「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
国土交通省関東地方整備局は利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対する公聴会の開催とパブリックコメントの募集をしました。
しかし公聴会、パブリックコメントや利根川・江戸川有識者会議で提起された数多くの基本的な疑問に答えることなく、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を無視し、流域住民に説明する機会もなく、説明責任をまったく果たさないまま、 4月24日に計画(案)を一方的に公表しました。

この計画(案)は文言等の加筆が多少あるものの、計画(原案)と基本的に変わっていません。

そこで5月13日に、利根川流域市民員会が国土交通大臣および関東地方整備局長に対して下記の抗議文を提出しました。

クリックするとPDFで開きます↓

*抗議文本文
「利根川・江戸川河川整備計画(案)の拙速な公表に抗議するとともに、利根川流域住民の安全を本当に確保できる計画(案)の再作成を求める」


*利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会の結果
 公聴会  公述人 32人
 原案に反対 28人(88%)   原案に賛成 3人(9%)   その他 1人 (3%)

*利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する
 意見募集(パブリックコメント)の結果

 パブリックコメント 157通
 原案に反対 132通(84%)   原案に賛成 21通(13%)  その他 4 通 (3%)

*利根川・江戸川河川整備計画(原案)への意見に対する
 関東地方整備局の考え方(回答)の問題点

 (同局の従前からの説明を繰り返しているだけであり、まともな回答は皆無)



◆河川整備計画案で国交省に抗議文 八ッ場ダム建設反対の市民団体
(2013年5月14日 上毛新聞社会面18面)

 八ッ場ダム建設に反対する市民グループ、利根川流域市民委員会は13日、国土交通省がまとめた利根川・江戸川河川整備計画(案)に対する抗議文を、同省に提出した。

 抗議文は「有識者会議や公聴会などで提起された数多くの疑問点に答えてなく、(八ッ場ダム建設に反対する)圧倒的多数の意見を無視している」と訴え、計画案の作り直しを求めている。


◆整備計画案公表に市民団体が抗議文
(朝日新聞群馬版 2013年5月15日)
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130515100580001.html

抗議文は13日付。

「パブリックコメントや公聴会での圧倒的反対意見を無視」「計画原案に対する疑問に何も答えていない」として案の再作成を求めている。

整備局は、計画の原案を1月29日に発表。4回開いた有識者会議では慎重意見も出たが、案として4月24日に公表した。
関係都県知事の意見を踏まえ、策定を急いでいる。
(一部引用)
抗議文の全文を転載します。
                   2013年5月13日
国土交通大臣
  太田 昭宏 様
国土交通省関東地方整備局長
  森北 佳昭 様

               利根川流域市民委員会
            共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
            嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
            浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
            事務局(深澤洋子)                

利根川・江戸川河川整備計画(案)の拙速な公表に抗議するとともに
利根川流域住民の安全を本当に確保できる計画(案)の再作成を求める 


国土交通省関東地方整備局は4月24日に利根川・江戸川河川整備計画(案)を公表しました。原案の変更点、変更の理由、出された意見の扱いについて利根川・江戸川有識者会議で審議することも、流域住民に説明する機会もなく、関東地方整備局は説明責任をまったく果たさないまま、計画(案)を一方的に公表しました。今回の一方的な公表は「行政運営の透明性の向上を図るとともに、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるものとすること」とする政府の基本方針を規定する中央省庁等改革基本法第4条第7号に違反しています。
公表された計画(案)は文言等の加筆が多少あるものの、利根川・江戸川河川整備計画(原案)と基本的に変わっていません。利根川・江戸川河川整備計画(原案)について利根川・江戸川有識者会議、公聴会、パブリックコメントで提起された数多くの基本的な疑問に答えることなく、公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を無視したものです。
2006年12月の利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局が言明した約束「原案を修正して再度意見をきき、それを繰り返して計画案を作成していく」を反故にして、今回、関東地方整備局が問答無用と言わんばかりに計画(案)を公表したことに私たちは強い憤りを覚えます。
計画(原案)への公聴会およびパブリックコメントで示された圧倒的多数意見を関東地方整備局が無視したことは下記の1に、計画(原案)への意見に対する関東地方整備局の回答が基本的な疑問への回答になっていないことは下記の2に示すとおりです。
このようにまさしく強権的に利根川・江戸川河川整備計画の策定を進める国土交通大臣および関東地方整備局長に対して私たちは心底から抗議します。
同時に私たちは、下記の3のとおり、利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然をできるだけ取り戻す利根川河川整備計画(案)の再作成を求めます。

