阪市長をはじめ大阪維新の会の政治家たちが、2015年5月の住民投票で否決された「大阪都構想」にまだこだわっていることを忘れてはならない。

大阪市を廃止して東京のような特別区に解体するのが大阪都構想なので、大阪市営事業は邪魔なのである。大阪市がなくなれば、大阪市営事業は混乱が避けられないからだ。

前述の水政策研究所の北川理事が更に問題点を指摘する。「今後、水需要が高まる予測はなく設備過剰は確実なのだから、浄水場の規模を半分にして、土地の販売を売却したら大阪市の収入になる。設備縮小だって10年がかり。早く手をつけるほど早く合理化できるのに、民営化計画が出て来て設備縮小の話はストップしてしまった」と民営化論議が、必要な政策の先送りにつながっているという。

「二重行政の解消」という大阪維新の会の看板に端を発した大阪市の迷走はいつまで続くのだろうか。

■幸田 泉(ジャーナリスト)
立命館大学理工学部卒業。1989年に大手新聞に入社。大阪本社社会部で大阪府警、大阪地検など担当。東京本社社会部では警察庁などを担当。2012年から2年間、記者職を離れて大阪本社販売局に勤務。2014年に退社し、販売局での体験をベースに書いた『小説・新聞社販売局』(2015年9月、講談社)がその赤裸々さゆえにベストセラーに。


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【2017/03/26 07:23】 | 未分類
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        嶋津 暉之

3月22日に国土交通省・国土審議会水資源開発分科会が開催され、「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」答申(案)について議論が行われました。

その時の配布資料が国交省のHPに掲載されました。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000070.html

パブリックコメントで提出された生の意見は今回は掲載されず、答申がまとまった段階で掲載されることになっています。

繰り返しの話になりますが、水需要が減少の一途をたどり、水余りが一層進行していく時代において水源開発基本計画(フルプラン)の役割は終わっているのですから、根拠法である水資源開発促進法とともに、各水系のフルプランを廃止すべきです。

今回の答申は、役割が終わったフルプランを延命させるための答申です。

当日の会議を傍聴しましたが、審議会の委員の大半はフルプランの基本的な問題を理解しておらず、無意味な議論が多いと思いました。

その中で、滝沢智氏(東大教授)の発言は看過することができませんでした。
2017-03-26_03h16_47.jpg
「東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 都市水システム研究室」より
http://www.urbanwater.t.u-tokyo.ac.jp/j/member.html

「リスク管理型」という名のもとに、想定外にも対応するために今後も水源開発を進めようというのが、この答申の基本的考え方ですが、といっても、際限なく進めることは現実性がないので、一定の考え方(それ自身も問題ですが)が答申案に記されています。

滝沢智氏はその考え方に対しても異論を唱え、想定外にも対応するために水需要予測値を大きくできるように、水源開発の供給可能量を小さく評価できるように記述を変えることを求めたのです。
あまりにもひどい話なので、その異論は採用されませんでしたが、水源開発事業のマイナス面を全く考えずにそのような発言をする滝沢氏に対して怒りを感じました。

滝沢氏は石木ダムの事業認定の際に、佐世保市の架空の水需要予測にお墨付きを与える意見書を出した人物です。
「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が出した「石木ダム事業認定に関する回答への公開質問書」に対して滝沢氏は回答を拒否し続けています。
http://suigenren.jp/news/2014/06/03/5410/

【2017/03/26 07:22】 | 政策
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          嶋津 暉之

水道の民営化の道を開く水道法改正案が3月7日に閣議決定されたことを先日お伝えしました。
水道ではなく、下水道の方ですが、浜松市が下水処理施設「西遠浄化センター」などの運営権を20年間、仏ヴェオリア等で構成する企業連合に委ねる可能性が高くなりました。
浜松市はこのため、市の下水道条例を2016年2月に改正しました。PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)を活用して、下水処理施設等の運営権を委ねるというものです。

下水処理場の管理を民間委託している例は今まで多くあると思いますが、運営権を委ねるのは国内初とのことです。

今回の水道法改正案が成立すると、浜松市の下水道のように、外国資本も入った会社が水道の運営権を持つ例が増えていくのでしょうか。憂慮されるところです。

◆浜松市で下水道初の運営権 仏ヴェオリア陣営が取得
(日本経済新聞2017/3/21 14:36)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HIL_R20C17A3000000/

