「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
            嶋津 暉之

去る11月4 日(土)に大阪府茨木市で安威川ダムに焦点を当てたシンポジウム「川は誰のものか。河川法改正20 年。河川行政はかわったか」が開催されました。

安威川ダムは大阪府が茨木市に建設しようとしている治水を主目的とするダムです。

安威川ダムへの公金支出差し止めを求める裁判が2014年から進行しています。

裁判の争点は、
①ダムサイトの岩盤がぜい弱でダムの安全性が保証できないのではないか
②治水上の必要性が本当にあるのか、ダムが役に立つのかです。

後者の治水問題に関しては私が原告弁護団への技術的な支援を担ってきており、今回のシンポジウムでもその報告を行いました。

この報告に使ったスライドを
水源連HP http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2017/11/ab15336ac427c8466b025be452b8a39d.pdfに掲載しましたので、ご覧いただければと思います。

安威川ダムは大阪の市街地に建設される特異なダムで、総貯水容量が1800万㎥もあり、補助ダムとしてはかなり大きいダムです。

他のダムと同様に、工期の延長と事業費の増額が繰り返されてきていて、工期は当初の2008年度完成が2023年度まで延期され、事業費は当初の836億円から1536億円へと、約2倍になりました。

安威川ダムの治水問題で最も重要な問題は、100年に1回の降雨による洪水への対応で安威川ダムが必要とされているものの、実際には1/100の降雨があると、安威川ダムがあっても、安威川・神崎川流域の大半のところが氾濫してしまうことです。
(安威川は下流の神崎川につながっていて、一連の川ですので、安威川・神崎川と呼ぶことにします。)

image[7]

安威川ダム下流の安威川・神崎川流域の大半は低地部であって、内水氾濫域です。

内水氾濫域は降った雨がはけ切れずに溢れる地域で、川からの越水による氾濫ではないので、安威川ダムで川の水位を下げても氾濫を防ぐことができません。そのことは裁判で被告の大阪府も認めました。

内水氾濫域については河川整備計画では1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっていますので、1/100の雨が降れば、安威川ダムがあっても確実に氾濫します。

また、安威川・神崎川の支川の多くは、1/10の雨量に対応するために整備を進めることになっており、整備が完了しても1/100の雨が降れば、やはり氾濫します。

したがって、安威川ダムが完成しても、1/100の雨が降れば、安威川・神崎川流域の大半のところで氾濫することになります。

1/100の雨に対応するために、安威川ダムが必要とされていながら、実際には安威川ダムができても、下図のとおり、流域の大半で氾濫することになります。

1536億円という巨額の公費を使ってダムを建設しても、目的とする1/100の降雨への対応ができないのですから、何のためにダムをつくるのか、わかりません。

さらに、治水に関しては次のような問題もあります。

〇 ダム推進のために、来る可能性がほとんどない、極めて過大な 洪水目標流量1,850㎥/秒(相川基準点)が机上の計算で設定されており、実際の1/100流量は河道整備で対応できる1,250㎥/秒を下回る可能性が高い。

〇 耐越水堤防工法を導入すれば、安威川・神崎川の流下能力が飛躍的に大きくなり、大洪水への対応が可能となるだけでなく、仮にそれを超える洪水が来ても、壊滅的な被害を防ぐことができるようになる。しかし、有効な治水対策である耐越水堤防工法がダム事業の推進のために表舞台から消されている。

〇 安威川・神崎川流域の実際の水害被害額(水害統計)の166倍という被害額の架空計算から安威川ダムの費用便益比が求められ、それが安威川ダム推進の根拠となっている。

〇 大阪府は治水効果が乏しい安威川ダムの建設ばかりに力を入れ、流域住民の安全を守るために必要な河川管理を疎かにし、河床堆積土砂の撤去に取り組んでいない。

このように無意味で愚かなダム事業は中止されなければなりません。
安威川ダムの建設を中止させ、流域住民の安全を真に守ることができる治水対策の実施と河川管理を大阪府に求めていくことが必要です。

