FC2ブログ
「ダム建設の時代は終わった」by米国内務省開拓局長官ウィリアム・ピアーズ
       嶋津 暉之

昨年7月の西日本豪雨でダムからの緊急放流により大規模な氾濫を引き起こした野村ダム・鹿野川ダムについて鹿野川ダム改造工事が3月に完了したので、両ダムの操作ルールを変えることを四国地方整備局が発表しました。

四国地方整備局の発表は「野村ダム・鹿野川ダム操作ルールの考え方について 意見を募集します」をご覧ください。 
http://www.skr.mlit.go.jp/yamatosa/kisya/pdf/190416.pdf 

新しいダム操作ルールでは西日本豪雨が再来しても、被害を大幅に減らせることになっていますが、本当にそうなのか、内容をよく検証する必要があります。

新しい操作ルールは1995年まで使われていた大洪水用の旧操作ルールに近いものです。

肱川下流は河道整備が非常に遅れていて、大洪水用の旧操作ルールでは氾濫を引き起こすので、1996年に中洪水用の操作ルールに変わりました。

その操作ルールで昨年7月に緊急放流が行われましたが、四国地方整備局は昨年11月に、旧操作ルールでも放流量が大きくは減らなかったという発表をしています。

それが今回の発表では大幅に減少するというのですから、首を傾げざるを得ません。

豪雨後に暫定堤防がかさ上げされたことも考慮した計算ですので、その効果もあるように思います。今回の発表データを入手して検討したいと思います。

◆愛媛)豪雨で緊急放流の2ダム 新操作で「被害大幅減」
(朝日新聞愛媛版 2019年4月19日03時00分)
https://digital.asahi.com/articles/ASM4K4TBBM4KPFIB00B.html?iref=pc_ss_date
 
 昨年7月の 西日本豪雨で緊急放流した鹿野川ダム( 愛媛県大洲市)と野村ダム(愛媛県西予市)について、管理者の国土交通省が両ダムの新しい操作ルールの案を示した。鹿野川ダムで豪雨に備えて事前に水を抜く「トンネル洪水吐(こうずいばき)」が完成することを受けたルール変更となる。
 西日本豪雨では両ダムとも満水に近づいて緊急放流し、その後に肱川が氾濫(はんらん)したが、同規模の豪雨が来ても浸水被害は大幅に軽減されるという。

 鹿野川ダムは水門の位置などの構造上、水位を一定の高さ以下に下げることができないが、トンネル洪水吐は水門より低い位置にあるため、大雨が予想される際は事前にダムの水位を現在の限界よりも下げることができる。
 国交省によると、洪水吐を運用すれば、現在の1・4倍の 洪水調節容量を確保して洪水に備えられるようになる。

  国交省が示した新ルール案では、昨年の豪雨規模の雨が降った場合でも、最も早く浸水が始まる下流の菅田地区で、浸水世帯数が460世帯(実績値)から330世帯に減る。浸水が始まるのも遅らせられる。

 菅田地区に続いて浸水が始まると予想される東大洲地区では、豪雨後に暫定堤防がかさ上げされたこともあり、浸水世帯数は大幅に減少。浸水開始も遅らせられるという。

 鹿野川ダムの上流にある野村ダムの新ルール案は、現行に比べると、野村ダムに入ってきた水を、洪水初期の段階でより早く、より多く、下流の鹿野川ダムに流すという内容。これによって、野村地区の浸水世帯数も650世帯(実績値)から40世帯に減るという。

 この操作変更は、鹿野川ダムで新たに増えた洪水調節容量の一部を、実質的に野村ダムのために使うものだ。鹿野川ダムに水を受け持ってもらうことで、洪水時に野村ダムの容量をより長い時間確保できる。
 国交省は豪雨の検証会合などで、鹿野川ダムの容量拡大に合わせて「肱川流域全体に恩恵があるように」として野村ダムのルール変更の方針を示していた。今後住民説明会を開くなどして、遅くとも出水期(6月16日から)までには2ダムで新ルールを運用する。

 国交省によると、仮に野村ダムの操作ルールを変えなければ、中小規模洪水時には鹿野川ダム下流の大洲市菅田地区での浸水世帯数をさらに減らせるケースもあった。鹿野川ダムの容量の一部を
実質的に野村ダムのために使う今回のルール変更は、「利害対立」(国交省)がある両市にとっ
て「折衷案」に落ち着いた。

 野村ダムの現行ルールでは、流入量が毎秒300トンを超えると、放流量はしばらく毎秒300トンで維持されるが、新ルール案では、流入量が300トンを超えても300トンに一定割合を加えた量を放流する。早い段階でより多くの水を下流に流す
ことで、 西日本豪雨の時のような大量放流による 西予市野村地区の浸水を避ける狙いがある。

 ただ、この運用自体は鹿野川ダムにより早く水がたまることになり、鹿野川ダム下流の大洲市にとっては被害軽減につながらない。鹿野川ダムの容量拡大によって大洲市では浸水世帯数が減る見込みだが、菅田地区ではその減り幅が場合によっては小さくなる。

  西予市幹部は「災害もあったので、全部とは言わないが、新たにできた容量の何割かは 西予市内のために使わせてほしい」と市の立場を説明する。大洲市幹部は「上流(西予市)も下流(大洲市)も『浸水を一軒でも少なくしてくれ』と言い合ったら収拾がつかない」と述べ、野村ダムの新ルール案に理解を示した。(大川洋輔)


◆野村ダム・鹿野川ダム
放流量増で洪水対応 操作規則変更へ案 国交省四国整備局 /愛媛

(毎日新聞愛媛版2019年4月18日)
https://mainichi.jp/articles/20190418/ddl/k38/010/466000c

 昨年7月の西日本豪雨を受け、野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の操作規則変更を検討していた国土交通省四国地方整備局は16日、規則の変更方針案を発表した。鹿野川ダムでの放流設備追加で洪水調節容量が増えたことなどに伴うもので、従来より放流量を増やして大規模洪水に対応する。西日本豪雨レベルを想定した試算では浸水世帯数は西予市野村町地区で約6%(40世帯)、大洲市東大洲、菅田、肱川の3地区では約16%(600世帯)に減るとしている。

 野村ダムは洪水の初期段階で放流量を増加させる。従来は洪水調節容量の4割に達するまで毎秒300トンを放流し、その後400トンまで引き上げていたが、変更後は流入量が300トンを超えた後は流入量に応じて放流量を300トンから増やしていき、最大で野村地区が浸水しない1000トンまで引き上げる。

 鹿野川ダムは洪水調節容量の4割に達するまで下流が浸水しない毎秒600トンを放流するのは従来通りだが、同容量の増加に伴い4割の値が660万トンから950万トンに増加。従来より長い時間、下流が浸水しない水準を保てる。その後貯水量増加に応じて増やす最大放流量は、一部で浸水被害が出るものの東大洲地区での被害は防げる850トンとしていたが、同地区の暫定堤防をかさ上げたため1150トンに引き上げる。

 ただ、両ダムともダムが満杯になる見通しの場合、西日本豪雨でも実施した「異常洪水時防災操作」を行い、流入量とほぼ同量を放流することになる。変更後の操作規則でも同操作を行う可能性はあるが、移行するまでの余裕ができ、浸水被害を軽減できるとしている。

 同整備局は5月16日まで大洲市や西予市の住民らから意見を募り、出水期までに正式に変更する。【中川祐一】


追記を閉じる▲

【2019/04/20 00:59】 | 未分類
トラックバック(0) |
        嶋津 暉之

経費削減のために自前で地下水を使う施設が増え、水道の料金収入が大幅に落ち込む事態が起きているという記事をです。
地下水規制地域でも通常は小口径井戸(ポンプの吐出口断面積6㎠以下)は規制対象外になっています。ポンプの能力向上で小口径井戸でも一日100㎥以上の地下水はくみ上げることができます。

病院、スーパー、私立学校などがこの規制対象外の小口径井戸を設置し、膜ろ過装置を通して地下水を利用する例が多くみられるようになりました。そのシステムの導入を一括受注するのが地下水ビジネスです。

ただし、東京都は小口径井戸に対して揚水量最大20㎥/日以下、平均10㎥/日以下、埼玉県は揚水量最大50㎥/日以下という制限を設けて、地下水ビジネスへの対応措置をとっています。  

◆水道料金、地下水に切り替えて節約→減収の自治体は悲鳴
(朝日新聞2019年4月17日10時00分)
https://digital.asahi.com/articles/ASM4J5WG8M4JULBJ00F.html

地下水の設備=厚生労働省の資料から→ こちら
   
 人口の減少や節水によって使用量が減る中、水道管の更新費用が負担となり、経営悪化が懸念される水道事業。運営する自治体はいま、新たな危機と向かい合ってい
る。経費削減のために自前で地下水を使う施設が増え、水道の料金収入が大幅に落ち込む事態が起きているためだ。

