「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
               嶋津 暉之

霞ケ浦導水事業の事業計画の変更が発表されました。工期が8年間延びて2023年度までとなりました。
那珂川水系の全漁協が霞ケ浦導水事業・那珂導水路の差し止めを求める裁判の審理が東京高裁で行われています。
第2回の控訴審が4月19日(火)午後2時から、東京高裁812号法廷で開かれます。
那珂川等の漁業に大きなダメージを与える霞ケ浦導水事業を中止させるべく、漁協とともに弁護士さんと専門家が頑張っています。

◇霞ヶ浦導水事業計画の一部変更について
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000246.html

関東地方整備局河川部

平成28年3月31日付けで、特別水利使用者の撤退等を反映する河川法の手続きを完了し、事業計画を変更しました

主な変更内容

① 工期を平成27年度から平成35年度に8年間延長
現時点で工程を精査した結果、事業完成の予定時期が平成35年度となったため。

② 特別水利使用者の最大取水量が9.2m3/sから9.026m3/sに変更
東総広域水道企業団(水道0.114m3/s)、千葉市(水道0.06m3/s)の2者が撤退するため。

【2016/03/31 23:54】 | 未分類
トラックバック(0) |
             嶋津 暉之

スーパー堤防は全体計画の実現の見通しがまったくなく、ほんの一部を進めているところでは住民の強制移転を迫るものになっており、有害無益な事業です。
東京の江戸川右岸では、北小岩一丁目に続いて、篠崎公園地区でもスーパー堤防を整備する計画が進められています。
2月22日の関東地方整備局の事業評価監視委員会では江戸川スーパー堤防(篠崎公園地区)の再評価が重要案件として議題になりました。

その議事録が関東地方整備局のHPに掲載されましたので、お知らせします。

http://www.ktr.mlit.go.jp/shihon/index00000034.html

http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000643812.pdf

この会議では家田 仁委員長からこの事業に対してかなり厳しい意見がありました。
江戸川でスーパー堤防の整備を進めていく具体的な計画がなくて、ここだけ、スーパー堤防にする意味がどこにあるのだと、事業の必要性に対して強い疑問が出されました。
パフォーマンスとしての発言ですが、発言の内容は私たちの意見に近いものもあり、興味深いものでした
参考のため、その発言の主なところを下記に記しておきます。

関東地方整備局の事業評価監視委員会第8回
〇家田委員長
例えば江戸川の右岸でも、この篠崎公園の上流側だって、こんなぐちやぐちやのところでやるべきだけど、現地がなかなかそこまで準備が整っていないので、それで篠崎公園のところだけ先にやらせてくださいねという話なのか、それとも一番やるべきところなんて、全然、地元はやる気も何もなくて、それで一番楽そうなところだけちょっとやってやるかという、それだけの話なのかで、随分、このプロジェクトの見え方が違ってくるよね。その辺はどうなんですか。
つまり、さっきの説明だと、地元の準備が整っているからやるんだという話だったけど、地元の準備が整っているのは必要条件であって、地元がやりたいと言ったら、どこでもやっていいというものじゃないんだよね。そうでしょう。

〇家田委員長
つまり、これをやって何の意味かおるかといったら、公園が高くなるというのが主たる目的でしょう、これ。

〇家田委員長
その見通しは何も書かれていない。あなたの説明自身が、地元はここしかやりたくないと言っている。

〇家田委員長
いや、だからプランを言ってほしいのよ、もっと。何年くらいでこれが全部できて、そうすれば、ここの赤いところをやることの意義がこう出てくるんですよと。そっちの見通しなんて何もないくせに、これをやると超過洪水対策が、この下流部についてこんなに行きますなんて言われたって、「本当かよ」と言うしかないじやないですか。

〇事務局
いや、ここにつきましては、すみませんが、いつまでにできるということを明確に言えるような状況ではないということでございます。

〇家田委員長
300年後ぐらいですか。

〇事務局
いや、高規格堤防事業としては、順次、まちづくりなどにあわせて、整備できるところを整備していくというスキームの中で進めさせていただいているところです。あわせて、ここを整備できるところは整備していくというスキームの中で進めさせていただいています。

〇家田委員長
そうするとね、ここで生じている超過洪水対策で出てくる便益というのは、それが全部でき上がって、いつになるか知らないけど、全部でき上がったときの便益ですね。普通の堤防ならば堤防の敷地だけでいいんだから、お金かけてやっていけばそれなりに進むけども、後ろで区画整理があるなんていうものは、そう簡単に全体に進むとは思えない。そこのところはどう考えているのですか。