                記

1 パブリックコメントおよび公聴会で示された圧倒的多数意見を無視

計画(原案)について行われた公聴会およびパブリックコメントで出された意見を整理してみました。別紙1、2のとおりです。原案に対して反対、賛成を集計すると、次のようになります。
公聴会  公述人 32人
 原案に反対 28人(88%)   原案に賛成 3人(9%)   その他 1人 (3%)

パブリックコメント 157通
 原案に反対 132通(84%)   原案に賛成 21通(13%)  その他 4 通 (3%)

原案に対して反対の意見の割合は公聴会では88%、パブリックコメントでは84%にもなっており、出された意見の圧倒的多数が利根川・江戸川河川整備計画(原案)に対して反対の意思を示しています。
ところが、関東地方整備局はこのように圧倒的多数で示された民意を顧みることなく、その民意を無視して計画(原案)とほぼ同じ内容の計画(案)を発表しました。これでは、何のために公聴会を開き、パブリックコメントを行ったのか、分かりません。公聴会およびパブリックコメントで提出された意見を十分に考慮しないことは、行政手続法第42条に違反します。
1997年の河川法改正に当たり、関係住民の意見反映について当時の尾田栄章河川局長は下記の議事録のとおり、国会の質疑で「河川管理者は河川整備計画に関係住民の意見を反映させる責務がある」と答弁しました。関係住民の意見を河川整備計画に反映させることは河川法改正の本旨であったはずです。関東地方整備局がこの河川性法改正の本旨を無視することは許されません。

「衆議院建設委員会-12号 平成9年5月9日

○尾田政府委員 先生御指摘のとおり、言いっ放し、聞きっ放しというのでは全く意味がないというふうに考えておりまして、具体の河川整備計画の案を策定する段階で、十二分に案を策定するために、案の案、原案の案、そういう意味では原案でございますが、これを御提示をいたしまして、それについて御意見をいただく、その上で必要なものについては修正をするという形で考えておりますので、まさにその河川整備計画に関係住民の皆さん方の意向が反映をしていくというふうに考えております。」

2 計画(原案)に対する疑問に何も答えていない
関東地方整備局は河川整備計画(案)とともに、計画(原案)への意見に対する同局の考え方(回答)を示しましたが、そのほとんどは同局の従前からの説明を繰り返しているだけであり、まともな回答は皆無であると言っても過言ではありません。回答は問題提起をはぐらかすことに終始し、利根川・江戸川河川整備計画(原案)の根本的な欠陥は何も解消されていません。
主な論点について出された意見と関東地方整備局の回答、およびその回答の問題点を別紙3に整理しましたので、真摯に受け止めてほしいと思います。
その要点を箇条書きすれば、次のとおりです。

① 流域住民にとってきわめて重要な意味を持つ利根川の河川整備計画を全国の一級水系では例がない本川だけという異常な形で拙速に策定しようとしていることについて、関東地方整備局はその理由を何も説明していない。その真の理由は、八ッ場ダム本体工事を早期に着手するために、強引に同ダム事業を河川整備計画に位置づけようとしているとしか考えられない。

② 関東地方整備局は整備計画(原案)の治水目標流量(八斗島)を従前の案15,000㎥/秒程度から17,000㎥/秒へ独断で引き上げた理由についても何も答えてない。この引き上げもこうすることにより、八ッ場ダム事業を河川整備計画に必要な事業として位置づけやすくしたと考えられる。