  静岡県磐田市の大型商業施設は3年前から地下水を使い始めた。衣料品や雑貨、インテリアの店舗のほか  フードコートも備え、年間約14万トンの水を使う。その半分程度を地下水に切り替えることで、水道使用量を減らしていた。

 一方、市水道局にとっては年1千万円余の減収だ。市の水道料金収入の0・5%前後で、一般家庭約200世帯の1年分にあたる。「市内で一、二を争う大口客。で
きれば水道を使ってほしかった」と担当者。

 今後は老朽化が進む水道管の更新などに多額の経費がかかり、経営は間違いなく厳しくなる。そこに大口客による地下水への切り替えが増えれば痛手になる。

 施設側にすれば、地下水を使い続ければ、切り替え時の整備費を含めても割安になる。災害時に複数の水源も確保できる。このため、今後も併用を続ける方針だとい
う。担当者は「市の水道料金は他の自治体と比べて低い方だが、それでも地下水を使うメリットがある」と話す。

 こうしたケースは各地で相次ぐ。 千葉県 流山市でも大口客の学校法人が6年前に地下水に切り替えた。水道の使用量は直前1年間と比べて4%に激減。市の料金収入は1千万円近く減った。

 背景には、比較的安価で地下水を導入できる技術の普及や災害への備えがある。全国に730以上ある災害拠点病院は、災害時の水の確保が要件になっているな
ど、井戸を整備して日常的に地下水を使うことも多い。地盤沈下を懸念して条例で規制する自治体もあるが、条例がない地域では制約が少ない。

 日本水道協会が昨年春に実施した調査では、回答した自治体などの水道事業者の46%にあたる187が、地下水を使い始めた施設を1件以上把握していた。200
8年度からの約10年間で計1195件。03年度からの約5年間では計676件で、増え続けていることがわかった。一方、地下水を使う施設を把握できていない事業
者も142(35%)あった。

 水道事業は原則、市町村が運営し、給水対象が5千人超の事業者では、経費を料金収入でまかなう「独立採算」が基本だ。水道は基本料金に加え、使えば使うほ
ど増える従量料金があるため、使用量が大幅に減れば経営への打撃は大きい。

 地下水を使う施設の場合、水道の契約も続けるため、水道事業者は給水設備を維持する義務もあり、コストを回収できなくなる。

 また、従量料金は一般的に大量に使うほど割高に設定され、その分、一般住民の料金が安く抑えられてきた。地下水利用が広まれば、一般住民の料金が高くなる恐れ
もある。

基本料金値上げで回収する自治体も

 料金改定をし、減収に歯止めをかけようと動き出した自治体もある。

  京都市は20年近く前から地下水に切り替えた施設の把握を続ける。昨年5月現在で70件。ホテル23件、病院23件、  百貨店・スーパー11件、学校4件などだった。

 市は6年前、水道料金を大幅に見直した。使わなくてもかかる基本料金を、大口客については、2カ月で数万円程度から最大約56万円に引き上げた。基本料金で必
要経費の回収を図る。市の担当者は「水道管の維持管理費がある程度、回収できるようになった」と話す。

 大型商業施設が地下水を使い始めた 磐田市は大口客の引き留めに躍起だ。昨年4月、水道料金を値上げしたが、大口客の値上げ幅は一般家庭の12・6%の半分弱に抑えた。
 大分市や北九州市、流山市などは大口客への割引制度を始めている。

 日本水道協会の調査では、08年度以降で地下水利用を把握した事業者の7割超で減収が推定年1千万円以上。5億円以上の事業者も5あった。協会は現状をふま
え、地下水に関する法規制や、施設側や利用者に一定の負担を求める仕組み作りなどを国に求めている。(富田洸平、阿部彰芳)


追記を閉じる▲

【2019/04/19 01:56】 | 未分類
トラックバック(0) |
    嶋津 暉之

国際政治学者による水道民営化問題の論考をお送りします。
フランスとドイツを対比して次のように書かれています。重要な指摘であると思います。住民の参画、監視が必要です。
フランスとドイツの違いを生んだ背景として、地方自治の制度上の差がある。日本以上に中央集権色が強いフランスでは、自治体に対する住民の働きかけが弱く、これが結果的に、問題の目立つコンセッション方式を存続させる一因になってしまった。これに対しドイツは、連邦制であることも手伝って住民の地方政治への関心が高い。自治体には住民の監視の目が光り、パフォーマンスの悪いサービスは存続が難しくなる。

◆海外メジャーが熱視線、安くて安全な「日本の水」は守られるのか
(読売新聞 2019/4/17(水) 7:09配信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190417-00010000-yomonline-soci

 水道事業の民間参入に道を開く改正水道法が成立した。予算や人手の不足により、各地で水道事業が危機に瀕(ひん)しているが、法改正だけが先行し、民間参入のメリット、デメリットや水道の将来像に関する議論は不十分なままだ。このままで、安くて安全な「日本の水」を守れるのか。世界の水ビジネスの現状が日本で十分知られていないことに危機感を持ち、最近、著書『日本の「水」が危ない』を出版した国際政治学者の六辻彰二さんに寄稿してもらった。

オーナーとマネジャーの関係

 昨年12月の改正水道法の成立は、日本の水道にとって大きな節目となる出来事だった。この法改正で、水道事業に民間企業が参入する法的な枠組みが、ほぼ完成したからだ。
 もっとも、公営が当たり前だった水道事業に民間参入を促す改革は、昨日や今日に始まったことではない。20年にわたる改革の積み重ねの結果でもある。
 改革の出発点は、バブル崩壊後に構造改革の必要が叫ばれる中、1999年に成立した「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」だった。
 改正水道法で想定される民間参入の形態は、2011年のPFI法改正で導入された「コンセッション方式」である。公共施設の所有権を自治体が保有し続け、経営を民間企業に委託するもので、自治体と民間企業が店舗経営などにおけるオーナーとマネジャーの関係になる。所有権も民間に譲渡したJRやNTTなどの場合とは形態が違う。
 水道事業を民間に委託するかどうかの決定は自治体に委ねられているが、コンセッション方式を普及させるため、政府は多くのお膳立てをしてきた。13年には100億円以上を拠出して、民間企業の参入を促す官民連携インフラファンドを発足させている。
 今回の法改正は、自治体の垣根を越えた水道事業の広域化を市町村に促すことに主眼が置かれているが、同時にこれは民間業者が参入した場合に利益をあげやすくするためのものでもあり、一連の改革はこれをもって一段落ついたといえる。

先行きが不安な日本の水

 なぜ、水道事業に民間企業の参入を促すのか。これに関して政府は、水道事業の存続が危ぶまれている点を強調している。
 日本の水道は、料金の安さ、普及率、メンテナンスの質の高さなどで、世界屈指の水準にある。国土交通省の調べによると、水道水をそのまま飲める国は世界で13か国しかなく、日本はそのうちの一つだ。一方で例えば、東京の水道料金は、ニューヨーク、ロンドン、パリなどのおよそ半分の水準にとどまる。
 ただし、世界に誇れる安くて安全な「日本の水」は、非常にもろい基盤の上に立っている。国内のあらゆるインフラと同様、水道も老朽化が進んでおり、法律で定められた耐用年数を過ぎた水道管は全体の約15%に上る。
 しかも、耐震補強された水道管の割合は37%程度にとどまる。昨年6月に大阪北部地震が起きた時には最大9万戸が断水した。この一方でメンテナンスに投じる資金は不足しがちで、1998年に1兆8000億円を超えていた水道事業関連の投資額は、2013年には1兆円を割り込んでいる。
 投資に向ける資金が十分でない背景には、人口減少がある。水道事業は独立採算が原則だ。全体の水道使用量が減れば、本来、1世帯当たりの負担額は増えるはずである。ところが、水道が危機的状況にあるという認識は広く共有されておらず、料金の大幅な引き上げには抵抗も大きい。その結果、必要な投資を行うための資金が不足するのである。
 この状況を打開する切り札として、政府は民間の参入を促している。民間業者に業務を委託することで、経営が効率化され、資金や人員の不足分を補うことが期待できる。自治体の財政負担は軽減され、利用者には質の高いサービスが提供できるというのが、政府の描いた青写真だ。
 ただし、水市場の開放によって参入が見込まれるのは、日本企業だけではない。水道事業への民間参入は世界各地で進んでおり、水道経営に特化した企業も珍しくない。
 とりわけ「水メジャー」と呼ばれる欧米の巨大な水企業にとって、水道の公営が長く維持されてきた日本は、将来の可能性を秘めた「未開拓地」である。

 これから水道を普及させる必要がある発展途上国とは違って、日本ではすでに完成した水道システムが利用できる。トイレでは温水便座を使い、毎日風呂に入るなど、水を多く使う日本人の生活習慣も、水メジャーには魅力的に映る。日本の水道料金は世界的に見れば割安だが、これは値上げの余地があるということでもある。
 このように、日本の水市場は水メジャーにとって「おいしい」市場になる可能性がある。水道法の改正に先立ち、フランスのヴェオリア社やスエズ社など、著名な水メジャーのいくつかはすでに日本に上陸している。