〇家田委員長
そんな説明じゃだめでしょう。これね、普通の人だって主張可能な格好でやってるんだから、将来展望なんて何にも持ってないんだけど、とりあえずここやるうと言ってるからやらせてくださいなんていうんで済むわけないじゃないですか、説明として。営々とここのところ、ずっと赤いところやっていくつもりですと、我々は根性入れてやりますと、地元とも頑張ってやっているところですと。だけど、とりあえずここのところが合意ができだからやらせてくださいといったらわかるけど、いつまで何の検討もつかないなんて言ってる、そんなことで、例えば、どこからどこまでリニア新幹線をつくろうと言ってると。
だけど、この1mだけ引けるというから、そこだけ合意とれたからやりましょうなんていうので、ほかが何m、500kmぐらいのうちの499kmは一切検討もつかないというときにやるかと、そうじやないでしょう。全体の見通しもいい、そして、準備がここに整っている、だからここからやりましょうというのだったら納得できるけど、あなたの説明は全然、見通しも何にもつかないというような話でしょう。



追記を閉じる▲

【2016/03/31 23:06】 | スーパー堤防
トラックバック(0) |
                嶋津 暉之

3月29日に開かれた富山県の直轄ダム「利賀ダム」の「検討の場」の第3回会合についてチューリップテレビのニュースをお知らせします。
石井知事たちは利賀ダム事業を進めよと要求していますが、北陸地方整備局はダム推進の姿勢をまだ示していません。

利賀ダム検証案についての意見募集が昨日から始まりましたが、
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/togadamu/date/iken/iken.html

その内容を見ると、ダム案のコストがまだ示されておらず、今回の意見募集は代替案を絞り込むための意見募集です。

利賀ダムは5年間も検証作業を中断していたのですから、北陸地方整備局もそれほどのやる気はないのかもしれません。そうであるとよいのですが。

◆利賀ダム5年ぶりの検討会 国交省がダム代替案を提案
(チューリップテレビ2016年03月30日(水))
http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/index.html?TID_DT03=20160330144731

 民主党政権によってダム本体の着工が凍結された「利賀ダム」について、建設の妥当性を検証する会議が5年ぶりに開かれました。

 国土交通省がダムの建設に代わる治水対策案を示したのに対し、石井知事は改めてダムの重要性を訴えました。

 検討会には、石井知事と庄川流域の5人の市長が出席。

 国交省の担当者が、『治水』や『水の流れのコントロール』などの3つの観点から、ダム建設に代わる25の案を示しました。

 これらの案は、いずれも30年に一度の災害を想定し、川底の掘削や人工的な支流の整備などの際のコストを重視しています。

 利賀ダムの事業は、庄川の支流の利賀川で計画されていて、氾濫を防ぐ効果に加え、工事用道路の整備を期待する声もあります。

 民主党政権によって2009年に本体工事が凍結され、その後、建設の妥当性をめぐる検討が続いています。

 示された代替案について石井知事は、利賀ダムが150年に1度の大災害を想定していることを指摘し、より高い安全性の確保に理解を求めました。

 「他の方法のほうがコストが安いから、そちらでということにはならないはずなんですね」「結果として150年に一度の安全度のある利賀ダムの建設促進が図られる」「ぜひそういう方向で国にも働きかけていきたい」(石井知事)

 今後は、代替案について関係機関から意見を聞いたあと、次回の会議でさらに検討を行う予定です。


追記を閉じる▲

【2016/03/31 23:01】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
              嶋津 暉之

富山県の直轄ダム「利賀ダム」の「検討の場」の第3回会合が29日、開かれました。
事業推進に向けて動ぎ出しています。

利賀ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場の資料は下記に掲載されています。
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/togadamu/togadam%20kensetsujigyounokankeichihoukoukyoudantai.html

利賀ダム検証案についての意見募集も始まりました。
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/togadamu/date/iken/iken.html

2010年10月から始まったダム検証は5年半が経ち、直轄ダム・水資源機構ダムで結果が出ていないのは、思川開発、木曽川水系連絡導水路、大戸川ダム、丹生ダム、利賀ダム、筑後川水系ダム群連携事業、城原川ダムとなりました。

国交省本省からの指示があったからだと思われますが、それぞれ、昨年からダム検証の結果を出すための動きが見られます。

例えば、筑後川水系ダム群連携事業の検証の動きは
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/04-damugunrenkei/kensyo-damugunrenkei.html

