「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
                嶋津 暉之

長野県知事であった田中康夫さんのインタビュー記事を参考までにお送りします。

長野県知事時代は9つのダム計画のうち、8つを止めました(浅川ダムのみが復活、その他は中止または中止の方向)。そして、記者クラブ制度を廃止し、だれでも記者会見に参加できるようにしました。その業績を大いに評価すべきだと思います。

2009年衆院選後の民主党内閣の発足で、田中さん個人は国交大臣を希望していたと聞いたことがあります。

もし田中さんが国交大臣になっていれば、ダム検証によってダム事業が次々と推進されていく今の状況はなかったと思います。

◆「ささやかだけど、たしかなこと」を一つひとつ――田中康夫(ワイアンドティ研究所代表理事)
(経済界2015年10月28日) http://net.keizaikai.co.jp/archives/17767

長野県知事、衆参両院議員を経て、この4月に一般社団法人「ワイアンドティ研究所」を立ち上げた。作家としての情報発信を皮切りに、長野県知事に就任すると「『脱ダム』宣言」を発し、財政再建団体へ転落寸前だった長野県の財政を黒字化。その後、国政にも参画。昨年末には『33年後のなんとなく、クリスタル』を上梓した田中氏が起こすムーブメントと、伝承していきたいものとは。

二項対立を、しなやかに乗り越えるべきと考えて


(たなか・やすお)1956年東京都生まれ。小学2年から高校卒業まで信州で過ごす。81年一橋大学法学部卒業。在学中に『なんとなく、クリスタル』(河出文庫)で「文藝賞」受賞。2000~06年、長野県知事。47都道府県で唯一、債務残高を6年連続で計923億円減少させ、プライマリーバランスも7年度連続で黒字化。外郭団体の9割を統廃合。地域密着型公共事業を推進。年率5%超の実質経済成長率達成。07年~12年、参議院議員、衆議院議員。15年4月、一般社団法人「ワイアンドティ研究所」設立。代表理事に就任。『33年後のなんとなく、クリスタル』を14年に出版。超少子・超高齢社会に直面するニッポンの歩むべき道筋を示し、なかにし礼さん、ロバート・キャンベルさんをはじめとする方々に激賞される。
http://www.nippon-dream.com/ https://your-hope.jp/

 真に“成熟した社会”を実現する触媒としての装置。それがワイアンドティ(Y&T)研究所です。Y&TのYはYou(あなた)、TはTomorrow(明日への希望)を表します。「微力だけど、無力じゃない。」「ささやかだけど、たしかなこと。」を一つひとつ。「イデオロギー」とは無縁の新しいムーブメント。この3つの設立趣旨に共鳴してホームページ上で無料会員登録した方々を対象に、全国各地での講演、各種セミナーなどイベントを実施しており、無料会員を2017年末までに10万人登録へつなげたいと考えています。

 知性という権威に安住して、感情と理性は違うと述べていた「知性主義」に反発する「反知性主義」が勢いを増しています。本来は頭でっかちな知性主義が空理空論で終わらぬために、感情や感覚にも目配りする必要があったのに、最近の反知性主義は文化大革命やマッカーシズムの頃と同じで、無知蒙昧で何が悪い、と居直っています。これでは、どっちもどっちで不毛な言い争いです。

 他方で多くの人々は、オンリーワン・ファーストワンのモノ作り産業が誇りだった日本は、新国立競技場、五輪エンブレム、年金機構、「福島第一」に象徴される後手後手の対応を見るに付け、果たして日本は大丈夫なのだろうか、制度疲労を起こしてはいまいか、と戸惑っています。経済同友会代表幹事の小林喜光さんも「これまでの延長線上に未来はない」と繰り返し述べられています。

 であればこそ私たちは今、過去の成功体験を乗り越え、年齢や性別、職業や地域、肩書に関係なく、誰もが1人の消費者であるとの視点に立って、若者VS老人、官VS民、保守VS革新、都会の不満VS地方の不安といった、「イデオロギー」的な二項対立を、しなやかに“乗り越える”べき。そう考えてY&T研究所を立ち上げました。