フランスとドイツ、どこが違うのか

 日本では水道事業にコンセッション方式を導入する仕組みがほぼでき上がったわけだが、海外に目を向けると、単純に市場原理を導入したところでは、むしろマイナスの影響の方が大きいことがわかる。
 例えば、1980年代から水道事業にコンセッション方式を導入しているフランスでは、上水道の30%、下水道の24%を民間業者が経営している。
 民間企業が参入した後、まず起きたのは水道料金の高騰、水質の悪化である。また、民間業者が民間からの投融資で資金を調達すれば、配当や利払いの負担が大きくなり、これが最終的には水道料金に跳ね返ってくる。そうすると結局、料金を抑えるために資金を拠出するのは公的機関ということになる。フランスでは資金の90%近くを公的機関が拠出しており、自治体の財政負担を減らすという当初のもくろみは達成できていない。
 これらに対する不満が高まった結果、2000年から14年にかけて、49の自治体で水道事業が「再公営化」された。そこには、首都パリが10年にヴェオリアやスエズとの契約期間の終了段階で、契約を更新しなかったという事例も含まれる。

 期待された結果が得にくい大きな原因は、透明性の低さだ。フランスでは民間業者を監督する専門機関はなく、民間が設定した価格が妥当かどうかを自治体が判断する基準もない。規制の緩さは民間業者の裁量の余地を大きくする。事業の効率化などが期待できる反面、民間業者による水増し請求や安全管理の手抜きの温床にもなっている。
 実際、パリ市が02年に行った監査では、経済的に正当化できる水準を25~30%も上回る料金が設定されていた。

 もちろん、民間参入の全てに問題があるわけではない。例えば、ドイツでは上下水道の64%が民間業者によって経営されているが、2000年から14年までの間に再公営化されたのは8自治体と49自治体のフランスより少ない。加えて、料金の上昇率もインフレ率を下回り続け、水道の水をそのまま飲める13か国の中にも入っている(フランスは入っていない)。
 ドイツの場合、コンセッション方式ではなく、自治体と民間が資金を出し合い、水道管理会社を設立する手法が一般的だ。この仕組みでは事業者の裁量の余地は大きくないが、監督者である自治体との間の情報格差は小さく、監査などが実質的なものになるというメリットがある。その一方で、ドイツでは事業者のパフォーマンスを他の企業と比較するベンチマーキングと呼ばれる制度が導入されている。これによって業務の効率化を促し、ムダをなくす仕組みが出来上がっているのだ。
 フランスとドイツの違いを生んだ背景として、地方自治の制度上の差がある。日本以上に中央集権色が強いフランスでは、自治体に対する住民の働きかけが弱く、これが結果的に、問題の目立つコンセッション方式を存続させる一因になってしまった。これに対しドイツは、連邦制であることも手伝って住民の地方政治への関心が高い。自治体には住民の監視の目が光り、パフォーマンスの悪いサービスは存続が難しくなる。

日本がとるべき道

 日本に目を転じると、施設の老朽化や人口減少が進む中、これまで通りの水道経営では持続性が疑わしい。とはいえ、公営が常に最上と言えないのと同様、単純な民間委託も万能薬とは言えない。
 ムダをなくし、利用者の満足度を引き上げるうえで重要なのは、公営か民営かという経営主体の問題ではなく、いかに透明性を高め、水道事業者の監督を実質的なものにできるか、いかに利用者にとって水道事業を可視化できるかにある。
 これにかんがみると、改正水道法は心もとない。政府は水道事業に民間参入の道を開くことに腐心してきたが、その裏返しで、民間業者を監督する専門機関の設置はおろか、ドイツのようなベンチマーキングの導入も想定されていない。
 近年、日本のメーカーで相次いで発覚した品質偽装の例を挙げるまでもなく、適切な監査・監督がないまま民間企業に自由な活動を認めれば、法令遵守は絵に描いた餅になりやすい。都道府県や市町村のほとんどはコンセッション方式の導入に消極的だが、その一因はこうした制度的な欠陥を見抜いているからでもある。

 また、施設の老朽化という問題は、ただ民間が参入すれば解決するものでもない。民間参入を促すのであれば、政府には制度の綿密な設計が不可欠である。
 その一方で、利用者の側にも課題はある。ドイツの例にみられるように、自治体が水道事業のパフォーマンスを向上できるかは、最終的には利用者である住民の関心の高さがカギとなる。日本では首長選、議会選など地方選挙の投票率が3割前後にとどまることも珍しくなく、地方政治が話題になる機会は少ない。利用者の関心が低ければ、水道の危機そのものが放置されることになりかねない。住民が地元への関心や自治意識を持つことが、水道の持続性を高めるための第一歩といえるだろう。

六辻 彰二( むつじ・しょうじ )

筆者プロフィル

 国際政治学者。1972年生まれ。96年、横浜市立大学文理学部卒業。2001年日本大学大学院国際関係研究科博士後期課程単位取得満期退学。国際政治、アフリカ研究を中心に領域横断的な研究を展開。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教壇に立つ。今から25年以上前、研究のため訪れたアフリカで、安全に飲める水道水がいかに貴重であるかを実感。著書に『日本の「水」が危ない』(ベスト新書)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)などがある。




追記を閉じる▲

【2019/04/19 01:51】 | 未分類
トラックバック(0) |
       嶋津 暉之

滋賀県の三日月大造知事が凍結中の大戸川(だいどがわ)ダムの建設を容認する方針を表明したことについて、嘉田由紀子・前知事の談話が掲載された記事、ニュースがありました。
2008年に4府県が凍結を求めたときは嘉田さんのほかに、大阪府橋下徹知事、京都府山田啓二知事もダム反対の意見を表明していました。
今後は大阪、京都の後継知事たちにかかっています。

◆「脱ダム」嘉田前知事、建設容認に疑問表明 滋賀・大戸川ダム
(毎日新聞2019年4月16日 21時31分)
http://mainichi.jp/articles/20190416/k00/00m/040/269000c

 国が計画し、建設が凍結されている大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)を巡り、滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、建設を容認する方針を正式発表した。一方、2008年に京都、大阪、三重各府県知事とともに建設の凍結を求める共同見解を発表した嘉田由紀子前知事も同日、会見し、三日月氏の判断に疑問を呈した。

 国は嘉田氏ら4府県知事の共同見解を受け、09年に大戸川ダムの事業凍結を決定した。その後、国土交通省近畿地方整備局は16年2月、治水対策としてダム建設が有利とする評価案を公表。滋賀県が独自に設けた勉強会も今年3月、ダムの治水効果を認める報告をまとめた。

 会見で三日月知事は、勉強会の報告を引き合いに「一定の治水効果があることが分かった。近年、全国で発生した豪雨でも、備えの重要性が認識されている」と方針転換の理由を説明した。ただ、嘉田氏が進めた、ダムだけに頼らない「脱ダム」路線には「方針は継続したい」と強調した。

 一方、嘉田氏は会見で「ダムに一定の治水効果があることは、以前から分かっている。ダムは副作用もたくさんあり、必要性は費用や環境への影響、維持管理のあり方などを含めて総合的に判断すべきだ」とし、三日月知事の判断に疑問を呈した。三日月氏は引退した嘉田氏の後継として14年に初当選。18年にはダム建設に賛成する自民党の支援も受け、再選した。

 一方、大阪府の吉村洋文知事は報道陣に「大阪府は河川の治水を強化して府民の命を守るという方向で進めてきた。巨大な公共事業であるダムがどれだけ効果があるのか検証しなければならない」と述べ、独自の検証委員会を発足させる考えを明らかにした。

 京都府の西脇隆俊知事は「コメントする立場にないが、滋賀県の動きを見守りたい」との談話を発表した。【北出昭、成松秋穂、津久井達】

◆「滋賀県には大戸川ダムは必要」三日月知事はなぜ今方針転換?
(毎日放送2019/4/16(火) 17:19配信)

 16日朝、大戸川ダムの建設が滋賀県には必要だと語気を強めた三日月知事。計画が凍結されてから10年ぶりの方針転換を示しました。

 淀川の上流にあたる大戸川では、下流の洪水を防ぐ目的などからダムを建設する計画があり、1968年に国の予備調査が始まりました。しかし2008年…

 「地域が責任をもって川との関わりを生み出していかなければならない」(滋賀県嘉田由紀子知事・当時)
 「机の上で治水の教科書を広げて地図を広げて、治水だけのことを考えながら判断したと。どちらを府民県民の皆さんが支持するかどうか」(大阪府橋下徹知事・当時)

 2008年、滋賀県の嘉田知事や大阪府など4府県の知事が「優先度が低い」として反対意見を表明したのです。当時は「コンクリートから人へ」を掲げた民主党による政権交代が目前に迫っていた時代。国は建設の凍結を決めました。