木曽川水系連絡導水路事業の検証の動きはこちらで見ることができます。
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/kensho/index.htm

これらの未検証ダムのうち、思川開発、大戸川ダム、利賀ダム、筑後川水系ダム群連携事業、城原川ダムは事業推進の方向が明確になってきています。
推進の方向に待ったを掛ける方法がないかと思います。

◆「利賀ダム」事業継続求める
2016年03月30日
http://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20160329-OYTNT50348.html

「検討の場」で知事と5市長 民主党政権時代の2009年に本体工事が凍結された国の直轄ダム「利賀ダム」(南砺市、総事業費1150億円)を巡り、国と県、西部の5市が建設の是非を話し合う「検討の場」の第3回会合が29日、砺波市内で開かれた。

国土交通省北陸地方整備局はダムに代わる治水対策案4案などを提示し、石井知事と5市の市長はいずれもダム事業の継続を求めた。

治水対策の技術的な検討に時間がかかったことから、会合は前回の11年3月以来5年ぶりの開催となった。

利賀ダムは、庄川水系の利賀川に建設が計画され、治水と工業用水の確保を目的としている。現在、工事用道路の整備だけが進められており、工事の進捗(しんちょく)率は事業費ベースで約38%(15年度末見込み)。

民主党政権時代に、利賀ダムを含め全国83のダムで検証作業が始まり、これまでに47のダムが事業継続、24のダムが中止と決定されている。

2016年03月30日 Copyright c The Yomiuri Shimbun


追記を閉じる▲

【2016/03/31 22:41】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
            嶋津 暉之

水資源機構が事業主体である思川開発事業(南摩ダム)を検証するための検討の場 第6回幹事会が昨日、3月29日に開かれ、代替案との比較で思川開発が最も有利だという評価案が示されました。

配布資料が水資源機構のHPに掲載されました。
http://www.water.go.jp/honsya/honsya/verification/omoigawa.html

近いうちに評価案をまとめた検証素案が示され、パブリックコメントと公聴会が行われることになっています。

思川開発事業は思川・利根川の洪水調節、新規利水の開発、流水の正常な機能の維持、異常渇水時の緊急補給という四つを目的とする事業ですが、いずれの目的も必要性がなく、虚構の事業です。

洪水調節に関しては、南摩川は本当に小さくて小川のような川であり、そこにダムを造って洪水調節をしても、下流の治水に役立つはずがありません。

ところが、昨日の会議では、栃木県の担当部長から、思川開発ができていれば、昨年9月の水害を防げていたかもしれないので、早期に完成してほしいという意見がありました。

栃木県の担当部長でありながら、思川開発のことが何もわかっていない感じです。

5都県の担当者の発言のほとんどは、お決まりのフレーズ「検証の早期終了と工事の早期完成を」、「一層のコスト縮減を」というものでした。
事業推進に向かって一気に動き出そうしており、反対運動の展開が必要とされています。

思川開発(南摩ダム)の検討の場・第6回幹事会については下野新聞の記事しか見当たりません。国交省が控え目のアナウンスしかしていないこともありますが、マスコミがダム検証についてあまり関心を持たないのは困ったものです。
これでは多くの人が知らない間にダム推進の結論が出てしまいます。大戸川ダムなども同様で、先行きが大いに心配されます。

◆「南摩ダム、事業継続が最も有利」 水資源機構などが評価案 反対団体「茶番劇」
(下野新聞 2016年3月30日 朝刊)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20160330/2280365

鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)の是非を検証する「検討の場・第6回幹事会」が29日、さいたま市内で開かれた。
事業主体の国土交通省関東地方整備局、水資源機構は代替案と比較検討した結果、「ダム案」が最も有利との評価案を示した。

整備局、機構は渡良瀬遊水地を活用する案や新たに思川沿いに遊水地を造る案、湯西川や五十里など既存ダムを活用する案などを評価した。

その結果、治水は新規遊水地案が有利、ほかの3目的はダム案が有利とされ、目標達成度やコスト、10年後の実現可能性などの観点から総合的に評価し、ダム案が最も有利とした。

5都県からは「ダム案有利が示されたのであれば、早期に整備を進め治水効果を発揮してほしい」(栃木県)などと、15年9月の関東・東北豪雨に言及し早期に事業を進めるよう求める意見が相次いだ。

一方、市民団体からは疑問の声が上がっている。
「思川開発事業を考える流域の会」の高橋比呂志(たかはしひろし)事務局長は「検証メンバーは事業推進の立場で、まともな検証でない。茶番劇だ」と憤った。