③ 整備計画(原案)の治水目標流量を算出した洪水流出モデルは科学的な根拠が希薄で、17,000㎥/秒が過大な値であることは有識者会議で何度も指摘された。この問題について今回の回答は従前の説明を繰り返しているだけで、疑問は何ら払拭されていない。1/70~1/80に相当する治水目標流量は正しくは15,000㎥/秒以下である。

④ 円山川水系河川整備計画は水系の各所で自然を回復するための具体的な対策が図入りで示されている。それに比べると、利根川・江戸川河川整備計画(案)はそのような記載がなく、自然に対する姿勢や生物多様性保全に向けた施策に雲泥の差がある。円山川のように自然に対して畏敬の念を持って、開発事業で失われた自然の回復や生物多様性の保全を図るという精神が今の関東地方整備局には欠如していると言わざるを得ない。

⑤ 回答は計画(原案)について「現在の予算規模の状況などを考慮し、実現可能性を確認している」と述べているが、今後は今までの時代とは異なり、新たな社会資本投資が次第に困難になっていく時代であるから、従前どおりに予算を確保することは到底無理である。まして、河川整備計画の事業費は国交省が示す約8,600億円よりはるかに大きな金額になることは必至なのであるから、計画(案)に示された事業メニューは実現性のない絵に描いた餅に過ぎない。

⑥ 計画(案)は総花的であって、流域住民の安全をできるだけ早く確保するための治水対策を厳選して河川予算を集中的に投じようとする方針がまったく見えない。喫緊の対策である脆弱な堤防の強化対策、ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策、想定を超える洪水への対策に河川予算を集中して投じるように河川行政を変えていかなければ、利根川流域住民は氾濫の危険性がある状態に放置されてしまうことになる。予算を低く抑え、同時に工期も短く、効率よく治水機能を発揮できる新たな堤防強化対策が急がれている。

⑦ 超過洪水対策について回答で示しているのは、「自助・共助・公助の精神のもと、被害の最小化を図る」という言葉だけで、一方で、高規格堤防以外の「耐越水堤防」技術を否定している。高規格堤防の整備は全く現実性のないものであるから、結局、今回の河川整備計画(案)には超過洪水対策について具体的な対策が何も盛り込まれていない。今後30年間、仮に計画どおりに河川整備が実施されても、想定を超える洪水による壊滅的な被害発生の可能性は依然として残されてしまうことになる。

3 利根川流域住民の安全を本当に確保でき、自然を取り戻す利根川河川整備計画の再作成を求める

上記のとおり、利根川・江戸川河川整備計画(案)は八ッ場ダム本体工事を早期に着手するため、本川だけの計画が拙速でつくられたものであり、利根川流域住民の安全を本当に確保する内容になっていません。巨額の河川予算を利根川に投じ続けて数多くの河川事業を推進することを自己目的化した計画であり、今後は新たな社会資本投資が先細りせざるを得ない時代になることを踏まえれば、いずれ近いうちに暗礁に乗り上げてしまうことが必至です。また、円山川水系河川整備計画のように過去の開発事業で失われた自然を取り戻す視点のない計画であり、生物多様性国家戦略が国を挙げて進められている状況の中で、治水だけにシフトした、旧態依然とした計画であると断じざるを得ません。
私たちはこのように欠陥だらけの利根川・江戸川河川整備計画が罷り通るのを看過することができません。利根川流域住民の安全を確保できる治水対策を厳選してそこに河川予算を集中的に投じる河川整備計画、失われた利根川の自然をできるだけ取り戻す方策を盛り込んだ河川整備計画の策定を強く求めます。
関東地方整備局は関係都県知事からの意見を受けた後、利根川・江戸川河川整備計画を策定するでしょうが、河川整備計画は一度策定されてしまうと、それで終わりということではありません。
 河川法改正直後の建設省通達〔注〕には「地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものである」と書かれており、私たちはあるべき利根川水系河川整備計画の市民案を提案して、利根川河川整備計画の再作成を求めていきます。