“もとクリ”“いまクリ”で訴え掛けたかったこと

 1981年出版のデビュー作『なんとなく、クリスタル』(もとクリ)は、高度経済成長から高度消費社会へと移り変わっていく時代を描いたものです。当時は誰も言及しませんでしたが、442ある注釈の最後には、旧厚生省が発表した合計特殊出生率と高齢化率の将来予測数値を記しています。20代だった私はその数値に衝撃を受け、量の拡大から質の充実へと認識と選択を改めねば立ち行かなくなると感じたのです。が、その予測数値とて、現在の超少子・超高齢社会ニッポンを踏まえると、随分と楽観的な数値でした。

 病気や事故で亡くなる人がいるから先進国では出生率2・07で人口は横ばいを保てるのです。ところが日本は1・43。厚労省の社会保障・人口問題研究所は、出生率が今のままだと日本の人口は100年後に4300万人になると予測しています。ところが昨年6月「トレンドを変えていくことで50年後にも1億人程度の安定的な人口が保てる」と閣議決定が行われました。その根拠は、移民を毎年20万人受け入れると1億人を維持可能と経済財政諮問会議に内閣府が提出した資料です。

 でも日露戦争前後の日本の人口は4700万人でした。スローフードをはじめとして、身の丈に合った日々の生活を楽しんでいるフランスやイタリアは、現在の日本の半分程度の人口です。移民の是非云々以前の問題として、経済成長の大前提=人口維持という硬直した発想こそ、破綻した社会主義の計画経済と同じ、想像力の欠如ではないでしょうか。

 昨年末に上梓した『33年後のなんとなく、クリスタル』(いまクリ)は、前作の33年後を描いています。いまクリの巻末の注釈で触れていますが、僕が生まれた1956年に発行された経済白書の「もはや戦後ではない」とは実は、「消費や投資の潜在需要はまだ高いかもしれないが、いまや経済の回復による浮揚力はほぼ使い尽くされ、もはや戦後ではない」という文脈でした。2代目小錦八十吉の長男だった経済企画庁の調査課長は、今までのような右肩上がりの成長は続かないという意味を込めたのでした。量の維持から質の深化へと私たちも認識を改めねばなりません。

 そうして65歳以上の人口が7%を超えた日本の高齢化元年は大阪万博開催の70年です。先日お亡くなりになった富士ゼロックスの小林陽太郎さんが「モーレツからビューティフルへ」キャンペーンを行ったのも同年でした。その先見性に今一度、学ぶべきですね。

超少子・超高齢社会のニッポンに必要なこと


長野県知事を2期務めた私は財政再建を行うと共に、人が人のお世話をする福祉・医療・教育・観光こそ地元に雇用と活力を生み出すと考え、小学校30人学級を全国で最初に全学年で導入し、住宅や商店の空き家を改修してデイサービスと託児所を一つ屋根の下で行う宅幼老所を県単独予算で350カ所設けました。

 就任当時、県債務残高が1兆6千億円を超え、1日の利息の支払いだけでも1億4800万円と財政再建団体転落寸前でした。県民と職員の協力の下、47都道府県で唯一、在任6年連続で起債残高を計923億円減少させ、基礎的財政収支も7年連続で黒字化しました。同時に実質経済成長率5%を達成したのも、地域密着型の公共事業に取り組んだからです。

 地元の土木建設業者と共に、県産の間伐材を活用して鋼鉄製と同じ強度認定を受けた木製ガードレールを開発しました。間伐から製造、設置に至るまですべて地元企業が担当するので地域雇用創出効果は鋼鉄製の5倍。軽井沢をはじめとする県内各地の県道に設置しました。

 「造るから治す・護る、そして創る」への転換が「『脱ダム』宣言」です。ダムを造らないと洪水になると63年前に計画された八ツ場ダムは今春、ようやく本体工事が始まりました。でも、ダムという大外科手術が始まるまでの間、点滴や輸血、マッサージにあたる護岸の補修や河床の浚渫(しゅんせつ)、上流域の森林整備はほとんど手付かずです。重機を用いた浚渫は1平米1万円程度。確実に地元業者の仕事になるのに、9つの県営ダムが計画されていた長野県でも、当該河川の浚渫の記録がありませんでした。そこで台風一過の毎年9月には県管理の河川を総点検し、必要箇所の浚渫の補正予算を組みました。

 今回の鬼怒川の災害も、日本の堤防が土と砂でできているため、コンクリート壁の隙間から水が浸み込み、内部が液状化現象を起こしがちなのが原因ではないでしょうか? アメリカをはじめとする諸外国では、決壊しやすい箇所の堤防に鋼矢板を縦に2枚打ち込む強化策を実施しています。けれども国土交通省水管理・国土保全局(旧河川局)は土と砂以外は“不純物”だと「土堤原則」に固執しています。衆院議員時代に鋼矢板工法を用いた治水の調査費を計上させましたが、実現していません。