【2017/11/14 00:38】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
         嶋津 暉之

国交省による瀬戸石ダム(熊本県球磨川・撤去中の荒瀬ダムの10km上流)の定期検査について毎日新聞の記事です。
他の既設ダムも同様な問題がありますので、この定期検査がどのように行われているかを調べてみる必要があります。

◆瀬戸石ダム 洪水被害の恐れ 国交省定期検査、8回連続A判定 /熊本
(毎日新聞熊本版2017年11月8日 )
https://mainichi.jp/articles/20171108/ddl/k43/040/301000c

国土交通省は、2年に1度実施している球磨川の瀬戸石ダム(芦北町、球磨村)の定期検査の結果をダムを所有する電源開発(東京)に通知した。10月31日付。

現行の定期検査が始まった2002年から8回連続で「安全性及び機能への影響が認められ、直ちに措置を講じる必要がある」とされるA判定だった。

同省九州地方整備局八代河川国道事務所によると、A判定の理由は、計画より堆砂が進んで洪水被害が発生する恐れがあるため。電源開発は非出水期の毎年11月~翌2月、ダム湖を空にしてたまった土砂を掘削除去している。

2年前のA判定を受けて同省に提出した堆砂処理計画によると、9年間で必要な量を処理するとしている。

判定はA(直ちに措置が必要)、B1(速やかな措置が必要)、B2(必要に応じて措置が必要)、C(監視の継続)の4段階。
【福岡賢正】

【2017/11/12 23:54】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
         嶋津 暉之

国土交通省は秋田県・子吉川の由利本荘市に鳥海ダムの建設を進めようとしています。
鳥海ダムはダム検証が始まるまでは休眠状態であった計画ですが、ダム検証で動き出しました。

秋田県下では、国土交通省が現在、雄物川上流で成瀬ダムの本体基礎掘削工事を進めています。
この成瀬ダムに続く大型ダムとして、鳥海ダム事業を進めようというものです。

しかし、今年7月、8月の記録的豪雨で、雄物川は大氾濫し、多大な被害が生じました。治水効果がほとんどない成瀬ダムの建設に河川予算をつぎ込み、雄物川の河川改修をなおざりにしてきたことによるものです。

国土交通省は鳥海ダムで同じ轍を踏もうとしています。


◆水没予定地の歴史を記録に
(読売新聞秋田版 2017年10月02日)
http://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20171002-OYTNT50312.html

由利本荘・百宅地区で委員会を発足

 国土交通省鳥海ダム工事事務所は2日、ダム建設に伴い水没する由利本荘市鳥海町百宅地区の歴史を記録として残すため、有識者による「百宅地区の記録保存委員会」を発足させる。

 同地区は平家伝説や鳥海修験、マタギといった独特の伝承や文化で知られる。委員会は3年ほどかけて歴史学や考古学、民俗芸能、美術、建築、地質、教育などの視点から、調査と研究の光を当てる。

委員会は13人の有識者で構成され、初会合が開かれる2日には早速、現地に入り、史跡「弘法平」や猿倉人形芝居の創始者・池田与八の顕彰碑、雷神社などを視察する。

 百宅地区は子吉川源流部の鳥海山麓にある。平家の落人伝説に加えて、弘法伝承も色濃く残り、「法体の滝」入り口には、空海が修行したと伝わる弘法平がある。

洞窟の奥に弘法大師像が安置され、古くから鳥海修験者の修行の場とされてきた。国指定史跡・鳥海山への追加指定が期待されたが、ダムの建設で水没するため、見送られた経緯がある。

 国指定重要無形民俗文化財・本海番楽の里としても知られ、下百宅講中の舞は番楽の原形を最も忠実にとどめるとされる。しかし、ダム建設への対応で住民の足並みが乱れたといい、10年前から休止状態にある。