 しかし、嘉田前知事の後継者とされる三日月知事は、去年5月からダムの治水効果などを検証する勉強会を開いていて、その検証結果から「ダムが必要」と認識したということです。

 しかしこの動きに、嘉田前知事が疑問を呈しました。

 「ダムは副作用もたくさんあるから、総合的な見方が必要ですねと一般論で言っている。ダムだけに頼らない流域治水こそ今の時代、最も必要だと」(嘉田前知事)

 さらに、吉村大阪府知事も。

 「滋賀県知事が現時点でダム容認となったから、大阪府知事としてもすぐ容認するかといえばそういう考え方ではないです。専門家も交えてその効果を検証したい」(吉村大阪府知事)

 三日月知事は、今後京都府や大阪府などの知事らに説明をしていくとしていますが、1000億円を超える大戸川ダムの事業費の3割は地元自治体が負担することになっていて、凍結が解除されるかは不透明なままです。



追記を閉じる▲

【2019/04/19 01:46】 | 未分類
トラックバック(0) |
       嶋津 暉之

既にお伝えしたことですが、建設凍結中の大戸川ダム(大津市)について滋賀県の三日月大造知事が今日の記者会見で「知事として大戸川ダムは必要であると考える。本体工事の早期整備を望む」と述べ、国に建設の推進を求める意向を表明しました。
記事をまとめて紹介します。

2014年に嘉田由紀子・前知事の後継者になった時から、三日月氏はダム推進に方針転換するつもりであったに違いありません。
嘉田由紀子・前知事の談話がどこかに載っていないかと思いましたが、見当たりませんでした。
嘉田さんはひどく立腹されていると思います。
 
◆工事凍結の大戸川ダム建設求める意向 滋賀県知事「治水に必要」
(京都新聞 2019年04月16日 12時14分)
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190416000048

 国が本体工事を凍結している大戸川ダム(大津市)について、滋賀県の三日月大造知事は16日の定例記者会見で、「知事として大戸川ダムは必要であると考える。本体工事の早期整備を望む」と述べ、ダムの治水上の必要性を認め、国に建設の推進を求める意向を表明した。滋賀、京都を含む4府県が求めた「凍結」解除に向けて今後、下流府県に働き掛ける。県が独自に実施した勉強会の検証結果を踏まえて判断した。

 三日月知事は「全国各地で毎年のように豪雨が発生し、大きな災害への備えが指摘されている。県民の命は何より重い。実施時期を早期に検討するよう求める」と述べ、国に整備計画の変更手続きを急ぐよう求める考えも明らかにした。

 県が専門家を交えて設置した勉強会(座長・寳馨(たからかおる)京都大大学院教授)は3月、ダムが大戸川流域の水害被害を一定軽減させ、豪雨時の瀬田川洗堰(大津市)の全閉操作や制限放流の時間短縮につながる、との見解を示していた。

 三日月知事は「事業進捗や環境の変化を踏まえ、県に与える影響を科学的に検証した。一定の治水効果が期待できる」と、大戸川ダムの効果を強調した。

 大戸川ダムを巡っては、嘉田由紀子前知事が2008年12月、国の河川整備計画の策定に際し、山田啓二前京都府知事や大阪、三重両府県とともに「施策の優先順位が低い」として「凍結」を求めることで合意した。国は09年3月、計画にダム建設を盛り込んだ上で、河川改修の状況や影響を検証しながら「実施時期を検討する」としていた。

 ダムの必要性を主張してきた自民党は17年12月、県議会で4府県知事合意の撤回を求める決議を賛成多数で可決させた。

 県は知事合意から10年が経過し、桂川(京都市)や天ケ瀬ダム(宇治市)の再開発など下流の整備が進み、豪雨が続いていることを踏まえ、勉強会を設置。三日月知事は昨年5月、就任後初めて建設予定地を視察し、11月には集団移転を強いられた旧大鳥居地区の集落跡地を訪れていた。

 三日月知事はダム事業に否定的な嘉田前知事の後を継ぎ、「ダムだけに頼らない治水」を掲げてきた。会見では「ソフト、ハード両面で事前の備えや情報提供を含めた対策が必要だ。私の考えに変わりはない。今後もその考えをしっかり強化していく」と述べた。
 
◆滋賀県知事、ダム建設容認に方針転換「大戸川は必要」
(朝日新聞2019年4月16日12時21分) 
https://digital.asahi.com/articles/ASM4J3HRXM4JPTJB007.htm

国が建設を凍結している淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、滋賀県の三日月大造知事は16日の定例会見で「ダムは必要。早期整備を(国に)望む」と述べ、建設を容認する方針を表明した。同ダムをめぐっては、2008年に同県の嘉田由紀子前知事と大阪、京都、三重の各府県知事が建設凍結を求める意見を共同で表明し、国が事業を凍結しており、これまでの方針を転換した。

 大戸川ダムは1968年、国が多目的ダムとして建設を計画。総事業費は約3500億円。約1160億円の本体工事費は国が7割、残りを滋賀県と下流域の大阪府、京都府が負担することになっていたが、これに3府県の知事が反発していた。

 三日月氏が滋賀県知事に就任後の17年12月、自民党や公明党などの賛成多数で、大戸川ダムの早期着工を求める決議案が県議会で可決された。これを受け、県は昨年5月から勉強会を立ち上げ、専門家らを交えてダムの治水効果などを検証していた。三日月氏は昨年6月の知事選で自民や公明などの支援を受けて再選した。(山中由睦〈よしちか〉、真田嶺)


◆滋賀県、大戸川ダム容認 知事が方針転換「住民の安全に必要」 
(産経デジタル 2019.4.16 12:21)
http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/190416/plt19041612210020-n1.html

 国が建設を凍結している大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)をめぐり、滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、「住民の安全、安心のためには必要だ」と述べ、ダム建設を容認する意向を表明した。大戸川ダムをめぐっては平成20年、当時の嘉田由紀子知事が三重、京都、大阪の3府県の知事とともに建設中止を求める意見書を国に提出、21年に国が事業凍結を決めていた。

 三日月知事は「(県が設置した)勉強会で一定の治水効果があることが分かった。県民の安全を守るため、国には早期整備を望む」と述べた。嘉田氏の後継として26年に初当選した三日月氏だが、ダムだけに頼らない治水を進める「脱ダム」路線を掲げた嘉田氏の方針を転換する。今後、国と各府県に滋賀県の立場を説明するが、足並みがそろうかが焦点となりそうだ。

 大戸川ダムは大津市南部を流れる大戸川の中流に国が建設を計画した治水専用のダムで、総貯水容量は約2210万立方メートル。事業凍結の決定後、各地で豪雨災害が相次いだことなどもあり、滋賀県は昨年5月にダムの治水効果を検証する独自の勉強会を設置した。

 今年3月に勉強会が大戸川流域の氾濫を抑制したり、遅らせたりするなどの効果があるとの報告をまとめ、三日月氏は「できるだけ早期に政策判断したい」との考えを示していた。


◆大戸川ダム 復活の足音 滋賀知事が建設容認
(日本経済新聞2019/4/16 20:23)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43815440W9A410C1LKA000/
 
滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、国土交通省が本体工事を凍結中の大戸川ダム(大津市)の建設を容認する方針に転換した。洪水対策に一定の効果があると判断したためだ。環境への影響などを理由に、同県とともにダム建設に反対した大阪府と京都府の対応が焦点となる。

三日月知事は「将来にわたって県民の命を預かる責任から、ダムは必要であると判断し、国に対して早期の整備を望む」と述べた。今後、国や淀川流域の京都府や大阪府に対して、県の考えを説明する。日程は「現時点では未定」とした。

県が設置した有識者をまじえた勉強会で、大戸川と琵琶湖に治水の効果があるという結論を踏まえた判断だ。ただ、琵琶湖への水位抑制効果は限定的とされる。

2008年、淀川水系に関係する大阪、京都、滋賀、三重の4府県は同ダム建設に反対。国交省は09年3月に策定した淀川水系の河川整備計画で、本体工事の凍結を盛り込んだ。滋賀県が建設を容認しても下流域の大阪府、京都府が同調しなければ本体着工できない。

同日、大阪府の吉村洋文知事は「まず滋賀県からの報告を受けたい。府独自の専門家委員会を立ちあげて方針を決める。府の負担に見合うか検証し、すぐには容認しない」と述べた。

京都府の西脇隆俊知事は「滋賀県内に及ぼす効果を県が検証されたものと認識している。県の動きを見守りたい」とのコメントを出した。いずれも現時点での判断は控えた格好だ。

今後の判断材料の一つが財政負担だ。ダム事業費の負担割合は大阪府が17%、京都府が12%、滋賀県の1%に比べて多い。現時点で全体事業費は1080億円だが、18年3月末時点で付け替え道路の建設などに710億円が支出済み。本体工事で事業費が膨らめば、自治体の負担額も増える。