 とはいえ、この日本では「地頭」を持ったマイスターが歴史を築いてきました。単なる空威張りとは無縁の、しなやかな矜持と諦観を併せ持ったニッポンの日の出を再び取り戻すのがY&T研究所の願い。さあ、あなたもご一緒に参加ください。(談)


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【2015/10/30 03:10】 | Webの記事
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                嶋津 暉之

有害鉄鋼スラグ問題について、大同特殊鋼の城下町である渋川市も市民に行政訴訟を起こされて、大同特殊鋼に対策費を請求することになったという記事です。
八ッ場ダムの代替地等における 有害鉄鋼スラグの使用実態を明らかにしていかなければなりません。

◆鉄鋼スラグ問題:大同特殊鋼に対策費を請求へ 渋川市が方針転換 /群馬
(毎日新聞群馬版 2015年10月27日)
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20151027ddlk10040024000c.html

大同特殊鋼渋川工場から有害物質を含む鉄鋼スラグが排出された問題で、渋川市は市発注工事に使われたスラグの対策費を大同側に請求する方針を固めた。

阿久津貞司市長は毎日新聞の取材に「市民感情を考えれば応分の負担を求めざるを得ない」と説明した。
県によると、渋川市が施工した工事の72カ所でスラグ使用が確認されており、フッ素などが環境基準を超えたのは49カ所。国、県、市による連絡会議は11月にも第3回会合を開き、今後の方針を議論する。

スラグの処理方法としては撤去のほか、盛り土やアスファルトで覆う方法が想定されている。

渋川市では約2年前に問題が表面化。公共施設の駐車場や公園でもスラグ使用が判明し、立ち入りが規制された。スラグがむき出しの現場も30カ所以上あり、健康への悪影響が懸念されてきた。

市議会は今年6月、措置計画の早期策定を市に求める決議を賛成多数で可決。市の担当者は「国や県との連絡会議で示された対応を取る」と繰り返したが、国土交通省は4月、大同に対策費用を全額負担させる方針を明らかにしている。

国交省は既に八ッ場ダムの移転代替地や国道17号の一部でスラグ撤去に着手。前橋市も大同に撤去費用を出すよう求め、協議を重ねている。

渋川市は問題発覚直後に「大同側に対策費を請求しない」との方針を表明して市民に行政訴訟を起こされ、大同側が任意で撤去費用を市に支払ったこともあった。

県警は9月、廃棄物処理法違反容疑で大同特殊鋼の本社や工場を家宅捜索し、強制捜査に乗り出している。県がスラグを「廃棄物」とみなし刑事告発したことで、渋川市は方針転換を余儀なくされた形だ。【高橋努、尾崎修二】


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【2015/10/30 03:03】 | 新聞記事から
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              嶋津 暉之

今朝の北海道新聞が札幌市と当別ダムの問題を大きく取り上げています。
見出しはこちらです。
「当別ダム建設参加 札幌市揺らぐ根拠 水需要予測を下方修正 計算上は取水不要に」

札幌市は水道給水量が今後大幅に増加するという架空予測を行って、当別ダムの水源が必要だとしていたのですが、当別ダムが2012年度に完成すると、架空予測をやめて実績重視の予測に変えました。
それでも、札幌市は当別ダムへの参加をやめようとしません。
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【2015/10/26 13:05】 | 新聞記事から
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           嶋津 暉之

八ッ場ダムの代替地等で使われてきた鉄鋼スラグの問題について今朝の毎日新聞の記事です。
鉄鋼スラグは水と反応すると、膨張する性状があるので、通常は使用後に極力膨張しないように事前にエージング処理が行われます。しかし、大同特殊鋼の鉄鋼スラグはフッ素等の有害物質が含まれているだけでなく、エージング処理が不十分であるため、鉄鋼スラグの膨張で使用したところが変形していく危険性があります。
この記事を読むと、鉄鋼スラグの膨張は長年かかって進行していきます。
八ッ場ダムの代替地等で使われた鉄鋼スラグが今後、どういう影響をもたらすのか、大いに懸念されます。