今回の調査を機に復活を期待する声も強い。鳥海ダムは洪水調節や水道用水の確保、安定した川の流れの維持が狙いの多目的ダムだ。

流域面積約84平方キロで、総貯水容量は約4700万立方メートル。百宅地区を中心に310ヘクタールが水没、48戸が移転を余儀なくされる。

【2017/10/04 11:02】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
     嶋津 暉之

栃木県は、必要性がない思川開発事業の水源を無理矢理使うため、栃木市、下野市、壬生町水道の地下水源を大幅に減らす県南水道用水供給事業を推進しつつあります。

このことに関する日刊建設新聞の記事です。

県南水道用水供給事業によって栃木市、下野市、壬生町水道は地下水源が大幅に減り、まずくて料金が高い水道になることは必至ですので、この事業に反対する運動が進められています。署名活動も始まりました。

◆実現可能な施設計画抽出へ 県南3市町の水道水 南摩ダム再開で調査着手(県生活衛生課)
[日刊建設新聞 栃木版 2017/9/30] 
http://www.jcpress.co.jp/wp01/?p=19251

 南摩ダム建設に伴う思川開発事業の再開が決まり、県と栃木・下野・壬生の3市町は、水道施設の整備に向け調査や検討が始まった。7月に県南広域的水道整備事業検討部会が開かれ、施設計画等の基礎的な調査検討に着手。県生活衛生課によると、一級河川思川にある取水堰など既存施設の活用に向けた調査検討や施設配置を検討、今年度末を目途に取水候補地を選定し、実現可能な施設計画を抽出していくとしている。施設計画の抽出に伴う水道施設広域化調査検討業務は、日水コン(東京都新宿区)が担当している。

 南摩ダムに保有する県水は、毎秒0.403立方m。県は思川の取水位置を決め、取水施設や導水施設、浄水場などを整備し、参画の3市町に供給する計画。3市町は現在、全量を地下水で水道水を賄っており、24年度末にまとめた「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書」では、野木町を合わせ平成42年度を目標に表流水の比率を35%、日量3万5000立方mまで高めていくとしている。

 地下水の代替水源として表流水の比率を高めていくことは、県南地域における地盤沈下や地下水汚染が危惧されるためで、同報告書では水道水源を地下水のみに依存し続けることは望ましくないとしている。また、異常気象による渇水リスクが高まる中、県南地域には水道水源として水資源開発施設がないことに危機感を示し、水資源開発には相当な期間を必要とすることから、長期的な展望に立って、事前対策を講じていく必要性に言及した。

 今年度の調査では、水道水を供給するに当たって、取水先の思川から3市町のエリアに、活用可能な施設がどこにどのような形で存在しているか、既存施設の資料を収集し把握するとした。具体的には、取水・導水施設、浄水施設、配水施設等その他関連施設としている。

 調査では、資料による把握が可能な範囲内で、新設や既存設備の活用など複合型の可能性を検討し、考えられる組み合わせを整理する。また、組み合わせの中で実現可能な施設計画を3パターン程度抽出するとしている。

 実現可能な施設計画を抽出した上で、30年度以降は最適案を抽出。最適案による施設の概略設計をまとめ、概算事業費を試算するとした。

 思川開発事業は、30年度に導水路工、31年度には南摩ダム本体工を公告。導水路工は取水放流工を含め35年度まで、南摩ダムは基礎掘削や盛立工を経て36年度に試験湛水を行うとしており、計画では37年度にも表流水への転換が可能になる。

【2017/10/04 10:06】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |
          嶋津 暉之

2013年に中止が決まった宮城県の直轄ダム「田川ダム」の予定地の住民が国に補償を求める要望書を提出しました。
ダム計画に翻弄され、ダム予定地の住民は多大な損害を受けてきているのですから、生活再建措置が取られて当然であり、そのための法整備が必要です。
民主党政権下で「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」がダム中止後の生活再建支援法案をつくりました。
それがベースになって、内容面では後退しましたが、2012年3月に「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案」が国会に上程されました。
しかし、まったく審議されないまま、廃案になってしまいました。