ただ、建設反対で一枚岩だった08年当時と府県の政治情勢は変化している。環境への影響などを理由に反対を強く主張した滋賀県の嘉田由紀子知事のほか、大阪府の橋下徹知事、京都府の山田啓二知事はいずれも退任。京都府は国交省出身の西脇知事が就任した。

滋賀県知事の方針転換は、いったん中止の方針だったダムの建設が復活する芽が出てきたといえそうだ。

▼大戸川ダム 大津市で国交省が建設を計画している治水ダム。事業費は1080億円だが、増える可能性がある。当初は大阪府、京都府、大津市が水道水用の水源確保のために事業費を負担していたが、水需要が伸びず撤退し、国交省もいったんは中止の方針に傾いた。その後、流水型(穴あき)ダムとして復活したのに滋賀県などが反発して凍結、という複雑な経緯をたどっている。

ダム建設の容認を表明した滋賀県の三日月大造知事(16日、大津市)
 

◆三日月知事“大戸川ダムは必要”
(NHK 2019/04月16日 11時54分)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20190416/2060002430.html

建設計画が凍結されている大津市の大戸川ダムについて、三日月知事は「治水の効果があり、必要だと考える」と明言し、早期の建設を求めていく姿勢を示しました。
およそ10年前に滋賀県など4府県の知事が示した建設計画の凍結の方針を転換することになります。

大戸川ダムは、大津市の南部を流れる大戸川の中流域に国が建設を計画しましたが、平成20年に滋賀県など4つの府県の知事が異議を唱え、計画が凍結されています。
三日月知事は16日の記者会見で、「治水の効果なども考え、県民の命を守るためにも滋賀県に大戸川ダムは必要だ」と明言しました。
そのうえで、ダムの早期建設が進められるよう知事としての考えを国や下流にある自治体に説明していくと述べました。
大戸川ダムについては、去年5月から県が専門家を招いて勉強会を開き、「治水の効果がある」という意見が出ていて、三日月知事は全国各地で豪雨災害などが相次いでいることを踏まえ、必要性を判断したとしています。
三日月知事がダムの必要性を示したことで、4つの府県知事が合意した凍結の方針を転換することになります。

【大戸川ダム 経緯】
大戸川ダムは、甲賀市から大津市南部を流れる大戸川の中流に建設するため、国が昭和53年に調査を始め、平成3年に基本計画を示しました。
下流の大阪府を流れる淀川の洪水防止が目的です。
万一、淀川が決壊すれば周辺の町に大きな被害が出るおそれがあります。
そこで上流で少しでも水の量を抑えようと計画され、ダムをつくれば京都府を流れる宇治川の洪水対策にも効果があるとされてきました。
総貯水量は2210万トン、総事業費は1080億円です。
このうち国が7割を支払い、3府県で残りの3割を負担することになっています。
その後、国は平成19年に河川整備計画案の中に大戸川ダムを含む4つのダムについて建設計画を示しました。
しかし、この計画案を公表すると、平成20年、当時の滋賀県の嘉田由紀子知事や大阪の橋下徹府知事、京都、それに三重の4府県の知事が「河川の整備計画での優先順位は低い」としてダム建設の中止などを求めて合意しました。
そのよくとし、国は建設計画を凍結したのです。
三日月知事は平成26年に初当選しましたが、平成27年には栃木県や茨城県など関東での豪雨、おととしの九州北部豪雨、去年の西日本での豪雨と全国各地で豪雨災害による被害が相次ぎました。
こうした中、おととし、滋賀県議会で「一日も早く大戸川ダムの整備を求める」とする決議が賛成多数で可決されたため、県は勉強会を開いて、ダムの効果や影響を検証することになりました。
去年から3回にわたって専門家の意見などを聞いたところ、大雨が降った際にダムが大戸川の氾濫を遅らせ、住民の避難時間を確保できるなどの検証結果が示され、専門家からは「治水の観点からはダムがあったほうがよい」といった意見が出ていました。
先月、勉強会が終了し、長年凍結されたままだった大戸川ダムの建設の是非について、かつて建設が中止されたあと一転して工事が再開された群馬県の八ッ場ダムのように、三日月知事がどのように判断するのか注目されていました。

【大戸川ダム事業費】
大戸川ダムの事業費の1080億円は、国のほか、計画凍結の合意をした4府県のうち三重県を除く3つの府県が分担することになっています。
国の負担を除く324億円のうち、▼大阪府は半分以上の186億円余り、▼京都府は4割近くを占める128億円余り、そして▼滋賀県は2%余りの8億円余りとなります。
滋賀県の三日月知事は16日の方針表明の中で、今後、大阪や京都など下流にある自治体の知事に県としての考えを説明するとしていて、費用の負担についても理解を求める必要があるとみられます。
三日月知事は、国がダムの建設を進められるよう工事の実施時期を早期に検討し、そのうえで河川整備計画について必要な変更手続きに着手するよう求めていきたいと話しました。

【ダム推進の会長“計画の第一歩”】
三日月知事が大戸川ダムの早期建設を求める方針を示したことについて、建設を推進する団体の山元和彦会長は、「きょうまでの年月は『失われた10年』といえますが、知事の前向きな発言はこう着状態にあったダムの建設計画が進む第一歩になると思います。県にはダムの建設が地域の安全・安心や下流域の減災につながるという構想を持ち続け、計画に取り組んでほしい」と話していました。


◆大戸川ダム、事業賛同表明へ 滋賀知事、凍結方針覆す
(中日新聞2019年4月16日 09時00分)
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019041690090033.html?ref=hourly

 滋賀県の三日月大造知事は、国が2009年から建設を凍結している大戸(だいど)川ダム(大津市)を巡り、事業復活に賛同する方針を固めた。16日に発表する。三日月知事を後継に指名した嘉田由紀子前知事をはじめ三重、京都、大阪の4府県の知事が国に中止を要望して事業ストップに追い込んだ経緯があるが、こうした方針を覆すことになる。

 三日月知事は昨年、国内各地で豪雨災害が相次いだことを受け、同ダムの治水効果を検証する県独自の勉強会を設置。今年3月まで3回開き、大戸川流域の氾濫を抑制したり遅らせたりする効果があるとの結論を得た。昨年5月には建設予定地を初めて視察していた。

 国土交通省近畿地方整備局は16年、「治水には大戸川ダムは有効」とする見解を示していた。事業復活には、凍結を求めた4府県に兵庫、奈良を加えた6府県の知事の賛同が必要になる。3日月知事は今後、国や近隣の知事に、滋賀の立場を説明するとみられる。

 大戸川ダムを巡っては、国が1968年に多目的ダムとして予備調査を始めたが、水需要の低下を受けて2005年に事業を凍結。07年に治水専用として事業を復活させたが、4府県の要望を受けて09年に再び�凍結した。総貯水容量は2210万立方メートルで、総事業費は1163億円。

 嘉田前知事の後継として出馬した三日月知事は14年7月に初当選し、現在2期目。県議会は17年12月、知事に対し、大戸川ダムの工事着工を目指して国や下流府県に働き掛けるよう求める決議を、最大会派の自民や公明などの賛成多数で採択していた。自民は昨年6月の知事選で三日月知事を支援し、知事与党となっていた。

◆「大戸川ダム」建設容認を正式発表 滋賀県知事
(毎日新聞2019年4月16日 11時48分)
https://mainichi.jp/articles/20190416/k00/00m/040/080000c

 国が大津市に建設を予定し、計画が凍結されている治水専用の大戸川(だいどがわ)ダムを巡り、滋賀県の三日月大造知事は16日午前の記者会見で、建設を容認する方針を正式発表した。三日月知事は「近年、全国で発生した豪雨でも、備えの重要性が認識されている。大戸川ダムは必要で早期整備を求める」と述べ、計画の凍結解除に前向きな姿勢を示した。

 大戸川ダムを巡っては2008年、当時の嘉田由紀子知事が京都、大阪、三重各府県知事とともに建設の凍結を求める共同見解を発表。国は09年に事業凍結を決めていた。

 しかし、国土交通省近畿地方整備局は16年2月、「ダム建設がそれ以外の治水対策より有利」とする評価案を公表。滋賀県が治水効果などを検証するため独自に設けた勉強会も今年3月、氾濫の抑制などダムの効果を認める報告をまとめていた。

 三日月知事は勉強会の報告を引き合いに「一定の治水効果があることが分かった」と方針を転換した理由を説明。ただ、嘉田氏が進めた、ダムだけに頼らない治水を進める「脱ダム」路線については「ダムだけに依存しない方針は継続したい」と強調した。1000億円以上の本体工事費の3割を滋賀、京都、大阪の3府県が負担することから「国や各府県にも、滋賀県の考え方を説明していきたい」と述べた。【北出昭、成松秋穂】

 