◇第6回幹事会(平成28年3月29日開催) 会議資料
http://www.water.go.jp/honsya/honsya/verification/omoigawa.html

議事次第 ( PDFファイル 25KB)
検討の場(幹事会)の構成 ( PDFファイル 22KB)
資料1_検証対象ダムの事業等の点検について ( PDFファイル 380KB)
資料2-1 複数の治水対策案の立案及び概略評価による治水対策案の抽出について (
PDFファイル 1,444KB)
資料2-2_治水対策案の評価軸ごとの評価( PDFファイル 1,161KB)
資料3-1_新規利水対策案、流水の正常な機能の維持対策案及び
異常渇水時の緊急水の補給対策案の意見聴取結果について ( PDFファイル 377KB)
資料3-2_新規利水対策案、流水の正常な機能の維持対策案及び
異常渇水時の緊急水の補給対策案の意見聴取結果を踏まえた抽出について ( PDFファイル 112KB)
資料4_新規利水対策案の評価軸ごとの評価 ( PDFファイル 115KB)
資料5_流水の正常な機能の維持対策案の評価軸ごとの評価 ( PDFファイル 110KB)
資料6_異常渇水時の緊急水の補給対策案の評価軸ごとの評価 ( PDFファイル 104KB)
資料7_目的別の総合評価(案) ( PDFファイル 125KB)
資料8_総合的な評価(案) ( PDFファイル 289KB)
資料9_意見聴取等の進め方 ( PDFファイル 1,545KB)
参考資料_個別ダム検証の進め方等 ( PDFファイル 1,591KB)
参考資料_思川開発事業等の点検 ( PDFファイル 1,805KB)
参考資料_思川開発事業(南摩ダム)堆砂計画の検証について ( PDFファイル 1,093KB)


追記を閉じる▲

【2016/03/31 22:33】 | 未分類
トラックバック(0) |
           嶋津 暉之

国交省の鬼怒川堤防調査委員会の報告書が関東地方整備局のHPに掲載されました。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000643703.pdf

3月7日の第4回 鬼怒川堤防調査委員会で配布された報告書案とほとんど同じであると思います。
この報告書4-3ページに記されている決壊個所21㎞地点の堤防復旧工法は前にも指摘しましたように、再び越水すれば破堤の危険性があるものです。

八ッ場あしたの会のHP「国交省による鬼怒川改修計画の問題点」をご覧ください。
http://yamba-net.org/%e5%9b%bd%e4%ba%a4%e7%9c%81%e3%81%ab%e3%82%88%e3% 
越水しても破堤しない構造になぜしないのでしょうか。国交省の思惑は理解できません。

【2016/03/31 22:27】 | 政策
トラックバック(0) |
             嶋津 暉之

鬼怒川や水海道などの地名の由来についての記事です。
ただし、この記事も地名由来の説の一つであって、これとは違う説もあります。

◆こんな地名は水害に注意! ありきたりの地名に潜む驚きの意味
(Wedge 3月23日(水)12時30分配信)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160323-00010006-wedge-env

 昨年9月、鬼怒川堤防決壊をもたらした関東・東北豪雨。今回の被災地は史上何度も洪水に襲われており、過去に繰り返されてきた自然の営みにほかならない。まずは昨年の災害の痕跡を、地名から探っておこう。

鬼怒川流域
 鬼怒川はかつて毛野(けぬ)川(『常陸国風土記』)と呼ばれたが、「毛野国(後の上野・下野両国、現・群馬県と栃木県)を流れる川」のこと。平安期には「衣(きぬ)川」、中世には「絹川」とも書かれた。和語のケ(毛)とキ(木・牙)は「先端が尖り日夜、成長する」意味で、本来は同語・同語源である。

 古国名の「毛野」とは、関東北部の那須・日光・赤城・榛名・浅間などの火山群の麓の火山性扇状地・火山灰台地を、「△型の火山(ケ)がつくった野」と総称したもの。古代の鬼怒川は、関東北縁の帝釈山脈・日光火山群に源を発し、下野国(栃木県)中央部を南流して、常陸・下総両国境を流れ香取ノ海に注いでいた。
 香取ノ海とは現在の利根川下流域一帯に広がった内水面で、茨城県霞ヶ浦・北浦・牛久沼、千葉県印旛沼・手賀沼などはその名残である。その最奥部が騰波(とば)ノ江(『常陸国風土記』)、広河(ひろかわ)の江(『将門記』)であり、「飯沼」とも呼ばれた大沼沢池であった。