◆鉄鋼スラグ:膨張、住宅傾斜 盛り土、雨水吸い 群馬
(毎日新聞 2015年10月25日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/shimen/news/20151025ddm041040109000c.html

 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出された有害物質を含む鉄鋼スラグを巡り、新たな問題が浮上した。群馬県の宅地の盛り土に使われたスラグが雨水などで膨張し、家が傾く被害が起きている。

国が同県長野原町で建設を進める八ッ場(やんば)ダムの住民移転代替地にもスラグは無許可で使われており、専門家は「スラグの宅地利用は危険が伴う」と警鐘を鳴らしている。【杉本修作、尾崎修二】

 スラグを宅地に利用したのは、同県榛東(しんとう)村山子田の建設会社社長(56)の木造2階建て住宅で、先代の父親(故人)が30年前に新築した。社長によると、父親の友人で渋川工場に勤める男性の紹介で、敷地を高くする盛り土材としてスラグを譲り受けた。約2000平方メートルの土地に3~5メートルほど盛ったという。

 ところが10年ほど過ぎると外壁にひびが入り、戸口の建て付けが悪くなり始めた。さらに床が数カ所で数センチ隆起し、基礎のコンクリートにも大きな亀裂が生じ、母屋とコンクリート製縁側の間には十数センチの隙間(すきま)ができた。隆起やひび割れは今も進行しているという。

 鉄鋼スラグのうち、特殊鋼の精製で排出されるものは「製鋼スラグ」と呼ばれ、これは水と反応して膨張する性質がある。道路で利用するスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1・5%以下)が設けられ、JIS策定委員を務めた長岡技術科学大の丸山暉彦名誉教授(道路工学)によると、スラグに機械で蒸気を掛けるなど膨張を抑える処置をしなければ、最大で10%以上膨張することがある。社長宅を視察した丸山氏は、スラグが原因とみて間違いないとしている。

 毎日新聞は社長宅のスラグを採取して国指定の専門機関に鑑定を依頼。環境基準の7倍を超える有害物質「フッ素」が検出された。また、東京農工大の渡辺泉准教授(環境毒性学)の研究チームが別途採取した周辺土壌からは微量の発がん性物質「六価クロム」も検出された。渡辺氏は「六価クロムは自然界になく、スラグによる土壌汚染が起きている」と指摘した。

 渋川工場のスラグは八ッ場ダムの住民移転代替地などに無許可で使われ、国土交通省の調査で有害性も確認された。スラグが見つかった代替地の近くには既に住宅が建っているが、国交省は「民有地」を理由に宅地の調査をほとんどしておらず、宅地の真下に使われている可能性もある。

 丸山氏は「JISで認められたスラグはそもそも宅地での利用を想定してなく、使うのはリスクを伴う。宅地で使われた可能性があるなら、国は異常の有無を継続的に監視すべきだ」と指摘。国交省関東地方整備局は「移転代替地の今後の調査について住民の要望や宅地の状況などを考慮して判断したい」としている。

 大同特殊鋼総務部は「(社長宅の)スラグが当社製のものかは確認できていない。要望を詳しく聞いた上で対応を検討したい」とコメントした。

 渋川工場のスラグを巡っては、建設資材の取引を装った廃棄物処理法違反容疑で群馬県警が先月、強制捜査に乗り出している。


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【2015/10/26 12:47】 | 新聞記事から
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                   嶋津 暉之

鬼怒川水害では鬼怒川と小貝川を結ぶ新八間堀川も増水してかなりの規模の浸水被害がありました。そのことは既報のとおりですが、今日の東京新聞茨城版がその経過を詳しく報じています。

新八間堀川は、鬼怒川と小貝川の間を流れる八間堀川が最下流部で鬼怒川の方に分かれる川です。
八間堀川は下記の朝日の記事の図を見ると、鬼怒川の決壊・越水の浸水範囲を流れていますので、氾濫した水が八間堀川に流入して流量が増え、最下流に位置する新八間堀川の水位がどんどん上昇したと考えられます。

東京新聞の記事によれば、「水位が上昇した鬼怒川から、新八間堀川に水が逆流するのを防ぐため、(9月10日)午前2時ごろ水門を閉め、同時に(排水機場を使って)新八間堀川から鬼怒川への排水も始めた。 

その後、鬼怒川の上流で堤防が決壊、水門付近の水位も上限に近い八メートルまで達し、新たな決壊の恐れも出てきたため、午後1時ごろ、水門を閉じたまま排水を中断」しました。