追記を閉じる▲

【2019/04/16 22:40】 | 未分類
トラックバック(0) |
    嶋津 暉之

予想されていたことですが、建設凍結中の大戸川ダム(大津市)について滋賀県の三日月大造知事がダム建設を容認する方針を固めました。

三日月知事は大戸川ダムの凍結解除を大阪、京都、三重の府県知事に求めていくと思われます。
三日月氏は2009年の民主党政権発足時に、ダム問題担当の国土交通政務官(後に副大臣)でしたが、河川官僚による事業推進のためのダム検証を容認しました。
三日月氏は嘉田由紀子・前知事の後継者なのですから、大戸川ダムの凍結方針を守らなければならないはずなのですが、やはり駄目でした。

◆計画凍結中の大戸川ダムを容認へ 滋賀県知事が方針転換
(毎日新聞2019年4月16日)
https://mainichi.jp/articles/20190415/k00/00m/040/229000c

 国が大津市に建設を予定し、計画が凍結されている淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダムを巡り、滋賀県の三日月大造知事はダムの建設を容認する方針を固めた。16日午前の記者会見で方針を説明する。大戸川ダムを巡っては2008年、当時の嘉田由紀子知事が京都、大阪、三重各府県知事とともに建設の凍結を求める共同見解を発表。国は09年に事業凍結を決めていた。

 大戸川ダムは治水専用ダムで、総貯水容量は約2200万立方メートル。1968年に国が予備計画調査に着手したが、08年に国土交通省近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果が限定的」として建設見直しを提言。嘉田氏や橋下徹・大阪府知事(当時)らが共同見解を発表し、事業凍結に追い込まれた。現在は周辺の県道付け替えなどが行われているが、本体工事には着手していない。
 滋賀県は昨年5月から、大戸川ダムの治水効果などを検証する独自の勉強会を設置。今年3月には、氾濫の抑制などダムの効果を認める報告をまとめていた。これを受け、三日月知事は大戸川ダムに一定の効果があると判断。嘉田氏はダムだけに頼らない治水を進める「脱ダム」路線を敷いてきたが、その方針を転換することを決断した。

 ただ、1000億円以上の本体工事費の3割を滋賀、京都、大阪の3府県が負担することになっており、実際に事業の凍結が解除されるかは不透明。三日月知事は勉強会の検証結果を踏まえ、他府県に滋賀県の立場を説明する方針だ。【北出昭】


追記を閉じる▲

【2019/04/16 15:01】 | 未分類
トラックバック(0) |
    嶋津 暉之

四国の吉野川本川上流に総貯水容量3億1600万立方メートルの早明浦ダム(さめうらダム)があります。
そこには高知県の大川村と旧本川村があります。この大川村と旧本川村についての記事をお送りします。
現在の人口は大川村399人、旧本川村452人です。
高知県統計書によれば、1960年の人口は大川村4076人、旧本川村2414人でした。
山村のほとんどは過疎化の問題に直面していますが、ダム建設が過疎化に拍車をかけたに違いありません。

◆違う道歩んだ「きょうだい村」 平成の大合併が残した今
(朝日新聞 2019年4月14日09時00分)
https://digital.asahi.com/articles/ASM4F3HR3M4FUTIL003.html?iref=pc_ss_date

 議員のなり手が不足し、有権者全員で物事を決める「町村総会」を検討して注目を集めた人口約400人の高知県大川村。かつてその隣に「きょうだい村」と呼ばれた村があった。その名も、一文字違いの本川村(ほんがわむら)。平成の大合併で本川村は、いの町の一部になったが、合併できなかった大川村は、村として残った。村が残る意味はなんだろう。二つの村をたどった。

 旧本川村も大川村と同じく四国山脈の中にある。高知市からは車で約1時間半、国道194号をひたすら上るとたどり着く。秋は紅葉が美しく、渓谷に流れる清流がまぶしい。

豊かだった村が

 本川村がなくなって15年。合併前からある社会福祉協議会の広間には毎週火曜と金曜、高齢者が集まり、体操などを楽しむ。

 お友だちとおしゃべりをしていた山中君江さん(88)は「以前は豊かな村やった。でも、山奥やし(本川地区へのサービスが)後回しになるのは仕方ない」と言う。隣にいた長谷川知(さとる)さん(89)も「町の広報が回ってきても本川のことを書いちょらん」。本川村時代の議会定数は10だったが、いま、本川地区から出ている議員は2人。村で毎年開かれた「健康まつり」も、いまは町の中心部まで行かなければ参加できない。

 村はダム建設や林業で栄え、1960年ごろ、2500人がいた。発電所の固定資産税で財政も豊かだった。75歳以上の住民に村から月2万~3万円の「年金」が支給され、婦人会の旅行には1人5千円の補助も出た。

 その後、高齢化が進み、2000年には人口800人足らずに。キジの飼育やワサビ栽培など産業育成を試みたが、村を支えるほどには育たなかった。村が積み立てた基金も減り、合併話が進んだ。

 当時の村職員で合併協議会事務局長を務めた本山博文さん(70)は「金があるうちの方が対等に合併できると考えた」と言う。合併相手の2町村に「村内の診療所の維持」「高齢者向け無料デイサービスの維持」を求め、この条件で合意。いまも診療所は残り、デイサービスは無料ではないが、弁当やおやつ、送迎込みで1回千円。

 「山奥の村は移住者を呼び込むにも限界がある。合併しなければ福祉サービスを維持できたか、わからない」と本山さん。一方で、「地域を盛り上げる計画づくりの知識がある職員がおらん」と歯がゆい思いもある。

 合併の2年前、「バーチャル本川村」がネット上に登場した。高知市で出版会社を営む運営者の細迫節夫(ほそさこせつお)さん(70)によると、村外の人に仮想の「村民」として登録してもらい、掲示板に村おこしのアイデアを募った。「村民」は海外からも登録があり、最大1千人に達した。空き家を借りて活動拠点になる「村役場」とし、そこで「村民」の集会も開いた。

 しかし、ネット上の村の活動も次第に下火になった。「村外の人が村おこしをすることは難しかった」。細迫さんは振り返る。

 「平成の大合併」で、3千を超えていた市町村は1700あまりに減った。大東文化大の島田恵司教授(自治体政策論)は国勢調査のデータをもとに「合併後、中心部から離れた旧町村部で人口が減ることがある」と指摘する。本川地区の人口は500人を切り、高齢化率は56%に上る。

残る結いの文化

 一方の大川村。議員のなり手不足に悩み、議会を廃止して有権者全員による「町村総会」を検討した。

 大川村でも近隣2町との合併話が浮上し、03年の住民投票で賛成が多数になった。しかし、隣町で反対多数となり、話は流れた。

 当時の村長、合田司郎さん(86)は合併しないで良かったと考えている。「合併したら人を吸い取られ、村で生活ができんくなる。村がイノシシやタヌキの住まいどころになっちょう」住民投票をしたのは「民意を尊重すべきやと思ったから」と言う。

 合田さんは村長を務める前には村議が長く、1980年代と90~00年代に村議会議長や全国町村議長会の会長も務めた。明治時代から代々暮らす家に、現在も住む。

 合併しなかった村には厳しい現実が待ち受けていた。合田さんの村長時代、国から受け取っていた地方交付税と国庫支出金が減り、27人いた村役場の職員を21人に減らした。助役や収入役も廃止した。議員報酬と村長の給与も15%カット。合田さんは村長室のヒーターや扇風機も自費で買った。

 合田さんは「村を担う人づくり」を掲げ、小中一貫校を開校。自主財源を増やそうと、牛や地鶏を育て、販売する「むらびと本舗」を設立した。「村には助け助けられる『結いの文化』が残っちゅう。村は残らないかん」

 4月7日、村で開かれた「さくら祭」は多くの人でにぎわった。

 中心は川上千代子さん(66)。15年前、故郷の大川村に戻り、「友人が集まれる桜の名所をつくろう」と実家の裏山を切り開いた。桜の苗木80本や芝桜4万株を植え、遊歩道や展望台も設け、桜の園ができた14年から祭りを始めた。

 移住者の若者が準備段階から手伝い、当日も駐車場案内や出店を担う。「若者たちと一緒に四苦八苦するのは、大変やけどとっても楽しい」。川上さんは笑う。

 若者たちもまた、村おこしの企画を立てている。

 17年から村で料理人として働く南一人(かずと)さん(40)は村の野菜を使った「大川ラーメン」や「400人クッキー」を開発した。「都会なら商品化に時間がかかるけど、村なら、多少不格好でもすぐに提供して、試すことができる」

 「この村があるから、村を盛り上げ、もっとがんばろうと思える。村があるから選挙もできる。みんなで議論して未来をつくっていける」と川上さんは言う。

 村の将来を一票に託す村議選は16日に告示される。

     ◇

 人口減、高齢化、雇用の確保。人口400人の村の課題は厳しい。それでも、村があるからこそ、人口減にあらがい、過疎化にあらがい、挑戦することができる。自治体があることは当たり前だと思っていた。「未来を選べること」。それはもしかしたら、幸せなことなのかもしれない。村に通ってそう感じた。(森岡みづほ)