 浜松市は21日、国内初となる下水道の長期運営権売却「コンセッション」で、水処理世界最大手の仏ヴェオリアとJFEエンジニアリング、オリックスなどで構成する企業連合が優先交渉権を取得したと発表した。同市が下水道運営の一部を同陣営に20年間委ねる。コンセッションは空港や道路で始まっている。民間の効率的な運営ノウハウを生かせば収益性が見込めるとして、インフラ運営に参入する企業は増えそうだ。

 道路や空港、水道などの公共施設で、国や自治体が所有権を残したまま、運営する権利を民間事業者に売却するコンセッションは政府の成長戦略の1つ。国内で利用料収入を伴うインフラ資産は185兆円とされる。民間委託は行政にとってインフラ維持運営の財政負担を軽くできる。企業はほぼ手つかずだったインフラ運営という新市場に参入できる。
 国内のコンセッションは、仙台空港や愛知県の有料道路などで民間運営が始まっている。だが資産が約90兆円と国内最大のインフラである下水道では、浜松市が第1弾となる。

 同市が所有する下水処理施設「西遠浄化センター」などの運営権について、優先交渉権を得たのは、仏ヴェオリアの日本法人やJFEエンジ、オリックスなど6社。今年10月をメドに契約を結び、2018年度から20年間にわたり事業を担う。運営権対価は25億円で提案した。

 対象施設は市内の下水処理量の6割を占め、事業規模は年20億円程度。ヴェオリア陣営は期間中、施設の運営や設備更新などを独自に行う。センサーなどを使って少ない人員で効率的に設備管理する仕組みや、下水汚泥をバイオマス発電向けの燃料とする設備を設けて副次的な収入の獲得などを狙う。

 ヴェオリアは、海外でコンセッションの実績が豊富なほか、JFEエンジは、下水汚泥の処理技術を持つ。オリックスは下水道分野へ初参入となるが、関西空港でコンセッションを始めている。

 下水道は設備の老朽化が深刻になっている。30年には国内全体の更新費用が年1兆円と、現在の7割増に膨らむ見通しだ。だが人口減による利用料収入の減少で、自治体の運営は苦しくなっており、民間委託は必至の流れとの見方が強い。下水道のコンセッションを巡っては、大阪市や宮城県も検討している。
(大平祐嗣)


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【2017/03/26 07:08】 | 新聞記事から
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           嶋津 暉之

地方自治が専門でダム問題にも詳しい相川俊英さんの新著「地方議会を再生する」が集英社から出版されました。
読み始めたばかりですが、大変読みやすく、議会改革のポイントがよくわかる好著だと思います。
是非、皆様もお読みいただき、周りの方にも勧めていただければと思います。



【2017/03/23 08:20】 | お知らせ
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           嶋津 暉之

韓国では李明博政権時代に4大河川事業(漢江、洛東江、錦江、栄山江の4大河川を浚渫して、堰を多数建設する事業)が進められ、生態系を大きく破壊したとされています。
この4大河川の水質悪化問題についての記事です。

◆韓国政府、4大河川の水質悪化を認定…「堰を開いて大量放流」
(ハンギョレ新聞 2017/3/21(火) 17:20配信 )
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170321-00026845-hankyoreh-kr

韓国政府、4大河川の水質悪化を認定…「堰を開いて大量放流」

 政府がアオコで生態系が破壊されている4大河川の水質を改善するために、長時間にわたり堰の水門を開いて水を大量放流することにした。堰によって詰まっていた水を流れるようにするということだが、政府も4大河川の水質悪化の深刻さを認めたわけだ。だが、一時的な放流で毎年繰り返されるアオコを改善できるかには疑問が残り、水が抜けて魚介類の斃死などの憂慮も出ている。

 国土交通部、環境部、農林畜産食品部は20日、こうした内容が含まれた「ダム-堰-貯水池連係運用方案」委託研究結果を発表した。今回の委託研究は首相傘下の4大河川事業調査評価委員会が勧告したものだ。委託研究はダムと堰から水を放流した時、4大河川の水質改善効果を調べた。堰の水位を「地下水制約水位」(周辺の地下水に影響を与えない水位)まで低くするなど、水を大量に長期間(74~121日)放流した時、洛東江(ナクトンガン)、錦江(クムガン)、栄山江(ヨンサンガン)のアオコが一部改善されることが明らかになった。水が持続的に流れれば水質が良くなるという話だ。
 政府もすでに堰から大量放流できるように規定を変更した。堰の管理規定によれば、洪水や渇水を除いては常に管理水位(堰の最高水位)を維持するよう定めていたが、昨年12月にアオコなどの水質改善のために堰の水位を「揚水制約水位」(農業用揚水場の取水に影響を与えない水位)や地下水制約水位まで低くできるようにした。