鬼怒川から氾濫した水が八間堀川を通って、新八間堀川の流量が増える一方になっているのに、鬼怒川への排水を中断してしまった、すなわち、出口をなくしてしまったのですから、新八間堀川で氾濫が起きるのは当然です。起きるべくして起きた氾濫ということになります。

確かに鬼怒川の水海道地点(新八間堀川の流入地点から約500m下流)の水位変化を見ると、水位がかなり上昇しました。

しかし、午後1時10分にピークに達した後、その後は水位が次第に低下していったのですから、早い時間に新八間堀川から鬼怒川への排水を再開すべきでした。そうすれば、新八間堀川周辺の被害をかなり小さくできたはずです。
 
鬼怒川への排水を再開したのは、なんと午後10時20分でした。9時間以上も排水を停止し、流量が増え続ける新八間堀川を出口のない状態に放置したのですから、新八間堀川での大きな氾濫は排水機場の運転操作の誤りが原因であることは明らかです。

◆決壊の数時間後、遠くても浸水 鬼怒川水害、避難難しく
(朝日新聞2015年10月11日)
http://digital.asahi.com/articles/ASHBB5PXJHBBUTIL016.html?rm=348

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◆鬼怒川決壊 その日、別の河川でも… 逆流で市街地に水害
(東京新聞茨城版2015年10月23日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201510/CK2015102302000181.html?ref=rank
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 常総市で鬼怒川の堤防が決壊した9月10日昼、決壊場所から約10キロ下流の市街地で、別の河川が逆流して水害を引き起こしていたことが分かった。同日夜、決壊による洪水が市街地に押し寄せ、被害が混同してしまい、実態が検証されないままになっている。被害を受けた住民は「決壊とは全く異なる水害で、行政のミスの可能性もある。なかったことにしないでほしい」と原因究明を求めている。 (妹尾聡太)

 被害があったのは、市内の水海道橋本町付近。町内を、生活雑排水などを集めて鬼怒川に流す新八間堀(しんはちけんぼり)川が流れている。市建設課と地元消防団員によると、九月十日午後二時ごろ、側溝やマンホールから突然、水があふれ出し、家屋が浸水した。新八間堀川が増水した結果、川の堤防の中程に開けられた排水口から水が逆流し、排水路を通って住宅街に流れ込んだものとみられる。

 この排水口は「樋管(ひかん)」と呼ばれ、出口に開閉ゲートがある。市街地への逆流を食い止めるために、同日午後四~五時ごろ、市建設課の職員や消防団員が手動で六カ所あるゲートを閉じて、被害の拡大を防いだという。

 新八間堀川が鬼怒川と合流する河口には、国土交通省の水門と排水機場が設置されている。国交省によると、この日は水位が上昇した鬼怒川から、新八間堀川に水が逆流するのを防ぐため、午前二時ごろ水門を閉め、同時に新八間堀川から鬼怒川への排水も始めた。

 その後、鬼怒川の上流で堤防が決壊、水門付近の水位も上限に近い八メートルまで達し、新たな決壊の恐れも出てきたため、午後一時ごろ、水門を閉じたまま排水を中断した。

 市街地で被害が発生したのは、国交省が鬼怒川への排水を止めた直後。国交省は午後一時ごろ、市の災害対策本部に排水の停止を連絡したが、市は対策を取らず、建設課にも情報が伝わらなかった。建設課の担当者は「排水を止めたことで新八間堀川がせき止められた状態になり、水位が上昇して逆流した可能性がある。事前に知っていれば被害を軽減できた」と話す。

 排水の有無に関係なく、増水や逆流を想定して樋管を閉じておかなかったことについて、同課は「過去二十~三十年、同じような例はなく、対策を取ってこなかった」としている。これに対し、市内の浸水状況を調べている筑波大の白川直樹准教授(河川工学)は「市は普段から地元住民と連携し、増水に備えた態勢を整えておくべきだ」と指摘する。

 車両や車庫が水に漬かった自動車整備業の秋葉智之さん(41)は「逆流がなければ、夜、洪水が来るまでに車や工具類を高台に移動できた。自然災害だったら諦めも付くが、防げたのなら悔しい。同じことが再び起きないようにしてほしい」と訴えた。

 防災担当の市安全安心課は「被害を検証するかどうか、現時点では何とも言えない」としている。



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【2015/10/25 00:38】 | 新聞記事から
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  嶋津 暉之