追記を閉じる▲

【2019/04/16 14:37】 | 未分類
トラックバック(0) |
    嶋津 暉之

水道民営化について経済ジャーナリストが書いた論考をお送りします。

◆老いた水道管、水質悪化、料金値上がり...... 
 水道事業を民営化しても「未来」はない(鷲尾香一)
(J-CASTニュース2019/4/12 07:00 ) 
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/04/12354683.html?p=all

   2018年12月6日、改正水道法が成立した。メディアの多くが、今回の水道法の改正を「水道事業の民営化」と報じて、今後の新たな水道事業のあり方に期待を寄せている。

   だが、今回の水道法改正は、さまざまな問題を内包している。

水道料金の格差、兵庫県赤穂市と北海道夕張市でなんと8倍

   確かに、日本の水道事業には着実に危機が迫っている。それは、少子高齢化に端を発した人口減少による水道使用量の減少と、法定耐用年数を超えた水道管の更新費用などの問題によるものだ。

   総務省の「水道財政のあり方に関する研究会」が2018年12月6日に発表した資料によると、自治体の水道事業は、2016年度時点で簡易水道を含めて全国に2033。これらの水道事業の収支の状況は、2016年度において4044億円の黒字だが、128の事業(6.3%)が赤字となっている。この赤字事業のうち、105事業が上水道事業だ。

   これは、人口減少に伴う給水人口の減少が大きく影響している。実際、給水人口という点でいえば、事業全体の約8割が5万人未満の地域であり、経営効率の悪化が目立つ。このため、水道料金の収入は2001年度の2兆5463億円をピークに、減少が続いている。

   料金徴収の対象となった水量及び他会計などから収入のあった水量(有収水量)も、2000年をピークに減少が続き、50年後の需要水量は、2000年度に比べて約4割減少すると予測されている。

   加えて、総務省によると、法定耐用年数を超えて延長利用している水道管の割合は、全国で15%にのぼる。このため、水道利用量の減少と水道管の更新など、設備更新の費用増加により、多くの自治体で水道料金の値上げをせざるを得ない状況に迫られている。

   水道料金は、全国一律ではない。日本水道協会によると、2016年4月1日現在の家庭用20立方メートル当たりの水道料金は、もっとも安い兵庫県赤穂市で853円。もっとも高い北海道夕張市では6841円と、約8倍も違う。

   ちなみに、1か月当たりの全国平均は3215円だ。

新たに導入「コンセッション方式」では民営化はムリ?

   水道料金の「格差」は、水源、水道事業にかかる費用、水道の利用量など、さまざまな要因によるものだが、ただ一つ確実に言えることは、水道料金は間違いなく値上がり傾向にあるということだ。

   さらに、公共事業としての水道サービスは、低下する可能性を秘めている。水道管の更新費用は、水道料金が原資となっているが、水道使用量が減少し収入・収益が減少すれば、当然ながら水道管の更新は難しくなる。

   たとえば、1本の本管から地域100軒に供給されていたとする。過疎化により、この地域が10軒に減った場合、水道管更新のための1軒あたりの負担は10倍になる。もし過疎化がさらに進んで地域世帯が5軒あるいは1軒になった場合、水道管の更新費用を負担することが果たして可能だろうか。1軒ならば、言うまでもなく一挙に100倍の負担がのしかかるのである。

   こうした日本の水道事業の現状と将来の不安に対する打開策として登場したのが、「水道事業の民間運営」だ。その最大のポイントは「コンセッション方式」が導入されたことにある。

   民営化とは、設備、土地を含め事業全体を民間企業に転身させることだが、正確に言えば、「コンセッション方式」は民営化ではない。水道管などの所有権を移転することなく、水道事業の運営のみを民間企業に任せる方式だ。

   「コンセッション方式」を導入すれば、水道事業の運営権を民間企業に売却することが可能になるため、自治体は売却代金により水道事業の赤字などを削減することが可能となる。また、水道管関連の工事コストの削減、あるいは新技術を導入した水道事業の運営などによるコスト削減にも期待がかかっている。

   事実、宮城県は2021年度に、水道事業の運営権を民間事業者に委ねる予定を打ち出している。これにより、20年間で水道事業にかかる経費を最大546億円削減できると試算している。

   しかし、「コンセッション方式」の導入はメリットだけではない。水道事業の経営主体が民間企業になるため、事業計画、施策などに対する決定権は民間事業に移る。当然、民間企業が事業を営む以上、採算、利益が重視される。つまり、それは水道水の安全性低下や水道料金の上昇につながりかねないのだ。

民営化で水道水の需要が回復するわけではない

   フランスでは、パリ市の水道事業が民営化され、1985年から2009年に水道料金は約3倍に跳ね上がった。パリ市は水道料金の決め方が不透明などの理由で、2010年に水道事業を再公営化した。

   南アフリカでは、水道事業を民営化したことで水道料金が急上昇し、水道料金を払えない貧困層1000万人以上が汚染された川の水を飲料水としたことなどにより、コレラが発生した。南アフリカは結局、水道事業を公営に戻した。

   これらはあくまでも例外だ。しかし、水道事業が民間運営になることで、採算性や利益水準によっては、水道料金が上昇する可能性は非常に高いし、水道水の品質や安全性が低下する可能性があることは否定できない。

   今回の水道法では、水道料金を条例で定めた範囲内でしか設定できないようにし、国は水道料を含めた事業計画を審査し、不当に高い料金設定をしていないか検証することになっている。

   だが、水道事業を1度民間企業に委ねてしまえば、採算性や利益を度外視した水道料金での運営を民間運営者に強制するのは難しく、水道料金の値上げを受け入れざる得なくなる。

   また民間運営となれば、採算を重視して水道管の更新などの経費削減に動く可能性もある。米国のアトランタでは、水道を運営する民間企業がコストカットを徹底したために、水道管の破裂や水質悪化が相次いだ。

   問題は、水道事業を民間運営にしたからと言って、水道水の需要が回復するわけではないし、水道管の更新などのコスト問題が解決するわけではないということ。しかし、民間運営による「しわ寄せ」は、確実に消費者に回ってくることになる。

   水道はもっとも重要な生活インフラの一つだ。生活インフラの検討にあたっては、対処療法的な弥縫策ではなく、地方政策や都市計画なども含めた総合的な見直しを行う必要がある。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。

 


追記を閉じる▲

【2019/04/15 07:57】 | 未分類
トラックバック(0) |
      嶋津 暉之

川・水関係の情報ではありませんが、参考になると思いますので、古賀茂明さんの論考をお送りします。特に次の文章はなるほどと思います。

「安倍政権の恐怖政治」「内閣人事局に怯える官僚たち」などと言われるが、それは、安倍総理が関心を持つほんの一部の分野でのことだ。それを除く大半の行政分野では、安倍総理は単なるバラマキ政策を野放しにしている。だから、国土交通省のように巨大なバラマキツールを持つ役所から見ると、「安倍さんは本当にいい人だ」などと評価されることになるのだ。

    ◆古賀茂明「塚田国交副大臣の“忖度”更迭でわかった昭和の利権政治の復活」
    連載「政官財の罪と罰」
    (2019.4.8 07:00週刊朝日)#古賀茂明#安倍政権
https://dot.asahi.com/wa/2019040700015.html?page=1

古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催

 塚田一郎国土交通副大臣が4月5日、辞任した。本州と九州を新たに結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)の事業化調査をめぐる「忖度」発言の責任をとったものだ。

 道路行政を所管する国交副大臣が、安倍晋三総理と麻生太郎副総理の地元事業だから「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」と発言してしまった。それだけでも大問題だが、福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で語ったというから、明らかな利益誘導であり、二重の意味で責任を追及されることになった。塚田氏は翌日発言を撤回し、謝罪したが、その理由が、忖度で調査事業を国直轄にしたというのが「事実ではなかった」ということだった。

 もちろん、国会では、「忖度はなかった」という同氏の言い訳は「信じられない!」と言われる。国民も同じ気持ちだろう。

 一方、仮に、本当に忖度などなく、通常の手続きで国直轄の調査に引き上げられたのであれば、逆に、塚田氏は虚偽の事実を告げて票を獲得しようとしたことになり、こちらもまた、大問題である。つまり、どう転んでも、辞任に値する大チョンボだ。

 当初は擁護姿勢を見せていた安倍総理だが、統一地方選のさなかということもあり、結局は、本人が自発的に辞任するという形で、早期の事態収拾に動かざるを得なかった。

 この辞任劇を受けて、一旦は憤りで盛り上がった世論や野党も留飲を下げるかもしれない。

しかし、これで一件落着にしていいのだろうか。

 下北道路は、関門海峡を挟む安倍総理の選挙区の山口県下関市と、中選挙区時代に麻生氏の地盤だった北九州市を結ぶ道路建設プロジェクトだが、2008年に自民党福田康夫内閣によって計画凍結とされていた。しかし、安倍政権になると、安倍氏と麻生氏の地元事業だということで、にわかに復活の動きが高まり、ついに17年度から、国民が気づかぬうちに、プロジェクト推進に向けた調査が再開され、復活への本格的な動きが始まった。17、18年度はその費用のうち国による3分の1補助が行われたが、今年3月には、統一地方選向けの露骨な利益誘導策として、19年度から国の直轄事業、すなわち100%国の税金で行う事業に格上げされた。