◆宮城)ダムに翻弄された37年 加美町寒風沢
(朝日新聞宮城版2017年9月6日)
http://digital.asahi.com/articles/ASK954J0FK95UNHB00M.html

 国が着工することなく2013年に中止になった田川ダムの建設予定地、加美町寒風沢(さぶさわ)地区の住民らが6日、補償を求める要望書を国交省鳴瀬川総合開発工事事務所に提出する。未着工のダムに関する補償要求には、法的根拠がない。それでも、県の調査にさかのぼれば37年間、ダムに振り回され続けた。そのことで被った不利益を、住民らは「損害」ととらえている。

 寒風沢地区地域振興協議会の24人。ダムができていれば住宅が水没した4軒、田畑などを失うはずだった9軒が含まれる。すでに寒風沢を離れた人も名を連ねる。要望書は、ダムが建設されるかの見通しが立たないうちに人口流出が進んだことを指摘。計画がなければ、もっと快適な生活が送れるはずだったと記す。5日には加美町に対し、国が補償するようはたらきかけることを求めた。

 住民らは中止方針が発表された2013年から、当時の総合開発調査事務所に補償を求めたが、「制度がない」「前例がない」と退けられてきた。今回の要望書提出は、国による補償の可能性の有無を確認する意味を持つ。と言うのも、町が住民の生活再建と地域振興に使える交付金を準備したからだ。

 交付金は、住民の家屋改修や、グループでの研究会などに使うことができ、協議会を通じて申請して支給される。予算計上した8200万円は、町が国交省から得た9200万円の「行政需要費」から捻出した。

 需要費はダム事業のために町職員が働いた分への対価で、町が自由に使える。町は当初、中止決定後に住民が要求していた生活再建のほか、堰(せき)の改良と林道や集会所の整備などに使う予定だった。ダム到来を想定し、インフラ整備が不十分だった所だ。

 ところが、住民の多くはこの間に年老いていった。将来には消えゆくかもしれない集落の整備より、個々の生活に結びつく支援の方を重視するようになった。町は要求が多かった町道整備に1千万円を使い、残りを生活再建などに対象を絞った交付金に充てる。

 協議会は補償要求を優先し、その後に会長ら役員が町の助言を受けながら、交付金の分配基準を決める。だが、難しい作業になりそうだ。老朽化した家屋の手入れの全額を交付金に頼れば、たちまち底をつくので、出費に対する支給割合を決める必要がある。家屋の水没、土地だけの水没、いずれでもない住民、不在者が混在する。来なかったダムによる「損害」をどう調整し、申請額を算出するのか――。

 協議会の今野年行会長(65)は言う。「最初は向こうが、ダムを造らせてと頭を下げた。次は、こっちが補償をと頭を下げる。交付金調整は難しそうな仕事。不思議な話だ」

 ダムは幻と消えた。だがその残影は、今後も住民たちの現実を翻弄(ほんろう)し続ける。行政区長によると、中止が決まる前年、60人以上が暮らした寒風沢。住民は今、43人。(島田博)

     ◇

 〈田川ダム〉 洪水調節と灌漑(かんがい)用水補給、水道用水供給などが目的。1976年の県の予備調査に続く92年、当時の建設省が鳴瀬川支流の田川に二つのダムの建設を前提にした実施計画調査を始めた。後に、一つのダムに計画を変更。民主党政権による未着工ダム事業の見直しに伴い、13年8月に中止が決まった。その分の機能は同町内の別の支流に着工する筒砂子ダムの規模拡大などで補完する。


追記を閉じる▲

【2017/09/07 00:53】 | 各地のダム情報
トラックバック(0) |