 関東北部の山地に大雨が降ると、下流の低湿地はしばしば冠水し、今回同様に一面の沼地と化した。そして水が引くと、古代以来、台地縁辺から徐々に水田化されていった。

 鬼怒川と小貝川は古代から、常陸国の筑波台地の西側、下総国北西端の結城台地の東側、幅3~5キロメートルの狭い低地を合流・分流しながら流れ、たびたび氾濫を繰り返した。この川の名が「鬼が怒る」という漢字表記になったのは、戦国期~近世初頭ごろからだろう。

 平安前期に編纂された『和名抄』国郡郷部には、下総国豊田郡飯猪(「潴(ぬま)」の誤記)郷の名が載る。この郷は、常総市石下から同水海道にかけて鬼怒川左岸に延びる自然堤防一帯だったろう。飯沼のイヒとは、長野県飯田市ほか多くの地名例から見てウへ(上)の同行通音形。つまりイヒヌマとは「上方にある沼」の意で、「香取ノ海の最奥部(最上流部)にある沼」のことである。

水海道
 常総市の中心地区「水海道」の地名について、柳田国男は「水海道古称」(1951年)で、「御津カイト」の意で「地方権力専用の港湾だった一画」と述べたが、この説はかなり見当違いである。カイトという地名用語は、のち柳田の弟子筋の東京教育大・直江広治教授らによる包括的な研究があるが、カイトは「部落・区画」といった意味の用語である。つまり、ミツカイトは「水に囲まれた一画」という地名で、今回の豪雨災害はまさに、それを目に見える形で実証した。

 江戸前期の1629年、それまで合流・分流しながら湿地帯に流れ込んでいた鬼怒川と小貝川が分離され、ほぼ現在の流路に固定された。往古の騰波ノ江(飯沼)は美田と化し、数千町分の飯沼新田が開発された。さらに小貝川下流域では江戸前期、常陸谷原(やわら)3万石・相馬谷原2万石の新田が開発された。つづいて、利根川の瀬替えという大土木工事が行われた。利根川は古来、現・埼玉県東部から古利根川・中川などいく筋にも分流して東京湾に注いでいた。その東側には渡良瀬川が足尾山地から流れ下り、太日(ふとひ)川(現・江戸川)となって東京湾に注いでいた。

 江戸前期の1641年、この2大河川の流路をさらに東側の鬼怒川筋に結び、赤堀川・常陸川経由で現・千葉県銚子市に流出させる瀬替え工事が完工した。以後、江戸市街の洪水被害が減少、現・埼玉県東部の広大な低湿地が水田化された。また、銚子から利根川を遡り、関宿から江戸川経由で行徳・日本橋を結ぶ内水面航路が開かれた。だが、流水量の多い利根川に注ぐ形になった鬼怒川は、その分だけ水はけが悪くなった。

 河川は一般に、源流部の山地では浸食力が強く、傾斜が緩やかな中・下流では堆積作用が働き、年々、河床に土砂が積もる。結果、河川の中・下流部の河床はしだいに高くなり、両岸の堤防(自然堤防も人工の場合も)は嵩上げされて天井川状になる。今回同様の集中豪雨があれば当然、越水・決壊の危険が増す。


 関東平野には、ほんの数百年前までいたるところに沼地が点在していた。利根川・荒川・太日川などが乱流し、海からはるか離れた内陸だから水はけが悪く、周囲より低い土地には大小の水溜りが広がっていた。2011年の東日本大震災では、関東地方の海岸だけでなく、河川沿岸や内陸の旧・沼地跡でも、あちこちで液状化現象が発生した。付近に神田川の支流である妙正寺川の流れる東京都中野区沼袋など、沼のつく地名は関東の至るところに存在する。

落合
 落合は「水が合流する所」のことで、農村ではごくありふれた地名。水田稲作にとっては有利な条件だが、豪雨の時には水が集中して畦(あぜ)が飛ぶなどの災害が起きる。東京都新宿区の落合は都心に近い閑静な住宅地で、およそ災害とは無縁の地のはずだった。ところが1999年7月21日、新宿区北部に集中豪雨があり、神田川に妙正寺川が合流する下落合3丁目を出水が襲った。そして民家の地下駐車場に住民1人が閉じ込められ、溺死するという惨事が起きた。
こんな地名は水害に注意! ありきたりの地名に潜む驚きの意味