今本博健・京都大学名誉教授が今日の朝日新聞「私の視点」で、鬼怒川水害問題の核心を突く意見を書かれています。

◆(私の視点)洪水被害 可能な対策の積み上げを 今本博健
(朝日新聞 2015年10月24日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12031673.html

9月に起きた鬼怒川の越水や堤防決壊で感じたのは、ダムによる治水には限界があること、堤防整備の遅れが被害を招き、浸水危険地の乱開発と災害時の対応の混乱が被害を拡大した、ということだ。

鬼怒川の上流には四つのダムがある。今回、そこで水をためることでダムより約15キロ下流では、水位を2・7メートル低下させた。だが、さらに約100キロ下流の破堤地点では0・3メートルしか下げられず、越水や破堤を防ぐことはできなかった。

今回は茨城県常総市の三坂町地先で破堤し、同市内や筑西市内で越水した。河川管理施設等構造令は堤防の高さを、安全に流せる「計画高水位」に余裕高1・5メートルを加えたものにする、と定めている。

ところが国土交通省の公表によれば、今回の付近の最高水位は計画高水位を最大1・17メートル超えただけだ。構造令通りの高さに整備されていれば、越水や破堤は起きなかったかもしれない。

また、決壊地点の堤防の最上部(天端)の幅は4メートルだったが、構造令に従えば、6メートルでなければならない。高さと幅の不足が原因で、破堤を防げなかった可能性もある。

日本を代表する利根川水系の中でも大支川の鬼怒川で、なぜ不完全な堤防が放置されていたのか。利根川水系では全体の基本方針こそ2006年に策定されたが、川ごとの具体的な整備計画は13年に利根川・江戸川分を決め、八ツ場ダムや江戸川スーパー堤防などを位置づけただけ。鬼怒川などの支川は未策定だ。

維持管理でしのごうとしたが、それだけで不完全堤防が解消されるはずがない。同様の不完全堤防は全国で1600キロもある。早急に整備計画を策定して堤防整備を進めなければ、越水や破堤が繰り返されるだろう。

もちろん、堤防が構造令通りに整備されたからといって、安心はできない。土砂を盛り上げただけの堤防は、計画高水位以下でも容易に破堤する。住民の命を守るには越水にも耐える補強が必要だ。

鋼矢板を堤防の天端の両側から打ち込めば越水に耐えることは、東日本大震災で証明されている。国交省は土の堤防が原則というが、原則にこだわらず、補強を積極的に推進すべきだ。

今回の被害の拡大は、浸水危険地の宅地化とも関係している。避難指示の伝達などソフト面の改善とともに、滋賀県が進めるような土地利用の規制を盛り込んだ流域治水を普及させるべきだ。洪水は自然現象であり、一定の洪水規模を想定して対策を立てても、計画を超える洪水は今後も発生し続ける。

対象洪水にとらわれず、実現可能な対策を積み上げる「非定量治水」に転換しなければ同じことが繰り返されるだけだ。

(いまもとひろたけ 京都大学名誉教授〈河川工学〉)


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【2015/10/25 00:35】 | 新聞記事から
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10/24本日のイベントのご案内です。

◆南摩ダム予定地で自然観察会 あす、市民団体 
(東京新聞栃木版2015年10月23日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201510/CK2015102302000188.html

 独立行政法人水資源機構が建設主体の南摩(なんま)ダム(鹿沼市)の建設予定地で二十四日、市民団体主催の自然観察会が開かれる。
野鳥やチョウ、川の生き物を観察し、自然の大切さや地域再生、公共事業の在り方を考える。
 「思川(おもいがわ)開発事業を考える流域の会」などダム建設に反対する四つの団体が年に二回ずつ開いている。
今回は九月の豪雨の影響も見ながら、里山が広がる穏やかな地形の集落跡を約一キロ歩く。
 午前九時、同市上南摩にあるコミュニティーバスの「室瀬バス停」付近に集合。参加費二百円。昼食、飲み物、双眼鏡などは各自で持参。申し込み不要。

【2015/10/24 03:32】 | お知らせ
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                嶋津 暉之

10月19日の関東地方整備局・鬼怒川堤防調査委員会で鬼怒川堤防決壊区間の復旧工法が示されました。
既報のとおりです。
下記のケンプラッツの記事がその内容を詳しく説明していますので、その記事をお送りします。