〔注〕「河川法の一部を改正する法律等の運用について
  (建設省の通達 平成10年1月23日)

 2 河川整備計画の策定について 5) 河川整備計画の変更について
河川整備計画は、流域の社会情勢の変化や地域の意向等を適切に反映できるよう、適宜その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものであること。」
関東地方整備局は多摩川や鶴見川の河川整備計画を策定する際には、流域セミナーや流域懇談会を何度となく開催するなど、流域住民・関係者との合意形成を重視してきました。その結果、両河川は流域住民を主人公にした河川管理が現在も受け継がれています。流域住民に近い川として愛されていることは関東地方整備局がよく知るところです。
利根川水系河川整備計画の策定においても、流域住民・関係者と河川管理者との合意形成を根底におくことを強く求めます。

                                      以上


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【2013/05/15 16:47】 | 利根川流域市民委員会
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18日に利根川流域市民委員会が下記の緊急要請書を、羽田国交大臣、河川整備局長宛に提出しました。

現在募集中のパブコメは、河川整備計画の内容を議論する前に、治水安全度・目標流量だけ高く決めてしまい、八ッ場ダム等の大型公共事業を造りやすくしようとしたものです。

2012年6月18日
国土交通省大臣 羽田雄一郎 様
関東地方整備局局長 下保 修 様

               利根川流域市民委員会 共同代表 
          佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
              嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
         浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議) 
                    連絡先 事務局(深澤洋子)


利根川水系河川整備計画の策定と治水安全度のパブコメに関する緊急要請

国土交通省関東地方整備局は、5月25日に「利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準に対する意見募集の実施について」を発表しました。懸案となっている利根川水系河川整備計画の策定において、治水安全度(目指す安全の水準)を切り離して、それについてまずパブリックコメントを行うというものです。しかし、それは、国土交通省が目論む大規模河川事業の推進への道筋をつくるものであり、このような策定の仕方では利根川流域住民の安全を真に守ることができる河川整備計画をつくることができません。
下記の4点を踏まえて、利根川水系河川整備計画の策定の仕方を根本から改めることを強く要請いたします。


1 治水安全度だけを切り離して意見募集を行うのは詐術というべきやり方であるから、取りやめるべきである。

今回のパブコメで国土交通省は何を得ようとしているのでしょうか。このパブコメは次の国土交通省の見解に対する意見募集です。
「○我が国の社会経済活動の中枢を担う首都圏を流れる利根川・江戸川の氾濫域には、人口・資産が高度に集積しています。
○利根川・江戸川の重要性を考慮すると、今後20~30年間で目指す安全の水準は、全国の他の河川における水準と比較して相対的に高い水準(年超過確率1/70~1/80)とすることが適切と考えています。」
 このような聞き方をすれば、多くの人は「人口・資産が高度に集積している利根川・江戸川では治水安全度を全国の他の河川より高くして1/70~1/80にするのは当然だ。」と思ってしまうでしょう。むしろ、治水安全度をもっと高くすべきだと思う人もいるでしょう。治水安全度だけを切り離して聞けば、一般には治水安全度は高い方がベターだと思うでしょうから、この意見募集の結果は目に見えています。
 かくして、パブコメで治水安全度1/70~1/80に多くの賛意が得られれば、どうなるのでしょうか。今回のパブコメ資料に1/70~1/80に相当する治水目標流量(八斗島地点)は17,000 m3/sと書かれていますから、国土交通省は17,000 m3/sも賛意が得られたとして、次は17,000 m3/sを前提とした八ッ場ダムなど、関東地方整備局が考える大規模河川事業も実質的に容認されたものとして、前面に打ち出してくるに違いありません。
 なお、治水安全度1/70~1/80は治水目標流量17,000 m3/sに相当するとしていいますが、これは科学性が疑われている方法で求めたものであり、この安全度に実際に相当する流量はもっと小さな流量です。
治水安全度1/70~1/80への賛意が治水目標流量17,000 m3/sへ、さらに、八ッ場ダムなど、国土交通省が考える大規模河川事業につながるようになっているのが今回のパブコメのカラクリです。
また、今回のパブコメの付属資料は専門的すぎて、一般の人にはとても読みこなせるものではありません。流域住民が治水安全度の意味もよく理解しないまま、「安全な方がいい」と答えるしかないように誘導する仕掛けとなっています。
治水安全度は高い方がよいと考える一般の心理を利用して、八ッ場ダムなどの大規模河川事業にゴーサインが出るように持っていこうという今回のパブコメは、まさしく詐術というべきやり方ですから、取りやめるべきです。