大都市圏には水害に由来する地名が数多くある(iStock)

「~ヶ丘」「~台」

 2015年9月の関東・東北豪雨では、鬼怒川の陰で目立たなかったが、埼玉県越谷市の東武鉄道せんげん台駅一帯が冠水した。この「せんげん台」の名称は、近くを流れる千間堀(新方川の旧称)の名を借用したものである。越谷市と春日部市の市境付近には沼地が点在していたが、江戸前期に沼地を干拓し、悪水の排水路として掘削されたのが千間堀。全長約11キロメートルで実際の長さとは異なるが、「長い」ことを象徴的に「千間」と表現したもの。

 私が埼玉県大宮台地上の公団住宅に移住したのは今から47年前だったが、その数年後、台風時だったかに豪雨禍があり、県東部の某市で洪水が起き、「~ヶ丘」という名の住宅地が市内で最初に浸水した、と聞いた。当時、全国各地で、沼地・湿地・水田に数十センチメートルばかり嵩上げして「~ヶ丘」・「~台」と称して売り出す商法が横行していた。これは本来何らかの意味をもつ地名をなくす行為で、あってはならないと考えている。

カケ・ガケ
 関東平野ではないが、静岡県掛川市の名は「ガケのある川」ではなく、「決壊する(したことのある)川」のことであろう。同じカケル(欠)という動詞が名詞化した地名でも、丘や山の斜面が欠ければガケになるが、堤防が欠ければ決壊箇所になる。

 平野の中にガケがあるというのは景観矛盾だが、関東平野にはいくつか点在する。埼玉県八潮市垳は近年、「平野の中にガケとは変だ」という市役所の判断からか、新地名に変えられようとしている。住民は猛反発しているが、市当局は「垳」という常用漢字外の国字(日本製の漢字)がどうにも我慢ならぬらしい。それをいうのなら、栃木県の県名の「栃」も国字だが……。

東海地方の地名
 名古屋圏は、日本で最も危ない大都市圏ともいえる。東海地方は台風・高潮・洪水のみならず、地震・火山噴火などあらゆる災害が発生する。この100年余りでも、1891年の濃尾地震(M8・0)、1944年の東南海地震(M7・9)、45年の三河地震(M6・8)、46年の南海地震(M8・0)、59年の伊勢湾台風、2000年の東海豪雨、2014年の御嶽山水蒸気噴火など、いずれも先進国の大都市圏としては稀に見る大災害である。

押切、堀越、猪之越、荒越
 とくに近年では、2000年9月の東海豪雨災害で名古屋市の北から西を廻る1級河川の庄内川の排水用に掘削された支流の新川が100メートルもの長さで決壊し、西春日井郡西枇杷島町から下流にかけて深さ3~4メートルも冠水した。その時の決壊箇所ではないが、西区には押切・堀越、下流の中村区には猪之越、中川区には荒越など越水関連と思われる町名が点在する。押切は「水流が堤防を押し切った地点」のことで関東平野にはあちこちに点在する。地名に使われた「猪」の文字は「井」の当て字で、「井=水流・川」のことである。

安八
 古代、美濃国の郡・郷名。古くはアハチマ、近代にアンパチと読む。アハ(暴)チ(方向)マ(場所)で、「海中から現れてくる土地」のこと。中世から盛んに輪中が形成され、濃尾平野西部に大水田地帯が形成された。1976年、岐阜県安八郡安八町大森の長良川右岸が500メートルにわたって決壊。約8000名が緊急避難した。

関西地方の地名
 兵庫県の六甲山地南腹には、湊川・布引(ぬのびき)川・住吉川・都賀(とが)川などの中小河川がいく筋も流れる。山頂から水平距離で2~3キロメートルの間に800メートルほど落下し、山麓の傾斜変換点から海岸までさらに2~3キロメートルの間を数十メートル流れ下る。山腹を流れる部分は川というより滝で、深い峡谷を刻む。山体は風化花崗岩で、しかも数条の断層帯に刻まれているからきわめて脆(もろ)く、紀伊水道から大阪湾を抜けて湿った風が吹きつけると、ちょっとした雨量でも、山腹を刻む住吉川はじめ中小河川が氾濫し、土石流や洪水を起こす。

 1938年、六甲山周辺を中心に死者・行方不明715名を数えた、阪神大水害が発生した。この災害は谷崎潤一郎『細雪』にも描かれたが、これを機に中小河川の改修が進んだ。戦後の高度経済成長期に山麓から山腹にまで宅地化が進み、危険性はさらに増している。近年では2008年、灘区を流れる都賀川で突発的土石流が発生、河川敷で遊んでいた5名が犠牲になった。