 しかし、08年に自民党政権自らが凍結した事業をどうして再開したのかについては、全く国民に説明されていない。闇の中で、決められたと言ってもいいだろう。

 本来であれば、これについて、掘り下げた追及が行われなければならないのだが、野党の国会での追及はこの部分には及んでいない。おそらく、野党側も、下北道路プロジェクト自体を否定するような論陣を張ると、統一地方選で地元の評判が悪くなり、票が逃げると考えているのではないだろうか。

 今回問題となったのは下北道路だが、実は、似たような「海峡道路構想」のプロジェクトは他にも五つある。東京湾口道路(神奈川県横須賀市~東京湾~千葉県富津市)、伊勢湾口道路(愛知県渥美半島~伊勢湾島嶼部~三重県志摩半島)、紀淡海峡道路(和歌山市~紀淡海峡~兵庫県洲本市)豊予海峡道路(大分県~豊予海峡~愛媛県)、島原天草長島連絡道路(長崎県島原半島~熊本県天草~鹿児島県長島)だ。

 これらの構想は、87年の第四次全国総合開発計画(四全総)に萌芽が見られ、98年の全国総合開発計画(五全総)で調査が本格化したが、その後、前述のとおり、08年に「凍結」された。

 今日までの経緯を見ると、無駄な公共事業がどのように育てられ、危機を潜り抜けて、実施に至るのかということがよくわかる。

 まず、1987年の四全総を読むと、例えば、四国地方の記述には「長期的な視点から、(四国と)本州、九州との広域的な……交通体系について検討」とだけ書いてある。

 普通の人は、何のことだかさっぱりわからない。しかし、官僚たちには、これで十分だ。彼らは、この記述を頼りに、紀淡(四国と本州)、豊予(四国と九州)などの構想が認められたと解釈し、そのための調査予算をとって、少しずつ既成事実化を図る。

 そして11年の時を経て、五全総では、各構想が、例えば「紀淡連絡道路の構想については……、構想を進める」などと正式に認知される。下北道路についても、「関門海峡道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める」と、構想推進が明記された。

 しかし、これらの計画には荒唐無稽なものも多く、例えば、紀淡海峡道路には、支間長2.5キロにもなる世界最大級のつり橋「紀淡海峡大橋」が架けられることになっていた。

 さすがにこんな馬鹿げた構想は、日本の財政事情から考えて到底実現不可能だし、これから人口がどんどん減っていくのに、そんなものを作っても意味がないばかりか、将来世代に維持更新投資の負担を押し付けることになるからということで、国民の批判が高まり、08年に凍結されたのだ。

 さらに、09年には「コンクリートから人へ」を掲げる民主党政権が誕生し、復活はほぼ不可能となった。多くの国民は、これらの構想はなくなったと思っていただろう。

ここで、賢明な読者は既にお気づきのとおり、構想は「廃止」されたのではなく、「凍結」されたというのがポイントだ。官僚たちは、「凍結」で諦めたと見せかける。しかし、計画から削除することは絶対にしない。

 実は全国の公共事業の中には何十年も前に構想されて、その後、必要性がないことから、全く計画が進んでいないものが数え切れないほどある。しかし、これらのほぼ全ては、「計画凍結」の状態にあって、決して廃止はされない。

 第2次安倍政権が誕生すると、その「えこひいき体質」に大きな期待が集まった。政権誕生から1年も経たない13年10月22日朝日新聞(西部本社版1面)には、「海峡道路構想が再燃」という記事が掲載された。そこでは、早くも安倍・麻生両氏の地元事業である下北道路復活の動きが始まったと報じられ、社会面に私の批判的なコメントも紹介されている。

 その後は、「国土強靭化計画」の名の下に、「防災」「減災」と言えば何でも通るという雰囲気が蔓延し、族議員と官僚たちが二人三脚で嬉々として踊り出した。そして、今日の国直轄調査開始に至ったのだ。ほとんどの国民はこの間、そんなことには気づいていなかったが、幸か不幸か、今回の事件で、そうした状況が暴露されたということになる。

 ここで注目すべきなのは、他の海峡道路とは違い、下北道路関連の地元の動きが他地域に比べて際立って早く、他に先駆けてそれだけが国家事業に格上げされたことだ。まさに、安倍政権の「えこひいき体質」を地元もよく理解して、早々に動き始め、それに応えた安倍総理や麻生副総理が地元への利益誘導を実践したといっていいだろう。もちろん、これは「えこひいき」ではなく、「防災」「減災」のために必要だという理由が表向きには強調される。

 しかし、これらの構想が出てきた四全総を見てみると、135ページのうち「安全性の確保」に割かれた記述はわずか5ページ、たったの3.7%に過ぎない。防災・減災などほとんど関心がなかった時代のプロジェクトが、新たな衣をまとって復活したのだ。

 四全総が出た32年前。現在の国交官僚のほとんどは入省前だった。しかし、官僚たちに受け継がれる利権確保のDNAは「凍結」では死なない。無駄な構想は、「凍結」ではなく「根絶」しなければ、いつか国民がバカを見ることになるのだ。

 「安倍政権の恐怖政治」「内閣人事局に怯える官僚たち」などと言われるが、それは、安倍総理が関心を持つほんの一部の分野でのことだ。それを除く大半の行政分野では、安倍総理は単なるバラマキ政策を野放しにしている。だから、国土交通省のように巨大なバラマキツールを持つ役所から見ると、「安倍さんは本当にいい人だ」などと評価されることになるのだ。

 こうした無節操な「昭和の利権政治」を復活・強化させたのが、平成最後の安倍政権だ。そして、これを「令和」の時代に引き継げば、どうなるか。先週の本コラムでも引用した投資の神様ジム・ロジャーズ氏の言葉を再掲しておこう。

 <いつかきっと、「安倍が日本をダメにした」と振り返る日が来るだろうー。>

 私たちは、どうしたらこの道から抜け出せるのか、真剣に考えなければならない。
※週刊朝日オンライン限定記事




追記を閉じる▲

【2019/04/15 06:27】 | 未分類
トラックバック(0) |
     嶋津 暉之

シラスウナギ(ウナギ稚魚)の深刻な不漁が続いています。

◆ウナギ稚魚不漁、さらに深刻 終盤、改善の兆しなし
(静岡新聞2019/4/11(木) 7:06配信)

 漁獲量が激減しているニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」が、さらに深刻な不漁に陥っている。漁期の最終盤を迎えた国内の水揚げは「過去最低の水準」(水産庁)で推移している状況。静岡県内の採捕も前年度を大きく下回り、漁師や養殖業者は頭を抱えている。

 シラスウナギの漁期は12月から翌年4月まで。同庁によると、全国の漁獲量は2月末時点で1トン弱と前年同期に比べ半減した。3月以降も改善の兆しは見られず、「過去最低だった2013年度の5・2トンに届かない可能性がある」という。詳しい原因は不明だが、約2千キロ離れた太平洋・マリアナ諸島沖で生まれた稚魚が海流変化などの影響で、日本沿岸にたどり着かなかったとの見方もある。

 県水産資源課によると3月20日までの県内の水揚げは337キロで前年同期の約3分の2に落ち込んだ。前年度は漁期後半に大きく回復し、最終的には1231キロになった。主漁場の天竜川水系で採捕する70代の男性漁師は「今期は4月に入っても、まったく上向かない。近年にない厳しさ」と打ち明ける。県内の採捕総量は上限1805・4キロに定められているが、現状では遠く及ばない。

 県内の1キロ当たりの仕入れ価格は現況95万円。一時130万円を付けた前年度に比べると、不漁にかかわらず、抑えられている。
 養殖団体最大手の浜名湖養魚漁業協同組合(浜松市西区)の幹部は「前年度のような高値では、われわれの経営が成り立たない。漁師も苦しく、価格はぎりぎりの線で折り合っている」と話す。日本ほど不漁が深刻ではない中国から輸入を増やし、不足分を補っているという。

 消費者にとって気掛かりなのはウナギの値段。店頭価格は高騰し、採捕漁師、養殖業者とも「これ以上の転嫁は消費者離れを引き起こす可能性がある」と取引価格の抑制に努めている。

 <メモ>シラスウナギ 大回遊を終え、河川に入る前のニホンウナギの稚魚。半透明で体長は5センチ前後。黒潮に乗り、東アジアまで北上する。乱獲の影響で、1960年代のピーク時に年200トンを超えていた国内の漁獲量は2013年度に5・2トンまで激減した。静岡県内では19団体の930人が採捕している。養殖業者は仕入れた稚魚を育てて出荷する。



追記を閉じる▲

【2019/04/15 06:12】 | 未分類
トラックバック(0) |