「決壊前に3~4mだった天端の幅は6mに、約30mだった裾野の幅は50mに広げる」ということですので、決壊の原因は堤防高が低かっただけでなく、堤防の厚さが足りなかったことにもあるようです。
この復旧工法をとれば、決壊区間が再度決壊することはないでしょうが、一体どれほどの費用がかかるのでしょうか。
決壊の危険があるところは他にも沢山あるのですから、もっと安価堤防強化工法で危ないところの改善対策をすみやかに実施することを考えるべきです。

◆鬼怒川堤防の本復旧 1.4mかさ上げ、浸透対策も
(ケンプラッツ 2015/10/22) 
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/102100096/?d=1445462030540

 国土交通省関東地方整備局は10月19日、関東・東北豪雨で延長200mにわたって決壊した鬼怒川堤防の本復旧について、堤体を決壊前より最大で1.4mかさ上げし、鋼矢板で川表側に浸透対策を施すことなどを明らかにした。同日に開催した鬼怒川堤防調査委員会の第3回会合で提示した。

 関東地整は堤防決壊を受け、9月下旬に有識者による調査委員会を設置し、決壊原因の究明と復旧方法の検討を進めてきた。

 調査委員会は、越水によって川裏側の法面侵食と法尻洗掘が進んだことが、決壊に至った主な原因と推定。さらに、自然堤防としてもともと存在していた堤体内の砂質土層を「水みち」として、河川水が川裏側に抜け出る「パイピング」が、決壊を助長した可能性も否定できないと指摘した。一方、川表側の侵食については、決壊の原因となった可能性は低いとしている。
 関東地整は越水対策として、計画高水位に1.5mの余裕高を加えた計画堤防高を確保するように、堤防をかさ上げする。決壊前に3~4mだった天端の幅は6mに、約30mだった裾野の幅は50mに広げる。

 浸透対策では、鋼矢板による遮水のほか、川表法面に遮水シートとコンクリートブロックを敷設する。川裏側には、堤体内に浸透した雨水を速やかに排出するよう、法尻部にドレーン工を施す。

 今後の本復旧について、関東地整は委員会後の会見で、「できる限り速やかに進める」(河川部)と述べるにとどめ、着工や完成の具体的な時期は明らかにしていない。

青野 昌行 [日経コンストラクション]



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【2015/10/23 09:13】 | 未分類
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             嶋津 暉之

10月19日に第3回 鬼怒川堤防調査委員会が開かれました。

議事要旨が http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000634059.pdf に
 
配布資料が http://www.ktr.mlit.go.jp/river/bousai/river_bousai00000109.htmlにそれぞれ関東地方整備局のHPに掲載されています。

第3回 鬼怒川堤防調査委員会(平成27年10月19日)

1.議事次第[PDF:93KB]
2.名簿[PDF:96KB]
3.座席表[PDF:103KB]
4.第3回鬼怒川堤防調査委員会 資料[PDF:1588KB]
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000634034.pdf

下記の記事のとおり、決壊箇所の堤防の嵩上げと拡幅の方針が決まりました。


◆決壊の鬼怒川堤防かさ上げ 国交省が方針
(産経新聞2015.10.19 ) 
http://www.sankei.com/affairs/news/151019/afr1510190018-n1.html

 国土交通省関東地方整備局は19日、関東・東北豪雨で決壊した茨城県常総市の鬼怒川堤防の再建工法を検討する調査委員会をさいたま市内で開き、現場の堤防の高さを決壊前より最大で約1・4メートルかさ上げして約5・4メートルに、堤防上部の幅を約2倍の約6メートルとする方針を決めた。

 会合は3回目。前回は堤防から水があふれる「越水」に加え、水が地盤に浸透して堤防が落ち込む「パイピング破壊」が決壊を助長したとの結果をまとめていた。

 整備局によると、鬼怒川で安全を保つには、洪水に耐えられるぎりぎりの水位である計画高水位に1・5メートルを加えた高さの堤防が必要とされるが、決壊箇所は計画高水位より最大で1・25メートル高いだけで、わずか6センチの所もあった。

また浸透対策として、堤防の川側に鋼製の矢板を打ち込んだり、のり面に遮水シートを張ったりする。

 常総市の鬼怒川堤防は9月10日、幅約200メートルにわたって流された。


◆鬼怒川堤防をかさ上げ方針 整備局、最大1.4m
(朝日新聞2015年10月19日)
http://www.asahi.com/articles/ASHBM5WQQHBMUJHB00W.html