 江戸時代から「灘五郷」の酒造地として名高い。この「灘」を凹凸の少ない海面をいう「~灘」の名が陸上に転じたとする説があるが、間違い。積雪地帯で雪層が崩れることを雪崩(なだれ)というが、この語は本来、ナ(土地)・タレ(垂)が語源である。雪に限らず、地面が崩壊した地に「灘」の地名が付けられた例も全国にいくつか存在する。

御影
 神戸市東灘区にある地名で、「御影石」は良質の花崗岩石材の代名詞ともなった。この地名は古代の神話的人物像の神功皇后に関連付けて語られるが、実は「ミ(水)・カケ(欠)」が語源か。動詞が名詞化するとき、二音節目が濁音化した例はカケ(掛)→カギ(鍵)などいくつかある。御影は、土石流による欠損箇所に付けられたものの可能性がある。

逆瀬川
 1938年の阪神大水害では、六甲南腹の各河川だけでなく、東麓でも大規模な水害が発生した。現・宝塚市の逆瀬川は2級河川・武庫川右岸に注ぐ支流だが、この川の名は合流点の手前に土砂が堆積し、河流が逆流することによる。大雨が降れば、その堆積土砂を一気に押し流して大災害になる。

額田
 尼崎市額田は「ぬかるむ地」のことで、湿地系の地名。この地名に「額」の字を当てるのは、人間の前額部は髪の毛が抜けているからヌカともいい、またその額を地面にこすり付けて謝意を表す態度をヌカズクともいうから。

三島
 「三島」地名は、全国のほとんどが「三つの島」ではなく「ミ(水)シマ(海に浮かぶ島ではなく「区画」の意)」という地名である。大阪府北東部の淀川右岸一帯は古代には「三島」と呼ばれた地域で『日本書紀』や『万葉集』にも登場する地名。律令制で島上(しまがみ)・島下(しましも)の二群に分割されたが、1896年に三島郡の古称が復活した。『古事記』には「三島溝咋(みしまみぞくい)姫」の名が載るが、後世の濃尾平野の輪中地帯と同様、一面の低湿地に杭を立てて開発を進めていった様子がうかがわれる。現・茨木市に三島丘・三島町、その8キロメートル南東に高槻市三島江があり、この付近が郡名の起源の地とされる。高槻市三島江は近代になっても十数年おきに洪水に襲われ、淀川改修工事で民家や小学校などが移転を余儀なくされた。

さんずいのつく地名
 「さんずいのつく地名は危ない」。よく耳にするが、これは誤りである。そもそも地名に用いられている漢字は当て字が多い。「波」の字は地名では波浪の意味ではなく、「並」の当て字として使われた例がほとんどである。

 今回は各地方の代表的な水害にかかわる地名を取り上げたが、興味をもたれた方は、地名にかかわる本を読む、古地図で地名を確認するといった方法をお薦めしたい。

楠原佑介 (「地名情報資料室・地名110番」主宰)


追記を閉じる▲

【2016/03/28 21:42】 | Webの記事
トラックバック(0) |
           嶋津 暉之

鬼怒川水害問題についての記事をお送りします。

◆関東・東北豪雨
堤防着工、来月以降に 用地買収交渉進まず 常総・若宮戸 /茨城

(毎日新聞2016年3月26日 地方版)
http://mainichi.jp/articles/20160326/ddl/k08/040/115000c

 関東・東北豪雨で鬼怒川が越水した常総市若宮戸(わかみやど)での堤防建設工事の着工が、当初見込みの今年度末から4月以降にずれ込む見通しとなった。

国土交通省下館河川事務所(筑西市)によると、地権者との用地買収交渉が進んでいないのが理由だという。

 同事務所によると、堤防は左岸約1400メートルに設ける。

越水地点2カ所を含む下流側約900メートルで最初に着工する計画だが、重機などを入れる工事用道路2本の建設を始めるのも28日に遅れるという。

 地権者は約40人。同事務所は当初、堤防工事を急ぐため地権者と正式な売買契約を結ぶ前に、内諾を得た段階で着工する計画だった。

だが、きちんと契約してから着工する方針に転換し、用地買収が遅れているという。

 同事務所は「用地の取得を鋭意行っている。着工時期を明確に言えないが、できるだけ早くとの考えに変わりはない」と話している。【去石信一】


追記を閉じる▲

【2016/03/28 21:35】 | 新聞記事から
トラックバック(0) |
              嶋津 暉之

思川開発検証のための検討の場 第6回幹事会が3月29日に下記のとおり、開かれます。
これから、代替案との比較で思川開発が有利だという結論が得るための茶番の検証劇が行われていくことが予想されます。
なお、この会議の一般市民の傍聴はけしからんことに別室でのテレビ傍聴になっています。