2 治水安全度ではなく、想定外の洪水が来ても、壊滅的な被害を受けないようにすることを河川整備計画の目標とすべきである。

治水安全度を決め、それを達成するように、ダム建設、河川改修等の河川整備の内容を定めるという従来の河川整備計画の策定方法で利根川流域住民の安全を本当に守ることができるのでしょうか。治水安全度を先に決める策定方法は、その治水安全度に見合う洪水までは安全を保証するが、それを超えた洪水が来れば、アウトになるという考え方です。実際にはその安全の保証も机上のものにすぎないのですが、そのことはさておき、昨年の東日本大震災を踏まえれば、治水安全度で想定した洪水を超える未曽有の洪水が来る可能性は皆無ではありません。その時に、壊滅的な被害を受けないようにするには、どのような河川整備を進めなければならないのか、そのことが東日本大震災の経験に経て取り組まなければならない最大の課題であるはずです。
未曽有の洪水が来た時、ダムは(もともとさほど役立つものではありませんが)満杯になって洪水調節機能を失います。堤防は計画高水位の洪水までに対してしか強度が保証されていませんから、破堤するかもしれません。一挙に破堤すれば、流域住民の多くの生命が失われてしまうことになります。そのようにならないようにするために、越水しても簡単には破堤することがない堤防への強化を図り、同時に避難を速やかに行える避難体制を確立することが必要です。
利根川水系河川整備計画は未曽有の洪水の来襲に対応できるように策定されなければなりません。

3 新規の社会資本投資が次第に厳しくなる時代において利根川では流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選することが必要である。

日本は新規の社会資本投資が次第に厳しくなる時代になりつつあります。平成21年度国土交通白書でも、「これまで我が国で蓄積されてきた社会資本ストックは、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後老朽化は急速に進む」として既設社会資本の更新と維持管理費が急増していくので、新規の社会資本投資が先細りせざるをえないとの警告が出されています。
公共事業がおかれているこの現実を踏まえれば、国土交通省が目論む利根川水系河川整備計画のように、大規模河川事業を中心に巨額の河川予算を毎年、利根川に注ぎ込み続けることはもはや不可能です。
流域住民の安全を確保するための喫緊の対策を厳選して、そこに河川予算を集中的に投ずるようにしなければなりません。現在のような大規模河川事業優先の河川予算の使い方を続ければ、いずれ河川予算は底を突き、安全確保が急がれているところはいつまで経っても改善されず、氾濫の危険性がある状態が半永久的に放置されてしまうことになります。
昨年9月上旬の台風12号では伊勢崎市を中心に広い範囲で内水氾濫による浸水被害がありました。最近頻発するゲリラ豪雨による内水氾濫への対策が急務になっています。また、国土交通省の調査により、利根川及び江戸川の本川・支川では洪水の水位上昇時にすべり破壊やパイピング破壊を起こして破堤する危険性がある脆弱な堤防が各所にあり、強化対策が必要な区間の割合は6割にも及んでいます。堤防の強化対策も急がれています。
このように流域住民の安全を守るための喫緊の対策を厳選することが利根川水系河川整備計画の策定に課せられた課題です。