 関東・東北豪雨により茨城県常総市三坂町で決壊した鬼怒川の堤防について、関東地方整備局は19日、新たに建設する本堤防は最大約1・4メートルかさ上げする方針を決めた。幅も広げ、シートやコンクリートブロックを使って川の水がしみこまない造りにする。

 決壊原因や堤防の工法を検討する有識者会議「鬼怒川堤防調査委員会」にこの日示し、大筋で了承された。

 これまでの調査で、決壊は、川の水があふれる「越水」と、その水が陸側の堤防ののり面下部を削り続けたことが主な原因で、それに水が堤防にしみ込んで崩す「浸透」もあった結果とみられている。

 このため、高さを約4メートルから約5・4メートルにし、幅も川側へ1・5倍ほど広げる。さらに、川の水が浸透しないよう遮水シートやコンクリートブロックで覆い、排水設備も設ける。今後、現地調査を進めて、細かな構造などを決める。

 出席した委員からは、鬼怒川全体で河川整備が必要と指摘する声もあった。


◆鬼怒川決壊:堤防1.4mかさ上げ了承 調査委
(毎日新聞 2015年10月19日)
http://mainichi.jp/select/news/20151020k0000m040051000c.html

 国土交通省関東地方整備局は19日、先月の関東・東北豪雨で決壊した茨城県常総市三坂町の鬼怒川堤防について、従来の高さ約4メートルから最大1.4メートルかさ上げする強化案を示した。

さいたま市で開かれた学識経験者による「鬼怒川堤防調査委員会」(委員長・安田進東京電機大教授)で了承された。完成時期は未定。
 現場の堤防は9月10日の豪雨で、水があふれる越水によって削られ、約200メートルにわたって決壊した。再度氾濫しないように、堤防の上部の幅を3?4メートルから6メートルに、底辺も約30メートルから約50メートルに拡幅して強化する。
また堤防に水が浸透するのを防ぐため、川側の斜面に遮水シートを敷いてコンクリートで覆う。

 現場は応急復旧工事で仮堤防が設置されている。【去石信一】


◆決壊の鬼怒川、堤防かさ上げへ 国交省調査委が方針
(徳島新聞2015/10/19)
http://www.topics.or.jp/worldNews/worldSociety/2015/10/2015101901001675.html

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 国土交通省関東地方整備局は19日、関東・東北豪雨で決壊した茨城県常総市の鬼怒川堤防の再建工法を検討する調査委員会をさいたま市内で開き、現場の堤防の高さを決壊前より最大で約1・4メートルかさ上げして約5・4メートルに、堤防上部の幅を約2倍の約6メートルとする方針を決めた。

 会合は3回目。前回は堤防から水があふれる「越水」に加え、水が地盤に浸透して堤防が落ち込む「パイピング破壊」が決壊を助長したとの結果をまとめていた。



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【2015/10/20 06:23】 | 政策
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            嶋津 暉之

昨日、佐賀県神埼市で開かれたダム問題の集会についての記事です。

◆嘉田前知事、城原川ダム考え講演 治水対策ソフト面重視
(佐賀新聞 2015年10月19日)
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/240788

国の事業見直し対象になっている城原川ダム(神埼市)の建設問題で、ダムによらない治水対策を訴える「城原川を考える会」などは18日、「脱ダム」政策を進めた嘉田由紀子前滋賀県知事の講演を同市で開いた。

嘉田氏は、住民に水害のリスクを示し災害に備えるなどソフト面を重視した治水対策の必要性を訴えた。

 嘉田氏は知事在任中、6カ所のダム計画の凍結・中止と、流域治水に関する全国初の条例化など代替策を実践。

水害時の浸水被害の確率を示した地図を作成し公表、不動産業者が物件を説明する時にその地図に基づいて浸水情報も提供することを努力義務にした。

 講演では、9月の関東・東北豪雨の被害を示し、「ダムや河川に水を閉じ込めるのは限界がある」と現状の治水政策の問題点を指摘。

「人命を守り被害を最小限にすることを最優先に、調整池など流域での整備や住民の防災意識の向上など総合的な対策を」と強調した。

講演会は筑後川水問題研究会(福岡県久留米市)の総会の一環で、市民ら約120人が参加した。


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【2015/10/19 13:17】 | 新聞記事から
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