関東地方整備局のHP 
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000243.html
思川開発事業の関係地方公共団体からなる検討の場(第6回幹事会)の開催について
関東地方整備局河川部
独立行政法人水資源機構ダム事業部

 下記のとおり会議を開催しますので、お知らせいたします。

  記

1.開催日時
 平成28年3月29日(火) 9時30分から

2.開催場所
 さいたま新都心合同庁舎2号館
    5階 共用中研修室5B(会議会場)
    5階 共用小研修室5C(一般傍聴会場)
  住所:埼玉県さいたま市中央区新都心2-1
  開催場所の最寄り駅:
   JR京浜東北線・高崎線・宇都宮線「さいたま新都心駅」から徒歩約5分です。
   JR埼京線「北与野駅」から徒歩約7分です。
  ※駐車場がございませんので、公共交通機関をご利用下さい。
 当庁舎はセキュリティ強化を目的にICゲートが設置されております。庁舎2階の入退館手続き時には身分証等(社員証、免許証、保険証、パスポート等)で身分確認をさせていただいておりますので、来館の際には忘れずに身分証等をご持参いただくようお願い致します。

3.議事(予定)
 ・検証対象ダムの事業等の点検
 ・新規利水対策案の意見聴取結果
 ・目的別対策案の抽出
 ・目的別の総合評価 等

4.公開等
 ・会議は、報道機関を通じて公開します。
 ・カメラ撮りは、冒頭部分のみ可能です。
 ・報道機関以外の方で傍聴を希望される方は、別室でテレビ傍聴が可能です。
 ・会議での配布資料等は、水資源機構及び関東地方整備局ホームページに掲載します。
 ※その他、取材や傍聴等に関する詳細は、本文資料(PDF)別添資料1及び2をご覧下さい。


追記を閉じる▲

【2016/03/28 20:42】 | お知らせ
トラックバック(0) |
            嶋津 暉之

3月11日に開かれた国交省 「水資源分野における気候変動への適応策のあり方検討会」(第9回)の配布資料が国交省HPに掲載されました。

今回は渇水対応タイムラインの策定が主たる議題でした。
渇水対応タイムラインとは、危機的な渇水時に貯水量が減少する過程で、関係者があらかじめ行うべき対策を示した行動計画です。
危機的な渇水に対応するためにもっとダム建設という方向性が出ることを懸念しましたが、そのようなことはなかったようです。

国交省 水資源分野における気候変動への適応策のあり方検討会
http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_fr2_000002.html

 ◆第9回(平成28年3月11日開催)
 
資料1-1:検討経緯及び今後のスケジュール(案)
 http://www.mlit.go.jp/common/001124114.pdf

資料1-2:気候変動適応計画の策定の動き、第8回検討会での委員意見
 http://www.mlit.go.jp/common/001124115.pdf

資料2:渇水対応タイムライン策定のためのガイドラインの方向性
 http://www.mlit.go.jp/common/001124117.pdf

 資料3:気候変動のモデルの活用について
 http://www.mlit.go.jp/common/001124118.pdf

なお、この検討会の目的と委員はつぎのとおりです。

1.設置目的
  気候変動による将来の渇水規模・頻度を科学的に把握し、適応の方向についての検討、および、水源が枯渇し、国民生活や社会経済活動に深刻かつ重大な支障が生じる「ゼロ水」(危機的な渇水)への対応策についての検討を実施するにあたり、気候変動や水利用等を専門とする有識者から最新の知見を頂くことを目的に設置。

2.委員(敬称略、五十音順。◎は座長)
   井 ノ 畑  寿  福岡市水道局浄水部水環管理課長
 ◎沖   大 幹  東京大学 生産技術研究所 教授
   狩 野 裕 二  東京都水道局総務部施設計画課長
   滝 沢   智  東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 教授
立 川  康 人  京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 教授
仲江川 敏之  気象庁気象研究所 気候研究部 主任研究官
                          (平成27年3月 時点)


追記を閉じる▲

【2016/03/28 20:40】 | 政策
トラックバック(0) |