4 利根川流域の住民の安全を守るために何が本当に必要なのかを十分に議論する場を設けるべきである。

利根川水系河川整備計画は以上述べたことを踏まえて、利根川流域住民の安全を真に守ることができるように策定されなければなりません。そのためには、利根川流域の住民の安全を守るために何が本当に必要なのか、利根川の治水のあり方、川のあり方について国土交通省は流域住民と十分に議論する場を設けることが必要です。流域住民の意見を反映できるように、流域住民とともに河川整備計画を策定していくことは1997年河川法改正の本旨であったはずで、そのことは当時の国会での質疑で河川局長が言明していることです。
流域住民とともに河川整備計画づくりを進めた例は数多くありますが、利根川と同じ関東地方整備局の管轄内では多摩川があります。多摩川では河川法が改正されて直ちに整備計画策定作業が始まりました。改正河川法の意気込みを引き継ぎ、流域住民との協働作業を基軸に策定作業が進められました。京浜河川事務所と流域住民による堤防等の河道視察、流域セミナーという名の公開討論会が積み重ねられました。それは多摩川を愛する人たちによる「自分達の川造り」でした。3年をかけた2000年に多摩川水系河川整備計画は完成しました。多摩川の実施例に倣って、利根川でも流域住民との共同作業による整備計画づくりに努めるべきです。
先に述べたように、治水安全度を切り離してパブコメを行い、それによって八ッ場ダムなど、大規模河川事業推進への道筋をつくろうという国土交通省のやり方では、私たち流域住民の真の安全確保はいつまでたっても達成することができません。
国土交通省は1997年河川法改正の本旨に立ち返って、利根川水系河川整備計画を流域住民とともに策定することが求められているのです。
                   以上


利根川流域市民委員会 賛同団体一覧    
2012年6月18日現在 34団体(順不同)

   利根川・江戸川流域ネットワーク
   水源開発問題全国連絡会
   利根川の水と緑を守る取手連絡会 
   霞ヶ浦導水事業を考える県民会議 
   高崎の水を考える会
   八ッ場あしたの会 
   八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 
   八ッ場ダムをストップさせる群馬の会
   八ッ場ダムをストップさせる千葉の会
   八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 
   八ッ場ダムをストップさせる茨城の会
   八ッ場ダムをストップさせる東京の会
   ムダなダムをストップさせる栃木の会
   渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会 
   首都圏のダム問題を考える市民と議員の会
   霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議
   思川開発事業を考える流域の会
   ダム反対鹿沼市民協議会 
   栃木の水を守る連絡協議会
   千葉県自然保護連合 
   千葉の干潟を守る会
   藤川をきれいにする会
   市川緑の市民フォーラム 
   耕さない田んぼの会
   東京市民オンブズマン
   渓流保護ネットワーク・砂防ダムを考える 
   全水道関東地方本部
   水道事業を考える土浦市民の会 
   スーパー堤防問題を考える協議会
   スーパー堤防・街づくりを考える会 
   希望社会研究所
   那珂川ウォーターネットワーク鶴亀隊  
   アサザ基金
   STOP八ッ場ダム・市民ネット



23日締め切りのパブコメに、ご意見をお寄せください。
http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=1653

こちらはこの件について解説されているブログです。
◇「利根川の治水安全度と目標流量」
どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち!?
http://bit.ly/KZHvkC


新聞報道です。

◆意見募集停止 国交相に要請 八ッ場で市民団体
(上毛新聞 2012年6月19日)

八ッ場ダム(長野原町)本体工事の着工条件の一つになっている利根川・江戸川河川整備計画の策定で、国土交通省関東地方整備局が行っている意見募集について、市民団体「利根川流域市民委員会」は18日、治水の安全水準に限定した現状の意見募集は停止すべきだとする緊急要請書を羽田雄一郎国交相に提出した。


◆「八ッ場ありきだ」 国交省の意見募集 市民団体が抗議

(東京新聞群馬版 2012年6月19日)