 だが、堰の水を大量放流するとは言っても、再び堰の水門を閉じればアオコの発生が繰り返される可能性が高い。一時的に水質を改善させることはできるが、川を蘇らせるには力不足だ。さらに大きな問題は、委託研究報告書の内容どおり、アオコを解決するために2カ月以上にわたり地下水制約水位まで水を放流することが現実的には難しいという点だ。国土交通部関係者は「雨が少なければ農業用水も不足しかねず、堰の水を長期間大量放流することは容易でない」と話した。

 大量放流による弊害も解決を要する課題だ。今年2~3月に6個の堰を地下水制約水位まで低くして放流試験運用をしてみたところ、水位が低くなって一部地域では魚道が閉鎖され魚の移動が困難になった結果、魚介類の斃死の懸念も指摘された。こうした理由から政府は魚道16カ所、揚水場25カ所に対する改善が必要で、それには638億ウォン(約64億円)がかかると推定した。4大河川事業に22兆ウォン(現在価値で2兆2千億円)の予算が必要とされ、現在もなお毎年数千億ウォンの管理費が投入されているが、水質改善のためにもまた財政を使わなければならないということだ。

 カトリック関東大学のパク・チャングン教授(土木工学)は「地下水が影響を受けない範囲まで堰の水位を下げるために大量放流するということは、水が流れてこそ水質が維持されるということを政府自身も確認したということ」としながら「これは4大河川事業以前に戻してこそ川を蘇らせることができるという意味」と話した。パク教授は「4大河川の堰のために悪化した水質を、4大河川の堰の水を利用して改善するということで、あまりにも呆れ返る状況」と付け加えた。
キム・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )


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【2017/03/23 07:59】 | 新聞記事から
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               嶋津 暉之

九州の国直轄5ダムの2017年度予算が大幅に増額されたことを取り上げた記事です。
ダム事業をストップさせるはずのダム検証が暗転し、ダム事業推進の道具に化してしまいました。
「脱「脱ダム」」が加速というのは何とも悔しいですね。

◆九州の脱「脱ダム」加速 17年度予算案 九州、事業費13倍も

(西日本新聞朝刊2017年03月20日)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/315745

 民主党政権で縮小されたダム事業の予算が、自民党政権下で大きく膨らんでいる。ダム建設の是非を検証して「継続」が決まった九州の国直轄の5ダムについて、2017年度予算案と11年度の事業費を比較すると、最大で13倍だった。脱「脱ダム」の流れが加速している。

 ダム事業検証は10年に始まり、九州では国直轄6、水資源機構1、県営(国が補助)7の計14ダムが対象になった。事業主体と地元自治体が昨年8月までに検証した結果、継続11、中止3となった。

 国直轄で継続になったのは、筑後川水系ダム群連携(福岡県)、城原川(佐賀県)、本明川(長崎県)、立野(熊本県)、大分川(大分県)の5ダム。

 国土交通省によると、5ダムの09年度の事業費総額は42億700万円。11年度は20億9200万円に減少したが、その後は増加を続け、大分川の工事がピークを迎えた16年度は200億2900万円。17年度予算案には総額131億1100万円が盛り込まれた。
 検証中は、着手していた周辺道路の整備などは続けるが「新たな段階」に入らないとしていたため、継続が決まった翌年度以降に事業費が大きく増える傾向がある。

 個別に見ると、17年度に本体着工を予定する立野ダムの予算は48億3800万円で、11年度の事業費3億7100万円の13倍。本明川ダムは、11年度の1億2700万円から17年度は13億4700万円で10倍。大分川ダムは14億1800万円から63億3600万円に、城原川ダムは9600万円から3億5900万円に増えた。

 昨年8月に継続が決まった筑後川水系ダム群連携の事業費は、11年度から16年度まで7900万円から8800万円で推移していたが、17年度予算は2億3100万円が計上された。

 自民党政権は防災や減災のための「国土強靱(きょうじん)化」を重視。国交省九州地方整備局は「流域の安心安全のため、必要とされた工事を着実に進めたい」としている。


▼ダム事業検証 民主党は2009年の衆院選マニフェストに「時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す」と明記し、川辺川ダム(熊本県)と八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の中止を公約。

同年12月に前原誠司国土交通相は、本体に着工していない国直轄や水資源機構、国が補助金を支出する道府県営のダム事業について「ダムによらない治水」が可能かを検証すると表明した。

検証対象の83ダムのうち、結果の出た79ダムの内訳は継続54、中止25。民主党政権は11年、八ツ場ダムの中止方針を撤回した。



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【2017/03/23 07:56】 | 各地のダム情報
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