利根川・江戸川の河川整備計画の基礎となる「安全水準」について国土交通省関東地方整備局が二十三日まで行っている意見募集に対し、市民団体は十八日、「募集の仕方が八ッ場ダムにつながるようになっている」と批判する要請書を羽田雄一郎国交相宛てにファックスで提出した。

要請書を出したのは利根川流域市民委員会。国交省のように安全水準を決めた上で治水対策を取るのではなく、想定外の洪水にも柔軟に対応できる避難対策の確立と堤防強化などを求めた。



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【2012/06/19 12:11】 | 利根川流域市民委員会
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利根川流域市民委員会の再結成集会
「関東平野にも、脱ダムの風よ吹け!
 ~利根川水系河川整備計画の出直しをチャンスに!~ 

この集会に参加した埼玉の会のTさんのレポートです。

4月29日、全水道会館には130名が集い、熱気あふれる集会になりました。

開会挨拶の中で、大熊孝さんは「是非、皆さんも現場に行って、心と体に沁み込ませて欲しい」と言われました。

講演は元国土交通省の宮本博司さんが「河川整備計画の民主的な策定を!今こそ、河川法改正の原点に立ち返ろう」と題して話されました。
大阪の槙尾川ダムの有識者会議の委員、大阪府河川整備委員会、淀川水系流域委員会などに関わられた経験を元に、「委員会は公開が原則、傍聴者にも発言させ、マスコミに報道してもらい、皆が見ている、ということを役人に分からせることが大事。
ダムを造らなくても堤防強化、越水対策などやることはいくらでもある。ダムを造りたいと本気で思っている現役役人はほとんどいない。

(ダム推進の理由↓)
 ①役人のメンツ 
 ②先輩のやってきたことを否定できない 
 ③方向転換するより、継続する方が楽 
 ④強烈なOBの指示などである。」

など示唆に富んだお話しでした。

次に嶋津暉之さんが「利根川水系河川整備計画をめぐる経過」として、昨年12月29日の藤村官房長官裁定について報告があり、これから始まる利根川河川整備計画の策定が大事であることが話されました。

その後、大規模河川事業に関する4つの報告と各地からの報告の後、大熊孝さん、宮本博司さん、嶋津暉之さんの3人をパネラーに、まさのあつこさんのコーディネーターによるパネルディスカッションに入りました。

嶋津さんの「これから始まる利根川河川整備計画についてのアドバイスを」の問いに対し

大熊孝さん
「ダムが今、生きている人に役立つかが大事。100年後の人のためになっているかと言うとそうでもない。足尾鉱毒事件の時は、現地に学生が1000人位集まった。その位の意気込みで八ッ場で集会が開かれれば変わる可能性がある」

宮本博司さん
「国交省は現地での討論を避ける。現地に行って何が緊急性があるか議論することが大事。とにかく現地に行けば、利根川が沁み込んで来る。そうすると頭で考えなくても分かる。それを計画する方にぶつけることが大事。」

最後に神原禮二さんの力強い国土交通省への要請文を拍手で採択して集会を終了しました。
今後のしなやかな活動をイメージしつつ、会場を後にしました。



「あしたの会」ツイッターの利根川流域市民委員会関連

 八ッ場あしたの会@yambatomorrow
本日の利根川流域市民委員会の再結成集会は盛会だった。国交省OBの宮本博司さんのお話。ー川は自然=無限の存在。川の専門家といえども、知っているのは自然のほんの一部に過ぎない。行政は「想定」によってダム計画をつくるが、自然は「想定外」の繰り返し。これでは本当の自然災害には役立たない。

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宮本さんのお話し続きー「今後、新規ダムは計画しないので、現在実施中のダムだけは、継続して造らせてほしい」というのが10年以上前からの国交省幹部の本音。今の役人に、ダムの必要性は語れない。

 八ッ場あしたの会@yambatomorrow
河川工学者の大熊孝さんのお話。「現場を見て、体に染み込ませることが一番大切。八ッ場ダムの予定地、利根川流域の現場に、何度でも足を運ぶこと。

 八ッ場あしたの会@yambatomorrow
霞ヶ浦導水事業の問題に取り組む濱田篤信さんのお話よりー「水ガメ化された霞ヶ浦では湖底堆積物中の放射性物質濃度が急上昇している。こうした中で那珂川の水を霞ヶ浦へ導水することは、霞ヶ浦の放射能汚染の解決に決定的打撃を与えることになる。」

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スーパー堤防についての渡邉拓美さんのお話より。「スーパー堤防の真の目的は治水事業ではなく、開発事業。高層マンションやショッピングセンターと共にスーパー堤防が造られる。」 





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【2012/04/30 22:27】 | 利根川流域市民委員会
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              嶋津 暉之

4月29日、「利根川流域市民委員会の再結成集会  関東平野にも、脱ダムの風よ吹け ~利根川水系河川整備計画の出直しをチャンスに~」が開かれました。

 利根川流域市民委員会の再結成集会のお知らせ

この集会では宮本博司さんの講演、八ッ場ダム、南摩ダム、霞ケ浦導水事業、スーパー堤防等の各事業についての報告があり、また、パネルディスカッションには大熊孝先生も参加され、充実した集会であったと、主催者の一人として自負しております。

◆ダムに頼らない計画提言へ 利根川流域市民委が再結成
堤防強化の優位性指摘

(下野新聞 2012年4月30日 朝刊)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20120429/773393

国土交通省関東地方整備局が策定中の利根川水系河川整備計画に市民の視点で提言しようと、34の市民団体で構成する「利根川流域市民委員会」の再結成集会が29日、都内で開かれた。

約130人が参加し、洪水にも耐えられる堤防強化などを進めてダムに頼らない計画を提言しようと、議論を交わした。
利根川水系河川整備計画は、本県の思川開発事業(南摩ダム)や群馬県の八ツ場ダム、茨城県の霞ケ浦導水事業などの上位計画。

今後20~30年間に実施する河川整備の事業内容を定める。同会は2006年に発足し活動していたが、09年の政権交代で計画策定作業が中断したのに伴い、活動を休止していた。

政府は八ツ場ダムの事業継続を打ち出したが、ダムの本体着工には同計画の策定が条件とされた。

国交省は現在、急ピッチで策定作業を進めており、同会もこれに合わせて活動を再開させた。南摩ダム訴訟などの原告でもある水問題専門家の嶋津暉之さんらが共同代表を務めている。

集会では元国交省近畿地方整備局河川部長だった宮本博司さんが講演し「本気でダムを造りたがっている現役の役人はほとんどいない」とした上で、ダムよりも堤防強化の優位性を強調。

「安価な工法が確立しており、国交省も実験済み。導入しないのはダム計画が破綻してしまうため、役人のメンツがつぶれるからだ」と指摘した。

(宗像信如)


◆八ツ場問い直す 市民団体再結集
(朝日新聞群馬版 2012年04月30日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001204300003

八ツ場ダムの建設など利根川水系で進む開発を問い直そうと、各地の市民団体が集った「利根川流域市民委員会」の再結成集会が29日、都内で開かれた。

集会では、八ツ場ダム建設再開の条件の一つの「利根川水系河川整備計画」に住民の意見を反映させ、策定委員を選び直すことなどを前田武志国土交通相らに要望することを確認。

元国交省近畿地方整備局河川部長の宮本博司氏が基調講演し、「治水にはダム建設より、脆弱(ぜい・じゃく)な堤防を強化すべきだ」などと語った。

「八ツ場あしたの会」の渡辺洋子さんは「八ツ場ダム湖予定地周辺は地層が脆弱。水をためると地滑りが誘発される危険性が高い」とし、安全対策で4600億円の事業費がさらに膨らむと訴えた。

同委員会は、国の計画に市民の声を反映させようと2006年に結成し、34団体が参加。政権交代後に一時休止したが、国の作業再開を受けて再結成した。



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【2012/04/30 20:31】 | 利根川流域市民委員会
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